JPH07133295A - 新規な抗原タンパク質、その遺伝子、及び組み換えバキュロウイルスとその利用 - Google Patents

新規な抗原タンパク質、その遺伝子、及び組み換えバキュロウイルスとその利用

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JPH07133295A
JPH07133295A JP21310293A JP21310293A JPH07133295A JP H07133295 A JPH07133295 A JP H07133295A JP 21310293 A JP21310293 A JP 21310293A JP 21310293 A JP21310293 A JP 21310293A JP H07133295 A JPH07133295 A JP H07133295A
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JP
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mycoplasma gallisepticum
virus
recombinant
dna
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Hajime Mori
肇 森
Shuji Saito
修治 斉藤
Setsuko Okawa
節子 大川
Hirono Funato
洋乃 船戸
Koichi Iritani
好一 入谷
Shigemi Aoyama
茂美 青山
Kiyoto Takahashi
清人 高橋
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Zeon Corp
Shionogi and Co Ltd
Original Assignee
Shionogi and Co Ltd
Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 鳥類に感染するマイコプラズマ・ガリセプテ
ィカム用ワクチンの提供。 【構成】 マイコプラズマ・ガリセプティカムの抗原蛋
白質の遺伝子をバキュロウイルスの非必須DNA領域に
組み込んだ組み換えを生ワクチンとして使用するか又は
ウイルス同組み換えウイルスの産生する抗原タンパク質
をコンポネントワクチンとして利用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なマイコプラズマ
・ガリセプティカムの抗原タンパク質、それをコードす
る遺伝子、該タンパク質を有効成分とするワクチン、お
よびマイコプラズマ・ガリセプティカムの抗原タンパク
質をコードする遺伝子を組み込んだ組み換えウイルス、
それを用いた組み換え生ワクチン、それを用いたマイコ
プラズマ・ガリセプティカムの抗原タンパク質の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】世界で最も重要な鶏などの家禽の感染症
のひとつであるマイコプラズマ・ガリセプティカム(M
ycoplasma gallisepticum)感
染症は、鶏においては、気嚢炎を伴う慢性の呼吸器障害
を特徴とする疾病である。マイコプラズマ・ガリセプテ
ィカムに感染すると、産卵率並びに孵化率の低下が長期
に渡り引き起こされ、養鶏業界に重大な経済的損失をも
たらす。また、マイコプラズマ・ガリセプティカム感染
症によって鶏の免疫能が低下して常圧菌や弱毒ワクチン
などの日和見感染も引き起こされる。これらの点から予
想できる経済的被害は計り知れない額となる。いくつか
のマイコプラズマ・ガリセプティカム抗原タンパク質が
特開平2−111795号公報で開示されている。しか
し、これらは天然のマイコプラズマ・ガリセプティカム
由来の抗原タンパク質ではなく高い抗原性は期待できな
い。このため、より高い抗原性を有するタンパク質が求
められている。また、前記公報など従来からマイコプラ
ズマ・ガリセプティカム由来の抗原タンパク質を遺伝子
工学的に製造する方法は、大腸菌や酵母を用いた系に限
られていた(特開平2−111759号公報など)。こ
のような系では、抗原発現量が少ない、発現したタンパ
ク質の抗原性が低下・欠損するなどの原因があるほか、
効果の高い生ワクチンとして利用できない、宿主由来の
発熱性物質が取り除けないなどの問題があり、実用に適
していなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、かかる
従来技術の中で、高い抗原性を示すマイコプラズマ由来
の抗原タンパク質を得、また、新たなマイコプラズマ・
ガリセプティカム由来の抗原タンパク質製造方法を開発
すべく鋭意検討を進めた結果、新規なマイコプラズマ・
ガリセプティカム由来の抗原タンパク質を見いだし、さ
らにマイコプラズマ・ガリセプティカム由来の抗原タン
パク質をコードする遺伝子を組み込んだ組み換えウイル
スを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の新規な抗原タン
パク質は、マイコプラズマ・ガリセプティカム免疫血清
またはマイコプラズマ・ガリセプティカム感染血清と抗
原抗体反応を呈し、マイコプラズマ・ガリセプティカム
に由来する図1の制限酵素切断点地図を有するDNA配
列がコードする抗原タンパク質、またはその修飾された
ものである。このような抗原タンパク質の具体例とし
て、32キロダルトンの分子量を有する図2または図3
に示すごときアミノ酸配列をもつ抗原タンパク質が例示
される。また、ここでいう修飾された抗原タンパク質と
は、上述の抗原タンパク質と同等の免疫原性を示す程度
にアミノ酸配列が置換・脱落・欠損・挿入、付加された
ものであるが、好ましくは図2または図3のアミノ酸配
列を有する抗原タンパク質と同等の免疫原性を有し、か
つ該タンパク質のアミノ酸配列との相同性が70%以
上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%
以上のものである。本発明でいう相同性は、DNAシー
ケンス入力解析システム「DNASIS」(発売元:宝
酒造(株))により測定されたものを指標とするもので
ある。この抗原タンパク質は、常法にしたがって製造さ
れる。例えば、後述する組み換えバキュロウイルスを用
いて製造することができる。
【0005】本発明の遺伝子は、前記抗原タンパク質を
コードするものであり、具体例としては、図2または図
3に示される塩基配列のものが挙げられるが、該配列中
の塩基が置換・脱落・欠損・挿入、付加等によって修飾
されたものであっても、修飾された遺伝子がコードする
タンパク質の抗原タンパク質が本発明のタンパク質と実
質的に同等の抗原性を示すかぎり使用できる。このよう
な遺伝子の採取源としては、マイコプラズマ・ガリセプ
ティカムに属するものであれば特に限定されないが、そ
の具体例としてS6株(ATCC15302)、PG3
1(ATCC19610)などが例示される。
【0006】上記抗原タンパク質を有効成分とするコン
ポネントワクチンは、常法にしたがって調製され、希釈
剤、増量剤、アジュバンドなどと混合してもよい。ワク
チンは、体重1kg当り、抗原タンパク質量1μg以上の
量で投与すればよく、上限は、急性毒性を示さない限り
特に限定されず、例えば抗体が中和抗体価として1.0
〜2.0(log10)が得られる量を投与すればよい。
急性毒性は、ニワトリに対し、体重1kg当たり抗原タン
パク質量5mgの投与では認められない。本発明で得られ
た家禽用マイコプラズマ・ガリセプティカム感染症ワク
チンは、筋肉内、皮下または皮内注射等により、家禽に
接種する。また、噴霧によって気道に免疫するか、ある
いは通常の経口投与することも可能である。
【0007】本発明の組み換えウイルスは、マイコプラ
ズマ・ガリセプティカム由来の抗原タンパク質をコード
する遺伝子を有するウイルスであればよく、使用される
ウイルスは、通常遺伝子組み換え技術で用いるものであ
れば特に限定されないが、好ましくはアビポックスウイ
ルス、ワクチニアウイルス、バキュロウイルス、であ
り、特に好ましくはアビポックスウイルスおよびバキュ
ロウイルスである。
【0008】組み換えアビポックスウイルスに供される
ウイルスとしては、アビポックスウイルスに分類される
限りいかなる株でもよいが、鶏、七面鳥、アヒルなどの
家禽類の細胞中で増殖可能なものが好ましく、その具体
例として、ATCC VR−251,ATCC VR2
50,ATCC VR−229,ATCC VR−24
9,ATCC VR−288,西が原株,泗水株,など
のごときファウルポックスウイルスやファウルポックス
ウイルスと近縁のウイルスであって、NP株(鶏胎化鳩
痘毒中野株)などのように鶏痘生ワクチン株として使用
されるウイルスなどが例示される。これらの株はいずれ
も市販されており、容易に入手することができる。ま
た、組み換えバキュロウイルスの作製に供されるウイル
スとしては、昆虫細胞に感染するものであれば如何なる
ものでも良く、天然のものであっても、人工的に作製さ
れたハイブリッドウイルスであっても良い。これらのウ
イルスの具体例として、オートグラファ・カリフォルニ
カ(Autographa californic
a)、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia
ni)、ラキブルシア・オウ(Rachiplusi
a ou)、ガレリア・メロネラ(Galleria
mellonella)、ボンビックス・モリ(Bom
byx mori)などの天然のバキュロウイルスや、
オートグラファ・カリフォルニカとボンビックス・モリ
とから作製した、アルファルファワムシにもカイコにも
感染する能力を有するハイブリッドウイルス(以下、A
cNPV−BmNPVという;日本蚕糸学会第59回学
術講演会講演要旨集、日本蚕糸学会編、第59頁、19
89年、柴田ら、日本蚕糸学会第60回講演会講演要旨
集、日本蚕糸学会、第78頁、1990年、Kond
o、Maedaら、J.Virology、65、36
25−3632(1991))のようなハイブリッドウ
イルスが例示される。なかでもAcNPV−BmNPV
は、抗原タンパク質の製造に当たり、多種類の宿主を用
いることができることから、とりわけ好ましい。
【0009】また、マイコプラズマ・ガリセプティカム
の抗原タンパク質をコードする遺伝子としては、抗マイ
コプラズマ・ガリセプティカム血清と抗原抗体反応を呈
する抗原タンパク質をコードするものであれば特に限定
されず、後述する本発明の遺伝子のほか特開平2−11
1795号公報に開示された抗原タンパク質をコードす
る遺伝子またはその一部、あるいはマイコプラズマ・ガ
リセプティカム由来の図4に示される制限酵素切断地図
を有する40Kdのタンパク質をコードする遺伝子(図
5及び図6)が挙げられる。図5および図6で示される
塩基配列の第986番目〜第988番目および第104
8番目〜1050番目の塩基は図中ではNNNである。
これらの塩基は天然のマイコプラズマ・ガリセプティカ
ムの遺伝子ではTGAであり、マイコプラズマ・ガリセ
プティカム内ではトリプトファンとして翻訳されている
と予想される(J.Bacteriology、172
(1)、504−506(1990))。しかし、通常
はTGAは終止コドンであり、アミノ酸をコードするも
のではない。従って、目的とするタンパク質を発現させ
るためには、天然のマイコプラズマ・ガリセプティカム
由来の遺伝子のTGAをアミノ酸として翻訳されるよう
な塩基に改変する必要がある。改変の手法は常法に従え
ばよく、本発明の実施例ではこれらの塩基を共にTGG
に改変し、トリプトファンとして翻訳されるようにし
た。このような遺伝子の採取源も、前述と同様マイコプ
ラズマ・ガリセプティカムに属するものであれば特に限
定されないが、その具体例としてS6株(ATCC15
302)、PG31(ATCC19610)などが例示
される。また、上記抗原タンパク質をコードする遺伝子
の5′上流にβ−ガラクトシダーゼをコードする遺伝
子、β−ラクタマーゼをコードする遺伝子などの細菌由
来の酵素タンパク質をコードする遺伝子を適当なリンカ
ーによって結合させた融合タンパク質遺伝子を用いれ
ば、組み換えウイルスの構築に際し、組み換え体の選択
などに便利である。
【0010】本発明の組み換えウイルスを構築する方法
は、常法にしたがって行えばよく、例えば次の手順にし
たがって行うことができる。まず、ウイルスの増殖に非
必須なDNA領域(以下、単に非必須領域という)にプ
ロモーターが挿入されたDNA断片を組み込んだ第一の
組み換えベクターを作製する。次に前記プロモーターの
下流に前述の抗原遺伝子を挿入して第二の組み換えベク
ターを作製する。第一および第二の組み換えベクターを
作製するに当たっては、大腸菌の系を用いればよく、使
用するベクターも目的に相応しいものであるかぎり、特
に限定されない。ここで使用されるベクターの具体例と
しては、例えばpBR322、pBR325、pBR3
27、pBR328、pACYM1(Virolog
y、173、674−682(1982))、pAC3
73(Proc.Natl.Acad.Sci.US
A、82、8404−8408(1985))、pUC
7、pUC8、pUC9、pUC19などのプラスミ
ド、λ−ファージ、M13ファージなどのごときファー
ジ、pHC79などのごときコスミドが例示され、中で
も、組み込むウイルスとしてアビポックスウイルスを使
用するときは、例えば、pBR322、pBR325、
pUC8、pUC9、pUC18などのプラスミド、λ
ファージ、M13ファージなどのファージ、pHC79
などのコスミドなどのベクターが好適に使用される。バ
キュロウイルスを用いるときは、pACYM1やpAC
373のようなバキュロウイルストランスファーベクタ
ーとして確立されたプラスミドを用いることが好まし
い。非必須領域とは、組み込むウイルスの増殖に非必須
であり、かつ相同組み換えなどにより組み込むウイルス
に挿入される領域であれば特に限定されず、アビポック
スウイルスの増殖に非必須な領域としては、例えば、N
P株DNAの約7.3kbpのEcoRI断片、約5.
