JPH07109566A - スパッタリングターゲット - Google Patents

スパッタリングターゲット

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JPH07109566A
JPH07109566A JP25338293A JP25338293A JPH07109566A JP H07109566 A JPH07109566 A JP H07109566A JP 25338293 A JP25338293 A JP 25338293A JP 25338293 A JP25338293 A JP 25338293A JP H07109566 A JPH07109566 A JP H07109566A
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典明 谷
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久三 中村
Ikuo Suzuki
郁生 鈴木
Koukou Suu
紅▲コウ▼ 鄒
Chiyuuretsu Haku
忠烈 白
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の金属酸化物から成るスパッタリングタ
ーゲットに比して、低い印加パワーでスパッタリングを
行っても高いスパッタ収率で、安定した成膜速度が得ら
れるスパッタリングターゲット。 【構成】 セラミックス材ターゲットを用いて基板上に
誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲットに
おいて、該スパッタリングターゲットは印加電圧1.5
Vで測定したターゲットの板厚方向の電気抵抗を100
mΩ・cmないし10Ω・cmの範囲としたスパッタリ
ングターゲット。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はスパッタリングターゲッ
トに関し、更に詳しくはスパッタ法により基板上にセラ
ミックス材から成る誘電体膜を形成するために用いるス
パッタリングターゲットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、基板上にセラミックス材から成る
誘電体膜を成膜する際に用いるスパッタリングターゲッ
トとしては数多く知られており、その中でも、SrTi
3[チタン酸ストロンチウム]、BaTiO3[チタン
酸バリウム]、(BaSr)TiO3[チタン酸ストロ
ンチウムバリウム]等が使用されており、これらスパッ
タリングターゲットはセラミックス材の原料粉末を大気
中または真空雰囲気中で加圧加熱して焼成処理を行って
作製されている。
【0003】そして該セラミックス材ターゲットの電気
抵抗は一般に無限大であるが、セラミックス材の材料中
の不純物量や製造工程で生じるターゲット材の酸素欠損
量により、厳密には無限大ではなく、数百メガオーム
(MΩ・cm)から数十オーム(Ω・cm)までの範囲
にある。
【0004】また、セラミックス材から成る誘電体膜の
成膜は、前記スパッタリングターゲットを用いて直流ス
パッタ法、或いは高周波スパッタ法により基板上に成膜
する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のセラミックス材
ターゲットを用いてスパッタ法で基板上に誘電体膜を成
膜する場合セラミックス材ターゲットは酸化物であるた
め、金属材料から成るターゲットに比べてスパッタ時タ
ーゲット表面にスパッタガスが入射した際、ターゲット
を構成している原子を叩き出す効率、所謂スパッタ収率
が低く、その結果、成膜速度が十分でなかった。また、
成膜速度を高めるためにターゲットに印加するスパッタ
パワーを大きくすると、一般に脆く割れやすいため、大
きなスパッタパワーを印加することが出来ないという問
題があった。
【0006】従って、ある程度低い印加パワーでも高い
成膜速度を得るためターゲット材のスパッタ収率を高く
する必要があった。
【0007】一方、セラミックス材の材料によっては、
その構成する金属材料から成る合金ターゲットを用い、
スパッタ成膜中に膜を酸化させるに十分な量の酸素ガス
を添加してスパッタする方法が用いられており、この方
法ではターゲットが金属であるため、スパッタ収率は高
いが、ターゲット表面が酸素プラズマに晒されているの
で、ターゲット表面が次第に酸化され、徐々に成膜速度
が低下し、かつ酸素の最適添加量が経時変化するので、
生産には適しないという問題があった。
【0008】本発明はかかる問題点を解消し、低い印加
パワーでスパッタリングを行っても高いスパッタ収率
で、安定した成膜速度が得られるスパッタリングターゲ
ットを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意検討し
た結果、スパッタリングターゲットが割れない程度の比
較的低い印加パワーにおいてもある条件を満たすスパッ
タリングターゲットを用いることにより、高いスパッタ
収率が得られ、かつ安定して高い成膜速度が得られるを
知見した。
【0010】本発明のスパッタリングターゲットおよび
誘電体膜の成膜方法はかかる知見に基づいてなされたも
のであって、セラミックス材ターゲットを用いて基板上
に誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲット
において、該スパッタリングターゲットは印加電圧1.
