JPH07126889A - 摺動部構成体 - Google Patents

摺動部構成体

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JPH07126889A
JPH07126889A JP29893593A JP29893593A JPH07126889A JP H07126889 A JPH07126889 A JP H07126889A JP 29893593 A JP29893593 A JP 29893593A JP 29893593 A JP29893593 A JP 29893593A JP H07126889 A JPH07126889 A JP H07126889A
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flank
sliding surface
sliding
crystal
crystals
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謙治 広瀬
Yoshikazu Fujisawa
義和 藤澤
Yasushi Kawahito
康 川人
Katsumune Tabata
勝宗 田畑
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐焼付き性の優れた摺動部構成体を提供す
る。 【構成】 摺動部構成体5は、ピストンリング1におけ
るリング本体3の外周面4に形成され、摺動面形成域8
と、摺動面形成域8に、それより後退するように連なる
逃げ面形成域9とを備える。摺動面形成域8および逃げ
面形成域9はFe結晶の集合体より構成される。集合体
は、摺動面形成域8ではその摺動面a側に、また逃げ面
形成域9ではその逃げ面b側にそれぞれ{222}面を
向け、且つ存在率SがS≧40%である{222}配向
性Fe結晶10を含む。摺動面aは平坦に形成され、ま
た逃げ面bに存する多数の{222}配向性Fe結晶1
0は角錐状をなす。摺動面aはオイルに対する濡れ性が
良く、また逃げ面bはオイル溜め機能と摺動面aへの給
油機能とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、相手部材との摺動部を
構成する摺動部構成体、特に、摺動面形成域と、前記摺
動面形成域に、その摺動面形成域より後退するように連
なる逃げ面形成域とを備えた摺動部構成体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種摺動部構成体としては、例
えば、内燃機関用ピストンリング外周面に形成されるク
ロムメッキ層が知られている。このクロムメッキ層の主
たる目的はピストンリングの耐摩耗性向上にある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、クロム
メッキ層は、その表面が平滑であり、またオイルに対す
る濡れ性が悪いため、オイル保持性、つまり保油性が十
分でなく、その上初期なじみ性も悪い、ということもあ
って、内燃機関が高速、且つ高出力化の傾向にある現在
の状況下では耐焼付き性が乏しい。また前記濡れ性の悪
さに起因して、クロムメッキ層およびシリンダ内壁面間
にシール性の高い油膜を十分に形成することができない
ので、前記状況下ではブローバイガス量が多い、という
問題もある。
【0004】本発明は前記に鑑み、摺動面形成域のオイ
ルに対する濡れ性および相手部材に対するなじみ性を向
上させると共に逃げ面形成域にオイル溜め機能および摺
動面形成域への給油機能をそれぞれ具備させることによ
り、耐焼付き性を大幅に向上させることができ、その上
相手部材との間にシール性の高い油膜を十分に形成する
ことのできる前記摺動部構成体を提供することを目的と
する。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、摺動面形成域
と、前記摺動面形成域に、その摺動面形成域より後退す
