JPH07135722A - ケーブル布設溝における耐火気密隔壁の形成方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 発電所・生産プラントなどのＨ型鋼によるケ
ーブル布設溝において、火災が発生したとき延焼の防止
および火災時に発生する有害ガスの拡散を阻止する耐火
気密隔壁を作業性よく形成する。 【構成】 Ｈ型鋼Ｓを２本平行配置して形成される空間
をケーブル布設溝Ａとする。押さえ板１、耐火繊維マッ
ト５等で四角状の隔壁形成部材Ｍを作り、これをボルト
７で締付可能とする。この形成部材Ｍを平行四辺形に変
形させて一の対角間隔を縮小して前記ケーブル布設溝Ａ
に嵌め、該隔壁形成部材Ｍを元の長方四角状に戻してＨ
型鋼Ｓの側面に密着させる。耐火繊維マット５にケーブ
ルを貫通させた後、耐火繊維マット５間に反応硬化性の
気密シール材を注入し、その上・下面を耐火断熱板によ
り覆う。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、Ｈ型鋼等の２本をそ
のウェブが対向するように横向き平行に配置して、その
型鋼間にできる空間をケーブル布設溝とする工法におけ
る、その布設溝内の耐火気密隔壁の形成方法に関するも
のである。

【０００２】

【技術的背景】発電所・生産プラント等において、機械
・装置の運転状況、生産品質の管理その他の要因等はコ
ントロールセンターで管理され、これらの情報は測定点
からケーブルにより伝送される。従って、コントロール
センターの周辺では各種ケーブルが集中、輻輳してい
る。ここで、もし過電流その他何らかの原因で火災が発
生すると、これらのケーブルはその保護被覆および絶縁
層の殆どがポリエチレンン、塩化ビニルなど可燃物から
なっているため、火災は急速に広がり、かつ有害ガス発
生の危険性が潜んでいる。

【０００３】こうしたことから、これら発電所・生産プ
ラントにおける電線・ケーブルの布設ルートには床貫通
部、壁貫通部その他随所に耐火気密隔壁を構築して延焼
の防止と火災時に発生する有害ガスの拡散を抑えるよう
にしている。

【０００４】一方、発電所の建設におけるケーブル布設
方式は種々の方式が考え出されているが、その中に、図
１８に示すように、建築物の床下又は天井の梁をＨ型鋼
Ｓを並列して構成し、それによって形成される空間Ａを
ケーブル布設溝Ａとしたり、更には前記並列したＨ型鋼
Ｓを上下にクロスして配置し、ケーブル布設溝ＡをＸ・
Ｙ・Ｚ方向に構築する工夫がある。因みに、Ａ’の個所
において、クロスするケーブル布設溝Ａ、Ａ間をケーブ
ルＰが立ち上がって行き来して、溝ＡがＺ方向にも構築
されている。

【０００５】このＨ型鋼Ｓによる布設溝Ａにおいても、
上記延焼の防止、有害ガスの拡散防止の面から、同図に
あるように、布設溝Ａの所要個所に耐火気密隔壁Ｗを構
築している。その耐火気密隔壁Ｗは、２枚の耐火繊維マ
ット５を所要間隔をもって対向し、その間に反応硬化性
気密シール材１０を注入硬化して構築する。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】従来、その耐火気密隔
壁の構築は、布設溝Ｓ内に、耐火繊維マット５等の各部
材を個々に嵌入、装入しており、作業性が悪い。

【０００７】このため、気密シール材１０を除き、耐火
繊維マット５等の各部材は工場等においてある程度組み
立て、その構成体を布設溝Ａ内に装入すれば、作業性を
向上し得る。しかし、Ｈ型鋼Ｓからなる布設溝Ａの上下
面はＨ型鋼Ｓのフランジが突出しているため、前記構成
体を完全に組み立てた状態では布設溝Ａ内に装入できな
い。