2kbpのHind III断片、約5.0kbpのEco
RI−Hind III断片、約4.0kbpのBamHI
断片などと相同組み換えを起こす領域(特開平1−16
8279号)が例示される。バキュロウイルスの増殖に
非必須な領域としては、ポリヘドリン遺伝子(サイエン
ス(Science)、219、715−721(19
83))などが例示される。
【0011】また、本発明で用いられるプロモーターと
は、合成・天然を問わず遺伝子を組み込むウイルスが保
有する転写の系でプロモーターとして有効に機能しうる
ものなら如何なる塩基配列のものでもよく、例えばアビ
ポックスウイルス内で機能するものとしては、例えば、
7.5Kポリペプチドをコードするワクチニアウイルス
遺伝子のプロモーター、11Kポリペプチドをコードす
るワクチニアウイルス遺伝子のプロモーター、チミジン
キナーゼをコードするワクチニアウイルス遺伝子のプロ
モーターなどが例示される他、プロモーターとして機能
する限りにおいては、これらの一部を改変したものであ
っても、また、合成されたものであっても良い。このほ
か、初期プロモーターと後期プロモーターの両方の配列
を有する合成プロモーター(A. J. Davidson et. al.,
J. Mol. Biol., 215, 749-769 and 771-784, 1989 )や
その一部をプロモーター活性が喪失しない範囲での削
除、変更などにより改変されたもの(たとえばTTTT
TTTTTTTTTGGCATATAAATAATAA
TAAATACAATAATTAATTACGCGTA
AAAATTGAAAAACTATTCTAATTTA
TTGCACTCで例示されるもの)をもちいると、組
み換えアビポックスウイルスを接種した宿主が、効率よ
く抗体を産生し、好ましい。更に、バキュロウイルスの
ポリヘドリンをコードする遺伝子のプロモーター(以
下、ポリヘドリンプロモーターという)や10Kポリペ
プチドをコードするバキュロウイルス遺伝子のプロモー
ターなどが例示される。
【0012】最終的に組み換えウイルスを作製するに
は、第二の組み換えベクターをウイルスと混合した後、
宿主として用いる培養細胞に移入し、あるいは第二の組
み換えベクターを予めウイルスで感染させた宿主として
用いる培養細胞に移入し、ベクターDNAとウイルスゲ
ノムDNAの間に相同組み換えを起こさせ、組み換えウ
イルスを構築する。ここで宿主として用いる培養細胞と
は、使用するウイルスが感染・増殖可能なものであれば
特に限定されず、例えば、アビポックスウイルスを用い
る場合、例えば鶏胎児繊維芽細胞(以下、CEFと称
す)などの鶏胎児繊維芽細胞由来培養細胞が挙げられ、
また、発育鶏卵しょう尿膜なども宿主の範疇に当然含ま
れる。また、バキュロウイルスを用いる場合には、通
常、昆虫培養細胞が使用され、このような細胞の具体例
としては、Sf9細胞やBmN細胞などが挙げられる。
培養条件は、予備実験によって容易に決定できるが、具
体的には、Sf9細胞を用いた場合は10%ウシ胎児血
清を含む培地で、28℃で培養することが望ましい。こ
のようにして構築された組み換えウイルスは、常法、例
えばプラークアッセイなどによって純化される。
【0013】本発明の組み換え生ワクチンは、上記のよ
うにして得られる組み換えアビポックスウイルスを有効
成分とするものである。例えば、本発明の組み換えアビ
ポックスウイルスが成育することのできる細胞を、本発
明の組み換えアビポックスウイルスに感染させ、組み換
えアビポックスウイルスが増殖するまで培養する。その
後、細胞を回収し破砕する。この細胞破砕物を遠心分離
機によって遠心分離チューブ中で沈澱物と組み換えアビ
ポックスウイルスを含んだ非細胞依存性の高力価遠心上
清とに分離する。実質的に宿主細胞を含まず、細胞培養
培地と組み換えウイルスを含んだこの遠心上清は、本発
明のワクチンとして使用できる。また、薬理学的に受け
入れられる生理食塩水等の様な物で再構成して使用す
る。遠心上清を凍結乾燥した凍結乾燥ワクチンとしても
使用できる。
【0014】本発明の生ワクチンは、ワクチン中の組み
換えアビポックスウイルスが家禽に感染して防御免疫反
応を引き起こすような方法であれば、どのような方法で
家禽に投与してもよい。例えば、皮膚に引っかき傷をつ
けてワクチンを接種したり、注射針やその他の器具等に
よって、家禽の皮下にワクチン接種することができる。
また、ワクチンを家禽の飲み水に懸濁したり、飼料等の
固形物に混入して、経口接種させることも可能である。
さらに、エアロゾルやスプレーによるワクチンを吸入さ
せる方法、静脈内接種法、筋肉中接種法、腹腔内接種
法、翼膜接種法、発育卵接種法等を用いることもでき
る。
【0015】接種量は、例えば鶏の場合、1羽あたり、
通常、102 〜107 PFU(プラーク形成単位)であ
る。注射する場合には、この量を生理食塩水などの生理
学的に受け入れられる液体で希釈したりして0.01〜
1ml程度にすればよい。
【0016】本発明の抗原タンパク質の製造方法は、上
述の方法によって作製され、純化された組み換えバキュ
ロウイルスを宿主である昆虫または昆虫の樹立細胞に感
染させ、感染虫を飼育または感染細胞を培養して抗原タ
ンパク質を発現させることによって実現される。宿主と
して用いられる昆虫または昆虫の樹立細胞とは、通常、
バキュロウイルスベクターの系で宿主として使用される
ものであれば特に制限されるものではないが、例えば、
昆虫としてヨウトウガ、カイコガ、アワヨウトウガ、セ
ロクピア蚕、アルファルファワムシ(Autograp
ha californica)、Spodopter
a exigua、Tricoplusia ni等の
幼虫、さなぎ、成虫等の虫体が、また、昆虫の樹立細胞
としてSf細胞(例えばIPLB−Sf−21AE細
胞、Sf9細胞等)、TN細胞およびBm細胞(例え
ば、BmN細胞、SES−BoMo−15A細胞、ES
E−BoMo−15AII細胞、EISES−BoMo
−15AIIe細胞、NISES−BoMo−CamI
細胞等)が挙げられる。例えば、バキュロウイルスとし
てAcNPV−BmNPVを用いた場合、Sf細胞やB
m細胞、およびカイコやヨトウガの虫体内(幼虫、成虫
あるいはさなぎ)等の昆虫または昆虫の樹立細胞で増殖
可能である。感染後の宿主の飼育または培養方法は、特
に制限はなく、通常の方法が用いられる。即ち、昆虫を
用いる場合であれば、虫体に本発明の組み換えバキュロ
ウイルスを適当な溶媒に懸濁させ、それを注射して20
〜30℃で飼育する方法、昆虫の樹立細胞を用いる場合
であれば、前記細胞へ適当な培地に懸濁した本発明の組
み換えバキュロウイルスを感染させ、20〜30℃で培
養する方法等が例示される。飼育または培養後、当業者
によく知られているクロマトグラフィー、塩析による沈
澱、密度勾配遠心等から任意に選択した方法により、目
的とする抗原タンパク質が精製される。こうして得られ
た抗原タンパク質は、コンポネントワクチンとして用い
ることができる。勿論、精製せずに虫体や培養細胞に含
まれた状態のタンパク質であっても本発明のコンポネン
トワクチンとして使用してもよい。
【0017】
【発明の効果】かくして、本発明によればアビポックス
ウイルスの増殖に非必須なゲノム領域にマイコプラズマ
・ガリセプティカム由来の抗原をコードするDNAがプ
ロモーター機能を有するDNAと共に発現可能な形で組
み込まれた組み換えアビポックスウイルスが得られ、こ
のような組み換えアビポックスウイルスを生ワクチンと
して鶏に接種することでマイコプラズマ・ガリセプティ
カム由来抗原に対する抗体を得ることができる。更に、
本発明の組み換えバキュロウイルスを用いれば従来の技
術に比較して効率よくマイコプラズマ・ガリセプティカ
ム抗原タンパク質を製造することができる。また、本発
明の新規な抗原タンパク質は、家禽マイコプラズマ・ガ
リセプティカム感染症に対するワクチンとして有用であ
ると共に、マイコプラズマ・ガリセプティカム感染症診
断薬としても有用である。
【0018】以下本発明を実施例および参考例により説
明するが、本発明は勿論これらにより限定されるもので
はない。
【0019】〔参考例−1〕マイコプラズマ・ガリセプ
ティカムが発現しているポリペプチド遺伝子TTM−1
の取得 (1) マイコプラズマ・ガリセプティカム・ゲノムD
NAの調製 マイコプラズマ・ガリセプティカムS6株を100ml
のPPLOブロス基礎培地に20%馬血清、5%酵母エ
キス、1%グルコース、およびpH指示薬としてフェノ
ールレッドを微量加えて調製した液体培地で、37℃3
〜5日培養した。マイコプラズマ・ガリセプティカムの
増殖に従って培養液のpHが下がり、培養液に含まれて
いるpH指示薬の呈色が赤から黄に変化した時点で、培
養を終了し、培養液を8000G、20分間遠心し、集
菌した。さらに菌体を培養液の1/10容量のPBSに
懸濁し、再び10,000rpm×G、20分間遠心
し、集菌した。収集菌体を再び2.7mlのPBSに懸
濁し、1%になる様にSDSを、さらに10μgのRN
aseを加え、37℃30分間インキュベートし溶菌し
た。溶菌液を等容量のフェノールで3回抽出しさらに、
エチルエーテルで3回抽出を行なった後エタノール沈澱
し、マイコプラズマ・ガリセプティカム・ゲノムDNA
200μgを得た。
【0020】(2) TM−1遺伝子をプローブにした
マイコプラズマ・ガリセプティカムのゲノミックサザン
ハイブリダイゼーション 上記(1)で取得したマイコプラズマ・ガリセプティカ
ムDNA1μgをXbaIで消化し、0.6%低融点ア
ガロースゲル電気泳動に供した。泳動後ゲルをアルカリ
変性液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)に
10分間浸しDNAを変性させ、中和液(3M酢酸ナト
リウムpH5.5)に10分間浸して中和の後6倍SS
C液(0.7M NaCl、0.07Mクエン酸ナトリ
ウム、pH7.5)中でナイロンメンブレンに転写し
た。風乾の後80℃で2時間焼き付け、4倍SET
(0.6M NaCl、0.08M Tris−HC
l、4mMEDTA、pH7.8)−10倍Denha
rdt−0.1% SDS−0.1%Na4 2 7
50μg/ml変性サケ精子DNAとpUM−1(特開
平2−111795号参照)を常法に従い標識したもの
を加えて、68℃14時間ハイブリダイゼーションをし
た。ナイロンメンブレンとX線フィルムを重ね、オート
ラジオグラフィーで確認したところ、約3.4kbpの
断片にハイブリダイズしていることを確認した。
【0021】(3) XbaI消化約3.4kpb断片
のpUC−19へのクローニング及びコロニーハイブリ
ダイゼーション 上記1−(1)で取得したマイコプラズマ・ガリセプテ
ィカムDNA4μgを制限酵素XbaIで消化後、0.
