JPH07121835B2 - 立方晶窒化ホウ素被覆体 - Google Patents

立方晶窒化ホウ素被覆体

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JPH07121835B2
JPH07121835B2 JP5107587A JP10758793A JPH07121835B2 JP H07121835 B2 JPH07121835 B2 JP H07121835B2 JP 5107587 A JP5107587 A JP 5107587A JP 10758793 A JP10758793 A JP 10758793A JP H07121835 B2 JPH07121835 B2 JP H07121835B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、切削工具又は耐摩耗工
具などの工具部品及び半導体基板などの電子部品として
利用できる立方晶窒化ホウ素被覆体及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ホウ素は、大別すると低密度の窒化
ホウ素と高密度の窒化ホウ素の2種類が存在し、この
内、高密度の窒化ホウ素の代表例としては、高圧高温と
いう特殊な条件で合成される立方晶窒化ホウ素がある。
【0003】立方晶窒化ホウ素は、ダイヤモンドに次ぐ
高硬度性,高熱伝導性及び高電気絶縁性を有し、しかも
ダイヤモンドよりすぐれた化学的安定性,耐酸化性,耐
熱性及び耐熱的衝撃性を有している。また、ダイヤモン
ドは、鉄族金属との親和性が高いのに対して立方晶窒化
ホウ素は、鉄族金属との親和性が低いことから、例えば
鉄族金属材料を切削又は研削するための工具材料として
注目されている。このように、立方晶窒化ホウ素は、す
ぐれた特性を有しているが脆性材料であり、しかも難焼
結性材料であることから形状及び用途に制約を受けてい
る。
【0004】そこで、立方晶窒化ホウ素を被覆層として
基体の表面に形成することによって形状及び用途の制約
を解決しようという試みがなされている。
【0005】一般に、窒化ホウ素からなる被覆層の形成
方法としては、大別すると、化学蒸着法(CVD法)と
物理蒸着法(PVD法)とプラズマCVD法によって行
なわれている。この内、CVD法は、例えばハロゲン化
ホウ素又はジボランの如きホウ化物と水素とアンモニア
又はヒドラジンとの反応ガスを用いることによって行な
う方法であり、PVD法は、例えばイオンビームデポジ
ション法,イオン注入法,スパッタリング法,イオンプ
レーティング法又はイオン注入法と他のPVD法の組合
わせによる方法であり、プラズマCVD法は、プラズマ
気流中で気相合成する方法である。これらの従来方法に
よって、実際に立方晶窒化ホウ素からなる被覆層を基体
の表面に形成させた工具として特開昭57−95881
号公報が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】従来、窒化ホウ素か
らなる被覆層を形成する方法の内、CVD法による場合
は、単なる熱的な気相合成であるために六方晶窒化ホウ
素又は非晶質窒化ホウ素からなる被覆層しか形成されな
いという問題がある。その他、PVD法又はプラズマC
VD法による場合は、割合高硬度な窒化ホウ素からなる
被覆層が形成されていて、それが立方晶窒化ホウ素から
なる被覆層であると考えられているが、それらの方法に
よって形成される被覆層は、立方晶窒化ホウ素の含有量
が少なくて被覆層全体の硬さが低かったり、被覆層と基
体との密着性が低くて実用化できないという問題があ
る。
【0007】これらの従来の方法により製造する工具と
して開示されている特開昭57−95881号公報は、
窒化ケイ素焼結体の基体の表面に直接立方晶窒化ホウ素
からなる被覆層を形成させたものであり、その製造方法
も従来から行なわれているCVD法,PVD法,プラズ
マCVD法又は六方晶窒化ホウ素を被覆した後、加熱処
理して立方晶窒化ホウ素からなる被覆層を形成させる方
法である。このために、立方晶窒化ホウ素からなる被覆
層が基体の表面に形成されたとしても、その被覆層中に
は立方晶窒化ホウ素の含有量が微量であったり、基体と
被覆層との密着性が劣るという問題がある。
【0008】本発明は、上述のような問題点を解決した
