JPH07122426A - 軟磁性めっき薄膜およびその製造方法 - Google Patents

軟磁性めっき薄膜およびその製造方法

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JPH07122426A JP5262354A JP26235493A JPH07122426A JP H07122426 A JPH07122426 A JP H07122426A JP 5262354 A JP5262354 A JP 5262354A JP 26235493 A JP26235493 A JP 26235493A JP H07122426 A JPH07122426 A JP H07122426A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高周波特性に優れたMoを含有する軟磁性め
っき薄膜とその製造方法を提供するものである。 【構成】 Moが2 wt%以上9 wt%未満の組成のMo含
有軟磁性層とMoが10 wt%以上のMoリッチ層の少な
くとも2組成以上のMo含有層が積層され、前者の層厚
が後者の層厚の5倍以上であること電気めっき薄膜とそ
の製造方法で、酒石酸イオンを含む浴から製造する点に
特長がある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜磁気ヘッド等の磁
気デバイスに使用される軟磁性めっき薄膜およびその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】軟磁性薄膜の特性として重要視されてい
るものに透磁率と比抵抗がある。パーマロイは優れた軟
磁性合金であるが比抵抗が小さく高周波回路で使用する
には問題があった。このため第3元素としてモリブデン
を添加したモリブデンパーマロイが古くから知られてい
る。たとえばFerromagnetism,D.Van Mostrand Company.
Inc.,Tronto(1951)にはバルクでのMoパーマロイの各種
の特性が例示されておりMo含有量の増加により比抵抗が
大きく上昇することがわかる。しかし、Mo10wt%以
上については述べられていない。
【0003】このモリブデンパーマロイを薄膜磁気ヘッ
ド等の薄膜デバイスに使用するために薄膜化するための
製法として電着法は種々の特長から有効である。
【0004】このためモリブデンパーマロイの電着方法
としては多くの研究がなされてきた。たとえばJournal
of applied electrochemistry 8(1978)41ページには酢
酸ニッケル、硫酸鉄、モリブデン酸ナトリウムを用いた
浴から広い範囲の組成のNiFeMo合金の電着が報告されて
いる。しかし、その磁気特性には全く触れておらず電流
密度pH、浴温等によるMo含有量の変化は僅かであっ
た。
【0005】またJournal of the electrochemical soc
iety(1965)64ページにはクエン酸を用いためっき浴から
成膜されたモリブデンパーマロイ膜の磁気特性について
記されている。
【0006】また特公昭41-20686号もクエン酸を用いた
モリブデンパーマロイ膜をアルカリ溶液から成膜する方
法を開示している。この場合には電流密度を2A/dm2
ら15A/dm2に変化するとMo含有量が9.36%から
5.50%に変化している。
【0007】またUSSR特許418567号(1974)において使用
している浴もクエン酸を使用している。
【0008】このようにクエン酸を添加した浴からバル
クと同等特性の薄膜を目指した研究は多いが安定して製
造することは困難で、かつ薄膜独特の新規な高特性を電
着法で得る試みは殆どなされていなかった。
【0009】一方、軟磁性薄膜において多層化し中間層
として絶縁層や高比抵抗層を形成することで高周波特性
に優れた薄膜を得ることは広く知られている。同様に合
金膜の電解中に電位、電流密度を変化させて多層構造を
形成する手法も知られているが電位の大きく異なる合金
系に限られていた。
【0010】具体的に標準電位で示すとNi(−0.2
4 V)、Fe(−0.44 V)は、Cu(+0.34
V)、Rh(+0.76 V)等とは大きく電位が離れて
おり多層化が可能なことが容易に類推される。しかしM
o(−0.20 V)はNiやFeやCoとは電位が近接
しており多層構造の形成は困難と見られていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事
