JPH0711046B2 - Al−Sn系軸受合金 - Google Patents

Al−Sn系軸受合金

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JPH0711046B2
JPH0711046B2 JP29611893A JP29611893A JPH0711046B2 JP H0711046 B2 JPH0711046 B2 JP H0711046B2 JP 29611893 A JP29611893 A JP 29611893A JP 29611893 A JP29611893 A JP 29611893A JP H0711046 B2 JPH0711046 B2 JP H0711046B2
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正仁 藤田
章 大河原
武志 坂井
俊久 大垣
剛 大崎
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エヌデーシー株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はAl−Sn系軸受合金に
係り、詳しくは、マトリックス中にSi粒子を球状若し
くはそれに近い形状に析出させる一方、このSi粒子に
隣接させてSn−Pb粒子を析出させ、高速・高負荷運
転などの苛酷な使用条件に耐えることができ、高油温下
においても耐疲労性、耐焼付性ならびに耐摩耗性にすぐ
れた効果を示すAl−Sn系軸受合金に係る。
【0002】
【従来の技術】最近の自動車用エンジンは、小型化、省
燃費、高出力のものとなり、これにともなって軸受にか
かる荷重が増加すると共に、潤滑油の温度が上昇し、軸
受の使用条件は苛酷化の一途をたどっている。この点か
ら、従来例の多元系やAl系等では、軸受合金の表面に
はオ−バ−レイメッキ等によりPb−Sn系合金等の表
面層を形成した軸受が提案されていた。このPb−Sn
系合金のオ−バ−レイ層を有する軸受は、耐焼付性、耐
疲労性、耐摩耗性などにある程度の優れた特性を示す。
最近のようなきわめて苛酷な使用条件になると、潤滑面
の高温度化によって、激しい疲労や焼付現象にみまわ
れ、その使用に耐えられない。
【0003】そこで、最近は、Pb−Sn合金等のオ−
バ−レイメッキ等の表面層を有しない軸受が求められて
いる。
【0004】すなわち、表面にオ−バ−レイメッキ層を
有する軸受は、一般的には、JISH 5402、AJ
−1(10%Sn、0.75%Cu、0.5%Ni、A
l残部)や、JIS H 5402、AJ−2(6%S
n、2.5%Cu、1.0%Ni、Al残部)等のJI
S規格、SAE 780(6%Sn、2%Si、1%C
u、0.5%Ni、0.1%Ti、Al残部)等のSA
E規格に示される通り、その軸受合金部分はSn含有量
が比較的少ない低Sn−Al合金から成って、これら軸
受合金部分の軸受面は何れもPb−Sn系合金のオ−バ
−レイメッキ層が形成されている。しかし、これら軸受
は、近年の高負荷、高温の使用条件下では表面のオ−バ
−レイメッキ層が摩滅して焼付きに至り、使用に耐えら
れなくなっている。
【0005】一方において、SAE 783(20%S
n、0.5%Si、1.0%Cu、0.1%Ti、Al
残部)に示される通り、表面にオ−バ−レイメッキ層を
形成しない軸受が提案され、この軸受は、Sn含有量が
多い高Sn−Al合金から成っている。しかし、このよ
うにSnが20%程度の如く多く含まれる合金は、硬度
が低く、Alマトリックスが弱くなるため、高負荷に耐
えられない。
【0006】また、Sn含有量の多少に拘らず、Al−
Sn系合金中にPbを添加して潤滑性を増進させ、耐焼
付性をもたせた軸受合金が、例えば、水野昴一著昭和2
9年日刊工業新聞社発行「軸受合金」第139頁に記載
され、この軸受合金は10%Sn、1.5%Cu、0.
