JPH07118810A - 耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents
耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼Info
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- JPH07118810A JPH07118810A JP26224293A JP26224293A JPH07118810A JP H07118810 A JPH07118810 A JP H07118810A JP 26224293 A JP26224293 A JP 26224293A JP 26224293 A JP26224293 A JP 26224293A JP H07118810 A JPH07118810 A JP H07118810A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】 C:0.05wt%以下、Si:2.0 超〜4.0 wt%、
Mn:2.0 wt%以下、Cr:12〜30wt%、Ni:7〜20wt%、
V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt%およびP:0.
06超〜0.20wt%を含有し、必要に応じて5%以下のMo、
ならびにCa, Y,REM およびZrを含有する高Si−P含有
オーステナイト系ステンレス鋼。 【効果】 耐高温塩害特性ばかりか耐熱疲労特性に優
れ、しかも製造効率の向上および生産コストの低減が可
能である。自動車排気システムや廃棄物焼却炉等のよう
に塩化物が付着した状態で高温加熱と冷却とが繰り返さ
れ、熱疲労および高温塩害が問題となる環境に使用して
好適である。
Mn:2.0 wt%以下、Cr:12〜30wt%、Ni:7〜20wt%、
V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt%およびP:0.
06超〜0.20wt%を含有し、必要に応じて5%以下のMo、
ならびにCa, Y,REM およびZrを含有する高Si−P含有
オーステナイト系ステンレス鋼。 【効果】 耐高温塩害特性ばかりか耐熱疲労特性に優
れ、しかも製造効率の向上および生産コストの低減が可
能である。自動車排気システムや廃棄物焼却炉等のよう
に塩化物が付着した状態で高温加熱と冷却とが繰り返さ
れ、熱疲労および高温塩害が問題となる環境に使用して
好適である。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、耐熱疲労特性および
耐高温塩害特性に優れるステンレス鋼に関し、なかでも
自動車排気ガスシステムや廃棄物焼却炉等のように塩化
物が付着した状態で高温加熱と冷却とが繰り返され、熱
疲労および高温塩害が問題となる環境に使用して好適な
高Si−P含有オーステナイト系ステンレス鋼に関するも
のである。
耐高温塩害特性に優れるステンレス鋼に関し、なかでも
自動車排気ガスシステムや廃棄物焼却炉等のように塩化
物が付着した状態で高温加熱と冷却とが繰り返され、熱
疲労および高温塩害が問題となる環境に使用して好適な
高Si−P含有オーステナイト系ステンレス鋼に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】例えば、自動車排気浄化装置などにおい
ては、近年の自動車エンジンの高性能化、高効率化によ
って、その排気温度が1000℃以上になりつつあることか
ら、従来、排気系部品材料に用いられてきたフェライト
系ステンレス鋼ではもはや対応できなくなっている。そ
こで、フェライト系ステンレス鋼よりも高温強度が高い
オーステナイト系ステンレス鋼の使用が検討され始め
た。しかし、このオーステナイト系ステンレス鋼は一般
に、熱膨張係数が大きいため、繰り返し加熱、冷却が行
われるような部品では、熱疲労破壊が懸念されていた。
また、自動車排気系の部品では、路上に融雪材が散布さ
れるために塩化物が付着し、かかる塩化物の付着した状
態での高温腐食、いわゆる高温塩害が問題となってい
た。
ては、近年の自動車エンジンの高性能化、高効率化によ
って、その排気温度が1000℃以上になりつつあることか
