JPH0717980B2 - Al―Sn系軸受合金 - Google Patents

Al―Sn系軸受合金

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JPH0717980B2
JPH0717980B2 JP8844789A JP8844789A JPH0717980B2 JP H0717980 B2 JPH0717980 B2 JP H0717980B2 JP 8844789 A JP8844789 A JP 8844789A JP 8844789 A JP8844789 A JP 8844789A JP H0717980 B2 JPH0717980 B2 JP H0717980B2
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正仁 藤田
章 大河原
武志 坂井
俊久 大垣
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エヌデーシー株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はAl−Sn系軸受合金に係り、詳しくは、マトリッ
クス中にSi粒子を球状若しくはそれに近い形状に析出さ
せる一方、このSi粒子に隣接させてSn−Pb粒子を析出さ
せ、高速・高負荷運転などの苛酷な使用条件に耐えるこ
とができ、高油温下においても耐疲労性、耐焼付性なら
びに耐摩耗性にすぐれた効果を示すAl−Sn系軸受合金に
係る。
従来の技術 最近の自動車用エンジンは、小型化、省燃費、高出力の
ものとなり、これにともなって軸受にかかる荷重が増加
すると共に、潤滑油の温度が上昇し、軸受の使用条件は
苛酷化の一途をたどっている。この点から、従来例の多
元系やAl系等では、軸受合金の表面にはオーバーレイメ
ッキ等によりPb−Sn系合金等の表面層を形成した軸受が
提案されていた。このPb−Sn系合金のオーバーレイ層を
有する軸受は、耐焼付性、耐疲労性、耐摩耗性などにあ
る程度の優れた特性を示す。最近のようなきわめて苛酷
な使用条件になると、潤滑面の高温度化によって、激し
い疲労や焼付現象にみまわれ、その使用に耐えられな
い。
そこで、最近は、Pb−Sn合金等のオーバーレイメッキ等
の表面層を有しない軸受が求められている。
すなわち、表面にオーバーレイメッキ層を有する軸受
は、一般的には、JIS H 5402、AJ−1(10%Sn、0.75%
Cu、0.5%Ni、AlBal)や、JIS H 5402、AJ−2(6%S
n、2.5%Cu、1.0%Ni、AlBal)等のJIS規格、SAE 780
(6%Sn、2%Si、1%Cu、0.5%Ni、0.1%Ti、AlBa
l)等のSAE規格に示される通り、その軸受合金部分はSn
含有量が比較的少ない低Sn−Al合金から成って、これら
軸受合金部分の軸受面は何れもPb−Sn系合金のオーバー
レイメッキ層が形成されている。しかし、これら軸受
は、近年の高負荷、高温の使用条件下では表面のオーバ
ーレイメッキ層が摩滅して焼付きに至り、使用に耐えら
れなくなっている。
一方において、SAE 783(20%Sn、0.5%Si、1.0%Cu、
0.1%Ti、AlBal)に示される通り、表面にオーバーレイ
メッキ層を形成しない軸受が提案され、この軸受は、Sn
含有量が多い高Sn−Al合金から成っている。しかし、こ
のようにSnが20%程度の如く多く含まれる合金は、硬度
が低く、Alマトリックスが弱くなるため、高負荷に耐え
られない。
また、Sn含有量の多少に拘らず、Al−Sn系合金中にPbを
添加して潤滑性を増進させ、耐焼付性をもたせた軸受合
金が、例えば、水野昴一著昭和29年日刊工業新聞社発行
「軸受合金」第139頁に記載され、この軸受合金は10%S
n、1.5%Cu、0.5%Siを含むとともに3%Pbを添加して
成るAl−Sn−Pb系合金である。