6%低融点アガロースゲル電気泳動後、約3.4kbp
の断片を回収した。この断片を、XbaI消化によって
開裂したpUC−19とリガーゼによって連結し、コン
ピテントな大腸菌TG1株を形質転換し、5−ブロモ−
4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノ
シド0.003%、イソプロピルチオ−β−D−ガラク
トピラノシド0.03mM、40μg/mlアンピシリ
ンを含むLB寒天培地で37℃、15時間培養した。こ
の培地上に生育した白コロニーをナイロンメンブレンに
転写し、上記(2)と同様の方法でハイブリダイゼーシ
ョンを行ない、オートラジオグラフィーで確認したとこ
ろ、クローニングされていることが判明し、このプラス
ミドをpUTTM1と名付けた。
【0022】〔参考例−2〕 (1) TTM−1がコードするタンパクTTMG1
を、TGAが翻訳終結コドンとして読まれないように改
変(TGA→TGG)したTTM−1′の作製(図7参
照) 参考例1−(3)のpUTTM−1を制限酵素SacI
とEcoRIで消化後0.8%低融点アガロースゲル電
気泳動に供し、TTM−1の5′端を含む1.1kbp
の断片をフェノール−クロロホルム処理後エタノール沈
澱により回収し、M13mp11ファージをSacIと
EcoRIで開裂させた断片とリガーゼにより連結し
た。この反応溶液と、37℃で24時間培養した大腸菌
TG1に最終的に100mMとなるようにIPTGを加
えてX−galが2%となるようにさらに加えた溶液と
m.o.i.が0.1になるよう混合し軟寒天上に撒い
て固化させ、37℃、24時間インキュベートする。出
現したファージプラークのうち青変していないファージ
からTTM−1の1.1kbpDNAを含む組み換えフ
ァージTTM−1Nを得た。同様に、pUTTM−1を
EcoRIとEcoRVで消化後、0.8%低融点アガ
ロースゲル電気泳動に供し、TTM−1の3′末端側を
含む0.4kbpの断片をゲルより回収し、フェノール
・クロロホルム処理後エタノール沈澱により回収し、M
13mp10ファージをEcoRIとEcoRVで開裂
させた断片とリガーゼにより連結した。この反応溶液を
1.1kbpDNAのクローニングと同様の方法で、T
TM−1の0.4kbpDNAを含む組み換えファージ
TTM−1Cを得た。 (2)各組み換えファージから一本鎖DNAの調製 上記(1)で得られた二種類の組み換えファージについ
て、100mlの2×YT培地で37℃で増殖している
大腸菌TG1にm.o.i.=0.1になるようにそれ
ぞれ加え、37℃で5時間振盪培養後5000gで30
分遠心分離し、大腸菌菌体成分を除いた上清を取得す
る。この上清に0.2倍量のポリエチレングリコール/
塩化ナトリウム混合溶液(20%ポリエチレングリコー
ル#6000、2.5M NaCl)を加え4℃で1時
間静置後5000gで20分遠心分離し、沈澱を回収す
る。この沈澱を500μlのTE緩衝液(10mMTr
is−HCl、1mM EDTA、pH8.0)に溶か
し、フェノール・クロロホルム抽出後、エタノール沈澱
で各組み換えファージの単鎖DNAを回収した。
【0023】(3) 人工合成オリゴヌクレオチドをプ
ライマーとする位置特異的変異体の作製 このようにして得られたDNAには、配列の途中にTG
Aがある。このTGAは、通常の細胞内では、終止コド
ンとして認識されてしまい、これより後ろに付加してい
る配列を翻訳しなくなる。そこで、TGA部分をメチオ
ニンとして翻訳するようにコドンNNNの第3番目の塩
基に当たる塩基アデニンをグアニンに改変するために、
次の2つのオリゴヌクレオチドを合成した。
【0024】
【化1】3′−TACGTTCTTCCTGGCAAA
CCTTACCACTACTT−5′
【0025】
【化2】3′−CTACAAAGAACCTAAATA
TCA−5′
【0026】化1のオリゴヌクレオチドはTTM−1N
の単鎖DNAと、化2のオリゴヌクレオチドはTTM−
1Cの単鎖DNAとをアニールさせ、Frits Ec
ksteinらの方法(Nucleic Acid R
esearch 8749−8764、1985)によ
って、目的の変異をおこさせて、得られた組み換えファ
ージを各々TTM−1N′、TTM−1C′と命名し
た。得られたTTM−1N′、TTM−1C′ファージ
DNAをそれぞれ制限酵素SacI−EcoRI、Ec
oRI−BglIIで切断し、0.8%低融点アガロース
電気泳動によって1.1kbp、0.4kbpの断片を
アガロースゲルより抽出し、エタノール沈澱で回収し
た。一方プラスミドpUTTM−1もSacI−Bgl
IIで切断し、4.8kbpのベクターを含む断片を0.
8%低融点アガロースゲル電気泳動から回収し、エタノ
ール沈澱で回収した。こうして得られた3つの断片をリ
ガーゼにより連結し、コンピテントな大腸菌TG1株を
形質転換し、目的の位置に変異がおきたTTM−1′を
持つプラスミドpUTTM−1′を得た。TTM−1′
の塩基配列は、SaugarらのDideoxy 法(Proc. Natl. Ac
od. Sci. USA、74、5463(1977))によれば
図5および図6に示す通りであった。これは、天然のM.
gallisepticumの40キロダルトンのTTM−1ポリペ
プチドと実質的に同一のものである。
【0027】 参考例3 挿入用ベクターpNZ1729Rの構築 NP株のEcoRI断片(約7.3kbp)をpUC1
8のEcoRI切断部位(マルチクローニング部位の末
端)に組み込んでプラスミドpNZ133(約10.0
kbp)を得た。このプラスミドから、HpaI−Sp
eI断片(約3.0kbpのNP株由来断片)を切り出
し、クレノー(Klenow)断片により平滑末端とし
た。またpUC18からRcoRI−Hind III断片
(52bpのマルチクローニング部位)を除き、クレノ
ー断片で平滑末端とした。この2つの断片をつないで、
プラスミドとし、HpaI−SpeI断片中のEcoR
V部位を除いて、そこにpUC18のEcoRI−Hi
nd III断片(52bpのマルチクローニング部位)を
Hind IIIリンカー(5′−CAAGCTTG−
3′)とEcoRIリンカー(5′−GGAATTCC
−3′)を用いて組み込み、プラスミドpNZ133S
Rを構築した。
【0028】配列1(配列番号1)と配列2(配列番号
2)(17ベースのFVPプロモーターを含み、lac
Zのための翻訳開始コドンが連なっている)をアニーリ
ングして2本鎖にし、lacZ遺伝子(pMC1871
及びpMA001由来、Sirakawa et.a
l.,Gene,28,127−132,1984)と
アニーリングした配列3(配列番号3)と配列4(配列
番号4)、配列5(配列番号5)と配列6(配列番号
6)、配列7(配列番号7)と配列8(配列番号8)、
配列9(配列番号9)と配列10(配列番号10)とを
結合させ(配列3の5′側末端のAGCの次のTから配
列5の3′側末端のGの前のCまでに塩基配列TTTT
TTTTTTTTTTTTTTTTGGCATATAA
ATAATAAATACAATAATTAATTACG
CGTAAAAATTGAAAAACTATTCTAA
TTTATTGCACTCで示されるポックスウイルス
の合成プロモーターの改変物を含み、さらにマルチクロ
ーニング部位及び両方向のポックスウイルス初期転写終
結信号(配列番号11)(Yuen et.al.,P
NAS,88,6417−6421,1989年)が連
なっている)、EcoRI−Hind III断片(約3.
5kbp、図1の中央に示す)を得た。そのEcoRI
−Hind III断片を、pNZ133SRに挿入し、プ
ラスミドpNZ1729Rを完成させた。
【0029】
【実施例−1】 組み換え用プラスミドpNZ7929−R1の構築(図
8参照)
【0030】1−1 合成プロモーターとTTM−1遺
伝子を結合したプラスミドpUTTM1Pの構築 参考例2で得たTTM−1 DNA全長を含むプラスミ
ドpUTTM1′(特許出願平成4年第138819
号)のうちTTM−1ポリペプチドの開始コドンにあた
るATGの上流に制限酵素DraI切断部位をつくるた
めに、まず次のオリゴヌクレオチドを合成した。 3′−TATAGAATTAAATTTTACTTATTC−5′ つぎに、pUTTM−1′を制限酵素SacIとEco
RIで消化後約2300bpの断片を回収し、M13m
p10のSacIとEcoRIで開裂させた断片と連結
し組み換えファージTTM−1′を得た。上記オリゴヌ
クレオチドと単鎖TTM−1′とをアニールさせ、Frit
s Ecksteinらの方法(Nucleic Acid Research 8749-876
4, 1985 )によって目的の変異をおこさせた。この変異
組み換えファージDNAを制限酵素SacIとEcoR
Iで消化後約2300bpの断片を回収し、再びpUT
TM−1′をSacIとEcoRIで消化したベクター
を含んだ断片にクローニングし、pUTTM1Dを得
た。合成プロモーターは配列−12と配列−13のDN
Aを合成し、アニーリングして末端に制限酵素Hind
IIIとHinc II 切断部位ができるように作製した。
【0031】
【0032】最後に、pUTTM1Dを制限酵素Dra
IとBal II の消化回収断片1200bpと上記合成
プロモーターとpUC18のHind III,BamHI
開裂断片を連結し、pUTTM1Pを得た。
【0033】1−2 pNZ7929R1の構築 1−1によって得られたプラスミドpUTTM1Pを制
限酵素Hind IIIとKpnIで消化後、約1300b
pの断片を回収する。次に、参考例3で得たFPV組み
換え用ベクターpNZ1729R(特許出願平成4年第
167478号)を制限酵素Hind IIIとKpnIで
開裂させた。この二つの断片を連結し、目的の組み換え
用ベクターpNZ7929−R1を得た。
【0034】
【実施例−2】 組み換えFPV fNZ7929−R1の作製と純化
【0035】単層のCEFに鶏痘生ワクチン株であるN
P株をm. o. i.=0.1で感染した。3時間後、これら
の細胞をトリプシン処理で剥がし、細胞懸濁液とした。
この懸濁液の2×107 個の細胞と10μgの組み換え
用プラスミドpNZ7929−R1を混合し、Sali
neG(0.14M NaCl,0.5mM KCl,
1.1mM Na2 HPO4 ,1.5mM KH2 PO
4 ,0.5mM MgCl2 6H2 O 0.011%グ
ルコース)に懸濁し、室温においてジーンパルサー(B
io−Rad社)を用いて3.0kVcm-1,0.4ms
ec,25℃の条件下でエレクトロポレーションした。プ
ラスミドを導入した細胞を、その後37℃,72時間培
養し、3回の凍結融解によって細胞を溶解し、組み換え
ウイルスを含むウイルスを回収した。
【0036】回収した組み換えウイルスはつぎのように
して選択した。回収したウイルス液を単層のCEFに感
染させ生育培地を含んだ10mlの寒天溶液を重層し
た。室温中で寒天を固めたのち、FPVのプラークが出
現するまで37℃で培養後ブルオギャル(Bluo gal)を
200μg/mlの濃度でふくんだ寒天培地を重層し、
さらに48時間37℃で培養した。前プラークのうち約
1%のプラークが青く発色した。これらの青いプラーク
を単離・回収して、さらに同様の操作によって単離・回
収を繰り返し、すべてのプラークがブルオギャルで青く
染まるまでウイルスの純化を行った。通常この繰り返し
操作は3〜4回で終了する。この純化されたウイルスを
fNZ7929−R1と名付けた。fNZ7929−R
1はドットブロットハイブリダイゼーション,サザンブ
ロットハイブリダイゼーションによってTTM−1,l
acZ遺伝子ともに予想通りの位置にあることを確認し
た。
【0037】
【実施例−3】 fNZ7929−R1感染細胞におけるTTM−1ポリ
ペプチドの発現
【0038】fNZ7929−R1がTTM−1ポリペ
プチドを感染細胞中で発現することを調べるために抗マ
イコプラズマ・ガリセプティカムS6株血清を用いた免
疫蛍光抗体法を行った。fNZ7929−R1をCEF
に感染させ、37℃でプラークが出現するまで培養後冷
アセトンで固定し、マイコプラズマ・ガリセプティカム
S6株で免疫した鶏血清(抗S6)またはマイコプラズ
マ・ガリセプティカムS6株感染鶏血清(感染S6)及
びTTM−1ポリペプチド免疫鶏血清(抗TTM−1)
を一次抗体として100〜1000倍に希釈して反応さ
せた。これらの培養細胞をさらに、蛍光物質(FIT
C)を結合した抗鶏イムノグロブリンと反応させ、非特
異反応部分を洗い流したのち蛍光励起波長光下で顕微鏡
観察した。対照ウイルスとしてFPV−NP株,fNZ
2337(特開平1−157381)を用い、対照一次
抗体としてニューカッスル病ウイルス免疫鶏血清(抗N
DV)とSPF鶏血清(SPF)を1000倍で用い
た。反応性は表1に示した。
【0039】