ら、従来、排気系部品材料に用いられてきたフェライト
系ステンレス鋼ではもはや対応できなくなっている。そ
こで、フェライト系ステンレス鋼よりも高温強度が高い
オーステナイト系ステンレス鋼の使用が検討され始め
た。しかし、このオーステナイト系ステンレス鋼は一般
に、熱膨張係数が大きいため、繰り返し加熱、冷却が行
われるような部品では、熱疲労破壊が懸念されていた。
また、自動車排気系の部品では、路上に融雪材が散布さ
れるために塩化物が付着し、かかる塩化物の付着した状
態での高温腐食、いわゆる高温塩害が問題となってい
た。
【0003】これに対して従来、自動車の排気系に用い
られるオーステナイト系ステンレス鋼については、例え
ば特公平5-7458 号公報に、塩化物共存下での耐高温腐
食性に優れたステンレス鋼として開示がある。しかしな
がら、この公報に開示された鋼は、専ら高温腐食性の向
上を目的としたものであり、耐熱疲労特性については何
ら考慮されていなかった。
られるオーステナイト系ステンレス鋼については、例え
ば特公平5-7458 号公報に、塩化物共存下での耐高温腐
食性に優れたステンレス鋼として開示がある。しかしな
がら、この公報に開示された鋼は、専ら高温腐食性の向
上を目的としたものであり、耐熱疲労特性については何
ら考慮されていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上述した
耐熱疲労および耐高温塩害に優れるステンレス鋼にかか
る研究開発の成果を提案しようとするものである。即
ち、この発明の目的は、耐高温塩害特性に優れ、しかも
耐熱疲労特性にも優れる、高Si−P含有オーステナイト
系ステンレス鋼を提案するところにある。
耐熱疲労および耐高温塩害に優れるステンレス鋼にかか
る研究開発の成果を提案しようとするものである。即
ち、この発明の目的は、耐高温塩害特性に優れ、しかも
耐熱疲労特性にも優れる、高Si−P含有オーステナイト
系ステンレス鋼を提案するところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上掲の目的に叶うものと
して開発したこの発明は、次のような要旨構成を有する
ものである。 (1) C:0.05wt%以下、 Si:2.0 超〜4.0 wt%、Mn:
2.0 wt%以下、 Cr:12〜30wt%、Ni:7〜20wt%、
V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt%およびP:
0.06超〜0.20wt%を含有し、残部はFeおよび不可避的不
純物よりなる耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼(第1発明)。 (2) 上記第1発明において、さらに、下記の〜の各
成分を少なくとも1種以上含有させてなる耐熱疲労特性
および耐高温塩害特性に優れたオーステナイト系ステン
レス鋼。 Mo:5wt%以下(第2発明) Ca, Y, REM (単独または合計で0.001 〜0.1 wt
%)およびZr(0.05〜1.0wt%)のうちから選ばれる1
種または2種以上(第3発明) Mo:5.0 wt%に加えてさらに、Ca, Y, REM (単独
または合計で0.001 〜0.1 wt%)およびZr(0.05〜1.0
wt%)のうちから選ばれる1種または2種以上(第4発
明)
して開発したこの発明は、次のような要旨構成を有する
ものである。 (1) C:0.05wt%以下、 Si:2.0 超〜4.0 wt%、Mn:
2.0 wt%以下、 Cr:12〜30wt%、Ni:7〜20wt%、
V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt%およびP:
0.06超〜0.20wt%を含有し、残部はFeおよび不可避的不
純物よりなる耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼(第1発明)。 (2) 上記第1発明において、さらに、下記の〜の各
成分を少なくとも1種以上含有させてなる耐熱疲労特性
および耐高温塩害特性に優れたオーステナイト系ステン
レス鋼。 Mo:5wt%以下(第2発明) Ca, Y, REM (単独または合計で0.001 〜0.1 wt
%)およびZr(0.05〜1.0wt%)のうちから選ばれる1
