JPH07115920A - アレルゲン低減化米の製造方法 - Google Patents

アレルゲン低減化米の製造方法

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JPH07115920A
JPH07115920A JP5285709A JP28570993A JPH07115920A JP H07115920 A JPH07115920 A JP H07115920A JP 5285709 A JP5285709 A JP 5285709A JP 28570993 A JP28570993 A JP 28570993A JP H07115920 A JPH07115920 A JP H07115920A
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一昭 鈴木
Sadasuke Shimada
禎祐 嶋田
Kazufumi Tsubaki
和文 椿
Kazunori Kikuchi
一憲 菊地
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 アレルゲン低減化米の製造方法を提供する。 【構成】 米をアルカリ性水溶液に浸漬することからな
る。 【効果】 市販米をそのまま使用して、簡易で安価な手
段により、米に含まれているアレルゲンタンパク質を中
心に除去ないし低減することができるので、米の栄養価
を実質的に低下させることがない。従って、米等の穀類
アレルギー患者に有効な食品又は食品原料を提供するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アレルゲン低減化米の
製造方法に関する。詳しくは、穀物、特に米に対してア
レルギー反応を起こす患者が、食料として用いることが
できるアレルゲン低減化米の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】日常欠かすことのできない食物の摂取
が、時として生体に異常な反応を引き起こすことがあ
る。この中で、食物中の物質が抗原として認識され、一
連の免疫学的機序により、喘息、湿疹などの症状を呈す
る病態を食物アレルギーと呼んでいる。食物アレルギー
患者は、推定で人口の約1%弱とみられており、特に小
児においては、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの原
因として食物アレルギーの発症頻度も高い。食物アレル
ギーは、一般に、牛乳、卵、大豆などが食物アレルギー
の原因物質になることが多いといわれているが、近年で
は、米や小麦などの穀物によるアレルギーが増加してい
る〔山田一恵ら,小児科臨床,第38巻2545以下
(1985);荒井綜一ら,小児内科,第22巻415
以下(1990)〕。
【0003】食物アレルギー患者の治療法としては、薬
物による対症療法の他、アレルギーの原因となる食物を
制限、あるいは摂取させない方法が試みられているが、
食物を制限することは、生命の維持、発育にも支障をき
たしかねない。そこで、アレルギーを起こす成分のみを
除去し、他の栄養成分は損なわないような食品を摂取さ
せる方法が研究されている。
【0004】近年、食物アレルギーを引き起こす成分、
即ちアレルゲンについて研究が進み、小麦の場合は、塩
水溶液可溶画分であるグロブリン画分にアレルゲンが存
在することがわかった〔例えば、Pilar Palo
mino,et.al.FEBS Letters 2
61(1)85〜(1990)〕。米に関しては、グロ
ブリンである分子量16kdのタンパク質がアレルゲン
であることが報告されており〔中村良,化学と生物,第
25巻739以下(1987)〕、そのタンパク質を含
む米のアルブミン及びグロブリン画分をタンパク質分解
酵素によって分解し、アレルゲンを低減化した米の製造
方法が、特開平2−167040号公報に記載されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、タンパク質分
