JPH07111135B2 - 内燃機関の燃焼室構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は燃焼特性の安定化を図った内燃機関の燃焼室構
造の改良に関する。

（従来の技術） 内燃機関の燃焼室への吸入空気の流入効率を高めて機関
出力を向上させるために、吸気弁シートのシート面（当
たり面）に接する球面の一部により、燃焼室壁面を形成
し、吸気弁が開き始めるに従って吸気弁シートとの隙間
から燃焼室に流入する吸気の流れを円滑化する提案があ
る（実公昭51−21203号公報）。

ところで、各燃焼室に２個の吸気弁をもつものでは、燃
焼改善のためにシリンダ内で吸気スワールを発生させる
場合、各吸気ポートから流入してシリンダ内周に沿う流
れとなる吸気流は、約半周した位置で互いに正面から衝
突するため、シリンダ内周に沿ってのいわゆる横スワー
ルを、吸入行程から排気行程にかけて減衰させることな
く維持することは難しい。このためシリンダ内で発生さ
せるスワールはピストンの運動方向へのいわゆる縦スワ
ールが主流となる。

この縦スワールは、ピストンの下降に伴い、吸気ポート
の流線に応じて燃焼室に斜め下方に流入してきた吸気
が、対向する排気弁の下面を通り、シリンダ内壁面、ピ
ストン頂面に当たった後、縦渦を描くように上昇してい
く流れである。

（発明が解決しようとする課題） ところが、吸気弁と対向する排気弁との間の燃焼室壁面
（天井壁面）には、通常、垂直方向に突出する鋭い稜線
が存在するため、吸気弁の開弁に伴って壁面に沿うよう
に流入してきた吸気の主流は稜線により大きく下方に向
けられ、ピストン頂面に激しく正面から衝突する。

このため、吸入行程から圧縮行程にかけて縦スワールを
した十分に持続させることが難しく、とくに部分負荷域
での燃焼改善が不十分となることがあった。

また、燃焼室内における吸気の流れが稜線によって阻害
されることから、とくに高回転域においての吸気充填効
率を高められず、高出力化にとっての障害にもなってい
る。

本発明はこのような問題を解決することを目的とする。

（課題を解決するための手段） そこで本発明は、吸気弁と排気弁の各弁シートを燃焼室
に対向的に配設し、吸気弁シートの円錐状シート面に連
なる円錐面により燃焼室壁面の一部を形成すると共に、
この円錐面の一部に排気弁シートをその下面が同一面と
なるように配置した。

（作用） 吸気弁のリフトに伴い吸気弁シートとの環状隙間から流
入する吸気は、これに連なる燃焼室壁の円錐面に沿って
多くの流れが案内される。円錐面に沿う流れは、流入角
度が不変のために渦などが発生しにくく流入効率も高
い。

そして燃焼室に流入したこの吸気の主流は円錐面に案内
されつつ、対向する排気弁の下面へと流れていくが、円
錐面と排気弁シートの下面が一致しているため、排気弁
によって吸気の主流が妨げられることがなく、したがっ
て渦などを発生することなく排気弁の下面を速やかに通
過し、その後シリンダ内壁面からピストン頂面にあたり
ながら上方へと回り込み、燃焼室内に十分に強い縦スワ
ールを生起する。

また、吸入空気の主流は高温の排気弁の方向に直線的に
流れ込むため、吸気中の燃料が高温雰囲気によって十分
に微粒化、霧化し、混合気の性状が著しく改善される。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図、第２図に示す第１の実施例は各気筒に２個づつ
の吸気弁と排気弁を備える多弁式機関であって、４はシ
リンダヘッド、11はシリンダブロック、12はピストン
で、シリンダヘッド４の下面とピストン12の上面との間
に燃焼室18が画成される。

シリンダヘッド４には、燃焼室18の天井壁面の中心部に
位置して点火栓17が取付けられ、この周囲に位置して２
つの吸気弁13a、13b並びに２つの排気弁14a,14bが配設
される。

第２図にも示すように、吸気弁13a、13bと排気弁14a、1
4bは、シリンダ列中心線を境にして互いに反対のサイド
に位置し、かつシリンダ列中心線と直交する線によって
区切られた領域の各中心に各一対の吸気弁13a、13bと排
気弁14a、14bが互いに対向するように配置される。

各吸気弁13a、13bはシリンダヘッド４の同一サイドに形
成した互いに並列的な吸気ポート５と連通し、同じよう
にして排気弁14a、14bも並列的な排気ポート７と連通す
る。

そして、燃焼室18のシリンダヘッド側の天井壁面は、各
吸気弁13a、13bの吸気弁シート６を中心にして、円錐状
のシート面（着座面）からほぼ接線方向に延びる円錐面
9a及び9bの一部をもって形成される。