情からなされたものであり、特性の優れたモリブデン含
有軟磁性多層めっき膜とそれを安定かつ安価に電着法に
より製造する方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(3)の本発明により達成される。
【0013】(1)Ni、Fe、Coより選ばれる少な
くとも2種以上と2wt%以上9wt%以下のMoを含有する
軟磁性層と、Ni、Fe、Co,より選ばれる少なくと
も2種以上と10wt%以上のMoを含有するMoリッチ
層が積層されており、前記軟磁性層の層厚が前記Moリ
ッチ層の層厚の2倍以上100倍以下である軟磁性めっ
き薄膜。
【0014】(2)Ni、Fe、Coより選ばれる少な
くとも2種以上の金属イオンとMoイオンと有機酸イオ
ンとを含有する単一のめっき浴を用いて、 成膜時に電
流密度を変化させて上記1の軟磁性めっき薄膜を製造す
る方法において、前記軟磁性層を0.5A/dm2以上5A/d
m2未満の電流密度で成膜し、前記Moリッチ層を前記軟
磁性層を成膜する電流密度の2分の1から20分の1の
電流密度で成膜する軟磁性めっき薄膜の製造方法。
【0015】(3)前記有機酸は酒石酸である上記2の
軟磁性めっき薄膜の製造方法。
【0016】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成について詳細
に説明する。
【0017】本発明では湿式めっき法を用いて軟磁性薄
膜を形成する。本発明および本発明により製造されるの
軟磁性薄膜はNi、FeまたはCoの内の少なくとも2
種類以上の金属とMoを主成分とする。
【0018】Moの含有量はその目的により大きく2つ
に大別される。すなわち優れた磁気特性を得るための磁
性層としては2〜9重量%、より好ましくは3〜6重量
%である。Mo含有量が前記範囲未満であると良い軟磁
気特性が得られず前記範囲を越えるとBsが低下すると
同時にやはり良い軟磁気特性が得られない。一方の絶縁
を目的とするMoリッチ層としての場合には10重量%
以上、より好ましくは15重量%以上である。前記範囲
未満であると比抵抗が大きくならず良い高周波特性が得
られない。
【0019】軟磁性層のNi、Fe、Coの含有量は特
に制限はない。目的とする特性が得られるように選択さ
れる。たとえはモリブデンパーマロイ組成を作成する場
合にはNiは70〜80重量%、Feは15〜25重量
%となる。Co−Fe合金で磁歪ゼロの組成を目標とす
る場合にはCoが80から95重量%、Feは5〜15
重量%となる。
【0020】絶縁層中のNi、Fe、Coの含有量も特
に制限はなく磁性層のように特定の組成を目標とする必
要性も小さい。
【0021】Mo含有量が1〜9重量%の磁性層厚はM
o含有量が10重量%以上のMoリッチ層厚の2倍以上
100倍以下、特に好ましくは10倍以上20倍以下で
ある。層厚比が前記範囲未満であると十分な絶縁効果が
得られず前記範囲を越えると透磁率やBsの低下が起こ
り好ましい磁気特性が得られない。また各層厚の絶対値
については特に制約はないが軟磁性層が50 Aから20
000 A程度となるように設計することが好ましい。
【0022】本発明では、めっき浴としてNi、Fe、
Coより選ばれる少なくとも2つ以上の金属イオンとMo
イオンと有機酸イオンを含有するめっき浴を用いる。N
i、Fe、Coの各イオンの供給源は硫酸塩、スルファ
ミン塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物塩等の水溶性の塩から
選択することが好ましい。Moはモリブデン酸アンモニ
ウムが特に好ましい。
【0023】めっき浴中の各金属イオン濃度は目的の膜
の合金組成により決定され特に制限はないが、総金属イ
オン濃度が0.05から5 mol/l程度が好ましい。
【0024】めっき浴中には、これらのイオンに加え、
有機酸イオンが含まれる。特に酒石酸イオンが好まし
い。この酒石酸イオンによりそれぞれの金属イオンが錯
体を形成し安定した成膜が可能となる。特に酒石酸を用
いることでと電流密度によるMo含有量の変化を大きく
することが可能となる。酒石酸イオンはロッシェル塩、
酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等の水溶性の塩を用
いる。酒石酸イオンの添加量は総金属イオンの0.1倍
モル以上、特に好ましくは0.2倍モルである。
【0025】酒石酸イオンの量が前記範囲未満であると
十分な錯体形成が起こらず安定した合金膜が形成されな
い。
【0026】めっき浴のpHは好ましくは3.0〜6.