【０００８】この発明は、上記構成体を布設溝Ａに装入
し得て、作業性の向上を図ることを課題とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明にあっては、Ｈ型鋼又はチャンネル型鋼の
２本を、そのウェブ及びフランジ縁が対向するように横
向き平行に配置し、この両型鋼間にできる空間をケーブ
ル布設溝として、その溝の下面を閉塞し、上記溝内の長
さ方向の所要位置に、対の耐火繊維マットを前記溝を横
切ってその長さ方向を閉塞するように配置して固定し、
その両耐火繊維マットはその対向方向に長いボルトによ
って連結されており、上記両耐火繊維マット間に反応硬
化性シール材を注入充填して、その溝上面を耐火断熱板
により閉塞して成るケーブル布設溝における耐火気密隔
壁の形成方法であって、下記の手順〜でその隔壁を
形成する構成としたのである。

【００１０】 上記ボルトで連結された両耐火繊維マ
ットをその平面形状を両対角線長さの異なる平行四辺形
に変形させ、その平行四辺形の短い対角線方向を上記布
設溝の幅方向として両耐火繊維マットをその布設溝内に
嵌める。

【００１１】 布設溝内に嵌めた両耐火繊維マットを
平面形状長方形に戻して、その側面を両型鋼Ｓのウェブ
に密着させて、両耐火繊維マットを型鋼に固定する。

【００１２】 上記布設溝に、上記耐火繊維マットを
貫通させて所要本数のケーブルを布設する。

【００１３】 両耐火繊維マット間に上記反応硬化性
の気密シール材を注入し、上記布設溝の上面は上記耐火
断熱板により閉塞する。

【００１４】

【作用】このように構成するこの発明は、ボルトによっ
て連結された耐火繊維マット等からなる構成体を変形可
能とし、その変形でもって、布設溝に装入するようにし
たので、その装入に支障はなく、構成体は工場等で製作
し得る。

【００１５】構築された隔壁は、耐火繊維マットによっ
て延焼を防止し、気密シール材によって有害ガスの拡散
を防止する。

【００１６】

【実施例】一実施例を図１乃至図９に示し、図におい
て、１は耐火繊維マット５（セラミックウールをマット
状にして断熱効果を大としたもの）を両側から押さえ保
護する押さえ板（ＪＩＳの１種鋼板２．３mm）、２は押
さえ板１の外面に水平に一定間隔をあけて固着した構造
用鋼からなる保護金具で、この保護金具２はケーブルＰ
を貫通させるとき、および貫通させたケーブルＰの自重
で耐火繊維マット５が破壊されないよう保護しようとす
るもので、更に詳しくは図９に示すように保護金具２の
上にケーブルＰが乗っかるようにして貫通し、ケーブル
Ｐが自重で下降しないようにするものである。

【００１７】保護金具２はその中央部が欠除されてお
り、この欠除部分を介してケーブルＰを上下に移動さ
せ、ケーブルＰの配設が終了すれば、連結金具３をビス
止めする。また、保護金具２の角部は面取りをしてい
る。これはケーブルＰを貫通させる際、摩れてケーブル
Ｐ表面に傷が付かないようにするためである。

【００１８】押さえ板１の耐火繊維マット５側には難燃
シート４，ブラシ６が順次固着されている。難燃シート
４は耐火繊維マット５を外力から保護するためのもので
塩化ビニル樹脂に水酸化アルミニウム・水酸化カルシウ
ム・三酸化アンチモンなどの難燃剤を高充填し、必要に
応じエチレン酢酸ビニル共重合体を配合した難燃ビニル
シート、あるいはセラミックウールまたはガラスウール
の織布に前記金属酸化物の粉末と難燃樹脂をベースとす
る難燃塗料を塗布または含浸させたものである。

【００１９】また、ブラシ６は、耐火繊維マット５にケ
ーブルＰを貫通させると、その周りに若干の隙間が生じ
るが、該ケーブルＰの周りにブラシ６の毛が絡みつい
て、後に注入するシール材１０の流出を阻止するもの
で、馬のたて髪などその作用を有するものであればいず
れでもよい。