更に、このAl−Sn−Pb系合金では、PbがAlとはほとんど
固溶しないため、このPbの分散性の向上のために、Sbを
添加したAl−Sn−Pb−Sb系合金が特公昭52−12131号に
記載され、更に、Alマトリックス強化のためにCrを添加
したAl−Sn−Pb−Sb−Cr系合金が特公昭58−18985号に
記載されている。しかし、これらのAl−Sn−Pb系合金は
通常運転時の潤滑性の向上を目的として開発されたもの
で、高負荷運転条件では十分な耐疲労性を示さない欠点
がある。この理由は、通常の運転下に比べると、高負荷
運転下の軸と軸受との潤滑機構は根本的に相違するから
である。
そこで、高負荷運転下の潤滑機構につき、基本的な検討
が行なわれ、その一つとしてAl−Sn系合金中に粗大なSi
を分散析出させたものが特開昭58−64336号によって提
案されている。
この軸受は硬いSi析出物により軸受表面にある程度の切
削力を持たせたものであって、切削力を持つが故に、相
手軸の表面凹凸部が削られて平坦化し、軸受性能を向上
させるものである。更に詳しく説明すると、黒鉛鋳鉄か
ら成る相手軸中には黒鉛が球状若しくは片状に析出され
ている。
したがって、相手軸の研摩加工時には、相手軸表面から
球状又は片状の黒鉛が脱落し、研摩加工後の相手軸表面
には脱落黒鉛のあとが凹部として残り、この凹部周囲に
は硬く加工硬化したバリやエッジ等の凸部が生成してい
る。従って、上記の如くAl−Sn系、Al−Sn−Pb系等の軸
受合金では、これら凹凸部により高負荷運転時には異常
摩耗が発生し易い。しかし、このような相手軸であって
も、それを支承する軸受が粗大なSi粒子を分散析出させ
た軸受合金から成ると、この軸受の表面には、硬いSiの
析出物により切削力が付与されているために、相手軸の
凹凸部分は機械的に切削されて平坦化され、これ故に、
異常摩耗や焼付きが起らない。
しかしながら、相手軸が黒鉛鋳鉄以外の場合には、高負
荷運転のときに、かえって粗大なSi析出物によって相手
軸の表面が不規則にけずられ、焼付きが発生し、大きな
障害が生じる。
発明が解決しようとする課題 本発明は上記欠点の解決を目的とし、具体的には、すな
わち、従来例のように、高油温度下であっても、耐焼付
性ならびに高摩耗性が十分発揮できるAl−Sn系軸受合金
を提案する。
すなわち、従来例のように、潤滑性向上のためにSnやPb
等の含有量を高めたり、Alマトリックスの強化を目的と
してCr、Sb等やMn、Ni等の元素を添加すると、これらの
元素によってAlマトリックスの硬度を増すことはできて
も、逆に脆弱になり高負荷運転時には殆んど高温下(10
0〜250℃、なかでも、後記の実施例に示すように、200
℃)では耐疲労性や耐摩耗性、更に硬度その他の機械的
特性を示さない。そこで、本発明では、Siを球状に近い
形で合金中に析出させてある程度その切削性を緩和し、
更に、Si粒子に近接させてPb−Sn粒子を析出させて上記
目的を達成する。
従って、本発明は、最近のエンジンの高出力化に伴な
い、軸受部温度が上昇する傾向にあり、特に、この高温
での耐疲労性が強く要求されることに着目し、従来のAl
マトリックス強化元素を添加するのにも拘らず、Al合金
の脆弱化を改善し、特に高温下での耐疲労性を高めると
共に更に高い耐焼付性、耐摩耗性を具えるAl−Sn系軸受
合金を提供する。
課題を解決するための手段ならびにその作用 すなわち、本発明に係る軸受合金は重量%で7〜20%S
n、0.1〜5%Pb、1〜10%Si、0.3〜3.0%Zn、Cr、Mn、
Fe、Ni、Co、Ti、V、Zrのうちの1種若しくは2種以上
0.01%超1.0%未満を含有すると共に、Sb0.01%超0.1%
未満を含み、残余が実質的にAlから成って、Alマトリッ
クス中にSi粒子を球状、だ円状若しくは先端が丸味をお
びた形状として分散、析出させ、このSi粒子に隣接して