5Vで測定したターゲットの板厚方向の電気抵抗が10
0mΩ・cmないし10Ω・cmであることを特徴とす
る。
【0011】かかるスパッタリングターゲットは、ター
ゲット焼成時に酸素欠損を引き起こさせ、SrTiO3_
x、BaTiO3_x、(BaSr)TiO3_x、LiNb
3_x、LiTaO3_x、PbTiO3_x、(PbLa)
TiO3_x、Pb(ZrTi)O3_x、(PbLa)(Z
rTi)O3_xのABO3_x型金属酸化物[すなわちA:
B:O=1:1:(3−x)(x>0)]で表されるセ
ラミックス材としてもよい。
【0012】
【作用】基板上にスパッタ法で誘電体膜を成膜する際に
用いるスパッタリングターゲットは酸素欠損の金属酸化
物で、印加電圧1.5Vで測定したターゲットの板厚方
向の電気抵抗が100mΩ・cmないし10Ω・cmで
あるため、直流スパッタ、或いは高周波スパッタを行う
際、ターゲットのスパッタ収率が完全な酸化物状態であ
る場合よりも高いので低い印加パワーを印加しても高い
成膜速度が得られ、また、高いパワーが印加されてもス
パッタリングターゲットがその電気抵抗の低さにより発
熱することがなく、熱膨脹によりターゲットにひび割れ
が生じない。また、ターゲットに高い電位が印加されて
もスパッタリングターゲットが、或いはターゲット内の
電流の通る部分が絶縁破壊されることがないため、ター
ゲット内部やターゲット表面にひび割れや穴の発生が生
じない。
【0013】
【実施例】本発明におけるスパッタリングターゲットは
誘電体膜を成膜するセラミックス材の原料粉末を加圧加
熱して焼成処理を施す際、酸素欠損を引き起こさせ、印
加電圧1.5Vで測定したターゲットの板厚方向の電気
抵抗が100mΩ・cmないし10Ω・cmである。
【0014】本発明のスパッタリングターゲットを用い
るとスパッタ収率が高く、従来のセラミックス材ターゲ
ットに比べ安定した高い成膜速度が得られるのは次の理
由による。
【0015】図1はセラミックス材ターゲットとして金
属酸化物の(BaSr)TiO3[チタン酸ストロンチ
ウムバリウム]を用いて高周波マグネトロンスパッタ法
によるスパッタ成膜時のスパッタガス中の酸素分圧と成
膜速度との関係を示すものである。図1に示すようにス
パッタガス中に酸素ガスを全く添加せずにアルゴンガス
のみでスパッタを行った場合は、成膜速度150Å/m
inが得られるが、スパッタガス中に酸素ガスを添加し
て行くと、次第に成膜速度が低下し、酸素ガス量(分
圧)が6%以上で約半分になり、それ以上酸素ガスを添
加しても飽和状態となり、成膜速度もほぼ同じ程度とな
る。
【0016】一般にある種の金属に対しては、その金属
酸化物のスパッタ収率は小さくなることから、この場
合、酸素を添加しないアルゴンガスのみのスパッタガス
雰囲気中でターゲットにスパッタを施した際、(BaS
r)TiO3ターゲットの最表面の組成がアルゴンガス
の衝突エネルギーで、ある程度の酸素が解離し、金属に
近い状態になったので、スパッタ収率が上昇し、その結
果、成膜速度が増加したものと考えられる。
【0017】ところがスパッタガス中の酸素分圧がが増
加してくると、アルゴンガスがターゲットの最表面の酸
素を解離しても、スパッタガス中の酸素がすぐ再結合す
るので、スパッタ収率は減少する。この場合、6%以上
の酸素分圧のスパッタガスを用いると、ターゲットの最
表面は常に金属酸化物の最表面と同じ状態になるため、
一定の成膜速度しか得られなくなる。
【0018】以上の事項から、スパッタ時のターゲット
最表面の結合された酸素量が少ない程、スパッタ収率が
高いので、一定の酸素分圧を有するスパッタガスを用い
て成膜を行う時、もともとのターゲット材の酸素量が少
ない程、即ち酸素欠損が大きく、ターゲットの比抵抗が
小さい程、スパッタ収率が高く、その結果同じ印加パワ
ーでも高い成膜速度が得られることになる。
【0019】一般に、金属酸化物ターゲットを得るため