0、より好ましくは3.5〜5.0である。pHが前記
範囲未満であると析出速度が低下し前記範囲を越えると
電流密度による組成変化が小さくなり多層膜が形成され
ない。これは形成される錯体構造が異なるためと考えら
れる。
【0027】めっき浴にはこの他に導電性向上のために
塩化アンモニウム等の導電助剤、サッカリン等の有機添
加剤、ラウリル硫酸等の界面活性剤を添加しても構わな
い。
【0028】軟磁性層を成膜時の電流密度は0.5 A/d
m2以上5 A/dm2未満であり特に好ましくは1.0 A/dm2
以上3 A/dm2未満である。前記範囲未満であるとBsが
低下し磁気特性も劣化する。一方、前記範囲を越えると
水素発生反応が多くなり浴が不安定となる。
【0029】絶縁を目的とするMoリッチ層はその2分
の1から20分の1、特に好ましくは8分の1から15
分の1の電流密度で成膜される。前記範囲未満であると
析出速度が遅く前記範囲を越えると膜の比抵抗が低下す
る。
【0030】それぞれの層の層厚は電流密度と印加時間
により制御される。単純な場合には電流密度が10倍に
なれば成膜速度も10倍となる。
【0031】また層数は3層以上特に好ましくは5層以
上とする。前記範囲未満では絶縁層の目的を達成できな
い。
【0032】さらに多層膜構造とすることで磁区構造を
変化させバルクハウゼンノイズを減少させる効果も期待
される。
【0033】なお本発明の磁性層の厚さは目的により適
宜決定すれば良い。
【0034】さらに本発明の磁性合金にはC、S、P、
B、Cr、Sn、Ru、Au、Pd、Ag、Mn、I
n、Pb、Re、W、Zn、Zr、Rh及びPt等から
選択される1種以上の元素を3重量%以下含有すること
で耐食性向上、磁歪制御等も期待される。またこれらの
元素を不純物として微量含有することも特に支障は認め
られないので安価な試薬の使用によるコスト低減も可能
である。
【0035】またCuを2〜6重量%含有することでさ
らに透磁率の向上も可能である。
【0036】また磁気異方性を積極的に制御するために
磁場中処理が有効である。軟磁性薄膜の処理としては回
転磁場中や成膜時と直交磁界をかける直交磁場中熱処理
が知られており共に効果がある。
【0037】
【実施例および比較例】以下にその具体的実施例および
比較例を示し本発明を説明する。
【0038】基板はNiFeを500 Aスパッタし下地
膜としたガラスを用い、600 Oeの直流磁界中で一軸
異方性を付与しながら総膜厚がほぼ1 μmとなるように
成膜をおこなった。
【0039】浴組成(1リットル当り) 硫酸ニッケル 330 g 硫酸鉄 4.8 g モリブデン酸アンモニウム 3 g ロッシェル塩 113 g ほう酸 25 g 塩化アンモニウム 15 g サッカリンナトリウム 2 g 成膜条件 浴温 40℃ pH 4.3 電流密度 0.05 A/dm2から10
A/dm2 陽極 TiPt板 磁界強度 1kOe 成膜後異方性制御を目的に成膜時の磁場印加方向と直交
する方向に2kOeの磁界を印加しながら250℃1時間
の真空熱処理を行った。
【0040】透磁率は8の字コイル法を用い30MHzに
て測定し膜組成はIPCで比抵抗は4端子法で、保磁
力、BsはVSMで評価した。膜厚は段差法で多層膜の
全厚を膜厚とした。
【0041】
【表1】
【0042】上記の結果をもとにたとえば0.1 A/dm2
と1.0 A/dm2を順次印加し成膜することで特性の優れ
た軟磁性薄膜が得られることがわかる。
【0043】最初に1.0 A/dm2で300 秒間成膜し
た後0.1 A/dm2で300 秒間さらに1.0 A/dm2
300 秒間成膜したところ5000 A−4.8Mo−
NiFe/500 A−15.0Mo−NiFe/500
0 A−4.8Mo−NiFeの3層膜が形成された。こ
れを実施例1とした。
【0044】同様に各種の電流密度で成膜時間を増減し