るように連なる逃げ面形成域とを備えた摺動部構成体に
おいて、前記摺動面形成域および逃げ面形成域は金属結
晶の集合体より構成され、その集合体は、前記摺動面形
成域ではその摺動面側に、また前記逃げ面形成域ではそ
の逃げ面側にそれぞれ結晶面を向け、且つ存在率SがS
≧40%である配向性金属結晶を含み、前記摺動面は平
坦に形成され、また前記逃げ面に存する多数の前記配向
性金属結晶は角錐状または角錐台状の少なくとも一方の
形態を有することを特徴とする。
【0006】
【作用】摺動面形成域に、配向性金属結晶を前記存在率
Sで存在させ、また摺動面を平坦に形成すると、オイル
に対する摺動面の濡れ性および相手部材に対する摺動面
のなじみ性が良好となる。
【0007】また逃げ面に存する多数の配向性金属結晶
が角錐状等の形態を備えていると、相隣る両配向性金属
結晶間の谷部がオイル溜りとなり、そのオイルは摺動面
に逐次供給される。
【0008】このように摺動面のなじみ性を向上させる
と共に逃げ面側から摺動面にオイルを供給し得るので、
その摺動面のオイルに対する濡れ性が良好であることか
ら摺動面が十分な保油性を持ち、これにより摺動面の耐
焼付き性を向上させることができる。
【0009】また前記保油性の向上に伴い相手部材と摺
動面との間にシール性の高い油膜を十分に形成すること
が可能である。
【0010】なお、配向性金属結晶の存在率SがS<4
0%では、オイルに対する摺動面の濡れ性および相手部
材に対する摺動面のなじみ性が低下し、また逃げ面形成
域において、配向性金属結晶に角錐状等の形態を持たせ
ることが困難となる。
【0011】
【実施例】図1,2において、内燃機関用ピストンリン
グ1は、合い口2を有するリング本体3と、そのリング
本体3の外周面4を覆う層状摺動部構成体5とよりな
る。リング本体3は鋳鉄より構成され、その外周面4は
リング幅方向中央域を占める環状平坦面6と、その平坦
面6の両側に、それより後退するように連なる一対の環
状円弧面7とを備えている。
【0012】摺動部構成体5はリング本体3の外周面4
にメッキ処理を施すことによって形成される。その摺動
部構成体5は、平坦面6を覆う摺動面形成域8と、その
摺動面形成域8に、それ8より後退するように連なって
両円弧面7を覆う一対の逃げ面形成域9とを備えてい
る。
【0013】摺動面形成域8および各逃げ面形成域9は
金属結晶の集合体より構成される。その集合体は、摺動
面形成域8ではその摺動面a側に、また逃げ面形成域9
ではその逃げ面b側にそれぞれ特定の結晶面を向け、且
つ存在率SがS≧40%である配向性金属結晶を含む。
摺動面aは平坦に形成され、また逃げ面bに存する多数
の配向性金属結晶10は角錐状または角錐台状の少なく
とも一方の形態を有し、図示例では三角錐状をなす。
【0014】このような摺動部構成体5は、リング本体
3の外周面4全体に多数の三角錐状配向性金属結晶10
を有するメッキ層を形成し、次いで平坦面6を覆う摺動
面形成域8に対応するメッキ層表面を研磨加工により平
坦に形成して摺動面aを得る、といった方法で製作され
る。
【0015】摺動面形成域8に、配向性金属結晶を前記
存在率Sで存在させ、また摺動面aを平坦に形成する
と、オイルに対する摺動面aの濡れ性およびシリンダ内
壁面11に対する摺動面aのなじみ性が良好となる。
【0016】また逃げ面bに存する多数の配向性金属結
晶10が三角錐状の形態を備えていると、図3に示すよ
うに相隣る両配向性金属結晶10間の谷部12がオイル
溜りとなり、そのオイルは摺動面aに逐次供給される。
【0017】このように摺動面aのなじみ性を向上させ
ると共に逃げ面b側から摺動面aにオイルを供給し得る
ので、その摺動面aのオイルに対する濡れ性が良好であ
ることから摺動面aが十分な保油性を持ち、これにより
摺動面aの耐焼付き性を向上させることができる。
【0018】また前記保油性の向上に伴いシリンダ内壁
面11と摺動面aとの間にシール効果の高い油膜を十分
に形成することが可能であり、これによりブローバイガ