にターゲット原料を焼成する際、真空中でホットプレス
を行って焼結すると、ターゲットの構成元素中の酸素組
成が化学量論組成より僅かに酸素欠損を生じ、ターゲッ
トの電気抵抗が無限大から数100Ω・cm程度まで低
下することは広く知られている。
【0020】ところが、このように電気抵抗が高いター
ゲットを用いると、直流スパッタ法の場合は勿論、高周
波スパッタ法の場合でもターゲットに流れる電流がその
高い電気抵抗のため、熱エネルギーに変えられ、ターゲ
ットの温度が局部的に上昇し、セラミックス材は熱応力
に対し比較的脆いので、一番弱い部分からターゲットが
割れ始め、次第に安定放電が出来なくなる。
【0021】そこで、ターゲットの電流が流れる方向、
即ち板厚方向の電気抵抗が10Ω・cm以下の場合に
は、ターゲットが割れることなく、かつスパッタ収率が
高い範囲にあることを見出だした。
【0022】ここで例えば(BaSr)TiO3[チタ
ン酸ストロンチウムバリウム]ターゲットにおいて酸素
欠損を引き起こさせ(BaSr)TiO3_xのxの値と
してはごく僅かでもその電気抵抗が大きく変化するので
xの値で規定することは難しい。
【0023】本発明でターゲットがひび割れずに安定放
電できるのは、ターゲットに流れる電流ができるだけ熱
エネルギーに変換されずにターゲットの温度上昇による
熱膨張がないためであるので、xの値よりもターゲット
の電気抵抗が重要である。
【0024】また、このような型のセラミックス材の中
にはバリスタ特性を示すものもあり、印加電圧により電
気抵抗値が大きく異なるので、電気抵抗値を1.5V印
加の場合とした。
【0025】一方セラミックスターゲットの真空焼成時
に従来一般に行われている焼成温度よりも高くするか、
焼成時の雰囲気ガスとして水素ガスや、一酸化炭素ガス
等の還元性ガスを導入することにより、その電気抵抗を
数10mΩ・cm以下にすることも可能である。
【0026】この場合、既に述べたようにスパッタ収率
はより高くなるはずであるが、スパッタガス中に添加さ
れた酸素ガスのためターゲット表面の再酸化が生じ、次
第にスパッタ収率が低下し始め最終的には電気抵抗が1
00mΩ・cmから10Ω・cmの範囲のターゲットと
同程度のスパッタ収率に落ち着く。この間成膜速度が徐
々に変化していくため安定性に欠ける。また、そのター
ゲットの保管状態により大気中の酸素や水分を吸収して
しまうため取扱いが面倒である。
【0027】以上の事項からターゲットの厚さ方向の電
気抵抗が100mΩ・cmから10Ω・cmの範囲にな
るように酸素欠損を生じさせたセラミックス材から成る
スパッタリングターゲットが安定した高いスパッタ収率
のため高い成膜速度が得られることが分かる。
【0028】本発明のセラミックス材ターゲットの電気
抵抗を100mΩ・cmから10Ω・cmの範囲とした
のは、電気抵抗が100mΩ・cmに満たない場合は、
スパッタ成膜中の成膜速度が経時変化したり、ターゲッ
トの保管状況により成膜速度がばらつくことがあり、ま
た、電気抵抗が10Ω・cmを超えた場合は、成膜速度
が遅く、またターゲットの割れや絶縁破壊が生じるから
である。
【0029】次に本発明の具体的実施例を比較例と共に
説明する。
【0030】実施例1 セラミック材料としてBaTiO3[チタン酸バリウ
ム]粉末と、SrTiO3[チタン酸ストロンチウム]
粉末を等量混合し、真空中でホットプレス法により焼成
して組成が(Ba0.5Sr0.5)TiO3_xから成るスパ
ッタリングターゲットを作製した。尚、焼成温度は15
00℃とした。
【0031】作製されたスパッタリングターゲットの印
加電圧1.5Vでの板厚方向の電気抵抗は10Ω・cm
であった。
【0032】作製された組成が(Ba0.5Sr0.5)Ti
3_xから成るスパッタリングターゲットをスパッタ装
置内に設定し、該スパッタ装置内を1×10- 4Paま
で真空排気した後、該装置内にアルゴンガスを分圧0.