5%Siを含むとともに3%Pbを添加して成るAl−
Sn−Pb系合金である。
【0007】更に、このAl−Sn−Pb系合金では、
PbがAlとはほとんど固溶しないため、このPbの分
散性の向上のために、Sbを添加したAl−Sn−Pb
−Sb系合金が特公昭52−12131号に記載され、
更に、Alマトリックス強化のためにCrを添加したA
l−Sn−Pb−Sb−Cr系合金が特公昭58−18
985号に記載されている。しかし、これらのAl−S
n−Pb系合金は通常運転時の潤滑性の向上を目的とし
て開発されたもので、高負荷運転条件では十分な耐疲労
性を示さない欠点がある。この理由は、通常の運転下に
比べると、高負荷運転下の軸と軸受との潤滑機構は根本
的に相違するからである。
【0008】そこで、高負荷運転下の潤滑機構につき、
基本的な検討が行なわれ、その一つとしてAl−Sn系
合金中に粗大なSiを分散析出させたものが特開昭58
−64336号によって提案されている。
【0009】この軸受は硬いSi析出物により軸受表面
にある程度の切削力を持たせたものであって、切削力を
持つが故に、相手軸の表面凹凸部が削られて平坦化し、
軸受性能を向上させるものである。更に詳しく説明する
と、黒鉛鋳鉄から成る相手軸中には黒鉛が球状若しくは
片状に析出されている。
【0010】したがって、相手軸の研摩加工時には、相
手軸表面から球状又は片状の黒鉛が脱落し、研摩加工後
の相手軸表面には脱落黒鉛のあとが凹部として残り、こ
の凹部周囲には硬く加工硬化したバリやエッジ等の凸部
が生成している。従って、上記の如くAl−Sn系、A
l−Sn−Pb系等の軸受合金では、これら凹凸部によ
り高負荷運転時には異常摩耗が発生し易い。しかし、こ
のような相手軸であっても、それを支承する軸受が粗大
なSi粒子を分散析出させた軸受合金から成ると、この
軸受の表面には、硬いSiの析出物により切削力が付与
されているために、相手軸の凹凸部分は機械的に切削さ
れて平坦化され、これ故に、異常摩耗や焼付きが起らな
い。
【0011】しかしながら、相手軸が黒鉛鋳鉄以外の場
合には、高負荷運転のときに、かえって粗大なSi析出
物によって相手軸の表面が不規則にけずられ、焼付きが
発生し、大きな障害が生じる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記欠点の解
決を目的とし、具体的には、すなわち、従来例のよう
に、高油温度下であっても、耐焼付性ならびに高摩耗性
が十分発揮できるAl−Sn系軸受合金を提案する。
【0013】すなわち、従来例のように、潤滑性向上の
ためにSnやPb等の含有量を高めたり、Alマトリッ
クスの強化を目的としてCr、Sb等やMn、Ni等の
元素を添加すると、これらの元素によってAlマトリッ
クスの硬度を増すことはできても、逆に脆弱になり高負
荷運転時には殆んど高温下(100〜250℃、なかで
も、後記の実施例に示すように、200℃)では耐疲労
性や耐摩耗性、更に硬度その他の機械的特性を示さな
い。
【0014】そこで、本発明では、Siを球状に近い形
で合金中に析出させてある程度その切削性を緩和し、更
に、Si粒子に近接させてPb−Sn粒子を析出させて
上記目的を達成する。
【0015】従って、本発明は、最近のエンジンの高出
力化に伴ない、軸受部温度が上昇する傾向にあり、特
に、この高温での耐疲労性が強く要求されることに着目
し、従来のAlマトリックス強化元素を添加するのにも
拘らず、Al合金の脆弱化を改善し、特に高温下での耐
疲労性を高めると共に更に高い耐焼付性、耐摩耗性を具
えるAl−Sn系軸受合金を提供する。
【0016】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明に係る
軸受合金は重量%で7〜20%Sn、0.1〜5%P
b、1〜10%Si、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、
Ti、V、Zrのうちの1種若しくは2種以上0.01
〜1.0%を含むとともに、ZnならびにMgを合量で
0.3〜3.0%含有し、更に、0.01〜0.1%S
bを含んで、残余が実質的にAlから成って、Alマト
リックス中にSi粒子を球状、だ円状若しくは先端が丸