【表1】 表1 組み換えウイルス感染CEFの各種血清に対する反応性 ──────────────────────────────────── 一次抗体に対する反応性 感染ウイルス ───────────────────────────── 抗S6 感染S6 抗TTM-1 抗NDV SPF ──────────────────────────────────── fNZ7929-R1 + + + − − fNZ2337 − − − + − NP − − − − − ── − − − − − ──────────────────────────────────── +:反応する −:反応しない
【0040】fNZ7929−R1が感染した細胞は、
抗S6および感染S6抗TTM−1とのみ反応し、その
他の抗体とは反応しなかった。この事実は、fNZ79
29−R1はTTM−1ポリペプチドを感染細胞中で発
現していることを示している。
【0041】
【実施例−4】 fNZ7929−R1接種鶏への抗TTM−1ポリペプ
チド抗体誘導能
【0042】fNZ7929−R1をCEFで37℃,
48時間培養後、二回凍結融解を繰り返し、細胞浮遊液
を回収し、ウイルスタイターが106 pfu/mlとな
るように調製したのち生後7日のSPF鶏(Line M,
日本生物科学研究所)の右翼膜に穿刺用針で10μl接
種した。接種後善感発痘を観察し、接種から2週後に血
清を採取した。採取した血清の抗体価はELISA法で
測定した。精製したTTM−1ポリペプチドを1μg/
wellとなるようにバイカーボネートバッファーに溶解
し、96wellマイクロタイタープレートに吸着させた
後、スキムミルクでブロッキングを行ってその後の非特
異的吸着を防いだ。次に各ウェルに被検血清の希釈液を
のせたのちホースラディッシュパーオキシダーゼ結合抗
鶏イムノグロブリン抗体(ウサギ抗体)を二次抗体とし
てのせた。充分洗浄したのち、基質として2,2′−ア
ジノジエチル−ベンズチアゾリンスルフォネートを加
え、イムノリーダーで405nmの波長光に対する吸光
度で抗体の相対希釈倍率を測定した(表2)。なお、対
照一次抗体には、抗TTM−1ポリペプチド鶏血清を用
いた。
【0043】
【表2】 表.2 fNZ7929−R1接種鶏のTTM−1免疫鶏血清ポリペプチドに対 する抗体価 ──────────────────────────────────── 接種ウイルス 抗TTM−1ポリペプチド抗体価(希釈倍率)* ──────────────────────────────────── fNZ7929−R1 32 NP 1 ─── 1 抗TTM−1 256 ──────────────────────────────────── *SPF鶏血清の反応性を1としたときの希釈倍率
【0044】この結果により、fNZ7929−R1は
接種鶏に効果的に抗TTM−1抗体を誘導できる。この
ことからfNZ7929−R1は、鶏痘とマイコプラズ
マ・ガリセプティカム感染症に効果的に感染を防御する
ワクチンとして使用することができる。
【0045】
【実施例−5】 マイコプラズマ・ガリセプティカムが発現しているポリ
ペプチド遺伝子TM−16の取得 (1) マイコプラズマ・ガリセプティカム・ゲノムD
NAの調製 マイコプラズマ・ガリセプティカムS6株を100ml
のPPLOブロス基礎培地に20%馬血清、5%酵母エ
キス、1%グルコース、およびpH指示薬としてフェノ
ールレッドを微量加えて調製した液体培地で、37℃3
〜5日培養した。マイコプラズマ・ガリセプティカムの
増殖に従って培養液のpHが下がり、培養液に含まれて
いるpH指示薬の呈色が赤から黄に変化した時点で、培
養を終了し、培養液を8000G、20分間遠心し、集
菌した。さらに菌体を培養液の1/10容量のPBSに
懸濁し、再び10,000rpm、20分間遠心し、集
菌した。収集菌体を再び2.7mlのPBSに懸濁し、
1%になる様にSDSを、さらに10μgのRNase
を加え、37℃30分間インキュベートし溶菌した。溶
菌液を等容量のフェノールで3回抽出しさらに、エチル
エーテルで3回抽出を行なった後エタノール沈澱し、マ
イコプラズマ・ガリセプティカム・ゲノムDNA200
μgを得た。
【0046】(2) M−16遺伝子をプローブにした
マイコプラズマ・ガリセプティカムのゲノミックサザン
ハイブリダイゼーション 上記(1)で取得したマイコプラズマ・ガリセプティカ
ムDNA1μgをXbaIで消化し、0.6%低融点ア
ガロースゲル電気泳動に供した。泳動後ゲルをアルカリ
変性液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)に
10分間浸しDNAを変性させ、中和液(3M酢酸ナト
リウムpH5.5)に10分間浸して中和の後6倍SS
C液(0.7M NaCl、0.07Mクエン酸ナトリ
ウム、pH7.5)中でナイロンメンブレンに転写し
た。風乾の後80℃で2時間焼き付け、4倍SET
(0.6M NaCl、0.08M Tris−HC
l、4mMEDTA、pH7.8)−10倍Denha
rdt−0.1% SDS−0.1%Na4 2 7
50μg/ml変性サケ精子DNAとpUM−16(こ
のプラスミド内にM−16遺伝子が含まれている;特開
平2−111795号参照)を常法に従い標識したもの
を加えて、68℃14時間ハイブリダイゼーションをし
た。ナイロンメンブレンとX線フィルムを重ね、オート
ラジオグラフィーで確認したところ、約5.5kbpの
断片にハイブリダイズしていることを確認した。
【0047】(3) XbaI消化約5.5kpb断片
のpUC−19へのクローニング及びコロニーハイブリ
ダイゼーション 上記1−(1)で取得したマイコプラズマ・ガリセプテ
ィカムDNA4μgを制限酵素XbaIで消化後、0.
6%低融点アガロースゲル電気泳動後、約5.5kbp
の断片を回収した。この断片を、XbaI消化によって
開裂したpUC−19とリガーゼによって連結し、コン
ピテントな大腸菌TG1株を形質転換し、5−ブロモ−
4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノ
シド0.003%、イソプロピルチオ−β−D−ガラク
トピラノシド0.03mM、40μg/mlアンピシリ
ンを含むLB寒天培地で37℃、15時間培養した。こ
の培地上に生育した白コロニーをナイロンメンブレンに
転写し、上記(2)と同様の方法でハイブリダイゼーシ
ョンを行ない、オートラジオグラフィーで確認したとこ
ろ、クローニングされていることが判明し、このプラス
ミドをpUM16と名付けた。
【0048】(4) pUM−16インサートDNAの
配列分析 実施例5(3) で作製したpUM−16内に挿入された約
5.5kbpの断片の配列をSangerらのDide
oxy法(Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA.、74、5463(1977))によって解析し
た。この断片の制限酵素切断点地図を図4に示す。ま
た、この断片中に存在するオープンリーディングフレー
ム(以下ORFという)の制限酵素切断点地図を図1に
示し、このORFの塩基配列及びそれから推定されるア
ミノ酸配列を図2および3に示す。このORFから推定
されるポリペプチドをTM−16ポリペプチドと命名し
た。
【0049】
【実施例−6】 TM−16ポリペプチド発現リコンビナントウイルスの
作製 (1) TM−16の開始コドン(ATG)直前及び終止
コドン(TAA)直後への制限酵素サイト挿入YpMU
TABの構築(図10参照) pUM16を、EcoRIとPstIで消化後、0.8
%低融点アガロースゲル電気泳動に供し、TM−16の
5′末端側を含む約1000bpの断片をゲルより回収
し、フェノール、クロロホルム処理後、エタノール沈澱
により回収した。次いで、この断片と、予めM13mp
10ファージをEcoRIとPstIで開裂させて得た
断片とをリガーゼにより連結した。この反応液を、37
℃で24時間培養した大腸菌TG1に最終的に100mM
となるようにIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガ
ラクトピラノシド)を加えてX−galが2%となるよ
うにさらに加えた溶液と、m.o.i.が0.1になる
ように混合し、軟寒天上に撒いて固化させ、37℃、2
4時間インキュベートした。出現したファージプラーク
のうち、青変していない組み換えファージから、上記1
000bp断片を含んでいるファージTM−16L′を
得た。次に、単鎖DNA 5′−CTCAGTGGATCCAGAGATG−3′ を合成し、TM−16L′から常法によって得た一本鎖
ファージとアニールさせ、Frits Eckstei
nらの方法(Nucleic Acid Resear
ch 8749−8764、1985)によって目的の
変異をおこさせて、得られた組み換えファージTM−1
6Lを、XbaI、NheIで切断し、約980bpの
断片を0.8%アガロースゲル電気泳動によって回収
し、エタノール沈澱で回収した。また、pUM−16を
VspIで消化後、BamHIリンカーを常法に従い結
合させ、約730bpの断片を回収した。この断片をp
UC18をBamHIで切断した部位に組み込んでプラ
スミドpUM−16Rを得た。このプラスミドをXba
I、NheIで切断したベクター部を含む断片と、上記
980bp断片をリガーゼによって結合させ、目的のプ
ラスミドpMUTABを得た。
【0050】(2) TM−16遺伝子を含有するトラン
スファーベクターpAcZM16の構築 (1) で得たpMUTABをBamHIで消化後0.8%
アガロースゲル電気泳動し、ゲルより約1050bpの
断片を回収した。一方バキュロウイルストランスファベ
クターpACYM1〔Matsuuva S.Viro
logy、173 674−682(1989)〕をB
amHIで開裂させ、さきほどの約1050bp断片
と、リガーゼにより連結することにより、目的のトラン
スファーベクターpAcZM16を得た。このベクター
は、ポリヘドリン遺伝子内にポリヘトリンプロモーター
の支配下となる様にTM−16遺伝子が挿入されたもの
を有している。
【0051】(3) 組み換えバキュロウイルスの作出 F.L.グラハムらの論文(Virology 52巻
1973年 456−467頁)に記載されている方法
に準じ、AcNPV−BmaNPVハイブリッドウイル
スのゲノムDNA 1μgを上記(2) で得られたトラン
スファーベクターpAcAZM16 1〜10μgと混
合し、15μg/mlの仔牛胸腺DNAを含む、1−HE
PES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′−
2−エタンスルホン酸)緩衝液(pH7.0)で950μ
lにした。混合物をスターラで攪拌しながら50mlの
2.5M CaCl2 を滴下し、沈澱を室温で30分間
形成させた。1mlの沈澱したDNAをSf細胞培養プレ
ートに添加した。4時間後、細胞を培地で洗浄し、10
%ウシ胎児血清を含む2mlの培地を加えて、3日間イン
キュベートした。その後、組み換え及び非組み換えウイ
ルスが混じっている培地を集め、組み換えウイルスを単
離するため、適当に希釈し、単層培養したSf細胞に感
染させ、プラークを形成させた。核多角体を形成しない
プラークを選び、そのプラークから組み換えバキュロウ
イルスを回収した。この組み換えバキュロウイルスをT
M−16リコンビナントウイルスと命名した。
【0052】
【実施例−7】 3:カイコ虫体内での発現 カイコ蛹(蛹になってから、25℃で2日間経過したも
の)実施例6(3) で得られたTM−16リコンビナント
ウイルス(5×105 PFU)を体節間膜から注射し
た。ウイルス接種後、蛹は25℃に保った。その後、感
染された蛹虫体を摩砕し、その摩砕液に緩衝液を加え、
SDS−PAGEを用いて検出した。なお、SDS−P
AGEは、20mAの電流のもとで12.5%ポリアク
リルアミドゲルを用いて、約2時間電気泳動を行い、得
られたゲルをクーマシーブリリアントで染色して検出を
行った。
【0053】
【実施例−8】 カイコ蛹で産生されたTM−16ポリペプチドの鶏にお
ける免疫効果 カイコ中で発現したTM−16ポリペプチドの有効性を
確認するために実施例5により作製されたTM−16リ
コンビナントウイルス接種後4日目のカイコ幼虫10頭
に13mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)を加え、バーチ
スホモゲナイザーで粉砕し、β−プロピオラクトンを加
えウイルスを不活化した。6,000rpm 30分間遠心
した上清10mlにPBS19ml、レオドールAO−15
(セスキオレイン酸ソルビタン 花王株式会社製)4.
5ml、レオドールTW−020(モノオレイン酸ポリオ
キシエチレン(20)ソルビタン 花王株式会社製)
0.5ml、カーネーション(流動パラフィン Witc
o Corp.社製)65mlおよび10%ホルマリン
1.0mlを加え、オイルアジュバントワクチンを作製し
た。
【0054】このオイルアジュバントワクチンを49日
齢のSPF白色レグホンに1.0mlずつ接種し、接種
後、3週目に鶏から血清を採取し常法に従いELISA
で抗TM−16抗体価を測定した(表3)。また、接種
後6週目にマイコプラズマ・ガリセプティカムKP13
株(Natl.Inst.Anim.Health.