種または2種以上(第3発明) Mo:5.0 wt%に加えてさらに、Ca, Y, REM (単独
または合計で0.001 〜0.1 wt%)およびZr(0.05〜1.0
wt%)のうちから選ばれる1種または2種以上(第4発
明)
【0006】以下、この発明にかかる高Si−P含有オー
ステナイト系ステンレス鋼を開発するに到った経緯につ
いて述べる。一般に、オーステナイト系ステンレス鋼中
のPは、どちらかと言うと有害成分として認識されてい
て、できるだけ低減することが必要とされていた。しか
しながら、ある種の成分系, 即ちオーステナイト系ステ
ンレス鋼については、P低減工程の省略または積極的な
P添加によって、このPを0.06%を超えて含有させた場
合、このオーステナイト系ステンレス鋼の耐熱疲労特性
を著しく向上させることができることを見出し、この発
明を完成するに到ったのである。
ステナイト系ステンレス鋼を開発するに到った経緯につ
いて述べる。一般に、オーステナイト系ステンレス鋼中
のPは、どちらかと言うと有害成分として認識されてい
て、できるだけ低減することが必要とされていた。しか
しながら、ある種の成分系, 即ちオーステナイト系ステ
ンレス鋼については、P低減工程の省略または積極的な
P添加によって、このPを0.06%を超えて含有させた場
合、このオーステナイト系ステンレス鋼の耐熱疲労特性
を著しく向上させることができることを見出し、この発
明を完成するに到ったのである。
【0007】すなわち、JIS 4304の熱間圧延ステンレス
鋼板およびJIS 4305の冷間圧延ステンレス鋼板で規定さ
れているオーステナイトステンレス鋼のP含有量は、SU
S 201 、SUS 202 の2種については0.060 %以下、その
他については0.045 %以下である。ところが、発明者ら
は、NbおよびVを複合添加させたオーステナイト系ステ
ンレス鋼の場合には、Pが耐熱疲労特性の向上に有効に
寄与することを見出した。このように、Pが耐熱疲労特
性に有用である理由については明確でないが、その一つ
に、PはNb−V析出物を微細分散させ、強度、延性を向
上させることによるものと考えられる。また、発明者ら
は、Pが耐高温塩害特性、耐酸化性に関しては悪影響を
及ぼさないことも併せて見出し、この発明に想到したの
である。
鋼板およびJIS 4305の冷間圧延ステンレス鋼板で規定さ
れているオーステナイトステンレス鋼のP含有量は、SU
S 201 、SUS 202 の2種については0.060 %以下、その
他については0.045 %以下である。ところが、発明者ら
は、NbおよびVを複合添加させたオーステナイト系ステ
ンレス鋼の場合には、Pが耐熱疲労特性の向上に有効に
寄与することを見出した。このように、Pが耐熱疲労特
性に有用である理由については明確でないが、その一つ
に、PはNb−V析出物を微細分散させ、強度、延性を向
上させることによるものと考えられる。また、発明者ら
は、Pが耐高温塩害特性、耐酸化性に関しては悪影響を
及ぼさないことも併せて見出し、この発明に想到したの
である。
【0008】このようなPの作用効果は、次の2つの点
から重要な知見と言える。一つは、生産性の向上であ
る。従来、P含有量を0.060 wt%以下に低減させるため
には、脱P工程が必要であった。そのため、0.060 wt%
を超えるような含有が許されるならば、この脱P工程の
省略、または工程時間の短縮が可能になり、著しく生産
性が向上する。もう一つは、生産コストの低減である。
Pは安価な成分であり、含P溶銑にさらにPを添加する
としても、製品価格への影響はほとんどない。また、上
述した脱P工程の省略、または工程時間の短縮も生産コ
ストの低減に寄与する。このように、P含有によるオー
ステナイト系ステンレス鋼の耐熱疲労特性の向上は、工
業的に大きな意味を有している。
から重要な知見と言える。一つは、生産性の向上であ
る。従来、P含有量を0.060 wt%以下に低減させるため
には、脱P工程が必要であった。そのため、0.060 wt%
を超えるような含有が許されるならば、この脱P工程の
省略、または工程時間の短縮が可能になり、著しく生産
性が向上する。もう一つは、生産コストの低減である。
Pは安価な成分であり、含P溶銑にさらにPを添加する
としても、製品価格への影響はほとんどない。また、上
述した脱P工程の省略、または工程時間の短縮も生産コ