もので、具体的には、セラミックスの基体と立方晶窒化
ホウ素からなる外層との間に立方晶窒化ホウ素の配向成
長を誘起する性質を有する中間層を隣接させることによ
って立方晶窒化ホウ素からなる緻密な外層を形成させた
のと、外層と基体との密着性を高くした立方晶窒化ホウ
素被覆体の提供を目的とするものである。
【0009】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、各種の
窒化ホウ素と窒化アルミニウムの共存下における窒化ホ
ウ素の立方晶窒化ホウ素への転換におよぼす影響を検討
した所、六方晶窒化ホウ素の立方晶窒化ホウ素への直接
転換に要する活性化エネルギーが150〜250Kca
l/molであるのに対して、窒化アルミニウムの共存
下での六方晶窒化ホウ素の立方晶窒化ホウ素への転換に
要する活性化エネルギーが40Kcal/molと低
く、更に窒化アルミニウムの共存下でボラジンを加圧下
熱分解して得られる活性化の高い非晶質窒化ホウ素の立
方晶窒化ホウ素への転換に要する活性化エネルギーが1
1〜20Kcal/molであるという窒化アルミニウ
ムの触媒効果を見出した。この窒化アルミニウムの触媒
効果に基づいて、窒化ホウ素の立方晶窒化ホウ素への転
換機構の解明を試みた所、窒化ホウ素と窒化アルミニウ
ムとの間で融体あるいは中間化合物の生成は認められな
く、BN−AlN系における立方晶窒化ホウ素の生成機
構は、従来他の触媒で報告されている溶解析出機構では
ないことが確められた。また、窒化アルミニウム焼結体
上での立方晶窒化ホウ素の成長は、立方晶窒化ホウ素が
成長していくにつれて立方晶窒化ホウ素の(111)面
が極めて優勢となり、立方晶窒化ホウ素への窒化アルミ
ニウムの拡散も認められなかった。このことにより、立
方晶窒化ホウ素は、ウルツ鉱型構造を有する窒化アルミ
ニウムの窒素密充填結晶面を基面として、その面上に立
方晶窒化ホウ素の窒素密充填結晶面である(111)面
が配向成長して、立方晶窒化ホウ素が形成されていくと
いう知見を得ることによって本発明を完成するに至った
ものである。
【0010】すなわち、本発明の立方晶窒化ホウ素被覆
体は、セラミックスの基体の表面に立方晶窒化ホウ素を
主成分とする外層を形成した被覆体において、前記基体
と前記外層との間に中間層を介在させ、該中間層がA
l,Ga,In,Tlの窒化物,窒酸化物及びこれらの
相互固溶体から選ばれた1種以上の窒素含有化合物層に
よって形成されているものである。
【0011】ここで用いる基体は、例えばAlN系セラ
ミックス,Al23系セラミックス,Si34系セラミ
ックス,SiC系セラミックス,ZrO2系セラミック
スに代表されるセラミックスを用途によって使い分ける
ことができる。
【0012】立方晶窒化ホウ素を主成分とする外層は、
μm単位の薄膜状の層からmm単位の厚膜状の層として
形成することができる。この内、薄膜状の層として形成
する場合は、立方晶窒化ホウ素からなる外層であるのに
対し、厚膜状の層として形成する場合は、立方晶窒化ホ
ウ素からなる外層にしたり、立方晶窒化ホウ素の他にF
e,Ni,Co,Al,Si及び周期律表4a,5a,
6a族金属又はAl,Siの窒化物,酸化物もしくは周
期律表4a,5a,6a族金属の炭化物,窒化物,ホウ
化物あるいはこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種
を含有した外層とすることもできる。
【0013】これらの基体と外層との間に介在させる中
間層はAl,Ga,In,Tlの窒化物,窒酸化物及び
これらの相互固溶体から選ばれた1種以上の成分でなる
窒素含有化合物層からなるものである。中間層は立方晶
窒化ホウ素を配向成長させるために窒素含有化合物層と
することが本発明の最も重要な特徴である。この窒素含
有化合物層としては、窒化アルミニウムに微量の酸素が
結合した窒酸化アルミニウム又はAlと周期律表4b族
に属するGa,In,Tlとの複合窒化物もしくは複合
窒酸化物も好ましいが高温における安定性及び立方晶窒
化ホウ素への転換のための触媒の効果性から窒化アルミ
ニウムが最も好ましいものである。
【0014】窒素含有化合物層の表面に立方晶窒化ホウ
素が形成されるのは、溶解析出機構によるものでなく、
窒素含有化合物層の窒素密充填結晶面に立方晶窒化ホウ
