JP3653132B2 - 低アレルゲン化米の製造方法及び加工食品の製造方法 - Google Patents

低アレルゲン化米の製造方法及び加工食品の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は摂取してもアレルギー症が起こることのない低アレルゲン化米の製造方法及び加工食品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
食品の摂取によって起こる食物アレルギーの原因食品としては、卵、牛乳、魚等の動物性食品が主として考えられてきた。しかし、近年になって、米、小麦、大豆等の穀類に由来するアレルギー症も意外に多いことが明らかとなっている。
【0003】
既に学術論文(山田ら,アレルギー,40,12,1485(1991))で報告されているように、穀類には共通アレルゲン(タンパク質)が存在する(アレルギーの原因となる抗原物質をアレルゲンという。)。特に、米に含まれるアレルゲン物質は明確に定性、定量されている。それは、1モル食塩水抽出物画分のアルブミン,グロブリンであることが見い出されている。
【0004】
一般に、食物アレルギーの治療方法としては、除去食療法が行われている。しかし、この場合には、栄養バランスの乱れが問題となる(除去食療法は、実施に伴う精神的ストレス等も問題となる。)。
【0005】
栄養バランスの乱れを補正するには代用食が当然必要になる訳であるが、穀類には前述のような共通アレルゲンが存在するため、現実問題として代用食の選択が困難であることが多い。従って、除去食療法は望ましくなく低アレルゲン食品の摂取が望ましい。
【0006】
低アレルゲン化米の製造方法として、特開平2−167040号公報では、米にタンパク質分解酵素を作用させ、含有タンパク質を加水分解することによりアレルゲンタンパク質を除去するという技術が開示されている。詳しくは、界面活性剤を含むアルカリ性の水溶液に米を低圧下で浸漬し、タンパク質分解酵素を加えて放置する。次いで、酸性溶液に浸漬し中和処理を行う。更に、パーボイル処理により米の破砕を防いでいる。
【0007】
この特開平2−167040号公報に開示の方法には、以下のような問題点がある。
【0008】
1) 工程が非常に煩雑である為、製造コストがかさみ、この低アレルゲン化米は高価
となる。
【0009】
2) 既に学術論文(山田ら,日本食品工業学会誌,41,4,251(1994))で報告され
ているように、界面活性剤(モノグリセリド)の溶液中に米を浸漬することによっ
て、比較的硬い殻状区分が形成され、炊飯後の米飯粒の密度が不均一になることが
確認されている。また、米を酵素溶液中に浸漬することより、米に酵素の香味が付
着している。この米を炊飯して得られる米飯は、一度冷めると極度に硬化し、再加
熱後の食味は著しく低下する。更に、パーボイル処理により、炊飯前の吸水時間に
制約があり、時間が長すぎると米飯にコシがなくなり、べたついたりする。
【0010】
また、特開平5−292904号公報では、粉質米を塩水溶液中に浸漬することにより、アレルゲンタンパク質の抽出を行うという技術が開示されている。ここでは、米の粉末1gに1モルのNaClを10ミリリットル加え、抽出された上澄み溶液中のタンパク質濃度が100μg/ミリリットル以下になることが確認されている。また、抗原抗体反応試験によってタンパク質濃度が100μg/ミリリットル以下になれば、低アレルゲン化米として極めて有効である旨も開示されている。
【0011】
この特開平5−292904号公報に開示の処理方法には、以下のような問題点がある。
【0012】
粉質米以外の普通の精白米では低アレルゲン化はしない。そのため、粉質米だけを選択しなければならず、歩留が極めて悪い。また、稲の品種改良として、種籾を薬剤処理した変種米を使用した際は、低アレルゲン化米に用途が限定され、高価となる。更に、米の収穫から始まり、抽出処理の前後工程や調理後において、粉質米のため破砕しやすく歩留が極めて低下する。
【0013】
ところで、米のタンパク質は、その性質からアルブミン、グロブリン、グルテリン、プロラミンの4種類に分別される。プロラミン以外は、酸性溶液や、アルカリ性溶液に溶解することが知られている(例えば、京都大学農学部食品工学教室編,「食品工学実験書上巻」,養賢堂,(1970),p602〜603 や神立 誠編,「たんぱく質の知識」,幸書房,(1971),p27〜29)。従って、米粒を粉砕し、上記の溶液に浸漬すれば、プロラミン以外は米粉から除去することができる。しかしながら、その後、得られた米粉を米粒に復元(造粒)しなければならず、得られた造粒米はそのほとんどが澱粉質であるため、炊飯状態、食味、栄養価が著しく劣る。また、米粒を上記の溶液に浸漬すれば、外層部のタンパク質は抽出除去でき、よって、若干のアレルゲンタンパク質も除去できる。しかながら、米粒には、細胞壁や細胞膜、さらには、アミロプラスト膜が存在するため、中心部のたんぱく質は抽出できない。