ストの低減に寄与する。このように、P含有によるオー
ステナイト系ステンレス鋼の耐熱疲労特性の向上は、工
業的に大きな意味を有している。
【0009】
【作用】以下、この発明の鋼において、成分組成の範囲
を上記のように限定した理由について説明する。 C:0.05wt%以下 Cは、高温環境下での使用の際または溶接時に、Cr炭化
物として析出し、耐酸化性を劣化させるのみならず、耐
高温塩害特性をも劣化させる。このため、上限を0.05wt
%とした。
を上記のように限定した理由について説明する。 C:0.05wt%以下 Cは、高温環境下での使用の際または溶接時に、Cr炭化
物として析出し、耐酸化性を劣化させるのみならず、耐
高温塩害特性をも劣化させる。このため、上限を0.05wt
%とした。
【0010】Si:2.0 超〜4.0 wt% Siは、鋼の耐高温塩害特性を顕著に向上させる成分であ
る。その効果は、2.0wt%を超えて含有させた場合に特
に著しいので2.0 wt%超を下限とし、また、4.0 wt%を
超えて含有させると鋼の加工性を劣化させるので4.0 wt
%を上限とする。
る。その効果は、2.0wt%を超えて含有させた場合に特
に著しいので2.0 wt%超を下限とし、また、4.0 wt%を
超えて含有させると鋼の加工性を劣化させるので4.0 wt
%を上限とする。
【0011】Mn:2.0 wt%以下 Mnは、過剰に含有させると耐高温塩害特性、耐酸化性の
劣化を招くばかりでなく、熱間加工性をも低下させるた
め、2.0 wt%を上限とする。
劣化を招くばかりでなく、熱間加工性をも低下させるた
め、2.0 wt%を上限とする。
【0012】Cr:12〜30wt% Crは、耐酸化性のために有効な成分であり、そのために
は12wt%以上の含有が必要であるが、30wt%を超える過
剰な含有は、熱間加工性を劣化させるため、12〜30wt%
の範囲の含有量とする。 Ni:7〜20wt% Niは、オーステナイト組織の確保の点から7wt%以上の
含有とする。しかしNi含有量の増加はコストの増大を招
くので20wt%を上限とする。
は12wt%以上の含有が必要であるが、30wt%を超える過
剰な含有は、熱間加工性を劣化させるため、12〜30wt%
の範囲の含有量とする。 Ni:7〜20wt% Niは、オーステナイト組織の確保の点から7wt%以上の
含有とする。しかしNi含有量の増加はコストの増大を招
くので20wt%を上限とする。
【0013】V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt% V、Nbは、いずれも耐熱疲労特性を向上させる成分であ
る。しかし、図1に示すように、Nb単独添加の場合に
は、Pを所定量で含有させても耐熱疲労特性は特には向
上しない。これに対し、NbおよびVを複合添加したもの
では、P添加の効果が著しい。したがって、この発明に
おいては、NbとVを添加するときは常に複合添加するも
のとし、その含有量については、加工性の点からNb:0.
25wt%以上, 望ましくは 0.3wt%以上、V:0.1 wt%以
上とする。一方、過剰の含有は表面品質の悪化を招くか
ら、各々上限を1.0 wt%, 望ましくはNb:0.5 wt%,
V:0.4 wt%とする。
る。しかし、図1に示すように、Nb単独添加の場合に
は、Pを所定量で含有させても耐熱疲労特性は特には向
上しない。これに対し、NbおよびVを複合添加したもの
では、P添加の効果が著しい。したがって、この発明に
おいては、NbとVを添加するときは常に複合添加するも
のとし、その含有量については、加工性の点からNb:0.
25wt%以上, 望ましくは 0.3wt%以上、V:0.1 wt%以
上とする。一方、過剰の含有は表面品質の悪化を招くか
ら、各々上限を1.0 wt%, 望ましくはNb:0.5 wt%,
V:0.4 wt%とする。
【0014】P:0.06超〜0.20wt% Pは、この発明において特に重要な役割を担う元素であ
る。ただし、Nb−V無添加鋼の場合には、Pによる耐熱
疲労特性の向上効果が認められないものの、Nb−V複合
添加鋼においては、P含有による効果が認められる。こ
れは、Nb−V複合析出物の形態を変化させることに対応
するものと考えられるが、現在のところ明確には解明で
きてはいない。Pの熱疲労寿命向上に対する効果は、0.
