JPH07100658B2 - 悪性腫瘍の転移予防薬 - Google Patents

悪性腫瘍の転移予防薬

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JPH07100658B2
JPH07100658B2 JP62113405A JP11340587A JPH07100658B2 JP H07100658 B2 JPH07100658 B2 JP H07100658B2 JP 62113405 A JP62113405 A JP 62113405A JP 11340587 A JP11340587 A JP 11340587A JP H07100658 B2 JPH07100658 B2 JP H07100658B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の分野] 本発明は、悪性腫瘍の転移予防薬に関する。
[発明の背景] 悪性腫瘍が初期腫瘍から離れた体の部位へ転移すること
は、腫瘍疾患における致命的な病状のほとんどがこの転
移を原因とするものであるため、腫瘍の治療における最
も重大な問題の一つである。近年、外科手術、放射線治
療および化学治療によって、初期腫瘍の処置について
は、かなりの成功を収めてきた。これに反して、転移の
治療は極めて困難であり、そして成功してもまれであ
る。転移発生の危険は、初期腫瘍の治療において起こる
率が特に高いので、この段階で転移の発生を阻止する必
要がある。腫瘍の転移の発生、すなわち器官特異的転移
と器官非特異的転移を徹底して研究した結果、転移の発
生は器官細胞レクチンが原因となることが分った。
[発明の詳細な記述] レクチンは初めは植物中にのみ発見され、後になって脊
椎動物を含むほとんど全ての生物中に発見された高度に
特異的な糖結合性分子である。レクチンは、細胞表面ま
たは可溶性の糖結合体における糖構造の認識に主に機能
するらしい。さらに、特異的な臓器向性転移は器官細胞
レクチンが原因となることが認められた。さらに徹底し
た研究を行なううちに、器官細胞レクチンを、これに特
異的なガラクトース、マンノースおよびフコースから選
ばれる単糖類および/または該単糖類を末端に含有する
糖結合体で飽和することによって、悪性腫瘍の転移発生
を阻止できることが認められた。この目的のためには、
β−D−ガラクトースおよび/または末端にβ−D−ガ
ラクトースを有する糖結合体が特に重要である。また、
他の重要な単糖類は、マンノースおよび末端または中央
に結合したマンノースを有する糖結合体である。さらに
マンノース以外にも、L−フコースが重要である。上記
のように、糖結合体は、薬理学的に不活性な担体分子の
末端または中央に結合した特異的な単糖類を有する物質
である。この担体分子それ自身は腫瘍細胞に対して細胞
毒性的な活性を有していない。最も単純な場合において
代表的な担体分子は他の糖類である。従って、本発明の
目的のためには、特異的な単糖類自身に加えて、それを
有する二糖類、三糖類およびオリゴ糖も使用することが
できる。糖結合体は、副作用がないかまたは免疫反応に
対して不活性であるために、免疫抗原性がないか、また
は免疫抗原性が非常に弱いことが好ましい。
特異的な単糖類を有する糖結合体においては、末端に該
単糖類が結合していることが好ましい。ただし、中央に
単糖類が結合しているものも活性である。未だ明らかで
ないが、この後者の場合においては、これらの糖結合体
における一つまたは他の部分が容易に除去されて、末端
に単糖類部分を有する糖結合体が生体内で迅速に生成さ
れるのかもしれない。
例を挙げてみると、結腸癌は肝臓内に転移する傾向があ
ることが認められている。この転移はガラクトースまた
はアラビノ−ガラクトンのようなガラクトースを有する