そして排気弁14a、14bの排気弁シート８は、この円錐面
9a、9bの一部に排気弁シート８の下面が一致するように
設置される。

したがって、燃焼室中心側において、吸気弁シート６は
排気弁シート８よりも高い位置にあり、円錐面9a、9bが
下がっていく途中に排気弁シート８がその下面が一致す
るように、傾斜した状態で設けられる。なお、排気弁シ
ート８の周囲のうち、その下面が円錐面10a、10bと一致
しない部分については、円弧状（三日月状）の斜面10
a、10bによって円錐面9a、9bと滑らかに接続している。

このとき、吸気弁13a、13aの弁挾角θｉは、排気弁14
a、14bの弁挾角θｅよりも大きく設定され、吸気の流入
角をシリンダ軸線に向けるようになっている。

前記２つの円錐面9aと9bは、点火栓17を通り、吸気ポー
ト５と平行な稜線16をその境界にしている。

燃焼室18の吸気弁側周辺部には、シリンダヘッド４の下
面と同一面の、スキッシュエリヤ15が形成される。

以上のように構成され、次に作用を説明する。

吸気ポート５からの吸入空気は、吸気弁13a、13bが開く
と吸気弁シート６との環状隙間から燃焼室18へ流れ込
み、多くは吸気弁シート６に連なる円錐面9a、9bに沿っ
て案内される。

円錐面9a、9bに沿う吸気の流れは渦を発生することなく
滑らかに流入し、高速回転域においても吸気充填効率を
高める働きをする。

吸入空気の主流は、吸気ポート５の傾斜角度に応じて、
吸気弁13a、13bから対向する排気弁14a、14bの下面に向
けて流れ込むが、排気弁シート８の下面は円錐面9a、9a
の斜面上にあって、下方に突出するものがないため、吸
入空気の主流はその進行を妨げられずに、排気弁14a、1
4bの下面を通過して、シリンダ内壁面へと速やかに進
み、さらにピストン12の頂面に当たって上方へと回り込
んでいく。

このようにして、並列した各吸気弁13a、13bから燃焼室
18にそれぞれ流入した吸気は、稜線16を境にして互いに
衝突することなく、並列的に強力な縦スワールを生成す
る。

また、同時に高温雰囲気下にある排気弁14a、14bからの
高熱を受け、吸気中に含まれる燃料の微粒化、霧化が促
進される。

これらの結果、混合気性状と火災伝播が改善され、燃焼
特性の安定化が図れる。

他方、燃焼室18の周辺部にはスキッシュエリヤ15があ
り、ピストン圧縮上死点付近で周辺部の混合気を中央に
向けて押し出すスキッシュ作用を生じ、ガス流動を促進
するため、さらに燃焼の改善に寄与する。

次に第３図の実施例を説明すると、これは、燃焼室18の
両側周辺部に、スキッシュエリヤ19aと19bを追加して、
点火栓17から遠い部分ににおける圧縮上死点付近でのガ
ス流動を促進し、さらに燃焼の改善を図ったものであ
る。

また、第４図の実施例は、点火栓17の位置を燃焼室中心
から排気弁側に移動し、雰囲気温度が高く、縦渦の強い
領域で点火することにより、点火の確実性と、点火後の
火炎伝播の円滑化を図っている。

（発明の効果） 以上のように本発明によれば、吸気ポートから燃焼室に
流入する吸入空気は、吸気弁シートに連なる円錐面に沿
って渦などを生じることなく滑らかに案内され、高速回
転域でも十分に高い吸気の充填効率を維持することがで
き、また、吸気ポートから斜めに燃焼室に流入した吸気
の主流は、円錐面と同一面にある高温雰囲気下の排気弁
の下面へ向けて速やかに案内され、燃料の微粒化、霧化
等の促進による混合気の性状改善と、同時に強力な縦ワ
ールを発生させ、これらにもとづいて燃費、排気組成の
改善や出力の大幅な向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１の実施例の縦断面図（第２図のＡ
−Ａ線断面）、第１図（Ａ）はその一部拡大図、第２図
は平面図、第３図、第４図はそれぞれ第２、第３の実施
例を示す平面図である。 ４……シリンダヘッド、５……吸気ポート、６……吸気
弁シート、８……排気弁シート、9a,9b……円錐面、11
……シリンダブロック、12……ピストン、13a,13b……
吸気弁、14a,14b……排気弁、17……点火栓、18……燃
焼室。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】吸気弁と排気弁の各弁シートを燃焼室に対
   向的に配設し、吸気弁シートの円錐状シート面に連なる
   円錐面により燃焼室壁面の一部を形成すると共に、この
   円錐面の一部に排気弁シートをその下面が同一面となる
   ように配置したことを特徴とする内燃機関の燃焼室構
   造。