06wt%を超えて含有させた場合に顕著となる。しかし、
過剰の含有は、鋼の熱間加工性に悪影響を及ぼすため、
0.06超〜0.20wt%、より好ましくは、0.06〜0.13wt%の
範囲とする。
る。ただし、Nb−V無添加鋼の場合には、Pによる耐熱
疲労特性の向上効果が認められないものの、Nb−V複合
添加鋼においては、P含有による効果が認められる。こ
れは、Nb−V複合析出物の形態を変化させることに対応
するものと考えられるが、現在のところ明確には解明で
きてはいない。Pの熱疲労寿命向上に対する効果は、0.
06wt%を超えて含有させた場合に顕著となる。しかし、
過剰の含有は、鋼の熱間加工性に悪影響を及ぼすため、
0.06超〜0.20wt%、より好ましくは、0.06〜0.13wt%の
範囲とする。
【0015】Mo:5wt%以下 第2発明、第4発明では、Moを含有させる。Moは、高温
強度を増大させ、また耐高温塩害特性をも向上させる成
分である。その効果を発揮させるためには、0.5 wt%程
度以上を含有させるのが好ましい。しかし、Moは、高価
な成分であるため上限を5wt%とする。
強度を増大させ、また耐高温塩害特性をも向上させる成
分である。その効果を発揮させるためには、0.5 wt%程
度以上を含有させるのが好ましい。しかし、Moは、高価
な成分であるため上限を5wt%とする。
【0016】Ca、Y、REM (希土類元素)およびZrのう
ちから選ばれる1種または2種以上(Ca、Y、REM の場
合は1種または2種以上を単独または合計で0.001 〜0.
1 wt%、Zrの場合は0.05〜1.0 wt%)。第3発明、第4
発明においてはCa、Y、REM ( La、Ce等)およびZrから
選ばれる1種または2種以上を含有させる。これら(Ca,
Y, REM ) の元素はいずれも、鋼の耐酸化性および耐高
温塩害特性を向上させる成分である。その効果を得るた
めの最低限として1種以上の合計量で0.001 wt%を必要
とするが、過剰の含有は、加工性、溶接性を劣化させる
ため、1種以上の合計量で0.1 wt%を上限とする。ま
た、Zrも耐酸化性に関して同様な効果を有する成分であ
る。その効果を発生させるにはZr量が0.05wt%以上必要
であり、また、過剰のZrの含有は、加工性、溶接性を劣
化させるため、1.0 wt%を上限とする。耐酸化性向上の
ためには、Ca、Y、REM およびZrを単独添加、複合添加
のいずれの方法でもよい。
ちから選ばれる1種または2種以上(Ca、Y、REM の場
合は1種または2種以上を単独または合計で0.001 〜0.
1 wt%、Zrの場合は0.05〜1.0 wt%)。第3発明、第4
発明においてはCa、Y、REM ( La、Ce等)およびZrから
選ばれる1種または2種以上を含有させる。これら(Ca,
Y, REM ) の元素はいずれも、鋼の耐酸化性および耐高
温塩害特性を向上させる成分である。その効果を得るた
めの最低限として1種以上の合計量で0.001 wt%を必要
とするが、過剰の含有は、加工性、溶接性を劣化させる
ため、1種以上の合計量で0.1 wt%を上限とする。ま
た、Zrも耐酸化性に関して同様な効果を有する成分であ
る。その効果を発生させるにはZr量が0.05wt%以上必要
であり、また、過剰のZrの含有は、加工性、溶接性を劣
化させるため、1.0 wt%を上限とする。耐酸化性向上の
ためには、Ca、Y、REM およびZrを単独添加、複合添加
のいずれの方法でもよい。
【0017】なお、この発明の鋼の製造方法について
は、特に限定するものではなく、従来公知の方法により
溶製・成形することができる。
は、特に限定するものではなく、従来公知の方法により
溶製・成形することができる。
【0018】
【実施例】表1に示す種々の成分組成になる鋼を用意し
た。
た。
【0019】
【表1】
【0020】これらの鋼について熱疲労寿命、耐酸化
性、耐高温塩害特性について調査した。熱疲労寿命につ
いては、供試鋼50kgを真空溶解により溶製し、鍛造加
工、溶体化処理(1150℃、30min 後水冷)を施した後
に、8mmφの丸棒試験片を採取し、熱疲労試験を行って
調べた。この試験条件は、100 〜1000℃の範囲で、1サ
イクル中に発生する全歪み量を1%に制御して行った。
性、耐高温塩害特性について調査した。熱疲労寿命につ
いては、供試鋼50kgを真空溶解により溶製し、鍛造加
工、溶体化処理(1150℃、30min 後水冷)を施した後
に、8mmφの丸棒試験片を採取し、熱疲労試験を行って
調べた。この試験条件は、100 〜1000℃の範囲で、1サ