4Pa、酸素ガスを分圧0.1Pa導入し、高周波(R
F)マグネトロンスパッタ法によりSiウエハー(基
板)上に成膜した。尚、ターゲットへの印加パワーは3
00Wとした。
【0033】成膜開始直後の成膜速度を測定したところ
80Å/minであった。
【0034】また、10時間連続放電を行い、2時間毎
に成膜を行って、その都度成膜速度を測定したところ、
78〜83Å/minの範囲で安定していた。その時間
毎の成膜速度変化を図2に示す。
【0035】成膜後ターゲットの表面を観察したとこ
ろ、何ら変化は見当たらなかった。
【0036】実施例2 前記実施例1で作製された組成が(Ba0.5Sr0.5)T
iO3_xから成るスパッタリングターゲットを用い、成
膜時のスパッタ法を直流(DC)マグネトロンスパツタ
法とし、ターゲットへの印加パワーは300Wとした以
外は前記実施例1と同様に基板上に成膜した。
【0037】成膜開始直後の成膜速度を測定したところ
104Å/minであり、また、連続放電時の成膜速度
は99〜106Å/minの範囲で安定していた。
【0038】成膜後ターゲットの表面を観察したとこ
ろ、何ら変化は見当たらなかった。
【0039】実施例3 セラミックス材料としてLiNbO3[ニオブ酸リチウ
ム]粉末を用い、焼成温度を1000℃とした以外は、
前記実施例1と同様の方法で組成がLiNbO3_xから
成るスパッタリングターゲットを作製した。
【0040】作製されたスパッタリングターゲットの印
加電圧1.5Vでの板厚方向の電気抵抗は500mΩ・
cmであった。
【0041】作製された組成がLiNbO3_xから成る
スパッタリングターゲットを用い、前記実施例1と同様
の方法で基板上に成膜した。成膜開始直後の成膜速度を
測定したところ90Å/minであり、また、連続放電
時の成膜速度は85〜93Å/minの範囲で安定して
いた。
【0042】成膜後ターゲットの表面を観察したとこ
ろ、何ら変化は見当たらなかった。
【0043】実施例4 ターゲットの作製条件を変えることにより、スパッタリ
ングターゲットの電気抵抗を種々変化させた組成(Ba
0.5Sr0.5)TiO3_xから成るスパッタリングターゲ
ットを作製した。
【0044】電気抵抗が種々異なる夫々のスパッタリン
グターゲットにより得られたスパッタ成膜開始直後の成
膜速度および連続放電10時間後の成膜速度を図3に示
す。ターゲットの電気抵抗が10Ω・cm以上では成膜
速度が低く、また100mΩ・cm以下では、スパッタ
開始直後は成膜速度が高いものの、10時間後には成膜
速度が下がってしまい、±10%以上の差が生じてい
る。
【0045】尚、基板上への成膜時のスパッタ条件は実
施例1と同じとした。
【0046】比較例1 真空中ホットプレス時の焼成温度を1350℃とした以
外は前記実施例1と同様の方法でスパッタリングターゲ
ットを作製した。
【0047】作製されたスパツタリングターゲットの組
成は(Ba0.5Sr0.5)TiO3_xであり、また印加電
圧1.5Vでのターゲットの板厚方向の電気抵抗は20
0Ω・cmであった。
【0048】このスパッタリングターゲットを用い、前
記実施例1と同様の方法で基板上に成膜した。成膜開始
直後の成膜速度を測定したところ50Å/minであっ
た。
【0049】また、10時間連続放電を行い、2時間毎
に成膜を行って、その都度成膜速度を測定したところ、
当初50Å/minであった成膜速度が最終的にも50
Å/minであった。
【0050】成膜後ターゲットの表面を観察したとこ