解酵素を使用する前記方法は、使用する酵素が高価であ
るため製造コストが高くなり、結果として製造したアレ
ルゲン低減化米の価格が高くなってしまうという問題点
があった。従って、本発明の目的は、穀物、特に米に対
してアレルギー反応を起こす患者が食料として用いるこ
とができる極めて有効なアレルゲン低減化米を低コスト
で製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記の目的は、本発明に
より、米をアルカリ性水溶液に浸漬することを特徴とす
るアレルゲン低減化米の製造方法によって達成すること
ができる。
【0007】本発明方法で使用されるアルカリ性水溶液
としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム又はカリ
ウム)又はアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム又
はカルシウム)の水酸化物又はリン酸化合物の水溶液、
或いはアンモニア水溶液を挙げることができる。具体的
には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶
液、アンモニア水、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化
カルシウム水溶液、リン酸2ナトリウム水溶液、リン酸
3ナトリウム水溶液、リン酸2カリウム水溶液、リン酸
3カリウム水溶液等の内から選ばれる1種又は2種以上
の水溶液を挙げることができる。とりわけアルカリ金属
水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが最も好まし
い。
【0008】前記水溶液のpHは、8.5以上であれば
よいが、好ましくはpH12以上、更に好ましくはpH
13の強アルカリである。前記の水酸化物又はリン酸塩
の濃度は、その種類によらず、前記pHの範囲内であれ
ば特に制限されないが、易溶性のアルカリ金属水酸化物
(特に水酸化ナトリウム)の場合には約0.001M〜
5Mが好ましく、0.02M〜1Mが最も好ましい。ア
ルカリ金属水酸化物(特に水酸化ナトリウム)の場合、
その濃度が0.001Mよりも低いと、アレルゲンの抽
出効率が極端に低下し、また、5Mよりも高いと、かえ
って抽出効率が落ち、また、中和に多量の酸が必要とな
り、排水処理が困難になる。原料に用いる米は特に制限
されず、市販米(すなわち、脱穀・精米後のウルチ米又
はモチ米)をそのまま使用することができ、例えば、コ
シヒカリ、ササニシキ、アキタコマチ等を挙げることが
できる。
【0009】浸漬工程は、前記の被処理米全体を完全に
浸漬することのできる量のアルカリ性水溶液中に、被処
理米を単に浸して放置することによって行う。浸漬工程
において攪拌する必要はないが、攪拌してもよい。バッ
チ式でアルカリ性水溶液を一定時間毎に取り換え、浸漬
処理を2回〜4回繰り返し行うことが好ましい。浸漬処
理時間は特に限定されないが、(処理水を交換する場合
には通算で)好ましくは約10分〜3時間、特に好まし
くは約30〜60分間である。処理温度は特に限定され
ないが、好ましくは4〜80℃、特に好ましくは5〜2
5℃である。アルカリ性水溶液中での浸漬処理の後に、
希酸(例えば無機酸、特に塩酸又はリン酸)で処理して
中和するのが好ましい。希酸処理は、希酸による洗浄で
もよいが、浸漬処理が好ましい。また、場合により希酸
処理の前後で水(特に流水)で洗浄するのが好ましい。
【0010】本発明方法によって得られたアレルゲン低
減化米は、米に含まれているアレルゲンを中心とするタ
ンパク質がアルカリ性水溶液による浸漬処理により除去
若しくは低減化されている。一方、アレルゲンとして作
用しにくいタンパク質は実質的に低減化されないので、
全体としての米の栄養価は実質的に低下しない。低減化
の程度は、粉砕したアレルゲン低減化米1gに1M塩化
ナトリウム水溶液10mlを加えて30分間室温で攪拌
した場合に、その上清中に含まれるタンパク質の濃度が
好ましくは0.5mg/ml以下、より好ましくは0.