Sn−Pb合金粒子を析出させて成ることを特徴とする。
また、Znの一部をCuで置換することもできるし、Cuなら
びにMgで置換することもできる。
そこで、これら手段たる構成ならびにその作用について
更に詳しく説明すると、次の通りである。
まず、本発明は高温状態における耐疲労性を高めるため
に成されたものである。
すなわち、従来例においては、単に高融点元素であるC
r、Co、Ni等を添加し、高温強度を高め、高温下で硬さ
が急激に低下することを防止すると共に、耐摩耗性を高
めている。しかし、このように、Al−Sn系合金の高温状
態における耐疲労性を高めるために、単に高融点元素を
添加すると、硬さは増すが、合金が脆弱となり、引張強
度、伸びならびに衝撃値が低下する欠点が生じ、軸受合
金としての耐疲労性を高めるのに有効な手段に到ってい
ない。
これに対し、本発明は、高温、高荷重下の苛酷な条件に
好適な軸受合金を提供するもので、まず、本発明ではSb
を必須成分として添加し、このSbをSiに作用させ、鋳造
時点よりSi結晶の球状化を計り、更に、熱処理によりこ
のSi結晶の球状化を高め、これにより、Al−Sn合金の引
張強度、伸びならびに衝撃強さを高めるほか、後で詳し
く説明する通り、析出されるSi粒子の切削力を緩和し、
相手軸に対する悪影響を除去し、潤滑性を高める。
耐疲労強さは引張強さ、伸び、衝撃強さなどの特性のほ
かに、組織や構造等の特性が総合的に加味されて発生
し、単に軸受成分の添加によっては解決できないとされ
ている。
そこで、本発明者等がこのところについて研究を重ねた
ところ、Sbはマトリックス強化元素とともに添加される
と、硬さ、引張り強度、伸び等の機械的性質を高めるほ
か、Si粒子の析出形態制御などの組織や構造の制御が達
成できる作用を持つことに着目し、これにもとずいて本
発明は成されたものである。換言すると、本発明は、添
加元素として上記の高融点元素をAl−Sn合金に添加して
も、Sbの添加によって機械的特性の低下を防止すること
ができるので、高温下での機械的特性を急激に低下させ
ることがない。このような本発明の特徴は高温、高荷重
下で疲労試験を行なった結果、疲労強度の向上が認めら
れたことでも裏付けることができる。
また、本発明は、表面の組織構成の面で高温、高負荷条
件に適合し、これにより表面性能が著しく高められてい
る。
一般的に、焼付現象はそれに達する過程が複雑で多くの
条件が相乗的に作用して達するため、一義的に把握する
ことは困難であると云われている。しかし、表面にPb−
Sn合金のオーバーレイメッキ層を形成したCu−Pb系軸受
合金は高荷重運転下ではこのメッキ層が摩滅し焼付きに
至るのに対し、Al−Sn−Pb系合金中にSi、Cu等を含む合
金から成る軸受は表面にオーバーレイメッキ層が形成さ
れていないのにも拘らず、焼付きに至らない現象が存在
する。
そこで、本発明者等はこの現象に着目し、両軸受を構造
的に比較検討した。すなわち、第3図は表面にオーバー
レイメッキ層を有する軸受の一部の拡大断面図であり、
第4図はAl−Sn−Pb合金であって、表面にオーバーレイ
メッキ層がなくしかもSi、Cu等を含む軸受の一部の拡大
断面図である。第3図から明らかな如く、この軸受は表
面のオーバーレイメッキ層4、合金層5ならびに裏金6
から成って、このオーバーレイメッキ層4の全表面によ
って軸荷重が支持される。これに対し、第4図に示す如
く、Al−Sn−Pb系合金でSi、Cu等を含む軸受は合金層5
と裏金6とから成って、この合金層5のマトリックス中
に棒状や片状のSi粒子2が析出している。従って、この
軸受では相手軸の荷重は硬いSi粒子2で支えられ、しか
も、Si粒子が上記の如く切削力を持っている。
要するに、両者の差は面接触と点接触であり、この差に
よって潤滑、摩擦面の温度上昇において決定的な相違と
なっている。つまり、第3図に示す軸受のように、面接
触では、高速、高負荷条件下で摩擦面の温度は急速に上