味をおびた形状として分散、析出させ、このSi粒子に
隣接してSn−Pb合金粒子を析出させて成ることを特
徴とする。
【0017】そこで、これら手段たる構成ならびにその
作用について更に詳しく説明すると、次の通りである。
【0018】まず、本発明は高温状態における耐疲労性
を高めるために成されたものである。
【0019】すなわち、従来例においては、単に高融点
元素であるCr、Co、Ni等を添加し、高温強度を高
め、高温下で硬さが急激に低下することを防止すると共
に、耐摩耗性を高めている。しかし、このように、Al
−Sn系合金の高温状態における耐疲労性を高めるため
に、単に高融点元素を添加すると、硬さは増すが、合金
が脆弱となり、引張強度、伸びならびに衝撃値が低下す
る欠点が生じ、軸受合金としての耐疲労性を高めるのに
有効な手段に到っていない。
【0020】これに対し、本発明は、高温、高荷重下の
苛酷な条件に好適な軸受合金を提供するもので、まず、
本発明ではSbを必須成分として添加し、このSbをS
iに作用させ、鋳造時点よりSi結晶の球状化を計り、
更に、熱処理によりこのSi結晶の球状化を高め、これ
により、Al−Sn合金の引張強度、伸びならびに衝撃
強さを高めるほか、後で詳しく説明する通り、析出され
るSi粒子の切削力を緩和し、相手軸に対する悪影響を
除去し、潤滑性を高める。
【0021】耐疲労強さは引張強さ、伸び、衝撃強さな
どの特性のほかに、組織や構造等の特性が総合的に加味
されて発生し、単に軸受成分の添加によっては解決でき
ないとされている。
【0022】そこで、本発明者等がこのところについて
研究を重ねたところ、Sbはマトリックス強化元素とと
もに添加されると、硬さ、引張り強度、伸び等の機械的
性質を高めるほか、Si粒子の析出形態制御などの組織
や構造の制御が達成できる作用を持つことに着目し、こ
れにもとずいて本発明は成されたものである。換言する
と、本発明は、添加元素として上記の高融点元素をAl
−Sn合金に添加しても、Sbの添加によって機械的特
性の低下を防止することができるので、高温下での機械
的特性を急激に低下させることがない。このような本発
明の特徴は高温、高荷重下で疲労試験を行なった結果、
疲労強度の向上が認められたことでも裏付けることがで
きる。
【0023】また、本発明は、表面の組織構成の面で高
温、高負荷条件に適合し、これにより表面性能が著しく
高められている。
【0024】一般的に、焼付現象はそれに達する過程が
複雑で多くの条件が相乗的に作用して達するため、一義
的に把握することは困難であると云われている。しか
し、表面にPb−Sn合金のオ−バ−レイメッキ層を形
成したCu−Pb系軸受合金は高荷重運転下ではこのメ
ッキ層が摩滅し焼付きに至るのに対し、Al−Sn−P
b系合金中にSi、Cu等を含む合金から成る軸受は表
面にオ−バ−レイメッキ層が形成されていないのにも拘
らず、焼付きに至らない現象が存在する。
【0025】そこで、本発明者等はこの現象に着目し、
両軸受を構造的に比較検討した。すなわち、図3は表面
にオ−バ−レイメッキ層を有する軸受の一部の拡大断面
図であり、図4はAl−Sn−Pb合金であって、表面
にオ−バ−レイメッキ層がなくしかもSi、Cu等を含
む軸受の一部の拡大断面図である。図3から明らかな如
く、この軸受は表面のオ−バ−レイメッキ層4、合金層
5ならびに裏金6から成って、このオ−バ−レイメッキ
層4の全表面によって軸荷重が支持される。
【0026】これに対し、図4に示す如く、Al−Sn
−Pb系合金でSi、Cu等を含む軸受は合金層5と裏
金6とから成って、この合金層5のマトリックス中に棒
状や片状のSi粒子2が析出している。従って、この軸
受では相手軸の荷重は硬いSi粒子2で支えられ、しか
も、Si粒子が上記の如く切削力を持っている。
【0027】要するに、両者の差は面接触と点接触であ
り、この差によって潤滑、摩擦面の温度上昇において決
定的な相違となっている。つまり、図3に示す軸受のよ
うに、面接触では、高速、高負荷条件下で摩擦面の温度
は急速に上昇するのに対し、図4に示す軸受のように点
接触では、合金層5の表面と相手軸表面との間に間隙が
形成され、この間隙の油膜にはあまり大きな荷重がかか
らないため、十分な潤滑が保持され、摩擦面の温度上昇