Q、、68−(1964)、106 c.f.uを鶏に
点鼻攻撃した。攻撃後4日目に鶏をと殺し、眼窩下洞を
綿棒を用いてぬぐい取り、PTLO培地で168時間培
養後、さらに同培地に継代して菌分離の有無で、感染防
御効果を判定した(表4)。
【0055】
【表3】 表3.TM−16リコンビナントウイルス感染虫体免疫鶏のTM−16ポリペプ チドに対する抗体価 ─────────────────────────────────── 抗 原 抗TM−16ポリペプチド抗体価* ─────────────────────────────────── TM−1リコンビナント感染虫体 47.2 親ウイルス感染虫体 1 カイコ虫体 1 非免疫 1 ─────────────────────────────────── * 非免疫鶏血清の反応性を1としたときの希釈倍率
【0056】
【表4】 表4.TM−16リコンビナントウイルス感染虫体免疫鶏の攻撃試験結果 ────────────────────────────── 抗 原 感染防御率* ────────────────────────────── TM−1リコンビナント感染虫体 0/6(100%) 親ウイルス感染虫体 4/4( 0%) カイコ虫体 4/4( 0%) 非免疫 3/3( 0%) ────────────────────────────── *分母は攻撃羽数、分子は菌分離羽数、カッコ内は感染防御率
【0057】この結果により、TM−16リコンビナン
ト感染虫体は抗TM−16ポリペプチド抗体を効果的に
誘導するだけでなく、マイコプラズマ・ガリセプティカ
ムの感染も防御し、マイコプラズマ・ガリセプティカム
感染症に有効なワクチンとして使用できる。
【0058】
【実施例−9】 TTM−1ポリペプチド発現リコンビナントウイルスの
作製 (1) TTM−1遺伝子を含有するトランスファーベク
ターpAcZM−1の構築(図11参照) 実施例1−1で作製したプラスミドpUTTMIDを制
限酵素SspIで開裂させた後、フェノール・クロロホ
ルム処理し、エタノール沈澱により、開裂したpUTT
MIDを回収した。この開裂したpUTTMIDをDN
A−ポリメラーゼIでKlenow処理し、接着末端を
平滑末端にして、フェノール・クロロホルム処理、エタ
ノール沈澱によりDNAを回収した。次にBglIIで切
断し、約1200bpのTTM−1 DNAを含む断片
()を、0.8%アガロース電気泳動により回収し
た。一方、バキュロウイルストランスファーベクターp
ACYM1〔Matsuura、S.Virolog
y、173 674−682(1989)〕を制限酵素
BamHIで開裂させた後、フェノールクロロホルム処
理、エタノール沈殿により、開裂したpAcYM1を回
収した。この開裂したpAcYM1をDNA−ポリメラ
ーゼIでKlenow処理し接着末端を平滑末端にして
フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿により
DNAを回収した。平滑末端になった開裂pAcYM1
を制限酵素XhoIで切断し、約2100bpの断片
()を、0.8%アガロース電気泳動により回収し
た。またpAcYM1をXhoI、BamHIで切断し
た後約7100bpの断片も同様にして回収した。
の3断片を混合し、リガーゼによって連結し、目的
のトランスファーベクターpAcZM−1を得た。
【0059】(2) TTM−1遺伝子を含むリコンビナ
ントウイルス 実施例6(3) において、トランスファーベクターとして
pAcZM16のかわりにpAcZM−1を用いる以外
同様の操作によって得られた組み換えバキュロウイルス
をTTM−1リコンビナントと命名した。
【0060】以下に配列番号1から配列番号11の配列
を示す。
【0061】
【配列表1】 配列番号:1 配列の長さ:48 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 AATTCGAGCT CGGATCGTTG AAAAAATAAT ATAGATCCTA AAATGGAA 48
【0062】
【配列表2】 配列番号:2 配列の長さ:48 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GATCTTCCAT TTTAGGATCT ATATTATTTT TTCAACGATC CGAGCTCG 48
【0063】
【配列表3】 配列番号:3 配列の長さ:55 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 AGCTTTTTTT TTTTTTTTTT TTTGGCATAT AAATAATAAA TACAATAATT AATTA 55
【0064】
【配列表4】 配列番号:4 配列の長さ:55 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CGCGTAATTA ATTATTGTAT TTATTATTTA TATGCCAAAA AAAAAAAAAA AAAAA 55
【0065】
【配列表5】 配列番号:5 配列の長さ:40 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 CGCGTAAAAA TTGAAAAACT ATTCTAATTT ATTGCACTCG 40
【0066】
【配列表6】 配列番号:6 配列の長さ:40 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GATCCGAGTG CAATAAATTA GAATAGTTTT TCAATTTTTA 40
【0067】
【配列表7】 配列番号:7 配列の長さ:42 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GATCCCCGGG CGAGCTCGCT AGCGGGCCCG CATGCGGTAC CG 42
【0068】
【配列表8】 配列番号:8 配列の長さ:42 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 TCGACGGATC CGCATGCGGG CCCGCTAGCG AGCTCGCCCG GG 42
【0069】
【配列表9】 配列番号:9 配列の長さ:39 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 TCGACCCGGT ACATTTTTAT AAAAATGTAC CCGGGGATC 39
【0070】
【配列表10】 配列番号:10 配列の長さ:35 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 GATCCCCGGG TACATTTTTA TAAAAATGTA CCGGG 35
【0071】
【配列表11】 配列番号:11 配列の長さ:14 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA 配列 ATTTTTATAA AAAT 14
【図面の簡単な説明】
【図1】TM−16ポリペプチド全長をコードする遺伝
子の制限酵素切断点地図。
【図2】TM−16ポリペプチド全長をコードする遺伝
子を含むDNA配列及びアミノ酸配列の前半部。
【図3】TM−16ポリペプチド全長をコードする遺伝
子を含むDNA配列及びアミノ酸配列の後半部。
【図4】TTM−1ポリペプチド全長をコードする遺伝
子の制限酵素切断点地図。
【図5】TTM−1ポリペプチド全長をコードする遺伝
子を含むDNA配列及びアミノ酸配列の前半部。
【図6】TTM−1ポリペプチド全長をコードする遺伝
子を含むDNA配列及びアミノ酸配列の後半部。
【図7】TTM−IN及びTTM−ICの作製方法。
【図8】pNZ7929−R1の作製方法。
【図9】TM−16ポリペプチドをコードする遺伝子近
傍を含む遺伝子の制限酵素切断点地図。
【図10】pMUTABの作製方法。
【図11】pAcZM1の作製方法。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年6月1日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 新規な抗原タンパク質、その遺伝子、
及び組み換えバキュロウイルスとその利用
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なマイコプラズマ
・ガリセプティカムに対して抗原性を示すポリペプチ
ド、それをコードするDNA、該ポリペプチドを有効成
分とするワクチン、およびマイコプラズマ・ガリセプテ
ィカムに対して抗原性を示すポリペプチドをコードする
DNAを組み込んだ組み換えウイルス、それを用いた組
み換え生ワクチン、それを用いたマイコプラズマ・ガリ
セプティカムに対して抗原性を示すポリペプチドの製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】世界で最も重要な鶏などの家禽の感染症
のひとつであるマイコプラズマ・ガリセプティカム(M
ycoplasma gallisepticum)感
染症は、鶏においては、気嚢炎を伴う慢性の呼吸器障害
を特徴とする疾病である。マイコプラズマ・ガリセプテ
ィカムに感染すると、産卵率並びに孵化率の低下が長期
に渡り引き起こされ、養鶏業界に重大な経済的損失をも
たらす。また、マイコプラズマ・ガリセプティカム感染
症によって鶏の免疫能が低下して常圧菌や弱毒ワクチン
などの日和見感染も引き起こされる。これらの点から予
想できる経済的被害は計り知れない額となる。いくつか
のマイコプラズマ・ガリセプティカム抗原タンパク質が
特開平2−111795号公報で開示されている。しか
し、これらは天然のマイコプラズマ・ガリセプティカム
由来の抗原タンパク質ではなく高い抗原性は期待できな
い。このため、より高い抗原性を有するタンパク質が求
められている。また、前記公報など従来からマイコプラ
ズマ・ガリセプティカム由来の抗原タンパク質を遺伝子
工学的に製造する方法は、大腸菌や酵母を用いた系に限
られていた(特開平2−111759号公報など)。こ
のような系では、抗原発現量が少ない、発現したタンパ
ク質の抗原性が低下・欠損するなどの原因があるほか、
効果の高い生ワクチンとして利用できない、宿主由来の
発熱性物質が取り除けないなどの問題があり、実用に適
していなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、かかる
従来技術の中で、高い抗原性を示すマイコプラズマ由来
の抗原性を示すポリペプチドを得、また、新たなマイコ
プラズマ・ガリセプティカム由来の抗原性を示すポリペ
プチド製造方法を開発すべく鋭意検討を進めた結果、新
規なマイコプラズマ・ガリセプティカム由来の抗原性を
示すポリペプチドを見いだし、さらにマイコプラズマ・
ガリセプティカム由来の抗原性を示すポリペプチドをコ
ードするDNAを組み込んだ組み換えウイルスを見いだ
し、本発明を完成するに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の新規な抗原性を
示すポリペプチドは、マイコプラズマ・ガリセプティカ
ム免疫血清またはマイコプラズマ・ガリセプティカム感
染血清と抗原抗体反応を呈し、マイコプラズマ・ガリセ
プティカムに由来する図1の制限酵素切断点地図を有す
るDNA配列がコードする抗原性を示すポリペプチド、
またはその修飾されたものである。このような抗原性を
示すポリペプチドの具体例として、32キロダルトンの
分子量を有する配列1(配列番号1)に示すごときアミ
ノ酸配列をもつ抗原性を示すポリペプチドが例示され
る。また、ここでいう修飾された抗原性を示すポリペプ
チドとは、上述の抗原性を示すポリペプチドと同等の免
疫原性を示す程度にアミノ酸配列が置換・脱落・欠損・
挿入、付加されたものであるが、好ましくは配列1(配
列番号1)のアミノ酸配列を有する抗原タンパク質と同
等の免疫原性を有し、かつ該タンパク質のアミノ酸配列
との相同性が70%以上、より好ましくは80%以上、
更に好ましくは90%以上のものである。本発明でいう
相同性は、DNAシーケンス入力解析システム「DNA
SIS」(発売元:宝酒造(株))により測定されたも
のを指標とするものである。この抗原タンパク質は、常
法にしたがって製造される。例えば、後述する組み換え
バキュロウイルスを用いて製造することができる。
【0005】本発明のDNAは、前記抗原性を示すポリ
ペプチドをコードするものであり、具体例としては、配
列1(配列番号1)に示される塩基配列即ち、TM−1
6ポリペプチドをコードするDNA、のものが挙げられ
るが、該配列中の塩基が置換・脱落・欠損・挿入、付加
等によって修飾されたものであっても、修飾された遺伝
子がコードする抗原性を示すポリペプチドが本発明のポ
リペプチドと実質的に同等の抗原性を示すかぎり使用で
きる。
【0006】また、マイコプラズマ・ガリセプティカム
の抗原性を示すポリペプチドをコードするDNAとして
は、抗マイコプラズマ・ガリセプティカム血清と抗原抗
体反応を呈する抗原性を示すポリペプチドをコードする
ものであれば特に限定されず、後述する本発明の遺伝子
のほか特開平2−111795号公報に開示された抗原
性を示すポリペプチドをコードするDNAまたはその一
部、あるいはマイコプラズマ・ガリセプティカム由来の
図2に示される制限酵素切断地図を有する40Kdのポ
リペプチドをコードするDNA配列13(配列番号1
3)が挙げられる。配列13(配列番号13)で示され
る塩基配列の第986番目〜第988番目および第10
48番目〜1050番目の塩基は配列中ではNNNであ
る。これらの塩基は天然のマイコプラズマ・ガリセプテ
ィカムの遺伝子ではTGAであり、マイコプラズマ・ガ
リセプティカム内ではトリプトファンとして翻訳されて
いると予想される(J.Bacteriology、1
72(1)、504−506(1990))。しかし、
通常はTGAは終止コドンであり、アミノ酸をコードす
るものではない。従って、目的とするポリペプチドを発
現させるためには、天然のマイコプラズマ・ガリセプテ
ィカム由来のDNAのTGAをアミノ酸として翻訳され
るような塩基に改変する必要がある。改変の手法は常法
に従えばよく、本発明の実施例ではこれらの塩基を共に
TGGに改変し、トリプトファンとして翻訳されるよう
にした。このようなDNAの採取源も、前述と同様マイ
コプラズマ・ガリセプティカムに属するものであれば特
に限定されないが、その具体例としてS6株(ATCC
15302)、PG31(ATCC19610)などが
例示される。また、上記抗原性を示すポリペプチドをコ
ードするDNAの5′上流にβ−ガラクトシダーゼをコ
ードするDNA、β−ラクタマーゼをコードするDNA
などの細菌由来の酵素タンパク質をコードするDNAを
適当なリンカーによって結合させた融合ポリペプチドD
NAを用いれば、組み換えウイルスの構築に際し、組み
換え体の選択などに便利である。
【0007】上記抗原タンパク質を有効成分とするコン
ポネントワクチンは、常法にしたがって調製され、希釈
剤、増量剤、アジュバンドなどと混合してもよい。ワク
チンは、体重1kg当り、抗原タンパク質量1μg以上
の量で投与すればよく、上限は、急性毒性を示さない限
り特に限定されず、例えば抗体が中和抗体価として1.