昇するのに対し、第4図に示す軸受のように点接触で
は、合金層5の表面と相手軸表面との間に間隙ガ形成さ
れ、この間隙の油膜にはあまり大きな荷重がかからない
ため、十分な潤滑が保持され、摩擦面の温度上昇はおさ
えられる。
更に進んで、本発明者等は、第4図に示す如き点接触に
よる軸荷重の支持が高荷重下の潤滑にきわめて有効であ
るという基本的見地に立って、その効果を最大限に生か
すための組成ならびに構造について研究し、本発明に係
る軸受合金を完成するに至ったのである。
具体的に示すと、本発明者等はAl−Sn−Pb系合金であっ
て、SiやCu等を含む軸受合金におけるSiの析出形態に着
目し、その形態の潤滑面におよぼす効果について調査研
究を進めたところ、 第1に、Siは融点が高い安定物質であり、かつ、非金属
的性質が強く、相手軸の主成分のFeに200℃〜500℃程度
の高温状態で接触しても、全く拡散若しくは溶解を起さ
ないことから、軸荷重の点支持手段はSiがきわめて好適
であることがわかった。
第2に、相手軸を油膜を介し点支持する場合、Si粒子は
そのビッカース硬さが599にも達するほど硬く、しか
も、Si粒子は化合物でないためもろさがなく、弾性に富
み、急激な変動荷重に耐えられることがわかった。
しかしながら、Siは上記の如く性質を持っているのにも
拘らず、結晶性が強く、Alとの共晶析出形態でも、板状
若しくは棒状を呈し、軸受の製造過程で圧延や熱処理を
経ても、その形状はわずか変化する程度である。このた
め、Si粒子の析出形態の制御を行なわない場合は、第5
図に示す如く、合金層でマトリックス1中にSi−Pb合金
粒子とともに析出するSi粒子2は板状若しくは棒状化す
る。更に、主たる潤滑性成分のPbやSnのSn−Pb粒子3
は、Si粒子2の析出位置と関連なく析出し、Sn粒子2か
ら離れてSn−Pb合金粒子3が存在している。この組織で
あると、硬いSi粒子2のエッジによって相手軸が削られ
てきずつけられ易く、かえって、潤滑性が低下し、焼付
きが起こる。
この点から、本発明において潤滑性の飛躍的向上のため
に、Si粒子から切削力を除去し、球状等の如くエッジ部
を丸味をおびさせるような形態に制御する。
すなわち、第1図は本発明の一つの実施例に係る軸受合
金の一部の拡大断面図であって、第1図に示す如く、合
金層において、そのマトリックス1中に分散析出するSi
粒子2は球状化し、この球状Si粒子2によって点接触の
理想に近づけ、より潤滑性を高め且つ耐摩耗性を高める
ことができる。また、高速かつ急激な高荷重がかれられ
ても、相手軸をきずつけることがない。また、Si粒子が
球状化しているため、マトリックス中の切欠効果がな
く、強度的にも安定したマトリックスを得ることがで
き、耐摩耗性にも優れる。
このSi粒子の球状化は、Siが析出する共晶点のAl合金液
相の性質を改善することによって達成でき、とくに、そ
の添加元素としてSbが有効である。
更に、Sbを添加すると、Sn−Pb合金粒子3の析出形態が
変化し、第1図に示すようにSiの球状化粒子2にSn−Pb
合金3がより隣接して存在するようになる。この構造
は、従来例のもの(例えば、第5図参照)に比して、潤
滑性能を飛躍的に向上させる。
また、以上のように表面性能を原理的に解決するほか、
マトリックスの高温での強化をはかる必要がある。
すなわち、Alは熱に対して感受性が強く、150℃をすぎ
ると軟化してしまい(Hv10以下)、強度を失なってしま
う。この軟化の防止のために、析出硬化型のマトリック
ス強化元素として、例えば、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、
V、Zr等を添加し、これら強化元素はその中の1種若し
くは2種以上を選択し、適切な熱処理を行なうと、高温
での強度を更に上昇させることができる。
また、このような析出硬化型成分のほかに、Zn、所望に