はおさえられる。
【0028】更に進んで、本発明者等は、図4に示す如
き点接触による軸荷重の支持が高荷重下の潤滑にきわめ
て有効であるという基本的見地に立って、その効果を最
大限に生かすための組成ならびに構造について研究し、
本発明に係る軸受合金を完成するに至ったのである。
【0029】具体的に示すと、本発明者等はAl−Sn
−Pb系合金であって、Siを含む軸受合金におけるS
iの析出形態に着目し、その形態の潤滑面におよぼす効
果について調査研究を進めたところ、第1に、Siは融
点が高い安定物質であり、かつ、非金属的性質が強く、
相手軸の主成分のFeに200℃〜500℃程度の高温
状態で接触しても、全く拡散若しくは溶解を起さないこ
とから、軸荷重の点支持手段はSiがきわめて好適であ
ることがわかった。
【0030】第2に、相手軸を油膜を介し点支持する場
合、Si粒子はそのビッカ−ス硬さが599にも達する
ほど硬く、しかも、Si粒子は化合物でないためもろさ
がなく、弾性に富み、急激な変動荷重に耐えられること
がわかった。
【0031】しかしながら、Siは上記の如く性質を持
っているのにも拘らず、結晶性が強く、Alとの共晶析
出形態でも、板状若しくは棒状を呈し、軸受の製造過程
で圧延や熱処理を経ても、その形状はわずか変化する程
度である。このため、Si粒子の析出形態の制御を行な
わない場合は、図5に示す如く、合金層でマトリックス
1中にSi−Pb合金粒子とともに析出するSi粒子2
は板状若しくは棒状化する。更に、主たる潤滑性成分の
PbやSnのSn−Pb粒子3は、Si粒子2の析出位
置と関連なく析出し、Sn粒子2から離れてSn−Pb
合金粒子3が存在している。この組織であると、硬いS
i粒子2のエッジによって相手軸が削られてきずつけら
れ易く、かえって、潤滑性が低下し、焼付きが起こる。
【0032】この点から、本発明において潤滑性の飛躍
的向上のために、Si粒子から切削力を除去し、球状等
の如くエッジ部を丸味をおびさせるような形態に制御す
る。
【0033】すなわち、図1は本発明の一つの実施例に
係る軸受合金の一部の拡大断面図であって、図1に示す
如く、合金層において、そのマトリックス1中に分散析
出するSi粒子2は球状化し、この球状Si粒子2によ
って点接触の理想に近づけ、より潤滑性を高め且つ耐摩
耗性を高めることができる。また、高速かつ急激な高荷
重がかれられても、相手軸をきずつけることがない。ま
た、Si粒子が球状化しているため、マトリックス中の
切欠効果がなく、強度的にも安定したマトリックスを得
ることができ、耐摩耗性にも優れる。
【0034】このSi粒子の球状化は、Siが析出する
共晶点のAl合金液相の性質を改善することによって達
成でき、とくに、その添加元素としてSbが有効であ
る。
【0035】更に、Sbを添加すると、Sn−Pb合金
粒子3の析出形態が変化し、図1に示すようにSiの球
状化粒子2にSn−Pb合金3がより隣接して存在する
ようになる。この構造は、従来例のもの(例えば、図5
参照)に比して、潤滑性能を飛躍的に向上させる。
【0036】また、以上のように表面性能を原理的に解
決するほか、マトリックスの高温での強化をはかる必要
がある。
【0037】すなわち、Alは熱に対して感受性が強
く、150℃をすぎると軟化してしまい(Hv10以
下)、強度を失なってしまう。この軟化の防止のため
に、析出硬化型のマトリックス強化元素として、例え
ば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、V、Zr等
を添加し、これら強化元素はその中の1種若しくは2種
以上を選択し、適切な熱処理を行なうと、高温での強度
を更に上昇させることができる。
【0038】また、このような析出硬化型成分のほか
に、ZnならびにMgを添加してAlマトリックス中に
固溶させ、高温、とくに、高温油存在下での硬度、強度
などの低下を最小限におさえることができる。
【0039】以上の通り、本発明においては、単に析出
硬化型成分や、ZnならびにMgの素地強化成分を添加
するだけでなく、これら強化元素とともにSbを添加
し、硬さのみでなく、引張強度、伸びを従来より向上さ
せ、耐疲労性を高め、高荷重運転下での軸受性能の向上