0〜2.0(log10)が得られる量を投与すればよ
い。急性毒性は、ニワトリに対し、体重1kg当たり抗
原タンパク質量5mgの投与では認められない。本発明
で得られた家禽用マイコプラズマ・ガリセプティカム感
染症ワクチンは、筋肉内、皮下または皮内注射等によ
り、家禽に接種する。また、噴霧によって気道に免疫す
るか、あるいは通常の経口投与することも可能である。
【0008】本発明の組み換えバキュロウイルスは、マ
イコプラズマ・ガリセプティカム由来の抗原性を示すポ
リペプチドをコードするDNAを有するバキュロウイル
スであればよい。
【0009】組み換えバキュロウイルスの作製に供され
るウイルスとしては、昆虫細胞に感染するものであれば
如何なるものでも良く、天然のものであっても、人工的
に作製されたハイブリッドウイルスであっても良い。こ
れらのウイルスの具体例として、オートグラファ・カリ
フォルニカ(Autographa californ
ica)、トリコプルシア・ニ(Trichoplus
ia ni)、ラキブルシア・オウ(Rachiplu
sia ou)、ガレリア・メロネラ(Galleri
a mellonella)、ボンビックス・モリ(B
ombyx mori)などの天然のバキュロウイルス
や、オートグラファ・カリフォルニカとボンビックス・
モリとから作製した、アルファルファワムシにもカイコ
にも感染する能力を有するハイブリッドウイルス(以
下、AcNPV−BmNPVという;日本蚕糸学会第5
9回学術講演会講演要旨集、日本蚕糸学会編、第59
頁、1989年、柴田ら、日本蚕糸学会第60回講演会
講演要旨集、日本蚕糸学会、第78頁、1990年、K
ondo、Maedaら、J.Virology、6
5、3625−3632(1991))のようなハイブ
リッドウイルスが例示される。なかでもAcNPV−B
mNPVは、抗原タンパク質の製造に当たり、多種類の
宿主を用いることができることから、とりわけ好まし
い。
【0010】本発明の組み換えウイルスを構築する方法
は、常法にしたがって行えばよく、例えば次の手順にし
たがって行うことができる。まず、ウイルスの増殖に非
必須なDNA領域(以下、単に非必須領域という)にプ
ロモーターが挿入されたDNA断片を組み込んだ第一の
組み換えベクターを作製する。次に前記プロモーターの
下流に前述の抗原遺伝子を挿入して第二の組み換えベク
ターを作製する。第一および第二の組み換えベクターを
作製するに当たっては、大腸菌の系を用いればよく、使
用するベクターも目的に相応しいものであるかぎり、特
に限定されない。ここで使用されるベクターの具体例と
しては、例えばpBR322、pBR325、pBR3
27、pBR328、pAcYM1(Virolog
y、173、674−682(1982))、pAc3
73(Proc・Natl.Acad.Sci.US
A、82、8404−8408(1985))、pUC
7、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19など
のプラスミド、λ−ファージ、M13ファージなどのご
ときファージ、pHC79などのごときコスミドが例示
され、pAcYM1やpAc373のようなバキュロウ
イルストランスファーベクターとして確立されたプラス
ミドを用いることが好ましい。非必須領域とは、組み込
むウイルスの増殖に非必須であり、かつ相同組み換えな
どにより組み込むウイルスに挿入される領域であれば特
に限定されず、バキュロウイルスの増殖に非必須な領域
としては、ポリヘドリンDNA(サイエンス(Scie
nce)、219、715−721(1983))など
が例示される。
【0011】また、本発明で用いられるプロモーターと
は、合成・天然を問わずDNAを組み込むウイルスが保
有する転写の系でプロモーターとして有効に機能しうる
ものなら如何なる塩基配列のものでもよく、バキュロウ
イルスのポリヘドリンをコードする遺伝子のプロモータ
ー(以下、ポリヘドリンプロモーターという)や10K
ポリペプチドをコードするバキュロウイルスDNAのプ
ロモーターなどが例示される。
【0012】最終的に組み換えウイルスを作製するに
は、第二の組み換えベクターをウイルスと混合した後、
宿主として用いる培養細胞に移入し、あるいは第二の組
み換えベクターを予めウイルスで感染させた宿主として
用いる培養細胞に移入し、ベクターDNAとウイルスゲ
ノムDNAの間に相同組み換えを起こさせ、組み換えウ
イルスを構築する。ここで宿主として用いる培養細胞と
は、使用するウイルスが感染・増殖可能なものであれば
特に限定されず、バキュロウイルスを用いる場合には、
通常、昆虫培養細胞が使用され、このような細胞の具体
例としては、Sf9細胞やBmN細胞などが挙げられ
る。培養条件は、予備実験によって容易に決定できる
が、具体的には、Sf9細胞を用いた場合は10%ウシ
胎児血清を含む培地で、28℃で培養することが望まし
い。このようにして構築された組み換えウイルスは、常
法、例えばプラークアッセイなどによって純化される。
【0013】本発明の組み換え生ワクチンは、上記のよ
うにして得られる組み換えウイルスを有効成分とするも
のである。例えば、本発明の組み換えウイルスが成育す
ることのできる細胞を、本発明の組み換えウイルスに感
染させ、組み換えウイルスが増殖するまで培養する。そ
の後、細胞を回収し破砕する。この細胞破砕物を遠心分
離機によって遠心分離チューブ中で沈澱物と組み換えウ
イルスを含んだ非細胞依存性の高力価遠心上清とに分離
する。実質的に宿主細胞を含まず、細胞培養培地と組み
換えウイルスを含んだこの遠心上清は、本発明のワクチ
ンとして使用できる。また、薬理学的に受け入れられる
生理食塩水等の様な物で再構成して使用する。遠心上清
を凍結乾燥した凍結乾燥ワクチンとしても使用できる。
【0014】本発明の生ワクチンは、ワクチン中の組み
換えウイルスが家禽に感染して防御免疫反応を引き起こ
すような方法であれば、どのような方法で家禽に投与し
てもよい。例えば、皮膚に引っかき傷をつけてワクチン
を接種したり、注射針やその他の器具等によって、家禽
の皮下にワクチン接種することができる。また、ワクチ
ンを家禽の飲み水に懸濁したり、飼料等の固形物に混入
して、経口接種させることも可能である。さらに、エア
ロゾルやスプレーによるワクチンを吸入させる方法、静
脈内接種法、筋肉中接種法、腹腔内接種法、翼膜接種
法、発育卵接種法等を用いることもできる。
【0015】接種量は、例えば鶏の場合、1羽あたり、
通常、10〜10PFU(プラーク形成単位)であ
る。注射する場合には、この量を生理食塩水などの生理
学的に受け入れられる液体で希釈したりして0.01〜
1ml程度にすればよい。
【0016】本発明の抗原性を示すポリペプチドの製造
方法は、上述の方法によって作製され、純化された組み
換えバキュロウイルスを宿主である昆虫または昆虫の樹
立細胞に感染させ、感染虫を飼育または感染細胞を培養
して抗原性を示すポリペプチドを発現させることによっ
て実現される。宿主として用いられる昆虫または昆虫の
樹立細胞とは、通常、バキュロウイルスベクターの系で
宿主として使用されるものであれば特に制限されるもの
ではないが、例えば、昆虫としてヨウトウガ、カイコ
ガ、アワヨウトウガ、セロクピア蚕、アルファルファワ
ムシ(Autographa californic
a)、Spodoptera exigua、Tric
oplusia ni等の幼虫、さなぎ、成虫等の虫体
が、また、昆虫の樹立細胞としてSf細胞(例えばIP
LB−Sf−21AE細胞、Sf9細胞等)、TN細胞
およびBm細胞(例えば、BmN細胞、SES−BoM
o−15A細胞、ESE−BoMo−15AII細胞、
EISES−BoMo−15AIIe細胞、NISES
−BoMo−CamI細胞等)が挙げられる。例えば、
バキュロウイルスとしてAcNPV−BmNPVを用い
た場合、Sf細胞やBm細胞、およびカイコやヨトウガ
の虫体内(幼虫、成虫あるいはさなぎ)等の昆虫または
昆虫の樹立細胞で増殖可能である。感染後の宿主の飼育
または培養方法は、特に制限はなく、通常の方法が用い
られる。即ち、昆虫を用いる場合であれば、虫体に本発
明の組み換えバキュロウイルスを適当な溶媒に懸濁さ
せ、それを注射して20〜30℃で飼育する方法、昆虫
の樹立細胞を用いる場合であれば、前記細胞へ適当な培
地に懸濁した本発明の組み換えバキュロウイルスを感染
させ、20〜30℃で培養する方法等が例示される。飼
育または培養後、当業者によく知られているクロマトグ
ラフィー、塩析による沈澱、密度勾配遠心等から任意に
選択した方法により、目的とする抗原タンパク質が精製
される。こうして得られた抗原性を示すポリペプチド
は、コンポネントワクチンとして用いることができる。
勿論、精製せずに虫体や培養細胞に含まれた状態のポリ
ペプチドであっても本発明のコンポネントワクチンとし
て使用してもよい。
【0017】
【発明の効果】本発明の組み換えバキュロウイルスを用
いれば従来の技術に比較して効率よくマイコプラズマ・
ガリセプティカムに抗原性を示すポリペプチドを製造す
ることができる。また、本発明の新規な抗原性を示すポ
リペプチドは、家禽マイコプラズマ・ガリセプティカム
感染症に対するワクチンとして有用であると共に、マイ
コプラズマ・ガリセプティカム感染症診断薬としても有
用である。
【0018】以下本発明を実施例および参考例により説
明するが、本発明は勿論これらにより限定されるもので
はない。
【0019】〔参考例−1〕 マイコプラズマ・ガリセプティカムが発現しているポリ
ペプチドDNATTM−1の取得 (1) マイコプラズマ・ガリセプティカム・ゲノムD
NAの調製 マイコプラズマ・ガリセプティカムS6株を100ml
のPPLOブロス基礎培地に20%馬血清、5%酵母エ
キス、1%グルコース、およびpH指示薬としてフェノ
ールレッドを微量加えて調製した液体培地で、37℃3
〜5日培養した。マイコプラズマ・ガリセプティカムの
増殖に従って培養液のpHが下がり、培養液に含まれて
いるpH指示薬の呈色が赤から黄に変化した時点で、培
養を終了し、培養液を8000G、20分間遠心し、集
菌した。さらに菌体を培養液の1/10容量のPBSに
懸濁し、再び10,000rpm×G、20分間遠心
し、集菌した。収集菌体を再び2.7mlのPBSに懸
濁し、1%になる様にSDSを、さらに10μgのRN
aseを加え、37℃30分間インキュベートし溶菌し
た。溶菌液を等容量のフェノールで3回抽出しさらに、
エチルエーテルで3回抽出を行なった後エタノール沈澱
し、マイコプラズマ・ガリセプティカム・ゲノムDNA
200μgを得た。
【0020】(2) TM−1DNAをプローブにした
マイコプラズマ・ガリセプティカムのゲノミックサザン
ハイブリダイゼーション 上記(1)で取得したマイコプラズマ・ガリセプティカ
ムDNA1μgをXbaIで消化し、0.6%低融点ア
ガロースゲル電気泳動に供した。泳動後ゲルをアルカリ
変性液(0.5M NaOH、1.5M NaCl)に
10分間浸しDNAを変性させ、中和液(3M酢酸ナト
リウムpH5.5)に10分間浸して中和の後6倍SS
C液(0.7M NaCl、0.07Mクエン酸ナトリ
ウム、pH7.5)中でナイロンメンブレンに転写し
た。風乾の後80℃で2時間焼き付け、4倍SET
(0.6M NaCl、0.08M Tris−HC
l、4mMEDTA、pH7.8)−10倍Denha
rdt−0.1% SDS−0.1%Na
50μg/ml変性サケ精子DNAとpUM−1(特開
平2−111795号参照)を常法に従い標識したもの
を加えて、68℃14時間ハイブリダイゼーションをし
た。ナイロンメンブレンとX線フィルムを重ね、オート
ラジオグラフィーで確認したところ、約3.4kpbの
断片にハイブリダイズしていることを確認した。
【0021】(3) XbaI消化約3.4kbp断片
のpUC−19へのクローニング及びコロニーハイブリ
ダイゼーション (1)で取得したマイコプラズマ・ガリセプティカムD
NA4μgを制限酵素XbaIで消化後、0.6%低融
点アガロースゲル電気泳動後、約3.4kbpの断片を
回収した。この断片を、XbaI消化によって開裂した
pUC−19とリガーゼによって連結し、コンピテント
な大腸菌TG1株を形質転換し、5−ブロモ−4−クロ
ロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド0.