素の窒素密充填結晶面である(111)面が直接配向成
長していくものである。このことから窒素含有化合物層
の厚さは、窒素密充填結晶面、例えば窒化アルミニウム
の場合は(001)面であるが、この窒素密充填結晶面
を有する厚さであればよく、具体的には0.05μm以
上、好ましくは0.1μm以上の厚さで、逆に厚くしす
ぎると窒素含有化合物層内からの剥離又は破損が生じる
ために10μm以下好ましくは5μm以下の厚さがよ
い。
【0015】これらの中間層を具体的に示すと、窒素含
有化合物層としては、例えばAlN,GaN,InN,
TlN,Al(N,O),Ga(N,O),(Al,G
a)N,(Al,In)N,(Al,Tl)N,(A
l,Ga)(N,O),などを挙げることができる。こ
れらの中間層は、化学量論的化合物のみでなく、非化学
量論的化合物として形成されることもあり、非化学量論
的化合物の中でも金属元素に対して非金属元素の比が少
なくなった亜化学量論的化合物として形成されているこ
ともある。
【0016】本発明の立方晶窒化ホウ素被覆体の製造方
法は、基体の表面に中間層と立方晶窒化ホウ素を主成分
とする外層を設け、該基体と該外層との間に該中間層が
介在し、該外層は、中間層である窒素含有化合物層の窒
素原子の密充填面上への配向成長によって達成される方
法である。ここで述べている外層が窒素含有化合物層の
窒素原子の密充填面上への配向成長によって達成される
方法とは、種々の方法によって行なうことができる。そ
の内、特に立方晶窒化ホウ素の安定な高圧高温条件で行
なうのが立方晶窒化ホウ素の配向成長の促進性から最も
好ましく、その条件とは圧力が4.5GPa以上,温度
が700℃以上であることが好ましい方法である。
【0017】本発明の立方晶窒化ホウ素被覆体の製造方
法において使用する基体は、各種のセラミックスであ
り、これらの基体は、板状体,塊状体,粉末状又は粉末
圧粉体状のものを出発物質として用いることができる。
この内、板状体又は塊状体のものを出発物質として用い
る場合は、必要に応じて基体の表面を窒化又は浸炭処理
したり、もしくは研摩,洗浄及び乾燥などを行なうのも
中間層との密着性にすぐれることから好ましいことであ
る。
【0018】基体の表面に中間層を設ける方法は、例え
ば、CVD法,PVD法又はプラズマCVD法によって
薄膜状の層として形成させる方法、金属を蒸着した後浸
炭や窒化処理して金属化合物の層とする方法、スプレ
ー,刷毛塗りなどで粉末状として設ける方法、加圧成形
によって粉末圧粉体状として設ける方法又は板状体で設
ける方法がある。
【0019】また、基体と密着性を高めるために、中間
層として、基体の表面に金属又は合金からなる層を設け
る必要がある場合は、蒸着,イオンプレーテイング又は
スパッタのようなPVD法の他にメッキによっても形成
することができる。
【0020】外層を形成するための出発物質は、非晶質
窒化ホウ素,六方晶窒化ホウ素,菱面体型窒化ホウ素,
ウルツ鉱型窒化ホウ素又はこれらの窒化ホウ素に立方晶
窒化ホウ素を含有させたものがある。外層を形成するた
めの出発物質中に立方晶窒化ホウ素が存在すると、立方
晶窒化ホウ素への転換促進作用となるので外層の形成に
とって好ましいものである。勿論、立方晶窒化ホウ素を
そのまま外層を形成するための出発物質として用いるこ
ともできる。また、ボラジン又はボラジン誘導体を加圧
熱分解して得ることができる水素の含有した非晶質窒化
ホウ素は、立方晶窒化ホウ素への転換に要する活性化エ
ネルギーが低いことから外層を形成するための出発物質
として好ましいものである。さらに、六方晶窒化ホウ
素,非晶質窒化ホウ素又は水素を含有した非晶質窒化ホ
ウ素にボラジン,ボラジン誘導体又は窒化ホウ素を生じ
るホウ素と窒素と水素を含有した物質から選ばれた1種
を含有させたものは、立方晶窒化ホウ素への転換が容易
になることから外層を形成するための出発物質として好
ましいものである。
【0021】ここで述べてきたボラジンとは、化学式が
336のもので、ボラジン誘導体とは、例えば2,
4−ジアミノボラジン(B358),ボラゾナフタリ
ン(B558),ボラゾビフェニル(B6610)の
ような六員環構造のホウ素と窒素と水素の化合物を示す
ものである。また、窒化ホウ素を生じるホウ素と窒素と
水素の含有した物質とは、例えばジボラン(B26),
テトラボラン(B410),ペンタボラン−9(B