応じてCu、Mgなどを添加してAlマトリックス中に固溶さ
せ、高温、とくに、高温油存在下での硬度、強度などの
低下を最小限におさえることができる。
以上の通り、本発明においては、単に析出硬化型成分
や、素地強化成分を添加するだけでなく、これら強化元
素とともにSbを添加し、硬さのみでなく、引張強度、伸
びを従来より向上させ、耐疲労性を高め、高荷重運転下
での軸受性能の向上をはかるものであるが、その機構と
ともに各成分組成について説明すると、次の通りであ
る。
第1図に示す構成の軸受では、軸荷重をささえる潤滑面
はマトリックス1の表面から突出するSi粒子2の先端部
であり、しかも、Si粒子と相手軸との間に油膜が介在
し、流体潤滑が保たれている。しかし、急激な変動荷重
を受け、この油膜が破れ、局部的に境界潤滑に達し、こ
の時に、Si粒子2の上面にSn−Pb合金のフィルムが介在
すれば、焼付きを防止でき、しかも、正常に油膜が再生
されて流体潤滑の状態にすみやかに復帰することができ
る。このときにも、第1図に示す構造であると、Si粒子
2の近傍にSn−Pb合金粒子3が存在し、この合金は溶融
状態でも潤滑油と親和性があり、このため、油切れを起
こしにくい。また、相手軸とSi粒子との摩擦で、Si粒子
が高温になっても近接するSn−Pb粒子の融解熱で熱吸収
され、近傍のマトリックスのAlの合金と相手軸との焼付
きが起こりにくくなる。又、この時にも第2図に示す如
く、Si粒子2に隣接するSn−Pb合金粒子3の少なくとも
一部が液相化しており、この液相3aがSi粒子2の突出面
に供給される。この供給量は温度の上昇とともにふえ
て、Si粒子2の潤滑面には常にSn−Pbの液相3aが介在す
るため、オーバーヒートを未然に防止できる。要する
に、Si粒子2が球状化し、これにSn−Pb合金粒子3が隣
接する構造は、境界潤滑状態(油膜が切れた)で非常に
有効であり、また、普通の流体潤滑状態でも、硬いSi粒
子2が相手軸に適切になじみ、かつ、やわらかいSn−Pb
層におおわれ、これがショックアブソーバー的な働きを
する。
更に、すぐれた潤滑面を得る為にはSi粒子やSn−Pb合金
粒子を支持する強靱なマトリックスが必要である。すな
わち、前記特許請求の範囲に記載の如く限定する理由
と、その作用効果(相乗効果を含む)について各々の元
素について列記する。
(1)Sn 7〜20%: SnはPbと共にAlマトリックス中に分散し、軸受が基本的
に必要とする耐焼付性、埋収性、なじみ性を担う成分で
ある。しかし、7%未満ではその耐焼付性の効果が少な
く、20%超ではSn相が三次元的に連続化して、Alマトリ
ックスが弱くなり、高負荷に耐えられなくなる。
(2)Pb 0.1〜5%: Pbは潤滑性を向上させ、Snとの共存によって、耐焼付
性、埋収性、なじみ性を向上させる。とくに、Pbは親油
性、非凝着性にすぐれ、少量の添加でも潤滑性能を飛躍
的に向上させる。その量は0.1%未満では上記効果を発
揮できず、5%超は実質的にAlマトリックス中にSnと共
存させ、均一に分散させることが事実上不可能となる。
(3)Si 1〜10%: Siはすでに詳しく説明したように、Alマトリックス中に
析出するSi粒子によって高温下の潤滑状態を保持するも
ので、本発明では主要な成分である。すなわち、Al軸受
に高温条件下での耐焼付性、耐荷重性、耐摩耗性を付与
する重要な元素であるが、1%未満の添加では高温潤滑
に関与するのに十分な量のSi粒子が析出することがな
く、その添加効果は認められない。10%超では析出する
Si粒子によってマトリックスが硬くなり延性がなく、か
えって耐荷重性を阻害される。
(4)Zn0.3〜3%: ZnはAlマトリックス中にある程度は固溶し、Alマトリッ
クスを強化する基本的元素で、熱処理を適切に施すこと
によってその効果を発揮する。その量は0.3%未満では
添加効果はみられない。
しかし、Znが3%を超えると、Alマトリックス中に固溶