糖結合体を投与することによって完全に予防できること
が認められた。ガラクトースを含まない対照物質として
マンナンを用いた比較試験ににおいては、未処置の対照
群と同じ転移挙動のままであることが認められた。ガラ
クトースまたはアラビノ−ガラクタンの投与が必要とさ
れるのは、腫瘍の疑いがある場合に転移の可能性が診断
された直前および直後、または初期腫瘍の治療の前後の
比較的短期間のみである。ただし、副作用の懸念がない
ならば、単糖類および/またはこれらの単糖類を有する
糖結合体を、腫瘍の診断時から治療後数週間の期間にわ
たって投与してもよい。もちろん、器官細胞レクチンに
対して特異的な単糖類および/またはこの単糖類を有す
る糖結合体を用いる治療は、転移の器官特異的な増殖の
予防についてのみ有効である。しかし、この器官特異的
転移は、特に頻繁に起こるため非常に危険である。従っ
て、器官特異的転移の抑制を可能にすることは、重要な
治療上の成功ということができる。
以上のように、本発明の一つの目的は、ガラクトース、
マンノースおよびフコースから選ばれる器官細胞レクチ
ンに対して特異的な単糖類および/またはこの単糖類部
分を有する糖結合体を含有することを特徴とする哺乳動
物における悪性腫瘍の転移を予防する薬剤を提供するこ
とである。さらに具体的な該薬剤としては、β−D−ガ
ラクトースおよび/またはβ−D−ガラクトース部分を
末端に有する糖結合体を含有するものがある。
哺乳動物における悪性腫瘍の転移を予防するために、ガ
ラクトース、マンノースおよびフコースから選ばれる器
官細胞レクチンに特異的な単糖類および/またはこの単
糖類部分を有する糖結合体を使用することができる。悪
性腫瘍の転移予防用の薬剤調製のために、ガラクトー
ス、マンノースおよびフコースから選ばれる器官細胞レ
クチンに特異的な単糖類および/またはこの単糖類部分
を有する糖結合体を使用することもできる。
特に、腫瘍が器官特異的な転移を起す傾向がある場合に
は、単糖類および/またはこの単糖類部分を有する糖結
合体の投与により転移の原因となる器官細胞レクチンを
ブロックできるかどうか、選択的な試験を行なうことが
できる。
ガラクトースおよびガラクトース部分を有する糖結合体
は適合性が優れているため、この新規な治療法は問題な
く比較的簡単な方法で実施することができる。該活性物
質は腸内投与および非経口投与のいずれでも適用するこ
とができる。これらの活性物質は既知の方法で生体から
代謝または排出される。初期腫瘍の処置によって転移が
拡大する危険がある限り、器官細胞レクチンをブロック
するための絶対量として血清中に比較的高いガラクトー
ス濃度を存在させることが必要である。もちろん、同じ
ことが腫瘍細胞が血清循環中に容易に入る可能性がある
外科手術の段階においても云える。試験結果により、モ
ノクローン性抗体と同様に、上記の特異的な単糖類およ
び/またはこの単糖類部分(好ましくは末端に)有する
糖結合体は、器官細胞レクチンに対しての転移を阻止す
る高度な活性を有していることが明らかとなった。本発
明の薬剤は、調製が困難で費用を要するモノクローン性
抗体よりも、簡単に低費用でかつ安全に取扱うことがで
きる。
多数の動物実験は臨床研究での成功をもたらした。例え
ば、結腸癌が診断された場合に、診断の時から治療の成
功後4週間の期間にわたって一日当りガラクトースを12
0乃至150g投与したところ、肝臓転位は全く観察されな
かった。ガラクトースを投与しない場合は、これらの転
移は統計的にみて頻繁に観察されるものである。上記の
ガラクトース使用量は、長期にわたって副作用を起こさ
なかった。動物実験は、アラビノガラクタンも活性を有
することを示した。ノイラミン特異的器官レクチンも、
ノイラミニダーゼで処理された連鎖球菌属およびプロピ
オン酸菌属からの菌製剤(bacteria preparation)を用