59),オクタボラン−12(B812),デカボラン
(B1014)などの水素化ホウ素とアンモニア又はヒド
ラジンからなるものである。
【0022】ボラジン,ボラジン誘導体又は窒化ホウ素
を生じるホウ素と窒素と水素を含有した物質の内、ボラ
ジン,2,4−ジアミノボラン,ペンタボラン−9,ペ
ンタボラン−11,ヘキサボラン−12のような常温で
液体のものは、六方晶窒化ホウ素,非晶質窒化ホウ素又
は水素を含有した非晶質窒化ホウ素からなる粉末状又は
粉末圧粉体状のなかに湿潤させると立方晶窒化ホウ素へ
の転換が容易になることから外層を形成するための出発
物質として好ましいものである。
【0023】外層を形成するための出発物質としては、
前述のような立方晶窒化ホウ素に転換する物質にFe,
Ni,Co,Al,Si及び周期律表4a,5a,6a
族金属又は周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物,
窒化物,ホウ化物もしくはこれらの相互固溶体の中の少
なくとも1種などを含有させることもできる。
【0024】本発明の立方晶窒化ホウ素被覆体の製造方
法を具体的に説明すると、第1の方法は、出発物質とし
ての基体が、例えば線引品,圧延品,鋳造品,鍛造品又
は焼結品からなる板状体もしくは塊状体である場合、基
体の表品を研摩,洗浄及び乾燥後CVD法,PVD法又
はプラズマCVD法によって中間層を設ける。次いで、
例えば0.05μm〜20μm程度の薄膜状の外層を形
成する目的で、中間層の表面にCVD法,PVD法又は
プラズマCVD法によって外層を形成するための出発物
質を設けた後ベルト型又はガードル型などの高圧高温装
置に設置して立方晶窒化ホウ素の安定な高圧高温条件下
で処理する方法である。
【0025】第2の方法は、第1の方法で用いたと同様
の基体を出発物質とし、この基体の表面に第1の方法と
同様にして中間層を形成した後、例えば0.1mm〜
0.8mm程度の厚膜状の外層を形成する目的で、中間
層の表面に外層を形成するための出発物質を粉末状又は
粉末圧粉体状として設け、次いで高温高圧装置に設置し
て立方晶窒化ホウ素の安定な高圧高温条件下で処理する
方法である。
【0026】第3の方法は、第1の方法で用いたと同様
の基体を出発物質とし、この基体の表面に粉末状,粉末
圧粉体状又は板状体でなる中間層を設けた後、この中間
層の表面に外層を形成するための出発物質を粉末状又は
粉末圧粉体状として設け、次いで高温高圧装置に設置し
て立方晶窒化ホウ素の安定な高圧高温条件下で処理する
方法である。
【0027】第4の方法は、出発物質としての基体,中
間層及び外層を全て粉末状又は粉末圧粉体状として設け
た後、高温高圧装置に設置して立方晶窒化ホウ素の安定
な高圧高温条件下で処理する方法である。
【0028】以上、外層の配向成長は、立方晶窒化ホウ
素の安定な高圧高温条件で行なう方法について述べてき
たが、従来のPVD法又はプラズマCVD法によって外
層の配向成長を行なうこともできるものである。これら
の方法の内、特に緻密な立方晶窒化ホウ素の外層とした
り、中間層の強度を考慮するときは第1又は第2の方法
が好ましい方法である。
【0029】
【作用】本発明の立方晶窒化ホウ素被覆体は、基体の表
面に中間層と外層からなる被覆層を形成させた被覆体
で、中間層としての窒素含有化合物層の窒素密充填面上
に外層としての立方晶窒化ホウ素の窒素密充填面が配向
成長して形成された被覆体である。このために、外層
は、立方晶窒化ホウ素が緻密に含有していて、立方晶窒
化ホウ素自体の有している高硬度性,高熱伝導性,高電
気絶縁性などの諸特性に近似した特性を有しているもの
である。また、外層は、中間層としての窒素含有化合物
層の窒素密充填面上に配向成長して形成されたものであ
るために中間層との密着性にすぐれているものである。
この中間層は、基体の材種に適した構成にすることがで
きるもので、このために基体との密着性にすぐれている
ものである。以上のことから、本発明の立方晶窒化ホウ
素被覆体は、外層のすぐれた特性を充分に発揮すること
ができるものである。
【0030】
【実施例1】Al23−20vol%Ti(N,C)−
0.5vol%MgO組成のセラミックス焼結体で作成
した形状寸法10φ×3mmの基体の表面をダイヤモン
ド砥石で研摩後蒸留水及びエチルアルコールで洗浄,乾