せずに、Alと化合物をつくり、この化合物によってかえ
って伸びが低下し、延性がなくなって、耐荷重性が阻害
される。
なお、Znは0.3〜3%の範囲内で、その一部はCu又はCu
+Mgによって置換えることができる。
すなわち、CuはAlマトリックス中に固溶し、それを強化
し、とくに、その固溶量も大きい。なかでも、Sbと共存
するとその共存下において高温に硬度を保持し、高温で
伸びも高められる。このところから、耐焼付性、耐摩耗
性ならびに耐疲労性はZnのみ添加に較べて向上する。
また、Cuの一部をMgで置換でき、このようにしても同等
の効果が達成できる。
(5)Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、V、Zrのうちの1種若
しくは2種以上0.01%超1.0%未満: これら成分は何れもAlとの間で金属間化合物を作り、少
量の添加でマトリックスの硬度や強度を上げることがで
きる析出硬化型の成分である。特に、適量の添加によっ
て耐疲労性や耐摩耗性、高温での強度保持に有効であ
る。添加量は0.01%以下ではその効果はなく、1%以上
の如く多いと、Alとの間の金属間化合物が粗大化し、脆
くなって、かえって合金強度が低くする。
(6)Sb 0.01%超0.1%未満: Sbは、従来からAlマトリックスの強化等の効果が認めら
れているが、この外に、Siの析出する共晶点においてAl
合金液相の性質を改善し、Siを、球状、だ円状若しくは
先端が丸味をおびる形状のSi粒子として分散析出させ、
その上、共晶点におけるAl合金液相の制御によりSi粒子
に近接させてPb−Sn粒子を析出させる。この効果を持た
せる為には、0.01〜0.1%の添加が最も好ましく、0.01
%以下ではSi粒子の形状やSi粒子とPb−Sn粒子の析出形
態に悪影響を与えず、又、0.1%以上加えると、内部に
析出するSn粒子が多くなり、改良には役にたたない。
実施例 次に、本発明の実施例について説明する。
実施例1. まず、第1表に示す組成のAl−Sn系軸受合金を連続鋳造
により厚さ20mmの板状材として鋳造し、各鋳造ビレット
の上下面を1.0mm面削し続いて冷間圧延により2mmの厚さ
まで圧下した。この状態で300〜350℃の熱処理を行なっ
てひずみを除去し、その後、純Alの薄い板を介して裏金
の鉄板に圧着させて厚み1.50mmの軸受を得た。
これらの軸受のうちで、供試材No.1〜5は比較例の供試
材であり、No.6〜11は本発明に係るもので、No.6〜11は
Si球状化の為にSbを添加しかつマトリックス強化の為に
Znを加えるほか、Znの一部をCu、CuおよびMgで置換し、
その他にCr、Mn、Fe、Co、Ni、Ti、V、Zrを添加したも
のである。
これらの各供試材は、軸受として使用される常温及び20
0℃の機械的性質を見るために、引張強度、伸びならび
に硬さの試験を行ない、これを第2表に示した。なお、
各供試材は裏当金を機械加工により削除してAl−Sn合金
部分のみとし、試験片の形状はJIS z 2201の5号に示す
ものとした。
これらの結果から、供試材6〜11は比較例の供試材に比
べ、高温(200℃)における強度低下が少なく、Zn(Zn
の一部を置換したCu又はMg)の添加効果、更に、Cr、M
n、Fe、Co、Ni、Ti、V、Zrの添加効果もうかがえる。
すなわち、Siの球状化及びマトリックス強化が相剩され
て強度や伸びがバランスよく改善されたものと考えられ
る。
次に、供試材の耐焼付性と耐摩耗性を耐るために、鈴木
式摩擦摩耗試験機を用いて試験し、その試験条件は次の
通りであった。
マサツ速度 4m/sec 相 手 材 S45C、硬さHRC=55面アラサ 0.8〜1.0S 使用オイル SAE、20w−40 油 温 150±5℃ 焼付荷重 100kg/cm2から10kg/cm2Stepで焼付きに至る
まで15分毎に面圧を上げてゆき、焼付きをおこした面圧