をはかるものであるが、その機構とともに各成分組成に
ついて説明すると、次の通りである。
【0040】図1に示す構成の軸受では、軸荷重をささ
える潤滑面はマトリックス1の表面から突出するSi粒
子2の先端部であり、しかも、Si粒子と相手軸との間
に油膜が介在し、流体潤滑が保たれている。しかし、急
激な変動荷重を受け、この油膜が破れ、局部的に境界潤
滑に達し、この時に、Si粒子2の上面にSn−Pb合
金のフィルムが介在すれば、焼付きを防止でき、しか
も、正常に油膜が再生されて流体潤滑の状態にすみやか
に復帰することができる。このときにも、図1に示す構
造であると、Si粒子2の近傍にSn−Pb合金粒子3
が存在し、この合金は溶融状態でも潤滑油と親和性があ
り、このため、油切れを起こしにくい。また、相手軸と
Si粒子との摩擦で、Si粒子が高温になっても近接す
るSn−Pb粒子の融解熱で熱吸収され、近傍のマトリ
ックスのAlの合金と相手軸との焼付きが起こりにくく
なる。又、この時にも図2に示す如く、Si粒子2に隣
接するSn−Pb合金粒子3の少なくとも一部が液相化
しており、この液相3aがSi粒子2の突出面に供給さ
れる。この供給量は温度の上昇とともにふえて、Si粒
子2の潤滑面には常にSn−Pbの液相3aが介在する
ため、オ−バ−ヒ−トを未然に防止できる。
【0041】要するに、Si粒子2が球状化し、これに
Sn−Pb合金粒子3が隣接する構造は、境界潤滑状態
(油膜が切れた)で非常に有効であり、また、普通の流
体潤滑状態でも、硬いSi粒子2が相手軸に適切になじ
み、かつ、やわらかいSn−Pb層におおわれ、これが
ショックアブソ−バ−的な働きをする。
【0042】更に、すぐれた潤滑面を得る為にはSi粒
子やSn−Pb合金粒子を支持する強靭なマトリックス
が必要である。
【0043】また、前記特許請求の範囲に記載の如く限
定する理由と、その作用効果(相乗効果を含む)につい
て各々の元素について列記すると、次の通りである。
【0044】(1)Sn 7〜20%:SnはPbと共
にAlマトリックス中に分散し、軸受が基本的に必要と
する耐焼付性、埋収性、なじみ性を担う成分である。し
かし、7%未満ではその耐焼付性の効果が少なく、20
%超ではSn相が三次元的に連続化して、Alマトリッ
クスが弱くなり、高負荷に耐えられなくなる。
【0045】(2)Pb 0.1〜5%:Pbは潤滑性
を向上させ、Snとの共存によって、耐焼付性、埋収
性、なじみ性を向上させる。とくに、Pbは親油性、非
凝着性にすぐれ、少量の添加でも潤滑性能を飛躍的に向
上させる。その量は0.1%未満では上記効果を発揮で
きず、5%超は実質的にAlマトリックス中にSnと共
存させ、均一に分散させることが事実上不可能となる。
【0046】(3)Si 1〜10%:Siはすでに詳
しく説明したように、Alマトリックス中に析出するS
i粒子によって高温下の潤滑状態を保持するもので、本
発明では主要な成分である。すなわち、Al軸受に高温
条件下での耐焼付性、耐荷重性、耐摩耗性を付与する重
要な元素であるが、1%未満の添加では高温潤滑に関与
するのに十分な量のSi粒子が析出することがなく、そ
の添加効果は認められない。10%超では析出するSi
粒子によってマトリックスが硬くなり延性がなく、かえ
って耐荷重性を阻害される。
【0047】(4)ZnならびにMgを合計で0.3〜
3%:ZnはMgとともにAlマトリックスに固溶し、
これによってAlマトリックスを強化する基本的元素
で、熱処理を適切に施すことによってその効果を発揮す
る。その量はZnならびにMgの合量で0.3%以下で
あると、添加効果はない。
【0048】また、ZnならびにMgの合量が3%以下
ではAlと化合物をつくり、かえって材料の延性を阻害
する。
【0049】(5)Cr、Mn、Fe、Ni、Co、T
i、V、Zrのうちの1種若しくは2種以上0.01%
超1.0%未満:これら成分は何れもAlとの間で金属
間化合物を作り、少量の添加でマトリックスの硬度や強
度を上げることができる析出硬化型の成分である。特
に、適量の添加によって耐疲労性や耐摩耗性、高温での
強度保持に有効である。添加量は0.01%以下ではそ
の効果はなく、1%以上の如く多いと、Alとの間の金
属間化合物が粗大化し、脆くなって、かえって合金強度