燥した。次いで、この基体をCVD装置の容器内に設置
し、5vol%AlCl3−35vol%N2−60vo
l%H2雰囲気中、圧力70Torr,温度1050
℃,保持時間20分にて基体の表面にAlN層を形成さ
せた。次に、容器内のガスを真空排気した後、9vol
%BCl3−23vol%H2−36vol%NH3−3
2vol%Ar雰囲気中、圧力50Torr,温度10
00℃,保持時間120分の条件でAlN層の表面に窒
化ホウ素の層を形成させた。このときの窒化ホウ素の層
は、X線回折で調べた所、非晶質窒化ホウ素と六方晶窒
化ホウ素の混合物であった。これを高圧高温装置に設置
して、圧力5.5GPa,温度1300℃の条件で処理
して本発明の被覆体を得た。こうして得た本発明の被覆
体をX線回折及び走査型電子顕微鏡にて調べた所、外層
は厚さ2μmの立方晶窒化ホウ素の層であり、中間層は
厚さ0.5μmのAlN層であった。また、外層は緻密
で均一な薄膜であり、その硬さはマイクロビッカースで
5300kg/mm2であった。
【0031】
【実施例2】Si34−8vol%AlN−8vol%
MgO組成のセラミックス焼結体で作製した形状寸法1
0φ×3mmの基体の表面を実施例1と同様にしてAl
N層を形成させた。次いで、AlN層の表面にボラジン
を加圧熱分解して得た窒素の含有した非晶質窒化ホウ素
の粉末圧粉体を設けた後高圧高温装置に設置して、圧力
6GPa,温度1400℃の条件で処理して本発明の被
覆体を得た。こうして得た本発明の被覆体をX線回折及
び走査型電子顕微鏡にて調べた所、外層は厚さ0.4m
mの立方晶窒化ホウ素の層であり、中間層は厚さ0.5
μmのAlN層であった。また、外層は緻密で均一な厚
膜であり、その硬さはマイクロビッカースで5700k
g/mm2であった。
【0032】
【発明の効果】本発明の立方晶窒化ホウ素被覆体は、立
方晶窒化ホウ素が緻密で均一な厚膜又は薄膜の外層とし
て形成されており、この外層と基体との間に中間層が介
在されているものである。このために、本発明の被覆体
は、外層と中間層,中間層と基体及び中間層内における
密着性及び耐剥離性にすぐれており、外層のすぐれた諸
特性を充分に発揮することができるものである。例え
ば、外層が有している高硬度性,高熱伝導性,耐摩耗
性,耐酸化性,耐熱性及び耐化学的安定性を利用して、
本発明の被覆体は、切削工具又は耐摩耗工具として応用
することができるものである。また、外層が有している
高熱伝導性及び高電気絶縁性を利用して、本発明の被覆
体は、ECL,LSIのパッケージ,バイポーラLSI
メモリのマルチチップモジュール又は通信用半導体レー
ザのマウントなどのヒートシンク部を含めた半導体基板
として応用することができるものである。
【0033】特に、外層を厚膜として成長させた場合、
外層の最上表を形成する立方晶窒化ホウ素の結晶面は、
ほとんどすべてが(111)面となり、周知の如くこの
面は最も硬さが高く、耐摩耗性にすぐれた面であるので
切削工具又は耐摩耗工具としての用途上すぐれた効果が
得られるものである。また、最上表が立方晶窒化ホウ素
の(111)面でなる外層は、熱伝導性及び電気絶縁性
にもすぐれた効果を発揮するので、その方向性を利用し
て、各種の材料部品に応用できるものである。
【0034】このように、本発明の被覆体は、工具材料
部品,電子材料部品,精密機器材料部品またはロボット
材料部品などあらゆる産業分野の材料部品として応用で
きる産業上有用な材料である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックスの基体の表面に立方晶窒化
    ホウ素を主成分とする外層を形成した被覆体において、
    前記基体と前記外層との間に中間層を介在させ、該中間
    層がAl,Ga,In,Tlの窒化物,窒酸化物及びこ
    れらの相互固溶体から選ばれた1種以上の窒素含有化合
    物層によって形成されていることを特徴とする立方晶窒
    化ホウ素被覆体。
JP5107587A 1993-04-09 1993-04-09 立方晶窒化ホウ素被覆体 Expired - Fee Related JPH07121835B2 (ja)

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