を焼付荷重とする。
耐摩耗性 一方、耐摩耗性をみるために100kg/cm2一定
で6時間試験し、その後の重量変化をみる この結果を第2表に示す。
これによれば、供試材6〜11は何れも比較例の供試材に
比べ少なくとも耐焼付性で良好な結果を示しており、Sb
添加及びマトリックス強化元素添加により表面性能も向
上していることがわかる。すなわち、本発明に係る合金
はすぐれた潤滑機構を有していることを示している。
次に、実際に、各供試材をベアリング形状に加工し、最
終的なベアリングの疲労テストを行なったところ、第2
表に示す結果を得た。これは実際のエンジンの条件とほ
ぼ同じようにベアリングをコンロッドに固定し、軸に偏
心荷重をかけて、以下の条件で耐久テストを行ない、焼
付きや破損を起さず、その性能を維持した時間の長さで
評価するテストである。
なお、テスト条件は次の通りである。
面 圧 600kg/cm2 回 転 数 4000r.p.m 相手材料 FCD 70、アラサ 0.8〜1.5S 使用オイル SAE 20w−40 油 温 150±5℃ なお、このテスト時間の上限は300時間とし、N=5の
平均値を第2表に示した。この結果、何れも比較例の供
試材に比べ長さ耐久時間を示しており、本発明に係る合
金はすぐれた耐疲労性を示している。
一方、従来例No.2の合金と更にSbを0.03%添加した場合
(供試材No.8)におけるSiの形態の変化を示すと、第6
図ならびに第7図の通りであった。すなわち、第6図な
らびに第7図は従来例の合金と本発明に係る合金の顕微
鏡組織を示す各説明図であって、とくに、それぞれの試
料をSi粒の形状がわかるように深くエッチングし、電子
顕微鏡を用いて撮影したものである。これら図面から明
確に解るように、第6図の如く、従来例では粒子2は全
く球状化していないのに反し、本発明ではSbの添加によ
りSi粒子2のエッジ部が球状化していることがわかる。
実施例2. 本発明に係る軸受合金が高融点金属等をAlマトリックス
の強化剤として添加して、合金の脆弱化を改善する効果
があるか否かを確認するため、代用特性として衝撃値を
測定し、Sbの添加作用による改善効果を実験によって求
めた。
実験の供試材として、実施例1の第1表に示す従来材で
あるSbを含まないNo.5と本発明に係るものである供試材
No.8にて比較実験を行なった。
実験はJIS Z 2242、シャルピー衝撃試験方法にて3号試
験片(n=5)を作成して行なった。
実験の結果従来材は平均値0.84kg・m/cm2であり、明ら
かに本発明に係る軸受合金はSb添加により改善効果が認
められた。
実施例3. Sb量の違いによるAl−Sn合金への影響を把握するため、
第3表に示す成分を含有する730℃の溶湯から厚さ20mm
の板状材を鋳造した。この鋳造材の断面組織におけるSi
粒の形状は画像処理装置を使って円形度係数を求めた。
また、この鋳造材からJIS Z 2201で規定された試験片14
A号を切り出し、その機械的特性を調査し、その結果を
第4表に示した。
第4表に示す通り、Sb量が0.2%(比較材)より0.06%
(本願発明材)の方がSi粒が著しく円形になっており、
また、機械的性質も改善され、特に、材料が破壊するま
での吸収エネルギー量を代用するエネルギー値が約1割
向上している。これらの事からも、Sb量が0.1%未満の
本願発明材は従来材に比較して明らかな性質上の相違が
認められる。
<発明の効果> 以下詳しく説明した通り、本発明に係るAl−Sn系軸受合
金は、重量%で7〜20%Sn、0.1〜5%Pb、1〜10%Si
ならびにZn0.3〜3.0%(ただし、Znの一部をCu又はCuな
らびにMgで置換できる)、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、
V、Zrのうち1種若しくは2種以上0.01%超1.0%未満
を含有すると供に、Sb0.01%超0.1%未満を含有し、残