ス量を低減することができる。
【0019】配向性金属結晶10が体心立方構造(bc
c構造)を持つ場合、前記結晶面は、図4に示すように
ミラー指数で(hhh)面であり、この(hhh)面を
有する摺動面aはオイルに対する濡れ性が良好である。
【0020】図5に示すように、逃げ面bに沿う仮想面
13に対する(hhh)面の傾きは三角錐の傾きとなっ
て現れるので、逃げ面形成域9のオイル溜め機能に影響
を与える。そこで、(hhh)面が仮想面13に対して
なす傾き角θは0°≦θ≦15°に設定される。この場
合、(hhh)面の傾き方向については限定されない。
傾き角θがθ>15°になると、逃げ面形成域9のオイ
ル溜め機能が低下する。また摺動面aにおける(hh
h)面の傾き角θも、オイルに対する濡れ性を良好に保
持するため、0°≦θ≦15°に設定される。
【0021】bcc構造を持つ金属結晶としては、F
e、Cr、Mo、W、Ta、Zr、Nb、V等の単体ま
たは合金の結晶を挙げることができる。
【0022】一方、配向性金属結晶10が面心立方構造
(fcc構造)を持つ場合、摺動面形成域8における前
記結晶面は図6に示すようにミラー指数で(hh0)面
である。この(hh0)面を有する摺動面aはオイルに
対する濡れ性が良好である。このような(hh0)配向
性金属結晶は、メッキ後の摺動面aにおいて四角錐状を
なすが、その摺動面aを平坦に研磨する際除去される。
また逃げ面形成域9における前記結晶面は、図6に示す
ようにミラー指数で(3hhh)面である。このような
(3hhh)配向性金属結晶10は、図7に示すように
逃げ面bにおいて四角錐状をなす。
【0023】図8に示すように、逃げ面bに沿う仮想面
13に対する(3hhh)面の傾きは四角錐の傾きとな
って現れるので、逃げ面形成域9のオイル溜め機能に影
響を与える。そこで、(3hhh)面が仮想面13に対
してなす傾き角θは、前記同様に0°≦θ≦15°に設
定される。この場合、(3hhh)面の傾き方向につい
ては限定されない。傾き角θがθ>15°になると、逃
げ面形成域9のオイル溜め機能が低下する。また摺動面
aにおける(hh0)面の傾き角θも、オイルに対する
濡れ性を良好に保持するため、0°≦θ≦15°に設定
される。
【0024】fcc構造を持つ金属結晶としては、P
b、Ni、Cu、Pt、Al、Ag、Au等の単体また
は合金の結晶を挙げることができる。
【0025】bcc構造を持つ金属結晶の集合体よりな
る摺動部構成体5を形成するためのメッキ処理におい
て、電気Feメッキ処理を行う場合の基本的条件は、表
1,2の通りである。
【0026】通電法としては、直流法またはパルス電流
法が適用される。パルス電流法においては、図9に示す
ように最大電流密度CDmaxは1A/dm2 ≦CDma
x≦40A/dm2 、出力の立上り開始時から下降開始時
までの出力時間TONは0.1msec≦TON≦6msec、先の
立上り開始時から次の立上り開始時までを1サイクルと
して、そのサイクル時間をTc としたとき、時間比TON
/Tc はTON/Tc ≦0.45であり、したがって表2
における陰極電流密度はパルス電流法においては平均陰
極電流密度CDmである。
【0027】
【表1】
【0028】有機系添加剤としては、尿素、サッカリン
等が用いられる。
【0029】
【表2】
【0030】前記条件下で行われる電気Feメッキ処理
において、陰極電流密度、メッキ浴pH等によって前記
結晶面が(hhh)面である(hhh)配向性Fe結晶
の析出、その存在量等を制御する。この場合、直流法の
適用下では、(hhh)配向性Fe結晶10は柱状に成
長して逃げ面bにおいて、通常三角錐状をなす。一方、
パルス電流法の適用下では(hhh)配向性Fe結晶1
0は柱状に成長し、逃げ面bには、図10に示すように
三角錐状および六角錐状Fe結晶が存在するか、六角錐
状Fe結晶のみが存在する。
【0031】また本発明に係る摺動部構成体5を電気C
rメッキ処理により形成する場合の基本的条件は表3,
4の通りである。通電法はFeメッキ処理の場合と同じ