【0014】
以上、米に含まれるアレルゲン物質は明確に定性、定量され、1モル食塩水抽出物画分のアルブミン,グロブリンであることが見い出されているにもかかわらず、低アレルゲン化米を製造するためには、煩雑な酵素処理工程や粉質米といった特殊な米を使用しなければならない。
【0015】
本発明はこのような点を解決した低アレルゲン化米の製造方法を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨を説明する。
【0017】
に50MPa〜90MPaの高圧処理を施すことにより該米の細胞壁等に亀裂や穴を生じさせ、その後中性塩溶液に浸漬し、前記亀裂や穴から中性塩溶液を侵入させて該中性塩溶液中にアルブミン及びグロブリンを溶出し、該アルブミン及びグロブリンを選択的に抽出することを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0018】
米を中性塩溶液に浸漬した後、50MPa〜90MPaの高圧処理を施すことにより該米の細胞壁等に亀裂や穴を生じさせ、該亀裂や穴から中性塩溶液を侵入させて該中性塩溶液中にアルブミン及びグロブリンを溶出し、該アルブミン及びグロブリンを選択的に抽出することを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0019】
請求項1,2いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、高圧処理は急速加圧及び急速減圧処理であることを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0020】
請求項記載の低アレルゲン化米の製造方法において、急速加圧及び急速減圧の条件として、昇圧速度を2MPa/sec以上、保持圧力50MPa〜90MPa、保持時間30sec以上、減圧速度2MPa/secとしたことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0021】
請求項1〜4いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、中性塩溶液の濃度を0.001モル以上としたことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0022】
請求項1〜5いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、中性塩溶液を、処理される米1重量部に対して0.5重量部以上としたことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0023】
請求項1〜6いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、中性塩として、塩化ナトリウムを採用したことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法に係るものである。
【0024】
請求項1〜7いずれか1項に記載の低アレルゲン化米を使用し、常法に従い加工食品を製造することを特徴とする加工食品の製造方法に係るものである。
【0025】
【発明の作用及び効果】
本発明者らは、通常に得られる米に高圧処理を施すことにより容易かつ簡便に米に含まれるタンパク質、特に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質であるアルブミン、グロブリンが選択的かつ効率よく抽出できることを見い出した。また、このタンパク質含量を低減化した米の粉末1gに1モルのNaClを10ミリリットル加え、抽出した上澄み溶液中にタンパク質濃度が100μg/ミリリットル以下になることを確認した。また、1モル食塩水抽出物画分のタンパク質(アレルゲンタンパク質)が通常に得られる米と比較して激減していることを電気泳動により確認した。更に、米アレルギー患者の血清を用いて、抗原抗体反応試験により、当該処理米の抗原量が激減していることを確認した。本発明はこれらの実験により確認した事項を請求項としてまとめたものである。
【0026】
これらの結果、米に含まれているアレルゲンタンパク質が低減化されているので、米由来のアレルギー症状を起こす患者が摂取できる低アレルゲン化米、および米加工食品となり得る。