ろ、ターゲット全面に亘って細いひび割れが十数本入っ
ていた。
【0051】比較例2 真空中ホットプレス時の焼成温度を1550℃とし、焼
成中水素ガスを炉内に導入しながら焼成した以外は前記
実施例1と同様の方法でスパッタリングターゲットを作
製した。
【0052】作製されたスパツタリングターゲットの組
成は(Ba0.5Sr0.5)TiO3_xであり、また印加電
圧1.5Vでのターゲットの板厚方向の電気抵抗は30
mΩ・cmであった。
【0053】このスパッタリングターゲットを用い、前
記実施例1と同様の方法で基板上に成膜した。成膜開始
直後の成膜速度を測定したところ115Å/minであ
った。
【0054】また、10時間連続放電を行い、2時間毎
に成膜を行って、その都度成膜速度を測定したところ、
当初115Å/minであった成膜速度が最終的には8
0Å/minまで低下していた。その時間毎の成膜速度
変化を図4に示す。
【0055】成膜後ターゲットの表面を観察したとこ
ろ、ひび割れなどは生じていなかったが、当初黒ぽかっ
たターゲットの色が10時間成膜後は少し灰色がかって
おり、若干色の変化を生じていた。
【0056】前記各実施例および各比較例の結果から明
らかなように、実施例1のスパッタリングターゲットは
酸素欠損を起こしているため、酸素欠損の少ない比較例
1のスパッタリングターゲットおよび実施例4の電気抵
抗が無限大(∞)のスパッタリングターゲットに比して
スパッタ収率が高く、より高い成膜速度が得られること
が確認された。
【0057】このことは既に述べたようにターゲット表
面がよりスパッタ収率の高い金属に近いためと考えられ
る。
【0058】また、図3から明らかなように特に電気抵
抗が10Ω・cm以下のスパッタリングターゲットでは
電気抵抗が100Ω・cm以上のスパッタリングターゲ
ットに比して1.6倍以上の成膜速度が得られている。
【0059】実施例2では成膜時のスパッタ法を直流
(DC)マグネトロンスパッタ法で行ったため、実施例
1と同一組成のスパッタリングターゲットでありなが
ら、成膜速度が1.3倍に向上している。
【0060】これはスパッタの効率、すなわちターゲッ
トに印加されたパワーがターゲットをスパッタするエネ
ルギーになる割合が高周波(RF)マグネトロンスパッ
タ法よりも直流(DC)マグネトロンスパッタ法の方が
高いためであるが、ターゲットを作製する際、焼成時に
酸素欠損を引き起こし電気抵抗が低下した本発明のスパ
ッタリングターゲットは直流(DC)マグネトロンスパ
ッタ法を活用することが出来て、より高い成膜速度を得
ることが可能である。
【0061】一方、比較例2のスパッタリングターゲッ
トは実施例1のスパッタリングターゲットに比して電気
抵抗が低く、スパッタ収率が高いため、成膜開始直後の
成膜速度は大きな値が得られるが、連続スパッタ中にタ
ーゲット表面が再酸化されるために徐々にスパッタ収率
が低下し、結局本発明の実施例1に示したターゲットの
スパッタ収率に収束している。そのため実際の成膜時に
は不安定であり、誘電体膜の成膜には適しない。
【0062】図3から明らかなように電気抵抗が100
mΩ・cmに満たないスパッタリングターゲットでは成
膜開始直後の成膜速度と10時間連続放電後の成膜速度
との差異が±10%以上と大きく、実用上誘電体膜の成
膜に際しては非常に使いづらいことが分かる。
【0063】実施例5〜11 セラミックス材料として表1に示すような材料を用い、
焼成温度を表1に示す温度とした以外は前記実施例1と