である。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、例えば気相メッキ法であるPVD法、CVD法、ス
パッタ法、イオンプレーティング等を挙げることができ
る。スパッタ法によりW、Moメッキを行う場合の条件
は、例えばAr圧力 0.2〜1Pa、Ar加速電力
直流1〜1.5kW、母材温度 150〜300℃であ
る。CVD法によりWメッキを行う場合の条件は、例え
ば原材料 WF6 、WF6 ガス流量 2〜15cc/min
、チャンバ内圧力 50〜300Pa、母材温度 4
00〜600℃である。
【0035】fcc構造を持つ金属結晶の集合体よりな
る摺動部構成体5を形成するためのメッキ処理におい
て、電気Niメッキ処理を行う場合の基本的条件は、表
5,6の通りである。通電法はFeメッキ処理の場合と
同じである。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】前記条件下で行われる電気Niメッキ処理
において、陰極電流密度、メッキ浴pH等によって(h
h0)、(3hhh)配向性Ni結晶の析出、その存在
量を制御する。
【0039】メッキ処理としては、電気メッキ処理の外
に、前記同様の気相メッキ法を挙げることができる。例
えば、スパッタ法によりPt、Alメッキを行う場合の
条件は、Ar圧力 0.8〜1Pa、Ar加速電力 直
流200〜1000W、母材温度 80〜300℃であ
る。またCVD法によりAlメッキを行う場合の条件
は、原材料 Al(CH3 3 、Al(CH3 3 ガス
流量 1〜10cc/min、チャンバ内圧力 50〜30
0Pa、母材温度 300〜600℃である。
【0040】〔実施例I〕複数のステンレス鋼製リング
本体3の外周面4に、直流法またはパルス電流法を適用
した電気Feメッキ処理を施すことによりFe結晶の集
合体より構成された厚さ15μmのメッキ層を形成し
た。このリング本体3とメッキ層とからなるものを、便
宜上、ピストンリング1とする。
【0041】表7,8は、メッキ層の例1〜5における
電気Feメッキ処理条件を示す。なお、メッキ処理時間
は、例1〜5における厚さを前記のように15μmに設
定すべく、10〜120分間の範囲内で種々変化させ
た。
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】表9は、メッキ層の例1〜5における表面
の結晶形態、Fe結晶の平均粒径、各配向性Fe結晶の
存在率Sならびに硬さをそれぞれ示す。
【0045】
【表9】
【0046】三角錐状Fe結晶の平均粒径は、各角部か
ら頂点を通って各対向辺に至る距離、即ち、三つの距離
の平均値であり、また六角錐状Fe結晶の平均粒径は、
頂点を挟んで相対向する両角部間の距離、即ち、三つの
距離の平均値である。
【0047】存在率Sは、例1〜5のX線回折図(X線
照射方向はメッキ層表面に対して直角方向)に基づいて
次のような方法で求められたものである。一例として、
例1について説明すると、図11は例1のX線回折図で
あり、各配向性Fe結晶の存在率Sは次式から求められ
た。なお、例えば{110}配向性Fe結晶とは、{1
10}面を表面側に向けた配向性Fe結晶を意味する。 {110}配向性Fe結晶:S110 ={(I110 /IA
110 )/T}×100、 {200}配向性Fe結晶:S200 ={(I200 /IA
200 )/T}×100、 {211}配向性Fe結晶:S211 ={(I211 /IA
211 )/T}×100、 {310}配向性Fe結晶:S310 ={(I310 /IA
310 )/T}×100、 {222}配向性Fe結晶:S222 ={(I222 /IA
222 )/T}×100 ここで、I110 、I200 、I211 、I310 、I222 は各
結晶面のX線反射強度の測定値(cps)であり、また
IA110 、IA200 、IA211 、IA310 、IA222