【0027】
通常に得られる米に高圧処理を施すことにより容易かつ簡便に米に含まれるタンパク質、特に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質であるアルブミン、グロブリンが選択的かつ効率よく抽出できる理由は次の通りと推測される。
【0028】
米に高圧処理を施すことにより、米に含まれる気泡はボイルの法則に従って加圧・減圧の際に圧縮、飛散、膨張する。この気泡の挙動により米の細胞壁等に亀裂や穴が生じる。しかしながら、圧力はパスカルの原理によって、米粒に等方的に施されるので、米粒は破損しない。高圧処理と同時あるいは処理後に食塩水等の中性塩溶液に米を浸漬することにより、抽出液が米細胞の細部に渡り侵入する。
【0029】
ここで、学術論文(中村,日本食品工業学会誌,39,3,287(1992))には、米のタンパク質の多くはプロテインボディーと呼ばれる部分に顆粒状に集積しているが、アレルゲンタンパク質は遊離している旨が記載されている。
【0030】
従って、この論文記載の事実と上記の高圧処理した米の状態から、結局、アレルゲンタンパク質であるアルブミン,グロブリンは、中性塩に対して極めて親和、可溶化するために、通常に得られる米粒を破壊することなく、容易かつ簡便に米に含まれるタンパク質、特に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質であるアルブミン、グロブリンが選択的かつ効率よく抽出できることになる。
【0031】
ここで、中性塩とは、塩化ナトリウム(食塩)、炭酸カルシウム、硫酸カリウム等、酸の水素原子が金属原子で置換された形の物質である。尚、食品用としては食塩が最も好ましい。
【0032】
米を食塩水のような中性塩溶液中で浸漬する際には、高圧処理は浸漬工程の前後に施してもよい。つまり、1)米を中性塩溶液中に浸漬した後、高圧処理を施す場合、2)高圧処理を施した後、中性塩溶液中に浸漬する場合、さらには、3)米を中性塩溶液中に浸漬した後、高圧処理を施し、そのまま中性塩溶液中に所定時間浸漬する場合等、米に高圧処理が施されていれば、浸漬工程の順序はアレルゲンタンパク質の抽出操作に対して影響はない。
【0033】
高圧処理した米の浸漬条件において、抽出液の濃度、抽出時の温度および浸漬時間をそれぞれC(モル)、T(℃)、t(Hour)とすると、抽出されるタンパク質p(μg/g乾物米)は温度、濃度、時間に比例し、関係式(1)で表すことができる。
【0034】
【化1】
Figure 0003653132
【0035】
尚、ξは各々の中性塩に固有な抽出率であり、Dは米の品種(もち米、うるち米、銘柄、産地等)により固有な固体内における溶質の有効拡散係数である。
【0036】
但し、0.01≦C<4…(2)
溶液の凝固点<T<50…(3)
0.5≦t<96…(4)
【0037】
タンパク質の抽出処理において、放置のままで十分関係式(1)が成り立つが、撹拌といった物理的方法を併用した場合、関係式(1)のξが上昇し、自ずと定義域(2),(3)および(4)は減少する。
【0038】
尚、(2)において、0.01モル未満では米に対する抽出溶媒の浸透圧が低すぎて撹拌といった物理的方法を併用しても、米に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質が多量に残存する。また、抽出液の濃度の増加に伴い、抽出効率は増大するが、4モル以上は変化がないので、それ以上は必要ない。
【0039】
(3)において、溶液の凝固点温度以下では抽出溶媒が凝固し、抽出処理ができない。また、50℃以上ではタンパク質が変性し、中性塩に対して不溶化となるため、抽出効率が急激に低減する。
【0040】
(4)において、0.5時間未満では抽出時間が短く、米に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質が残存する。また、96時間以上は残存する米のタンパク質含量に差異がないので、それ以上は必要ない。
【0041】
高圧処理条件は、米に対し急速加圧、急速減圧を施すことが好ましい。詳しくは昇圧速度を2MPa/sec以上、保持圧力を50MPa〜90MPa、保持時間を30sec以上、減圧速度を2MPa/secとすることが望ましい。
【0042】
昇圧速度を2MPa/sec以上とすることにより、米に含まれる気泡を急激に圧縮させる。
【0043】
また、浸漬工程と併用することにより、中性塩溶液の浸透圧を増幅させ、米に急速に中性塩溶液を侵入させる。2MPa/sec以下では気泡の飛散効果が少なく、米の細胞壁等の亀裂が少ない。また、浸漬工程では、米への中性塩溶液の浸透圧を増幅させる効果が少ない。