003%、イソプロピルチオ−β−D−ガラクトピラノ
シド0.03mM、40μg/mlアンピシリンを含む
LB寒天培地で37℃、15時間培養した。この培地上
に生育した白コロニーをナイロンメンブレンに転写し、
上記(2)と同様の方法でハイブリダイゼーションを行
ない、オートラジオグラフィーで確認したところ、クロ
ーニングされていることが判明し、このプラスミドをp
UTTM−1と名付けた。
【0022】〔参考例−2〕 (1) TTM−1がコードするポリペプチドTTMG
1を、TGAが翻訳終結コドンとして読まれないように
改変(TGA→TGG)したTTM−1′の作製(図3
参照) 上記1−(3)のpUTTM−1を制限酵素SacIと
EcoRIで消化後0.8%低融点アガロースゲル電気
泳動に供し、TTM−1の5′端を含む1.1kbpの
DNA断片をフェノール−クロロホルム処理後エタノー
ル沈澱により回収し、この断片とM13mp11ファー
ジをSacIとEcoRIで開裂させた断片とをリガー
ゼにより連結した。この反応溶液と、37℃で24時間
培養した大腸菌TG1に最終的に100mMとなるよう
にIPTGを加えてX−galが2%となるようにさら
に加えた溶液とm.o.i.が0.1になるよう混合し
軟寒天上に撒いて固化させ、37℃、24時間インキュ
ベートする。出現したファージプラークのうち青変して
いないファージからTTM−1の1.1kbpDNAを
含む組み換えファージTTM−1Nを得た。同様に、p
UTTM−1をEcoRIとEcoRVで消化後、0.
8%低融点アガロースゲル電気泳動に供し、TTM−1
の3′末端側を含む0.4kbpの断片をゲルより回収
し、フェノール・クロロホルム処理後エタノール沈澱に
より回収し、この断片をM13mp10ファージをEc
oRIとEcoRVで開裂させた断片とリガーゼにより
連結した。この反応溶液から1.1kbpDNAのクロ
ーニングと同様の方法で、TTM−1の0.4kbpD
NAを含む組み換えファージTTM−1Cを得た。 (2)各組み換えファージから一本鎖DNAの調製 上記(1)で得られた二種類の組み換えファージについ
て、100mlの2×YT培地で37℃で増殖している
大腸菌TG1にm.o.i.=0.1になるようにそれ
ぞれ加え、37℃で5時間振盪培養後5000Gで30
分遠心分離し、大腸菌菌体成分を除いた上清を取得す
る。この上清に0.2倍量のポリエチレングリコール/
塩化ナトリウム混合溶液(20%ポリエチレングリコー
ル#6000、2.5M NaCl)を加え4℃で1時
間静置後5000Gで20分遠心分離し、沈澱を回収す
る。この沈澱を500μlのTE緩衝液(10mMTr
is−HCl、1mM EDTA、pH8.0)に溶か
し、フェノール・クロロホルム抽出後、エタノール沈澱
で各組み換えファージの単鎖DNAを回収した。
【0023】(3) 人工合成オリゴヌクレオチドをプ
ライマーとする位置特異的変異体の作製 このようにして得られたDNAには、配列の途中にTG
Aがある。このTGAは、通常の細胞内では、終止コド
ンとして認識されてしまい、これより後ろに付加してい
る配列を翻訳しなくなる。そこで、TGA部分をメチオ
ニンとして翻訳するようにコドンNNNの第3番目の塩
基に当たる塩基アデニンをグアニンに改変するために、
次の2つのオリゴヌクレオチドを合成した。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】化1のオリゴヌクレオチドはTTM−1N
の単鎖DNAと、化2のオリゴヌクレオチドはTTM−
1Cの単鎖DNAとアニールさせ、Frits Eck
steinらの方法(Nucleic Acid Re
search 8749−8764、1985)によっ
て、目的の変異をおこさせて、得られた組み換えファー
ジを各々TTM−1N′、TTM−1C′と命名した。
得られたTTM−1N′、TTM−1C′ファージDN
Aをそれぞれ制限酵素SacI−EcoRI、EcoR
I−BglIIで切断し、0.8%低融点アガロース電
気泳動によって1.1kbp、0.4kbpの断片をア
ガロースゲルより抽出し、エタノール沈澱で回収した。
一方プラスミドpUTTM−1もSacI−BglII
で切断し、4.8kbpのベクターを含む断片を0.8
%低融点アガロースゲル電気泳動から回収し、エタノー
ル沈澱で回収した。こうして得られた3つの断片をリガ
ーゼにより連結し、この連結した3つの断片を用いてコ
ンピテントな大腸菌TG1株を形質転換し、目的の位置
に変異がおきたTTM−1′を持つプラスミドpUTT
M−1′を得た。TTM−1′の塩基配列は、Sang
arらのDideoxy法(Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA、74、5463(1977))
によれば配列13(配列番号13)に示す通りであっ
た。これは、天然のM.gallisepticumの
40キロダルトンのTTM−1ポリペプチドと実質的に
同一のものである。
【0027】〔参考例3〕 挿入用ベクターpNZ17
29Rの構築 NP株のEcoRI断片(約7.3kbp)をpUC1
8のEcoRI切断部位(マルチクローニング部位の末
端)に組み込んでプラスミドpNZ133(約10.0
kbp)を得た。このプラスミドから、HpaI−Sp
eI断片(約3.0kbpのNP株由来断片)を切り出
し、該断片をクレノー(Klenow)断片により平滑
末端とした。またpUC18からRcoRI−Hind
III断片(52bpのマルチクローニング部位)を除
き、残りの断片をクレノー断片で平滑末端とした。かく
して得られたこの2つの断片をつないで、プラスミドと
し、HpaI−SpeI断片中のEcoRV部位を除い
て、そこにpUC18のEcoRI−HindIII断
片(52bpのマルチクローニング部位)をHindI
IIリンカー(5′−CAAGCTTG−3′)とEc
oRIリンカー(5′−GGAATTCC−3′)を用
いて組み込み、プラスミドpNZ133SRを構築し
た。
【0028】配列2(配列番号2)と配列3(配列番号
3)(17ベースのFPVプロモーターを含み、1ac
Zのための翻訳開始コドンが連なっている)をアニーリ
ングして2本鎖にし、1acZ遺伝子(pMC1871
及びpMA001由来、Sirakawa et.a
l.,Gene,28,127−132,1984)と
アニーリングした配列4(配列番号4)と配列5(配列
番号5)、配列6(配列番号6)、配列7(配列番号
7)と配列8(配列番号8)、配列9(配列番号9)と
配列10(配列番号10)と配列11(配列番号11)
とを結合させ(配列4の5′側末端のAGCの次のTか
ら配列6の3′側末端のGの前のCまでに塩基配列TT
TTTTTTTTTTTTTTTTTTGGCATAT
AAATAATAAATACAATAATTAATTA
CGCGTAAAAATTGAAAAACTATTCT
AATTTATTGCACTCで示されるポックスウイ
ルスの合成プロモーターの改変物を含み、さらにマルチ
クローニング部位及び両方向のポックスウイルス初期転
写終結信号(配列番号12)(Yuen et.a
l.,PNAS,88,6417−6421,1989
年)が連なっている)、EcoRI−HindIII断
片(約3.5kbp、図1の中央に示す)を得た。その
EcoRI−HindIII断片を、pNZ133SR
に挿入し、プラスミドpNZ1729Rを完成させた。
【0029】
【実施例−1】 マイコプラズマ・ガリセプティカムが発現しているポリ
ペプチドDNA TM−16の取得
【0030】(1) M−16DNAをプロープにした
マイコプラズマ・ガリセプティカムのゲノミックサザン
ハイブリダイゼーション 上記参考例1−(1)で取得したマイコプラズマ・ガリ
セプティカムDNA1μgをXbaIで消化し、0.6
%低融点アガロースゲル電気泳動に供した。泳動後ゲル
をアルカリ変性液(0.5M NaOH、1.5M N
aCl)に10分間浸しDNAを変性させ、中和液(3
M酢酸ナトリウムpH5.5)に10分間浸して中和の
後6倍SSC液(0.7M NaCl、0.07Mクエ
ン酸ナトリウム、pH7.5)中でナイロンメンブレン
に転写した。風乾の後80℃で2時間焼き付け、4倍S
ET(0.6M NaCl、0.08M Tris−H
Cl、4mMEDTA、pH7.8)−10倍Denh
ardt−0.1% SDS−0.1%Na
−50μg/ml変性サケ精子DNAとpUM−16
(このプラスミド内にM−16DNAが含まれている;
特開平2−111795号参照)を常法に従い標識した
ものを加えて、68℃14時間ハイブリダイゼーション
をした。ナイロンメンブレンとX線フィルムを重ね、オ
ートラジオグラフィーで確認したところ、約5.5kb
pの断片にハイブリダイズしていることを確認した。
【0031】(2) XbaI消化約5.5kbp断片
のpUC−19へのクローニング及びコロニーハイブリ
ダイゼーション 上記参考例1−(1)で取得したマイコプラズマ・ガリ
セプティカムDNA4μgを制限酵素XbaIで消化
後、0.6%低融点アガロースゲル電気泳動後、約5.
5kbpの断片を回収した。この断片を、XbaI消化
によって開裂したpUC−19とリガーゼによって連結
し、コンピテントな大腸菌TG1株を形質転換し、5−
ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラク
トピラノシド0.003%、イソプロピルチオ−β−D
−ガラクトピラノシド0.03mM、40μg/mlア
ンピシリンを含むLB寒天培地で37℃、15時間培養
した。この培地上に生育した白コロニーをナイロンメン
ブレンに転写し、上記(2)と同様の方法でハイブリダ
イゼーションを行ない、オートラジオグラフィーで確認
したところ、クローニングされていることが判明し、こ
のプラスミドをpUM−16と名付けた。
【0032】(3) pUM−16インサートDNAの
配列分析 上記(2)で作製したpUM−16内に挿入された約
5.5kbpの断片の配列をSangerらのDide
oxy法(Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA.、74、5463(1977))によって解析し
た。この断片の制限酵素切断点地図を図2に示す。ま
た、この断片中に存在するオープンリーディングフレー
ム(以下ORFという)の制限酵素切断点地図を図4に
示し、このORFの塩基配列及びそれから推定されるア
ミノ酸配列を配列1(配列番号1)に示す。このORF
から推定されるポリペプチドをTM−16ポリペプチド
と命名した。
【0033】
【実施例−2】 TM−16ポリペプチド発現リコンビナントウイルスの
作製 (1) TM−16の開始コドン(ATG)直前及び終
止コドン(TAA)直後への制限酵素サイト挿入したプ
ラスミドpMUTABの構築(図5参照) pUM−16を、EcoRIとPstIで消化後、0.