余が実質的にAlから成って、Siが球状、だ円状若しくは
先端が丸味をおびる形状のSi粒子として分散、析出し、
Sn−Pb合金粒子がSi粒子に隣接して存在する組織から成
っている。
従って、本発明軸受合金は極めて潤滑性に優れるほか、
とくに、100〜250℃の高温における機械的性質が極めて
良好であり、高負荷運転による使用条件の苛酷さに十分
に耐える軸受合金である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一つの実施例に係る軸受合金の一部の
拡大断面図、第2図は第1図に示す軸受合金の潤滑機構
の説明図、第3図ならびに第4図は従来例の軸受の一部
の各拡大断面図、第5図は第4図の軸受合金の一部の拡
大断面図、第6図は従来例に係る軸受合金の組織を示す
説明図、第7図は本発明に係る軸受合金の組織を示す説
明図である。 符号1……マトリックス 2……Si粒子 3……Sn−Pb合金粒子 3a……Sn−Pb液相 4……オーバレイメッキ層 5……軸受合金層 6……裏金
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大垣 俊久 千葉県習志野市実籾町1―687 エヌデー シー株式会社内 (72)発明者 大崎 剛 千葉県習志野市実籾町1―687 エヌデー シー株式会社内 (56)参考文献 特開 昭56−98443(JP,A) 特開 昭56−98444(JP,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で7〜20%Sn、0.1〜5%Pb、1〜1
    0%Si、0.3〜3.0%Zn、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、V、Z
    rのうちの1種若しくは2種以上0.01%超1.0%未満を含
    有すると共に、Sb0.01%超0.1%未満を含み、残余が実
    質的にAlから成って、Alマトリックス中にSi粒子を球
    状、だ円状若しくは先端が丸味をおびた形状として分
    散、析出させ、このSi粒子に隣接してSn−Pb合金粒子を
    析出させて成ることを特徴とするAl−Sn系軸受合金。
  2. 【請求項2】重量%で7〜20%Sn、0.1〜5%Pb、1〜1
    0%Si、0.3〜3.0%Zn、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、V、Z
    rのうちの1種若しくは2種以上0.01%超1.0%未満を含
    有すると共に、Sb0.01%超0.1%未満を含み、残余が実
    質的にAlから成り、前記Znの一部をCuで置換して成っ
    て、Alマトリックス中にSi粒子を球状、だ円状若しくは
    先端が丸味をおびた形状として分散、析出させ、このSi
    粒子に隣接してSn−Pb合金粒子を析出させて成ることを
    特徴とするAl−Sn系軸受合金。
  3. 【請求項3】重量%で7〜20%Sn、0.1〜5%Pb、1〜1
    0%Si、0.3〜3.0%Zn、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Ti、V、Z
    rのうちの1種若しくは2種以上0.01%超1.0%未満を含
    有すると共に、Sb0.01%超0.1%未満を含み、残余が実
    質的にAlから成り、前記Znの一部をCuならびにMgで置換
    して成って、Alマトリックス中にSi粒子を球状、だ円状
    若しくは先端が丸味をおびた形状として分散、析出さ
    せ、このSi粒子に隣接してSn−Pb合金粒子を析出させて
    成ることを特徴とするAl−Sn系軸受合金。
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