ASTMカードにおける各結晶面のX線反射強度比で、
IA110 =100、IA200 =20、IA211 =30、
IA310 =12、IA222 =6である。さらにTは、T
=(I110 /IA110 )+(I200 /IA200 )+(I
211 /IA211 )+(I310 /IA310 )+(I222
IA222 )である。
【0048】図12は、例1における表面の結晶構造を
示す顕微鏡写真である。図12において、多数の三角錐
状Fe結晶が観察される。この三角錐状Fe結晶は(h
hh)面、したがって{222}面を表面側に向けた
{222}配向性Fe結晶である。この場合、{22
2}配向性Fe結晶の存在率Sは、表9,図11に示す
ように、S=43%である。
【0049】図13は、例3のX線回折図であり、図1
4は例3における表面の結晶構造を示す顕微鏡写真であ
る。図14において、多数の六角錐状Fe結晶が観察さ
れる。これら六角錐状Fe結晶は{222}面を表面側
に向けた{222}配向性Fe結晶であり、その存在率
Sは、表9、図13に示すようにS=94%である。
【0050】次に、例1〜3のメッキ層を有するピスト
ンリング1において、そのメッキ層の摺動面形成域8に
対応する表面を研磨加工により平坦に形成して摺動面a
を得た。この加工後のメッキ層を摺動部構成体の実施例
1〜3とする。この実施例1は、図2に示すように平坦
な摺動面aに連なって、多数の三角錐状{222}配向
性Fe結晶を有する逃げ面bを備えている。この逃げ面
bは、実施例2では、六角錐状および三角錐状{22
2}配向性Fe結晶を有し、また実施例3では六角錐状
{222}配向性Fe結晶を有する。
【0051】また、例4,5のメッキ層を有するピスト
ンリングにおいて、そのメッキ層に全然研磨加工を施さ
ない、したがって摺動面aおよび逃げ面bに多数の粒状
Fe結晶を有する、未加工のメッキ層を摺動部構成体の
比較例1,2とする。
【0052】次に、実施例1〜3および比較例1,2に
ついて、チップオンディスク方式による焼付きテストを
行ったところ、表10、図15の結果を得た。テスト条
件は次の通りである。ディスクの材質 鋳鉄、ディスク
の回転速度 15m/sec 、給油量 0.3ml/min 、
ピストンリングより製作されたチップの摺動面aの面積
1cm2
【0053】
【表10】
【0054】図15は、表9,10に基づいて、{22
2}配向性Fe結晶の存在率Sと焼付き発生荷重との関
係をグラフ化したものである。表9,10,図15から
明らかなように、実施例1〜3においては、{222}
配向性Fe結晶の存在率SがS≧40%であり、且つ摺
動面aが平坦であることに起因してオイルに対する摺動
面aの濡れ性およびディスクに対する摺動面aのなじみ
性が良好となり、また逃げ面bの三角錐状および/また
は六角錐状{222}配向性Fe結晶によるオイル溜り
から摺動面aへの給油がなされるので、比較例1,2に
比べて焼付き発生荷重が大幅に向上する。オイル溜め機
能および給油機能は六角錐状Fe結晶集合体の方が三角
錐状Fe結晶集合体よりも優れている。
【0055】比較例1,2は、{222}配向性Fe結
晶の存在率SがS<40%であって、摺動面aのオイル
に対する濡れ性およびディスクに対するなじみ性が悪
く、その上、前記のようなオイル溜め機能および給油機
能を備えていないので、耐焼付き性が極端に低い。
【0056】次に、三角錐状{222}配向性Fe結晶
によるオイル溜め機能等およびオイルに対する{22
2}配向性Fe結晶の濡れ性等を調べるため、次のよう
な実験を行った。
【0057】例1のメッキ層を有するピストンリングに
おいて、そのメッキ層に全然機械加工を施さない、した
がって摺動面aおよび逃げ面bに多数の三角錐状{22
2}配向性Fe結晶を有する、未加工のメッキ層を摺動
部構成体の比較例3とする。
【0058】また例1のメッキ層を有するピストンリン
グにおいて、そのメッキ層表面全体に研磨加工を施して
摺動面aおよび逃げ面bを平坦に形成した。この加工後