2mg/ml以下となるものである。
【0011】本発明方法によって得られたアレルゲン低
減化米は、用途に応じて、そのまま加工するか、或いは
乾燥して用いる。すなわち、通常の市販米と同様に、炊
飯したり、油で炒める等して使用することができる。更
に、粉砕して煎餅等の加工食品の原料としても使用する
こともできる。
【0012】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例1 (1)0.1N水酸化ナトリウム水溶液50リットルに
市販コシヒカリ10kgを浸漬し、室温下で放置した。
1時間後、水酸化ナトリウム水溶液を交換し、更に1時
間浸漬した。水酸化ナトリウム水溶液を捨てた後、米を
流水中で10分洗浄し、0.1N塩酸水溶液50リット
ルに浸漬し、室温下で30分放置した。酸処理したコシ
ヒカリを流水中で1日洗浄し、乾燥させて、アレルゲン
低減化コシヒカリ9.8kgを得た。得られたアレルゲ
ン低減化コシヒカリを粉砕し、粉砕米1gをとり、1M
塩化ナトリウム水溶液10mlを加えて30分間室温で
攪拌した。遠心分離(10,000G;10分間)処理
した後、上清を分取し、タンパク質濃度を測定したとこ
ろ、0.18mg/mlであった。また、前記のアレル
ゲン低減化コシヒカリを使用して炊飯したところ、得ら
れた御飯は、非処理コシヒカリから炊飯した御飯よりも
ツヤがよく、食味も同等ないし優れていた。
【0013】(2)ELISA法により、米アレルギー
患者の血清IgEとの反応性を調べた。すわなち、粉砕
米3gを精秤した後、20倍量の抽出液(4M尿素水溶
液を100mMトリス緩衝液でpH7.4に調整したも
の)を加え、1時間室温下にてスターラーで攪拌し、遠
心分離(10,000rpm;10分間)処理し、上清
を分取して試料を調製した。その試料を抽出液で160
倍に希釈し、その希釈液50μlをELISA用プレー
ト(IMMULON 1:DYNATECH LABO
RATORIES INC.)に添加した。4℃で一夜
放置して、プレートに抗原を結合させた。続いて、EL
ISA洗浄液(150mMの塩化ナトリウムと0.05
%Tween20を含む20mMリン酸緩衝液でpH
7.4に調整したもの)で前記プレートを3回洗浄し
た。3%BSA(ウシ血清アルブミン)−PBS(15
0mMの塩化ナトリウムを含む20mMリン酸緩衝液で
pH7.4に調整したもの)緩衝液150μl/ウエル
でブロッキングし、2時間放置した後、ELISA洗浄
液でプレートを4回洗浄した。
【0014】米アレルギー患者血清を1%BSA−PB
S緩衝液で20倍に希釈し、その希釈液50μl/ウエ
ルを添加し、2時間放置した後、ELISA洗浄液でプ
レートを5回洗浄した。続いて、ペルオキシダーゼ結合
抗ヒトIgEを1%BSA−PBS緩衝液で1/10,
000に希釈し、その希釈液50μl/ウエルを添加
し、2時間放置した後、ELISA洗浄液でプレートを
6回洗浄した。続いて、基質溶液〔σ−フェニレンジア
ミン4mgとH2 2 5μlとリン酸−クエン酸緩衝液
(pH5.0:0.1Mクエン酸1水和物及び0.2N
aPO4 で調製)10mlとからなる〕100μlを添
加し、30分後に2N硫酸を加えて反応を停止した。エ
ライザリーダーで492nmの吸光度を測定した。アル
カリ処理後のコシヒカリに対する対照として非処理コシ
ヒカリを用い、米アレルギー患者(A)及び(B)の血
清に対する対照として健常人の血清を用いた。結果を表
1に示す。
【0015】
【表1】 ヒト血清IgEとの反応性 患者A 患者B 健常人 非処理コシヒカリ 0.626 0.532 0 アルカリ処理コシヒカリ 0.005 0.004 0
【0016】実施例2 コシヒカリのかわりにニホンマサリを用いたこと以外
は、実施例1と同様にしてアレルゲン低減化米を調製
し、更にELISA法を実施した。結果を表2に示す。
【0017】
【表2】 ヒト血清IgEとの反応性 患者A 健常人 非処理ニホンマサリ 0.648 0 アルカリ処理ニホンマサリ 0.006 0
【0018】
【発明の効果】本発明方法によれば、市販米をそのまま
使用して、簡易で安価な手段により、米に含まれている
アレルゲンタンパク質を中心に除去ないし低減すること
ができるので、米の栄養価を実質的に低下させることが
ない。従って、米等の穀類アレルギー患者に有効な食品
又は食品原料を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 椿 和文 東京都荒川区東尾久8丁目4番1号 株式 会社アレルゲンフリー・テクノロジー研究 所内 (72)発明者 菊地 一憲 東京都荒川区東尾久8丁目4番1号 株式 会社アレルゲンフリー・テクノロジー研究 所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 米をアルカリ性水溶液に浸漬することを
    特徴とするアレルゲン低減化米の製造方法。
  2. 【請求項2】 アルカリ性水溶液が、pH12以上の水
    酸化ナトリウム性水溶液である、請求項1に記載の方
    法。
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