イクル中に発生する全歪み量を1%に制御して行った。
【0021】また、耐酸化性および耐高温塩害特性につ
いては、まず、供試鋼各50kgを真空溶解により溶製し、
熱間圧延および冷間圧延により厚み2mmの鋼板としたの
ち、溶体化処理(1150℃、30min 後水冷)を施し、しか
る後に各鋼板より厚み2mm、幅20mm、長さ30mmの試験片
を採取した。これらの試験片につき、耐酸化性の評価
は、大気中で1100℃で30分間加熱後、15分空冷を1サイ
クルとした試験を200 サイクル行い、試験前後での試験
片の重量変化を測定して、0〜−20mgのものをランク
A、−20mg超〜−50mgのものをランクB、−50mgより大
きいものをランクCとして評価した。耐高温塩害特性の
評価については、室温のNaCl飽和食塩水に5分浸漬後、
700 ℃、200 時間大気中加熱を1サイクルとして試験を
10サイクル行った後、錆落としをした試験片の重量変化
を測定して、0〜−50mg/cm2のものをランクA、−50mg
/cm2超〜−100mg/cm2 のものをランクB、−100mg/cm2
より大きいものをランクCとして評価した。かくして得
られた実験結果について表2にまとめて示す。
いては、まず、供試鋼各50kgを真空溶解により溶製し、
熱間圧延および冷間圧延により厚み2mmの鋼板としたの
ち、溶体化処理(1150℃、30min 後水冷)を施し、しか
る後に各鋼板より厚み2mm、幅20mm、長さ30mmの試験片
を採取した。これらの試験片につき、耐酸化性の評価
は、大気中で1100℃で30分間加熱後、15分空冷を1サイ
クルとした試験を200 サイクル行い、試験前後での試験
片の重量変化を測定して、0〜−20mgのものをランク
A、−20mg超〜−50mgのものをランクB、−50mgより大
きいものをランクCとして評価した。耐高温塩害特性の
評価については、室温のNaCl飽和食塩水に5分浸漬後、
700 ℃、200 時間大気中加熱を1サイクルとして試験を
10サイクル行った後、錆落としをした試験片の重量変化
を測定して、0〜−50mg/cm2のものをランクA、−50mg
/cm2超〜−100mg/cm2 のものをランクB、−100mg/cm2
より大きいものをランクCとして評価した。かくして得
られた実験結果について表2にまとめて示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2から明らかなように、この発明の鋼
は、従来鋼、比較鋼と比べて、優れた耐熱疲労特性、耐
酸化性および耐高温塩害特性を兼ね備えていることがわ
かる。
は、従来鋼、比較鋼と比べて、優れた耐熱疲労特性、耐
酸化性および耐高温塩害特性を兼ね備えていることがわ
かる。
【0024】また、表1における鋼の一部について熱疲
労寿命を、P量で整理した結果を図1に示す。図1から
明らかなように、Nb、V無添加鋼は、熱疲労寿命が劣っ
ていた。Nb単独添加の場合には、Pを含有させても耐熱
疲労特性は向上しなかった。そして、Nb−V複合添加鋼
はP含有量の増加に従って熱疲労寿命が向上した。
労寿命を、P量で整理した結果を図1に示す。図1から
明らかなように、Nb、V無添加鋼は、熱疲労寿命が劣っ
ていた。Nb単独添加の場合には、Pを含有させても耐熱
疲労特性は向上しなかった。そして、Nb−V複合添加鋼
はP含有量の増加に従って熱疲労寿命が向上した。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明にかかるオー
ステナイト系ステンレス鋼は、耐高温塩害特性ばかりか
耐熱疲労特性に優れるものであり、しかも製造効率の向
上および生産コストの低減が可能であって、工業上、そ
の効果は大である。
ステナイト系ステンレス鋼は、耐高温塩害特性ばかりか
耐熱疲労特性に優れるものであり、しかも製造効率の向
上および生産コストの低減が可能であって、工業上、そ
の効果は大である。
【図1】P含有量が耐熱疲労寿命に与える影響を、他の
添加成分との関連において示したグラフである。
添加成分との関連において示したグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】C:0.05wt%以下、 Si:2.0 超〜4.0 wt
%、 Mn:2.0 wt%以下、 Cr:12〜30wt%、 Ni:7〜20wt%、 V:0.1 〜1.0 wt%、 Nb:0.25〜1.00wt%およびP:0.06超〜0.20wt%を含有
し、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる耐熱疲労特