のメッキ層を摺動部構成体の比較例4とする。
【0059】次に、比較例3,4について前記と同一条
件にてチップオンディスク方式による焼付きテストを行
ったところ、表11,図16の結果を得た。比較のた
め、表11,図16には前記実施例1および比較例1に
関する測定値も示されている。
【0060】
【表11】
【0061】図16は、表11をグラフ化したものであ
る。表11,図16から明らかなように、比較例3は摺
動面aに三角錐状{222}配向性Fe結晶が存在する
ことによりオイル溜め機能が得られるので、実施例1と
同等の耐焼付き性を有する。比較例4は、逃げ面bが平
坦であるためオイル溜め機能は持たないが、存在率S≧
40%の{222}配向性Fe結晶により、前記のよう
に良好な濡れ性およびなじみ性が得られるので、比較例
1よりも耐焼付き性が向上する。
【0062】次に、摺動部構成体の実施例1、比較例
1,3,4を有する各ピストンリング1をトップリング
として用い、それを2000ccの直列四気筒内燃機関に
組込んで、機関回転数 6000rpm (一定)、外気温
室温の条件下にてブローバイガス量を測定したとこ
ろ、表12,図17の結果を得た。
【0063】
【表12】
【0064】図17は、表12をグラフ化したものであ
る。表12,図17から明らかなように、実施例1にお
いては、摺動面aのオイルに対する濡れ性が良好である
ことからその保油性が向上し、それに伴いシリンダ内壁
面11との間にシール性の高い油膜が十分に形成される
ので、比較例1,3に比べてブローバイガス量が大幅に
減少する。
【0065】比較例1は、前記のようにオイルに対する
濡れ性が悪い等の理由からブローバイガス量が多い。比
較例3は摺動面aに多数の三角錐状{222}配向性F
e結晶が存在することからシール性が悪く、その結果、
ブローバイガス量が最も多くなる。比較例4における摺
動面aは実施例1と同様の性状を有するので、ブローバ
イガス量も実施例1と同様となる。
【0066】〔実施例II〕複数のステンレス鋼製リング
本体3の外周面4に、直流法を適用した電気Niメッキ
処理を施すことによりNi結晶の集合体より構成された
厚さ15μmのメッキ層を形成した。このリング本体3
とメッキ層とからなるものを、便宜上、ピストンリング
1とする。
【0067】表13,14は、メッキ層の例1〜4にお
ける電気Niメッキ処理条件を示す。なお、例1におい
ては、摺動面形成域8と逃げ面形成域9では電気Niメ
ッキ処理条件が異なる。またメッキ処理時間は、例1〜
4における厚さを前記のように15μmに設定すべく、
10〜120分間の範囲内で種々変化させた。
【0068】
【表13】
【0069】
【表14】
【0070】表15は、メッキ層の例1〜4における表
面の結晶形態、Ni結晶の平均粒径、各配向性Ni結晶
の存在率Sおよび硬さをそれぞれ示す。
【0071】
【表15】
【0072】四角錐状Ni結晶の平均粒径は、各角部か
ら頂点を通って各対向角部に至る距離、即ち、二つの距
離の平均値である。
【0073】存在率Sは、例1〜4のX線回折図(X線
照射方向はメッキ層表面に対して直角方向)に基づいて
次式から求められた。なお、例えば{111}配向性N
i結晶とは、{111}面を表面側に向けた配向性Ni
結晶を意味する。 {111}配向性Ni結晶:S111 ={(I111 /IA
111 )/T}×100、 {200}配向性Ni結晶:S200 ={(I200 /IA
200 )/T}×100、 {220}配向性Ni結晶:S220 ={(I220 /IA
220 )/T}×100、 {311}配向性Ni結晶:S311 ={(I311 /IA
311 )/T}×100 ここで、I111 、I200 、I220 、I311 は各結晶面の
X線反射強度の測定値(cps)であり、またI
111 、IA200 、IA220 、IA311 はASTMカー
ドにおける各結晶面のX線反射強度比で、IA111 =1
00、IA200 =42、IA220 =21、IA311 =2