て表2に示す各種の構造の多層膜を作製した。
【0045】
【表2】
【0046】なお、表2において(5000 A−3.8
Mo−NiFe/500 A−13.0Mo−NiFe)
とは5000 Aの3.8重量%のMoを含有する軟磁性
層の上に500 Aの13.0重量%のMoを含有する絶
縁層(Moリッチ層)が形成されていることを示す。ま
た、たとえば(1000 A−8.8Mo−NiFe/1
50 A−15.5Mo−NiFe)×10は(1000
A−8.8Mo−NiFe/150 A−15.5Mo−
NiFe)構造の膜が10回積層されていることを示
す。ただし、最上層のMoリッチ層は不要であり、形成
してない。
【0047】その透磁率とBsの結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】この結果から本発明の効果は明確である。
【0050】
【発明の効果】本発明の軟磁性めっき薄膜は、層間絶縁
性に優れたMoリッチ層と軟磁性層が交互に積層された
多層膜構造になっているので、高周波特性に優れてい
る。
【0051】また、本発明の方法によれば、単一のめっ
き浴を用いて、電流密度を交互に変えるだけの簡単な成
膜プロセスで、高周波特性の優れた軟磁性めっき薄膜を
安定で、安価に製造することができる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni、Fe、Coより選ばれる少なくと
    も2種以上と2wt%以上9wt%以下のMoを含有する軟磁
    性層と、 Ni、Fe、Co,より選ばれる少なくとも2種以上と
    10wt%以上のMoを含有するMoリッチ層が積層され
    ており、 前記軟磁性層の層厚が前記Moリッチ層の層厚の2倍以
    上100倍以下である軟磁性めっき薄膜。
  2. 【請求項2】 Ni、Fe、Coより選ばれる少なくと
    も2種以上の金属イオンとMoイオンと有機酸イオンと
    を含有する単一のめっき浴を用いて、 成膜時に電流密
    度を変化させて請求項1の軟磁性めっき薄膜を製造する
    方法において、 前記軟磁性層を0.5A/dm2以上5A/dm2未満の電流密度
    で成膜し、 前記Moリッチ層を前記軟磁性層を成膜する電流密度の
    2分の1から20分の1の電流密度で成膜する軟磁性め
    っき薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記有機酸は酒石酸である請求項2の軟
    磁性めっき薄膜の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6183881B1 (en) 1998-08-04 2001-02-06 Fujitsu Limited Magnetic thin film and method for forming the same
KR100757759B1 (ko) * 1998-12-14 2007-09-12 후지쯔 가부시끼가이샤 자성 재료와 그것을 이용한 자기 헤드 및 자기 기록 장치
WO2015007384A1 (de) * 2013-07-15 2015-01-22 Fachhochschule Kaiserslautern Verfahren zur herstellung magnetischer funktionsschichten, magnetischer schichtwerkstoff sowie bauelement mit einem magnetischen schichtwerkstoff
CN114318445A (zh) * 2021-12-24 2022-04-12 珠海多创科技有限公司 一种复合聚磁薄膜

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