【００２０】難燃シート４にはスリット８が所要の間隔
で設けられている。これはケーブルＰを貫通させるに利
便を考慮したもので、ケーブルＰの貫通に際してはこの
スリット８を利用する。

【００２１】９は耐火繊維マット５内に装入されたパイ
プで、その長さは耐火繊維マット５の厚さと同一または
僅かに短くしてあって、ルーズに組み立てられている各
部材をセットする際、耐火繊維マット５の所定の厚さを
維持できるようにするものである。

【００２２】押さえ板１、耐火繊維マット５は図２乃至
図４に示すように長尺ボルト７及びナット７ａにより一
体化して耐火気密隔壁形成部材Ｍとする。

【００２３】つぎに、この実施例による工事の手順を具
体的に説明する。

【００２４】上記耐火気密隔壁形成部材Ｍを図４から図
５の如く平行四辺形に変形させて一の対辺間隔を縮小し
てケーブル布設溝Ａに装入し（図６）、次いで、部材Ｍ
を平行四辺形から元の状態に戻し、部材Ｍの両側をＨ型
鋼Ｓの内面に密着させる（図７）。

【００２５】つぎに、ボルト７のナット７ａを移動させ
て耐火繊維マット５を所望の間隔に締め付けて固定する
（図７）。しかる後、連結金具３を外し、図示しないケ
ーブル挿通治具を使用してケーブルＰを、上方から中央
のスリット８ａを介して挿通し（図８、９）、全てのケ
ーブルを挿通後、連結金具３を取付け、露出するボルト
７には保持カバーを被せる、又はテーピングするなどを
行って、後述のケーブルＰの挿通時、ケーブルＰが傷付
かないようにする。また、Ｈ型鋼Ｓと耐火繊維マット５
の隙間には無機質の接着材を充填する。前後の耐火繊維
マット５の間に反応硬化する液状シール材１０を注入
し、このシール材１０が硬化するのを待つ。このとき、
耐火繊維マット５とケーブルＰの隙間及びその他の隙間
にはセラミックファイバを充填し、また、接着剤で接着
してシール材１０の洩れをなくす。この硬化前又は硬化
後、布設溝Ａの上面に耐火断熱板１１を気密に被せて、
工事は完了する（図１）。

【００２６】このようにして構築された隔壁は、耐火繊
維マット５によって延焼を防ぎ、シール材１０によって
有害ガスの拡散を防ぐ。この布設溝Ａの下面は床面構成
材で閉塞されているが、図１８のＨ型鋼Ｓの上に構築さ
れた布設溝Ａにあっては、その下面は上面と同様に耐火
断熱板１１によって閉塞する。このとき、交差部Ａ’に
おいては、その耐火断熱板１１を欠除又は穴をあける。

【００２７】なお、このように耐火気密隔壁Ｗが一定間
隔に形成されたケーブル布設溝Ａの一端は、電力供給源
・プラントの運転状況の情報源あるいは外部通信回線に
向かって伸び、他の端はコントロールセンター内の各種
制御盤に通ずるようになる。更に、建物の外壁・部屋間
の壁あるいは床を貫通するときは耐火気密壁貫通部に接
続される。

【００２８】図１０乃至図１７に他の実施例を示すが、
この実施例は、押さえ板１を中央で切り離さず、耐火繊
維マット５の中央に穴１２を形成し、この穴１２にケー
ブルＰを通し、横にずらして布設する以外は、前記実施
例と同様である。穴１２はケーブルＰの挿通後、セラミ
ックファイバを詰める。この詰め物は、耐火繊維マット
５から穴１２を抜くときのその抜かれたものとするとよ
い。

【００２９】実施例はＨ型鋼でケーブル布設溝Ａを形成
したが、チャンネル型鋼（溝型鋼）の２本を、そのウェ
ブ及びフランジ縁を対向させて横向き平行に配置しても
ケーブル布設溝Ａを形成することができ、その溝Ａにこ
の発明を採用し得る。