が低くする。
【0050】(6)Sb 0.01%超0.1%未満:
Sbは、従来からAlマトリックスの強化等の効果が認
められているが、この外に、Siの析出する共晶点にお
いてAl合金液相の性質を改善し、Siを、球状、だ円
状若しくは先端が丸味をおびる形状のSi粒子として分
散析出させ、その上、共晶点におけるAl合金液相の制
御によりSi粒子に近接させてPb−Sn粒子を析出さ
せる。この効果を持たせる為には、0.01〜0.1%
の添加が最も好ましく、0.01%以下ではSi粒子の
形状やSi粒子とPb−Sn粒子の析出形態に影響を与
えず、又、0.1%以上加えると、内部に析出するSn
粒子が多くなり、改良には役にたたない。
【0051】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。
【0052】実施例1.まず、表1に示す組成のAl−
Sn系軸受合金を連続鋳造により厚さ20mmの板状材
として鋳造し、各鋳造ビレットの上下面を1.0mm面
削し続いて冷間圧延により2mmの厚さまで圧下した。
この状態で300〜350℃の熱処理を行なってひずみ
を除去し、その後、純Alの薄い板を介して裏金の鉄板
に圧着させて厚み1.50mmの軸受を得た。
【0053】
【表1】
【0054】これらの軸受のうちで、供試材1〜5は比
較例の供試材であり、6〜10は本発明に係るもので、
6〜10はSi球状化の為にSbを添加しかつマトリッ
クス強加の為にZnならびにMgを加え、その他にC
r、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、V、Zrを添加し
たものである。
【0055】これらの各供試材は、軸受として使用され
る常温及び200℃の機械的性質を見るために、引張強
度、伸びならびに硬さの試験を行ない、これを表2に示
した。なお、各供試材は裏当金を機械加工により削除し
てAl−Sn合金部分のみとし、試験片の形状はJIS
z 2201の5号に示すものとした。
【0056】
【表2】
【0057】これらの結果から、供試材6〜10は比較
例の供試材に比べ、高温(200℃)における強度低下
が少なく、ZnならびにMgの添加効果、更に、Cr、
Mn、Fe、Co、Ni、Ti、V、Zrの添加効果も
うかがえる。すなわち、Siの球状化及びマトリックス
強化が相剰されて強度や伸びがバランスよく改善された
ものと考えられる。
【0058】次に、供試材の耐焼付性と耐摩耗性を耐る
ために、鈴木式摩擦摩耗試験機を用いて試験し、その試
験条件は次の通りであった。 マサツ速度 4m/sec 相 手 材 S45C、硬さHRC=55 面アラサ 0.8〜1.0S 使用オイル SAE、20w−40 油 温 150±5℃ 焼 付 荷 重 100kg/cm2から10kg/cm
2Stepで焼付きに至るまで15分毎に面圧を上げて
ゆき、焼付きをおこした面圧を焼付荷重とする 耐 摩 耗 性 一方、耐摩耗性をみるために100k
g/cm2一定で6時間試験し、その後の重量変化をみ
【0059】この結果を表2に示す。
【0060】これによれば、供試材6〜10は何れも比
較例の供試材に比べ少なくとも耐焼付性で良好な結果を
示しており、Sb添加及びマトリックス強化元素添加に
より表面性能も向上していることがわかる。すなわち、
本発明に係る合金はすぐれた潤滑機構を有していること
を示している。
【0061】次に、実際に、各供試材をベアリング形状
に加工し、最終的なベアリングの疲労テストを行なった
ところ、表2に示す結果を得た。これは実際のエンジン
の条件とほぼ同じようにベアリングをコンロッドに固定
し、軸に偏心荷重をかけて、以下の条件で耐久テストを
行ない、焼付きや破損を起さず、その性能を維持した時
間の長さで評価するテストである。
【0062】なお、テスト条件は次の通りである。 面 圧 600kg/cm2 回 転 数 4000r.p.m 相手材料 FCD 70、アラサ 0.8〜1.5
S 使用オイル SAE 20w−40 油 温 150±5℃
【0063】なお、このテスト時間の上限は300時間
とし、N=5の平均値を表2に示した。この結果、何れ
も比較例の供試材に比べ長さ耐久時間を示しており、本
発明に係る合金はすぐれた耐疲労性を示している。