0である。さらにTは、T=(I111 /IA111 )+
(I200 /IA200 )+(I220 /IA220 )+(I
311 /IA311 )である。
【0074】次に、例1のメッキ層を有するピストンリ
ング1において、そのメッキ層の摺動面形成域8に対応
する表面を研磨加工により平坦に形成して摺動面aを得
た。この加工後のメッキ層を摺動部構成体の実施例とす
る。この実施例は、図2に示すように平坦な摺動面aに
連なって、多数の四角錐状{311}配向性Ni結晶を
有する逃げ面bを備えている。
【0075】また例2のメッキ層を有するピストンリン
グ1において、そのメッキ層表面全体に研磨加工を施し
て摺動面aおよび逃げ面bを平坦に形成した。この加工
後のメッキ層を摺動部構成体の比較例1とする。
【0076】例3のメッキ層を有するピストンリング1
において、そのメッキ層に全然研磨加工を施さない、し
たがって摺動面aおよび逃げ面bに多数の四角錐状{3
11}配向性Ni結晶を有する、未加工のメッキ層を摺
動部構成体の比較例2とする。
【0077】また、例4のメッキ層を有するピストンリ
ング1において、そのメッキ層に全然研磨加工を施さな
い、したがって摺動面aおよび逃げ面bに多数の粒状N
i結晶を有する、未加工のメッキ層を摺動部構成体の比
較例3とする。
【0078】次に、実施例および比較例1〜3につい
て、実施例Iと同一条件にてチップオンディスク方式に
よる焼付きテストを行ったところ、表16,図18の結
果を得た。
【0079】
【表16】
【0080】図18は、表16をグラフ化したものであ
る。表16,図18から明らかなように、実施例の摺動
面形成域8においては、{220}配向性Ni結晶の存
在率SがS≧40%であり、且つ摺動面aが平坦である
ことに起因してオイルに対する摺動面aの濡れ性および
ディスクに対する摺動面aのなじみ性が良好となり、ま
た逃げ面bの四角錐状{311}配向性Ni結晶による
オイル溜りから摺動面aへの給油がなされるので、比較
例1,3に比べて焼付き発生荷重が大幅に向上する。
【0081】比較例2は摺動面aに四角錐状{311}
配向性Ni結晶が存在することによりオイル溜め機能が
得られるので、実施例と同等の耐焼付き性を有する。比
較例1は、逃げ面bが平坦であるためオイル溜め機能は
持たないが、存在率S≧40%の{220}配向性Ni
結晶により、前記のように良好な濡れ性およびなじみ性
が得られるので、比較例3よりも耐焼付き性が向上す
る。
【0082】次に、摺動部構成体の実施例、比較例1〜
3を有する各ピストンリング1をトップリングとして用
い、それを前記同様の直列四気筒内燃機関に組込んで、
同一条件下にてブローバイガス量を測定したところ、表
17,図19の結果を得た。
【0083】
【表17】
【0084】図19は表17をグラフ化したものであ
る。表17,図19から明らかなように、実施例におい
ては、摺動面aのオイルに対する濡れ性が良好であるこ
とから、その保油性が向上し、それに伴いシリンダ内壁
面11との間にシール性の高い油膜が十分に形成される
ので、比較例2,3に比べてブローバイガス量が大幅に
減少する。
【0085】比較例1における摺動面aは実施例と同様
の性状を有するので、ブローバイガス量も実施例と同様
となる。比較例2は摺動面aに多数の四角錐状{31
1}配向性Ni結晶が存在することからシール性が悪
く、その結果、ブローバイガス量が最も多くなる。比較
例3は、前記のようにオイルに対する濡れ性が悪い等の
理由からブローバイガス量が多い。
【0086】本発明はピストンリングに限らず、ピスト
ンのスカート部等にも適用される。
【0087】
【発明の効果】本発明によれば、摺動面形成域および逃
げ面形成域を前記のように構成することによって、優れ
た耐焼付き性を有すると共に相手部材との間にシール性
の高い油膜を十分に形成し得る摺動部構成体を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピストンリングの平面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】逃げ面の一例を示す斜視図である。