【００３０】なお、上記実施例から分かるように、本発
明の平行四辺形の対辺間隔を縮小・拡大して耐火気密隔
壁Ｗを形成する思想は、狭矮なところでの作業に極めて
有効であるといえる。このため、配電盤・制御盤あるい
は受・配電用キュウビクル内の電線・ケーブル布設溝な
ど狭矮なところでの耐火気密隔壁Ｗの形成に本発明を採
用するとよい。

【００３１】

【発明の効果】この発明は以上のように構成し、気密シ
ール材を除く構成体を工場で製作し、それを現場におい
て、型鋼からなるケーブル布設溝に装入可能としたの
で、耐火気密隔壁を、作業性よく構築することができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例の耐火気密隔壁の断面図

【図２】ａは同実施例の平面図、ｂは同正面図、ｃは同
側面図

【図３】同実施例の要部分解斜視図

【図４】同実施例の工事説明図

【図５】同実施例の工事説明図

【図６】同実施例の工事説明図

【図７】同実施例の工事説明図

【図８】同実施例の工事説明図

【図９】同実施例の工事説明図

【図１０】他の実施例を示し、ａは平面図、ｂは正面
図、ｃは側面図

【図１１】同実施例の要部分解斜視図

【図１２】同実施例の工事説明図

【図１３】同実施例の工事説明図

【図１４】同実施例の工事説明図

【図１５】同実施例の工事説明図

【図１６】同実施例の工事説明図

【図１７】同実施例の工事説明図

【図１８】ケーブル布設溝の施工説明図

【符号の説明】

Ａ ケーブル布設溝 Ｆ 床 Ｐ ケーブル Ｓ Ｈ型鋼 Ｗ 耐火気密隔壁 １ 押さえ板 ２ 保護金具 ３ 連結金具 ４ 難燃シート ５ 耐火繊維マット ６ ブラシ ７ ボルト ７ａ ナット ８ スリット ９ パイプ １０ 反応硬化性気密シール材 １１ 耐火断熱板 １２ 耐火繊維マット穴

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 日野 誠二 東大阪市岩田町２丁目３番１号 タツタ電 線株式会社内 (72)発明者 早川 力 東大阪市岩田町２丁目３番１号 タツタ電 線株式会社内 (72)発明者 田中 卓男 東大阪市岩田町２丁目３番１号 タツタ電 線株式会社内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ｈ型鋼Ｓ又はチャンネル型鋼の２本を、
   そのウェブ及びフランジ縁が対向するように横向き平行
   に配置し、この両型鋼Ｓ間にできる空間をケーブル布設
   溝Ａとして、その溝Ａの下面を閉塞し、 上記溝Ａ内の長さ方向の所要位置に、対の耐火繊維マッ
   ト５を前記溝Ａを横切ってその長さ方向を閉塞するよう
   に配置して固定し、その両耐火繊維マット５はその対向
   方向に長いボルト７によって連結されており、上記両耐
   火繊維マット５間に反応硬化性シール材１０を注入充填
   して、その溝Ａ上面を耐火断熱板１１により閉塞して成
   るケーブル布設溝Ａにおける耐火気密隔壁の形成方法で
   あって、下記の手順〜でその隔壁を形成することを
   特徴とするもの。 上記ボルト７で連結された両耐火繊維マット５をそ
   の平面形状を両対角線長さの異なる平行四辺形に変形さ
   せ、その平行四辺形の短い対角線方向を上記布設溝Ａの
   幅方向として両耐火繊維マット５をその布設溝Ａ内に嵌
   める。 布設溝Ａ内に嵌めた両耐火繊維マット５を平面形状
   長方形に戻して、その側面を両型鋼Ｓのウェブに密着さ
   せて、両耐火繊維マット５を型鋼Ｓに固定する。 上記布設溝５に、上記耐火繊維マット５を貫通させ
   て所要本数のケーブルＰを布設する。 両耐火繊維マット５間に上記反応硬化性の気密シー
   ル材１０を注入し、上記布設溝Ａの上面は上記耐火断熱
   板１１により閉塞する。