【0044】
保持圧力が50MPa以下の場合、浸透圧が不足し、米への中性塩溶液の浸透が十分ではない。90MPa以上では米細胞が緻密化するため中性塩溶液が浸透しにくくなる。さらに、より高い圧力ではタンパク質が変性し、中性塩溶液に対して不溶化するため抽出されにくくなる。ここで、抽出操作後、タンパク質が変性していると、米に残存するタンパク質を各画分に分別し定量する際に、見掛け上は1モル食塩水抽出物画分のタンパク質が低減したことになり正確な定量ができなくなる。
【0045】
圧力はパスカルの原理により、瞬時にかつ均等に伝達するので、圧力の保持時間が30sec以上であれば十分にタンパク質と中性塩が親和し可溶化する。
【0046】
減圧速度を2MPa/sec以上とすることによって、圧縮され飛散した気泡が、急激に膨張するため、米細胞に微細な空間がてき、中性塩溶液によるアレルゲンタンパク質の抽出が可能となる。また、浸漬工程では可溶化したタンパク質を米から抜き取ることができる。2MPa/sec以下では気泡の膨張力が弱く、空間が少ない。また、圧力較差差が少なく、可溶化したタンパク質が米に残存する。
【0047】
特に、高圧処理を併用した場合、浸透圧の増幅によって関係式(1)の定義域(2)および(4)の下限値は下記のようになる。
【0048】
0.001≦C…(2)'
高圧処理時の保持時間≦t…(4)'
【0049】
高圧処理による浸透圧の増大効果によって、抽出操作に使用する中性塩の濃度下限値は0.001モル以上であれば関係式(1)が成り立つ。この濃度未満では、高圧処理をもってしても、溶質(中性塩)の絶対量が少ないため、タンパク質は可溶化しにくい。
【0050】
さらに、高圧処理による浸透圧の増大効果によって、中性塩溶液が米に瞬時に、かつ均等に浸透するため、浸漬時間は高圧処理時の保持時間だけで十分に関係式(1)が成り立つ。
【0051】
タンパク質を抽出する中性塩溶液の使用量は、処理される米1重量部に対して0.5重量部以上であれば関係式(1)が成り立ち、中性塩溶液の使用量における上限はない。但し、排水処理、その他の経済面から3重量部以下が望ましい。
【0052】
抽出処理に使用した中性塩が米に残存し、食味を低下させる場合は、水洗いにより中性塩を取り除くことができる。ただし、この水洗処理は定義域(2)に依存し、その濃度が希薄な場合には、この処理を省くことができる。
【0053】
この中性塩溶液によるタンパク質の抽出操作はバッチ式だけではなく、連続式の単独またはバッチ式との併用で実施することができる。
【0054】
こうして得られた本発明のタンパク質含量、特に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を低減化した米は、そのまま米として利用できるほか、米飯(うるち米)や餅(もち米)等に加工するか、煎餅や団子等に用いてもよい。
【0055】
次に、本発明の作用効果を確認する検査方法について、以下の実験例で説明する。
【0056】
実験例1
学術論文(Matsudaら、Agric.Biol.Chem.,52,6,1465(1988))に記載されているように、米を粉末処理し、冷アセトンで脱脂後、十分に乾燥させる。得られた粉末100gに対して1モルのNaClを500ml加え、20℃で16時間の抽出を行う。9000×gで20分間の遠心分離を行い、得られた上澄み溶液中に1モル食塩水抽出物画分のタンパク質が溶け込んでいる。
【0057】
実験例2
実験例1で得られた1モル食塩水抽出物画分のタンパク質をPierce社のBCA Protein Assay Reagentを用いて定量する。その際、取り扱い説明書に従い37℃で30分恒温し、分光光度計を用いて562nmの吸光度を測定する。予めBCAキットに含まれているAlbumin Standardを用いて検量線を作成し、562nmの吸光度から1モル食塩水抽出物画分のタンパク質P(μg/ミリリットル)が定量できる。ここで、Pの値を2で除算することによって、特開平5−292904号公報に記載されているアレルゲン低減化調整物の粉末1gに対する1モルのNaClで抽出されるタンパク質量P(μg/ミリリットル)に換算する。
【0058】
実験例3
米の総タンパク質含量は、ケルダール法によって定量する。つまり、常法に従って操作を行い、米のタンパク質をアンモニアガスとして補集し、中和滴定値より算出された窒素(%)に係数5.95を乗じて米のタンパク質含量を求める。
【0059】
実験例4