【図4】体心立方構造およびその(hhh)面を示す斜
視図である。
【図5】体心立方構造における(hhh)面の傾きを示
す説明図である。
【図6】面心立方構造およびその(3hhh)面、(h
h0)面を示す斜視図である。
【図7】逃げ面の他例を示す平面図である。
【図8】面心立方構造における(3hhh)面の傾きを
示す説明図である。
【図9】電気メッキ用電源の出力波形図である。
【図10】逃げ面のさらに他例を示す斜視図である。
【図11】メッキ層の一例におけるX線回折図である。
【図12】メッキ層表面の一例における結晶構造を示す
顕微鏡写真である。
【図13】メッキ層の他例におけるX線回折図である。
【図14】メッキ層表面の他例における結晶構造を示す
顕微鏡写真である。
【図15】{222}配向性Fe結晶の存在率と焼付き
発生荷重との関係を示すグラフである。
【図16】実施例1等の焼付き発生荷重を示すグラフで
ある。
【図17】実施例1等を用いた場合におけるブローバイ
ガス量を示すグラフである。
【図18】実施例等の焼付き発生荷重を示すグラフであ
る。
【図19】実施例等を用いた場合におけるブローバイガ
ス量を示すグラフである。
【符号の説明】
5 摺動面構成体 8 摺動面形成域 9 逃げ面形成域 10 配向性金属結晶 a 摺動面 b 逃げ面
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年1月18日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】
【表5】
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C25D 3/12 101 3/20 (72)発明者 田畑 勝宗 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 摺動面形成域(8)と、前記摺動面形成
    域(8)に、その摺動面形成域(8)より後退するよう
    に連なる逃げ面形成域(9)とを備えた摺動部構成体に
    おいて、前記摺動面形成域(8)および逃げ面形成域
    (9)は金属結晶の集合体より構成され、その集合体
    は、前記摺動面形成域(8)ではその摺動面(a)側
    に、また前記逃げ面形成域(9)ではその逃げ面(b)
    側にそれぞれ結晶面を向け、且つ存在率SがS≧40%
    である配向性金属結晶(10)を含み、前記摺動面
    (a)は平坦に形成され、また前記逃げ面(b)に存す
    る多数の前記配向性金属結晶(10)は角錐状または角
    錐台状の少なくとも一方の形態を有することを特徴とす
    る摺動部構成体。
  2. 【請求項2】 前記配向性金属結晶(10)は体心立方
    構造を持ち、前記結晶面はミラー指数で(hhh)面で
    ある、請求項1記載の摺動部構成体。
  3. 【請求項3】 前記配向性金属結晶(10)は面心立方
    構造を持ち、前記摺動面形成域(8)における前記結晶
    面はミラー指数で(hh0)面であり、また前記逃げ面
    形成域(9)における前記結晶面はミラー指数で(3h
    hh)面である、請求項1記載の摺動部構成体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS60149768A (ja) * 1984-01-11 1985-08-07 Hitachi Ltd 高密着性メタライズ膜

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JPS60149768A (ja) * 1984-01-11 1985-08-07 Hitachi Ltd 高密着性メタライズ膜

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