【0064】一方、従来例2の合金と更にSbを0.0
3%添加した場合(供試材8)におけるSiの形態の変
化を示すと、図6ならびに図7の通りであった。すなわ
ち、図6ならびに図7は従来例の合金と本発明に係る合
金の顕微鏡組織を示す各説明図であって、とくに、それ
ぞれの試料をSi粒の形状がわかるように深くエッチン
グし、電子顕微鏡を用いて撮影したものである。これら
図面から明確に解るように、図6の如く、従来例では粒
子2は全く球状化していないのに反し、本発明ではSb
の添加によりSi粒子2のエッジ部が球状化しているこ
とがわかる。
【0065】実施例2.本発明に係る軸受合金が高融点
金属等をAlマトリックスの強化剤として添加して、合
金の脆弱化を改善する効果があるか否かを確認するた
め、代用特性として衝撃値を測定し、Sbの添加作用に
よる改善効果を実験によって求めた。
【0066】実験の供試材として、実施例1の表1に示
す従来材であるSbを含まない5と本発明に係るもので
ある供試材6にて比較実験を行なった。
【0067】実験はJIS Z 2242、シャルピ−
衝撃試験方法にて3号試験片(n=5)を作成して行な
った。
【0068】実験の結果従来材は平均値0.84kg・
m/cm2であり、明らかに本発明に係る軸受合金はS
b添加により改善効果が認められた。
【0069】
【発明の効果】以下詳しく説明した通り、本発明は、重
量%で7〜20%Sn、0.1〜5%Pb、1〜10%
Si、MgならびにZn 0.3〜3.0%を含むと共
に、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、V、Zrの
うち1種若しくは2種以上0.01%〜1.0%を含有
し、更に、0.01%〜0.1%Sbを含有し、残余が
実質的にAlから成って、Alマトリックス中にSiが
球状、だ円状若しくは先端が丸味をおびる形状として分
散、析出させ、更に、Si粒子に近接してSn−Pb粒
子を析出させて成るものである。
【0070】したがって、本発明軸受合金は極めて、潤
滑性に優れ、かつ、100〜250℃の高温における機
械的性質が極めて良好であり、高負荷運転による使用条
件の苛酷さに十分に耐える軸受合金である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施例に係る軸受合金の一部の
拡大断面図である。
【図2】図1に示す軸受合金の潤滑機構の説明図であ
る。
【図3】従来例の軸受の一部の拡大断面図である。
【図4】従来例の軸受の一部の拡大断面図である。
【図5】図4の軸受合金の一部の拡大断面図である。
【図6】従来例に係る軸受合金の組織を示す説明図であ
る。
【図7】本発明に係る軸受合金の組織を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 マトリックス 2 Si粒子 3 Sn−Pb合金粒子 3a Sn−Pb液相 4 オ−バレイメッキ層 5 軸受合金層 6 裏金
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大垣 俊久 千葉県習志野市実籾町一ノ六八七 エヌデ ーシー株式会社内 (72)発明者 大崎 剛 千葉県習志野市実籾町一ノ六八七 エヌデ ーシー株式会社内 (56)参考文献 特開 昭56−98443(JP,A) 特開 昭56−98444(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で7〜20%Sn、0.1〜5%
    Pb、1〜10%Si、Cr、Mn、Fe、Ni、C
    o、Ti、V、Zrのうちの1種若しくは2種以上0.
    01〜1.0%を含むとともに、ZnならびにMgを合
    量で0.3〜3.0%含有し、更に、0.01〜0.1
    %Sbを含んで、残余が実質的にAlから成って、Al
    マトリックス中にSi粒子を球状、だ円状若しくは先端
    が丸味をおびた形状として分散、析出させ、このSi粒
    子に隣接してSn−Pb合金粒子を析出させて成ること
    を特徴とするAl−Sn系軸受合金。
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