8%低融点アガロースゲル電気泳動に供し、TM−16
の5′末端側を含む約1000bpの断片をゲルより回
収し、これをフェノール、クロロホルム処理した後、エ
タノール沈澱により再回収した。次いで、この断片と、
予めM13mp10ファージをEcoRIとPstIで
開裂させて得た断片とをリガーゼにより連結した。この
反応液を、37℃で24時間培養した大腸菌TG1に最
終的に100mMとなるようにIPTG(イソプロピル
チオ−β−D−ガラクトピラノシド)を加えてX−ga
lが2%となるようにさらに加えた溶液と、m.o.
i.が0.1になるように混合し、軟寒天上に撒いて固
化させ、37℃、24時間インキュベートした。出現し
たファージプラークのうち、青変していない組み換えフ
ァージから、上記1000bp断片を含んでいるファー
ジTM−16L′を得た。次に、単鎖DNA 5′−CTCAGTGGATCCAGAGATG−3′ を合成し、TM−16L′から常法によって得た一本鎖
ファージとアニールさせ、Frits Eckstei
nらの方法(Nucleic Acid Resear
ch 8749−8764、1985)によって目的の
変異をおこさせて、得られた組み換えファージTM−1
6Lを、XbaI、NheIで切断し、約980bpの
断片を0.8%アガロースゲル電気泳動によって回収
し、エタノール沈澱で回収した。また、pUM−16を
VspIで消化後、BamHIリンカーを常法に従い結
合させ、約730bpの断片を回収した。この断片をp
UC18をBamHIで切断した部位に組み込んでプラ
スミドpUM−16Rを得た。このプラスミドとXba
I、NheIで切断したベクター部を含む断片と、上記
980bp断片の三断片をリガーゼによって結合させ、
目的のプラスミドpMUTABを得た。
【0034】(2) TM−16DNAを含有するトラ
ンスファーベクターpAcZM16の構築 (1)で得たpMUTABをBamHIで消化後0.8
%アガロースゲル電気泳動し、ゲルより約1050bp
の断片を回収した。一方バキュロウイルストランスファ
ーベクターpACYM1〔Matsuuva S.Vi
rology、173 674−682(1989)〕
をBamHIで開裂させ、得られた断片をさきほどの約
1050bp断片と、リガーゼにより連結することによ
り、目的のトランスファーベクターpAcZM16を得
た。このベクターには、ポリヘドリンDNA内にポリヘ
ドリンプロモーターの支配下となる様にTM−16DN
Aが挿入されているものである。
【0035】(3) 組み換えバキュロウイルスの作出 F.L.グラハムらの論文(Virology 52巻
1973年 456−467頁)に記載されている方法
に準じ、AcNPV−BmNPVハイブリッドウイルス
のゲノムDNA 1μgを上記(2)で得られたトラン
スファーベクターpAcAZM16 1〜10μgと混
合し、15μg/mlの仔牛胸腺DNAを含む、1−H
EPES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′
−2−エタンスルホン酸)緩衝液(pH7.0)で95
0μlにした。混合物をスターラで攪拌しながら50m
lの2.5M CaClを滴下し、沈澱を室温で30
分間形成させた。1mlの沈澱したDNAをSf細胞培
養プレートに添加した。4時間後、細胞を培地で洗浄
し、10%ウシ胎児血清を含む2mlの培地を加えて、
3日間インキュベートした。その後、組み換え及び非組
み換えウイルスが混じっている培地を集め、組み換えウ
イルスを単離するため、適当に希釈し、単層培養したS
f細胞に感染させ、プラークを形成させた。核多角体を
形成しないプラークを選び、そのプラークから組み換え
バキュロウイルスを回収した。この組み換えバキュロウ
イルスをTM−16リコンビナントウイルスと命名し
た。
【0036】
【実施例−3】 3:カイコ虫体内での発現 カイコ蛹(蛹になってから、25℃で2日間経過したも
の)実施例2(3)で得られたTM−16リコンビナン
トウイルス(5×10PFU)を体節間膜から注射し
た。ウイルス接種後、蛹は25℃に保った。その後、感
染された蛹虫体を摩砕し、その摩砕液に緩衝液を加え、
SDS−PAGEを用いて検出した。なお、SDS−P
AGEは、20mAの電流のもとで12.5%ポリアク
リルアミドゲルを用いて、約2時間電気泳動を行い、得
られたゲルをクーマシーブリリアントブルーで染色して
検出を行った。
【0037】
【実施例−4】 カイコ蛹で産生されたTM−16ポリペプチドの鶏にお
ける免疫効果 カイコ中で発現したTM−16ポリペプチドの有効性を
確認するために実施例1により作製されたTM−16リ
コンビナントウイルス接種後4日目のカイコ幼虫10頭
に13mlのリン酸緩衝食塩水(PBS)を加え、バー
チスホモゲナイザーで粉砕し、β−プロピオラクトンを
加えウイルスを不活化した。6,000rpm30分間
遠心した上清10mlにPBS19ml、レオドールA
O−15(セスキオレイン酸ソルビタン 花王株式会社
製)4.5ml、レオドールTW−020(モノオレイ
ン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 花王株式
会社製)0.5ml、カーネーション(流動パラフィン
Witco Corp.社製)65mlおよび10%
ホルマリン1.0mlを加え、オイルアジュバントワク
チンを作製した。
【0038】このオイルアジュバントワクチンを49日
齢のSPF白色レグホンに1.0mlずつ接種し、接種
後、3週目に鶏から血清を採取し常法に従いELISA
で抗TM−16抗体価を測定した(表1)。また、接種
後6週目にマイコプラズマ・ガリセプティカムKP13
株(Natl.Inst.Anim.Health.
Q、、68−(1964))、10c.f.uを鶏
に点鼻攻撃した。攻撃後4日目に鶏をと殺し、眼窩下洞
を綿棒を用いてぬぐい取り、PTLO培地で168時間
培養後、さらに同培地に継代して菌分離の有無で、感染
防御効果を判定した(表2)。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】この結果により、TM−16リコンビナン
ト感染虫体は抗TM−16ポリペプチド抗体を効果的に
誘導するだけでなく、マイコプラズマ・ガリセプティカ
ムの感染も防御し、マイコプラズマ・ガリセプティカム
感染症に有効なワクチンとして使用できる。
【0042】
【実施例−4】 TTM−1ポリペプチド発現リコンビナントウイルスの
作製 (1) 1−1 合成プロモーターとTTM−1DNA
を結合したプラスミドpUTTM1Dの構築 参考例2で得たTTM−1 DNA全長を含むプラスミ
ドpUTTM1′(WO 93/24646公報参照)
のうちTTM−1ポリペプチドの開始コドンにあたるA
TGの上流に制限酵素DraI切断部位をつくるため
に、まず次のオリゴヌクレオチドを合成した。 3′−TATAGAATTAAATTTTACTTAT
TC−5′ つぎに、pUTTM−1′を制限酵素SacIとEco
RIで消化後約2300bpの断片を回収し、これをM
13mp10のSacIとEcoRIで開裂させた断片
と連結し単鎖組み換えファージTTM−1′を得た。上
記オリゴヌクレオチドと単鎖TTM−1′とをアニール
させ、Frits Ecksteinらの方法(Nuc
leic Acid Research 8749−8
764,1985)によって目的の変異をおこさせた。
この変異組み換えファージDNAを制限酵素SacIと
EcoRIで消化後約2300bpの断片を回収し、再
びpUTTM−1′をSacIとEcoRIで消化した
ベクターを含んだ断片にクローニングし、pUTTM1
Dを得た。 (2) TTM−1DNAを含有するトランスファーベ
クターpAcZM−1の構築(図6参照) (1)で作製したプラスミドpUTTMIDを制限酵素
SspIで開裂させた後、フェノール・クロロホルム処
理し、エタノール沈澱により、開裂したpUTTMID
を回収した。この開裂したpUTTMIDをDNA−ポ
リメラーゼIでKlenow処理し、接着末端を平滑末
端にして、フェノール・クロロホルム処理、エタノール
沈澱によりDNAを回収した。次にBglIIで切断
し、約1200bpのTTM−1 DNAを含む断片
()を、0.8%アガロース電気泳動により回収し
た。一方、バキュロウイルストランスファーベクターp
ACYM1〔Matsuura、S.Virolog
y、173 674−682(1989)〕を制限酵素
BamHIで開裂させた後、フェノールクロロホルム処
理、エタノール沈殿により、開裂したpAcYM1を回
収した。この開裂したpAcYM1をDNA−ポリメラ
ーゼIでKlenow処理し接着末端を平滑末端にして
フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈殿により
DNAを回収した。平滑末端になった開裂pAcYM1
を制限酵素XhoIで切断し、約2100bpの断片
()を、0.8%アガロース電気泳動により回収し
た。またpAcYM1をXhoI、BamHIで切断し
た後約7100bpの断片も同様にして回収した。
の3断片を混合し、リガーゼによって連結し、目的
のトランスファーベクターpAcZM−1を得た。
【0043】(3) TTM−1DNAを含むリコンビ
ナントウイルス 実施例2(3)において、トランスファーベクターとし
てpAcZM16のかわりにpAcZM−1を用いる以
外同様の操作によって得られた組み換えバキュロウイル
スをTTM−1リコンビナントと命名した。以下に配列
番号1から配列番号13の配列を示す。尚、配列番号2
から配列番号12まではいずれも相補配列なので3′−
末端から表記している。
【配列1】
【0044】
【配列2】
【0045】
【配列3】
【0046】
【配列4】
【0047】
【配列5】
【0048】
【配列6】
【0049】
【配列7】
【0050】
【配列8】
【0051】
【配列9】
【0052】
【配列10】
【0053】
【配列11】
【0054】
【配列12】
【0055】
【配列13】
【図面の簡単な説明】
【図1】TM−16ポリペプチド全長をコードするDN
Aの制限酵素切断点地図。
【図2】TTM−1ポリペプチド全長をコードするDN
Aの制限酵素切断点地図。
【図3】TTM−IN及びTTM−ICの作製方法。
【図4】TM−16ポリペプチドをコードするDNA近
傍のオープンリディングフレーム制限酵素切断点地図。
【図5】pMUTABの作製方法。
【図6】pAcZM1の作製方法。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年6月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12P 21/02 C 9282−4B //(C12P 21/02 C12R 1:92) (72)発明者 船戸 洋乃 埼玉県草加市吉町3−3−7 (72)発明者 入谷 好一 京都府京都市伏見区深草大亀谷万帖敷町 151番地 (72)発明者 青山 茂美 滋賀県甲賀郡水口町貴生川370−13 (72)発明者 高橋 清人 滋賀県栗太郡栗東町小平井71−21

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マイコプラズマ・ガリセプティカム免疫
    血清またはマイコプラズマ・ガリセプティカム感染血清
    に反応しうる実質的に純粋な抗原タンパク質であって、
    図1に示される制限酵素切断点地図を有するマイコプラ
    ズマ・ガリセプティカム由来の遺伝子がコードする分子
    量約32キロダルトンの抗原タンパク質、またはそれと
    同等の免疫性を示す限りにおいて修飾されていてもよい
    抗原タンパク質。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の抗原タンパク質をコード
    する遺伝子。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の抗原タンパク質を有効成
    分とするコンポネントワクチン。
  4. 【請求項4】 マイコプラズマ・ガリセプティカムの抗
    原タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ組み換え
    ウイルス。
  5. 【請求項5】 用いるウイルスがアビポックスウイルス
    およびバキュロウイルスから選ばれるウイルスである請
    求項4記載の組み換えウイルス。
  6. 【請求項6】 組み込む遺伝子が、分子量約40キロダ
    ルトンのマイコプラズマ・ガリセプティカムの抗原タン
    パク質をコードする遺伝子であって図4に示す制限酵素
    切断点地図を有する遺伝子および請求項2記載の遺伝子
    から選ばれる遺伝子である請求項4または5記載の組み
    換えウイルス。
  7. 【請求項7】 用いるウイルスがアビポックスウイルス
    である請求項4または6記載の組み換えウイルスを有効
    成分とした抗家禽マイコプラズマ・ガリセプティカム感
    染症用組み換え生ワクチン。
  8. 【請求項8】 用いるウイルスがバキュロウイルスであ
    る請求項4または6記載の組み換えウイルスを用いるこ
    とを特徴とするマイコプラズマ・ガリセプティカムの抗
    原タンパク質の製造方法。
JP21310293A 1993-08-27 1993-08-27 新規な抗原タンパク質、その遺伝子、及び組み換えバキュロウイルスとその利用 Pending JPH07133295A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO1997024370A1 (fr) * 1995-12-28 1997-07-10 Nippon Zeon Co., Ltd. Nouvelles proteines antigeniques de mycoplasmes, genes associes, vecteur recombinant et leur utilisation
EP1531861A2 (en) * 2002-07-13 2005-05-25 The University Of Georgia Research Foundation, Inc. Mycoplasma gallisepticum formulation
JP2018529337A (ja) * 2015-09-17 2018-10-11 オルタナティブ ジーン エクスプレッション, エセ.エレ. トリコプルシア・ニの蛹における組み換えタンパク質の発現

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