性および耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステ
ンレス鋼。 - 【請求項2】C:0.05wt%以下、 Si:2.0 超〜4.0 wt
%、 Mn:2.0 wt%以下、 Cr:12〜30wt%、 Ni:7〜20wt%、 Mo:5wt%以下、 V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt%およびP:0.
06超〜0.20wt%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物よりなる耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れる
オーステナイト系ステンレス鋼。 - 【請求項3】C:0.05wt%以下、 Si:2.0 超〜4.0 wt
%、 Mn:2.0 wt%以下、 Cr:12〜30wt%、 Ni:7〜20wt%、 V:0.1 〜1.0 wt%、 Nb:0.25〜1.00wt%およびP:0.06超〜0.20wt%を含有
し、かつCa、Y、REM およびZrのうちから選ばれる1種
または2種以上(Ca、Y、REMの場合は1種または2種
以上を単独または合計で0.001 〜0.1 wt%、Zrの場合は
0.05〜1.0 wt%)を含有し、残部はFeおよび不可避的不
純物よりなる耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼。 - 【請求項4】C:0.05wt%以下、 Si:2.0 超〜4.0 wt
%、 Mn:2.0 wt%以下、 Cr:12〜30wt%、 Ni:7〜20wt%、 Mo:5wt%以下、 V:0.1 〜1.0 wt%、Nb:0.25〜1.00wt%およびP:0.
06超〜0.20wt%以下を含有し、かつCa、Y、REM および
Zrのうちから選ばれる1種または2種以上(Ca、Y、RE
Mの場合は1種または2種以上を単独または合計で0.001
〜0.1 wt%、Zrの場合は0.05〜1.0 wt%)を含有し、
残部はFeおよび不可避的不純物よりなる耐熱疲労特性お
よび耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステンレ
ス鋼。
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---|---|---|---|
JP26224293A JP3278507B2 (ja) | 1993-10-20 | 1993-10-20 | 耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP26224293A JP3278507B2 (ja) | 1993-10-20 | 1993-10-20 | 耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼 |
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JPH07118810A true JPH07118810A (ja) | 1995-05-09 |
JP3278507B2 JP3278507B2 (ja) | 2002-04-30 |
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JP26224293A Expired - Fee Related JP3278507B2 (ja) | 1993-10-20 | 1993-10-20 | 耐熱疲労特性および耐高温塩害特性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006106944A1 (ja) | 2005-04-04 | 2006-10-12 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | オーステナイト系ステンレス鋼 |
-
1993
- 1993-10-20 JP JP26224293A patent/JP3278507B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006106944A1 (ja) | 2005-04-04 | 2006-10-12 | Sumitomo Metal Industries, Ltd. | オーステナイト系ステンレス鋼 |
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