同様の方法で各種のスパッタリングターゲットを作製し
た。
【0064】作製された各種のスパッタリングターゲッ
トの印加電圧1.5Vでの板厚方向の電気抵抗を測定
し、その結果を表1に示す。
【0065】作製された各種のスパッタリングターゲッ
トを用い、前記実施例1と同様の方法で基板上に成膜す
ると共に、スパッタ成膜開始直後の成膜速度および連続
放電10時間後の成膜速度を測定し、その結果を表1に
示した。
【0066】
【表1】
【0067】従って、本発明のスパッタリングターゲッ
トは印加電圧1.5Vで測定したターゲットの板厚方向
の電気抵抗が100mΩ・cmないし10Ω・cmの範
囲において高い成膜速度で安定して成膜出来ることが確
認された。
【0068】本発明のスパッタリングターゲットのセラ
ミックス組成中の酸素組成を化学量論組成よりも少ない
酸素欠損のセラミックス材は、セラミックス原料粉末を
焼成してターゲットを作製する際、高真空中、或いは還
元性ガス雰囲気中で焼成すればよい。
【0069】
【発明の効果】本発明によるときは、基板上に誘電体膜
を成膜する際に用いるスパッタリングターゲットをター
ゲット焼成時に酸素欠損を引き起こさせ、印加電圧1.
5Vで測定したターゲットの板厚方向の電気抵抗を10
0mΩ・cmないし10Ω・cmの範囲としたので、従
来の金属酸化物から成るスパッタリングターゲットに比
して安定して高い成膜速度が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スパッタガス中の酸素分圧と成膜速度との関
係の1例を表す特性線図、
【図2】 本発明の1実施例における放電時間と成膜速
度の経時変化の関係を表す特性線図、
【図3】 ターゲットの電気抵抗と成膜速度との関係に
おいて経時変化の差異を表す特性線図、
【図4】 比較例2における放電時間と成膜速度の経時
変化の関係を表す特性線図。
フロントページの続き (72)発明者 鄒 紅▲こう▼ 千葉県山武郡山武町横田523 日本真空技 術株式会社千葉超材料研究所内 (72)発明者 白 忠烈 千葉県山武郡山武町横田523 日本真空技 術株式会社千葉超材料研究所内 (72)発明者 石川 道夫 千葉県山武郡山武町横田523 日本真空技 術株式会社千葉超材料研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックス材ターゲットを用いて基板
    上に誘電体膜を形成するためのスパッタリングターゲッ
    トにおいて、該スパッタリングターゲットは印加電圧
    1.5Vで測定したターゲットの板厚方向の電気抵抗が
    100mΩ・cmないし10Ω・cmであることを特徴
    とするスパッタリングターゲット。
  2. 【請求項2】 前記スパッタリングターゲットは、ター
    ゲット焼成時に酸素欠損を引き起こさせ、SrTiO3_
    x、BaTiO3_x、(BaSr)TiO3_x、LiNb
    3_x、LiTaO3_x、PbTiO3_x、(PbLa)
    TiO3_x、Pb(ZrTi)O3_x、(PbLa)(Z
    rTi)O3_xのABO3_x型金属酸化物[すなわちA:
    B:O=1:1:(3−x)(x>0)]で表されるセ
    ラミックス材であることを特徴とする請求項第1項に記
    載のスパッタリングターゲット。
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