実験例1で得られた1モル食塩水抽出物画分のタンパク質をアトー(株)製の生体溶液試験料濃縮剤によって50倍に濃縮する。その後、常法により、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、和光純薬工業(株)の銀染色キットで染色する。この操作により、アレルゲンタンパク質を定量する。
【0060】
実験例5
学術論文(Matsudaら、Agric.Biol.Chem.,52,6,1465(1988))に記載されているように、実験例1で得られた上澄み溶液に90%飽和になるように硫酸アンモニウムを加え、塩析を行う。9000×gで20分の遠心分離後、得られたタンパク質の沈殿を透析チューブに封入する。次いで、蒸留水中で透析し、水と置換することにより、硫酸アンモニウムを完全に除去する。次いで、9000xgで20分の遠心分離を行うことにより、上澄み溶液はアルブミン画分、沈殿物はグロブリン画分として、それぞれの純粋なタンパク質が得られる。このアルブミン画分及びグロブリン画分のタンパク質と米アレルギー患者の血清を用いてPharmacia社製のキャップシステムにより抗原抗体反応試験(RAST 50% Inhibition)を行う。ここで、通常に得られる米(未処理米)の抗原と本発明に係る処理によって抽出操作を行った米の抗原の50%Inhibition値における希釈倍率を比較することによって、抗原量を求める。つまり、患者によって血清のRAST値がそれぞれ異なるので、未処理米の抗原量を1とし、本発明に係る処理によって抽出操作を行った処理米との相対比較を行う。
【0061】
本発明は上述のように処理することによって、容易かつ簡便にタンパク質、特にアレルゲンタンパク質が効率よく抽出されることになる。更に、この処理米から、通常に得られる米と同等な食味の炊飯米などの米加工食品を得ることができる。
【0062】
また、米に含まれるアレルゲンタンパク質を低減化したことにより、米由来のアレルギー患者の主食および栄養源となる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
実施例1
コシヒカリの玄米を88%精白し、精白米1kg(水分15%、乾物米に対してタンパク質8.0%含有)を1分間水洗いした。水切り後、軟質樹脂袋に洗った米と0.05モルの食塩水2リットルを加えて密封し、20℃で1時間放置した。次いで、この袋に入ったまま高圧処理(昇圧速度2MPa/sec、保持圧力50MPa、保持時間1分、減圧速度2MPa/sec)を行った。この米を6時間水洗いし、水切り後、タンパク質が低減された処理米1.3kg(水分35%、乾物米に対してタンパク質6.8%含有)を得た。この処理米を自然乾燥させ、粉砕機を用いて米を粉末化した。この粉末を実験例1および2に従い、1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を定量した結果、62μg/ミリリットルであった。
【0065】
実施例2
コシヒカリの玄米を88%精白し、精白米1kg(水分15%、乾物米に対してタンパク質8.0%含有)を1分間水洗いした。水切り後、軟質樹脂袋に洗った米を入れ高圧処理(昇圧速度2MPa/sec、保持圧力50MPa、保持時間1分、減圧速度2MPa/sec)を行った。
【0066】
この米を0.05モルの食塩水2リットルに浸漬し、20℃で1時間放置した。次いで、この米を6時間水洗いし、水切り後、タンパク質が低減された処理米1.3kg(水分35%、乾物米に対してタンパク質6.8%含有)を得た。この処理米を自然乾燥させ、粉砕機を用いて米を粉末化した。この粉末を実験例1および2に従い、1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を定量した結果、62μg/ミリリットルであった。
【0067】
実施例3
コシヒカリの玄米を88%精白し、精白米1kg(水分15%、乾物米に対してタンパク質8.0%含有)を1分間水洗いした。水切り後、軟質樹脂袋に洗った米と0.01モルの食塩水2リットルを加えて密封し、20℃で0.5時間放置した。次いで、この袋に入ったまま高圧処理(昇圧速度2MPa/sec、保持圧力50MPa、保持時間1分、減圧速度2MPa/sec)を行った。
【0068】
その後、20℃で1時間放置した。この米を6時間水洗いし、水切り後、タンパク質が低減された処理米1.3kg(水分35%、乾物米に対してタンパク質6.8%含有)を得た。この処理米を自然乾燥させ、粉砕機を用いて米を粉末化した。この粉末を実験例1および2に従い、1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を定量した結果、62μg/ミリリットルであった。
【0069】
比較例A(実施例1〜3の比較例)
前記実施例1〜3における高圧処理を除き、同様な工程で処理し、浸漬米1.3kg(水分35%、乾物米に対してタンパク質7.8%含有)を得た。この粉末を前記実験例1および2に従い、1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を定量した結果、1480μg/ミリリットルであった。
【0070】
実施例1〜3、および比較例Aで得られた1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を電気泳動した結果、比較例Aのサンプルではアルブミン,グロブリンの各バンドの存在が明確に検出された。実施例1〜3のサンプルでは、アルブミン,グロブリンの各バンドの存在がほとんど確認できなかった。
【0071】
実験例5の抗原抗体反応試験の結果、下表のようになり、すべての実施例において、比較例Aよりも抗原度が128分の1以下に低減していた。
【0072】
【表1】
Figure 0003653132
【0073】
比較例B
特開平2−167040号公報に記載されている方法でアレルゲンを除去した市販品の加工米を粉末化し、実験例1および2に従い、1モル食塩水抽出物画分のタンパク質を定量した結果、65μg/ミリリットルであった。しかしながら、この加工米を炊飯した結果、硬い殻状区分が存在し、密度が不均一であった。また、この米飯には酵素の香味が付着していた。更に、米飯は一度冷めると極度に硬化し、再加熱後の食味は著しく低下した。尚、炊飯前の吸水時間に制約があり、時間が長すぎると米飯にコシがなくなり、べたついたりした。
【0074】
食品製造に係る実施例1
実施例1〜3で得られた水洗後の処理米を常法によって炊飯し、無菌的に包装した米飯とした。得られた米飯を市販の電子レンジで再加熱し、10名のパネラーによる食味テストを行った。その結果、この米飯は通常に得られる精白米を炊飯した米飯と色、硬さ、形状、香味とも同等であるとの評価を得た。また、この米飯を32℃で20日間の保存試験の結果、微生物数は0であった。

Claims (8)

  1. に50MPa〜90MPaの高圧処理を施すことにより該米の細胞壁等に亀裂や穴を生じさせ、その後中性塩溶液に浸漬し、前記亀裂や穴から中性塩溶液を侵入させて該中性塩溶液中にアルブミン及びグロブリンを溶出し、該アルブミン及びグロブリンを選択的に抽出することを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  2. 米を中性塩溶液に浸漬した後、50MPa〜90MPaの高圧処理を施すことにより該米の細胞壁等に亀裂や穴を生じさせ、該亀裂や穴から中性塩溶液を侵入させて該中性塩溶液中にアルブミン及びグロブリンを溶出し、該アルブミン及びグロブリンを選択的に抽出することを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  3. 請求項1,2いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、高圧処理は急速加圧及び急速減圧処理であることを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  4. 請求項記載の低アレルゲン化米の製造方法において、急速加圧及び急速減圧の条件として、昇圧速度を2MPa/sec以上、保持圧力50MPa〜90MPa、保持時間30sec以上、減圧速度2MPa/secとしたことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  5. 請求項1〜4いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、中性塩溶液の濃度を0.001モル以上としたことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  6. 請求項1〜5いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、中性塩溶液を、処理される米1重量部に対して0.5重量部以上としたことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  7. 請求項1〜6いずれか1項に記載の低アレルゲン化米の製造方法において、中性塩として、塩化ナトリウムを採用したことを特徴とする低アレルゲン化米の製造方法。
  8. 請求項1〜7いずれか1項に記載の低アレルゲン化米を使用し、常法に従い加工食品を製造することを特徴とする加工食品の製造方法。
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