いることによってブロックすることができた。アラビノ
ガラクタンとしては、平均分子量70000のラリクス・オ
イロペア(larix europaea)から得た製剤を用いた[西
ドイツ国ハイデルベルクのセルバ社(serva GmbH)から
入手]。それは血漿増量薬としても使用できる非免疫抗
原性オリゴ糖である。
アラビアゴムからのガラクタン、デキストランおよびマ
ンナン、および他の単糖類および二糖類を使用した動物
実験は、これらの糖類は肝臓のガラクトース特異的レク
チンをブロックできず、よって、肝臓における転移増殖
を抑制しないことが明らかとなった。
[実施例1] 材料と方法 生体内実験を生後8〜12週の体重20〜22gのバルブ/シ
ー・マウス(Balb/c mice)を用いて実施した。マウス
は、プラスチック製かごに入れ、食物と水を自由に与え
た。
生体内実験のために、肉腫(sarcoma)L−1腫瘍[ポ
ーランド・ワルシャワのオンコロギ研究所(Institute
of Oncology)]を用いた。この腫瘍はバルブ/シー・
マウスの肺内に自然に発生し、この種のマウス中に保持
される。この肉腫L−1細胞をマウスの足に皮下移植
し、局部の固い腫瘍の成長および多発性(40〜100、非
融合性で数えられる)の肺転移を誘発させた。肺腫瘍小
節は、腫瘍細胞を静脈内に接種後、14日間存在した。初
期腫瘍は提供マウスから切開分離し、はさみで細かに切
り、鋼製ふるいにこすり付けた。そして、腫瘍を約80〜
85回連続継代培養した。細胞を洗浄し、RPMI1640[ニュ
ーヨークのギブコ・グランド・アイスランド(Gibco Gr
and Island)]中に懸濁し、0.1mlのリン酸塩緩衝塩水
(PBS)中の1×105生育可能腫瘍細胞を、腫瘍の連続継
代のために皮下注射した。マウスの尾の静脈への注射
は、肺および肝臓のコロニー・アツセイのために行なっ
た。生育力はトリパン青染料排除で試験した。肺または
肝臓腫瘍小節の計数を肉腫菌接種後14日間行なった。腫
瘍小節は、150以上の場合、または融合性小節が認めら
れた場合は計数不能と見なした。
平均分子量約70000ドルトンのラリクス・オイロペアか
ら得たアラビノガラクトンを西ドイツ国ハイデルベルグ
のセルバ社から入手した。α−酸−(アシアロ)糖タ
ンパク質をドイツ国マールブルグのベーリングベルゲ社
(Behringwerke AG)から入手し、プライサー(Price
r)およびアスユウエル(Ashwell)の方法[J.Biol.Che
m.246:4835(1971)]によりトリチウム化した。
アラビノガラクタンは体重1g当り0.5mg(0.2mlPBS中に
溶解した)の投与量で腹腔内に注射した。D−ガラクト
ースは体重1g当り1または2mgの投与量で腹腔内に注射
した。前述したように、D−ガラクトースは速やかに代
謝されて除去される。
ノイラミニダーゼ処置のために、肉腫細胞RPMIの懸濁液
(1ml当り106乃至107の生育可能細胞)の1gを、1単位
のコレラ菌ノイラミニダーゼと共に37℃で1時間インキ
ュベートした。反応はPBS中で細胞で3回洗浄すること
によって終了させた。
[実施例2] バルブ/シー・マウス中の肝臓レクチン(HBP)ブロッ
キング活性度 D−ガラクトースおよびアラビノガラクタンの肝臓レク
チン(HBP)ブロッキング活性度を、トリチウム化α
−酸−(アシアロ)糖タンパク質(0.1mlPBS中に100mg
を溶解)をバルブ/シー・マウスに静脈内に投与するこ
とで試験した。この糖タンパク質は、15分以内に循環系
から迅速に清浄化され、肝臓に摂取された。アラビノガ
ラクタンの前注射(糖タンパク質注射15分前)は、血清
からのアシアロー糖タンパク質の除去を著しく遅らせ
た。120分後においても、血清中の放射能を測定するこ
とができた。3回の実験(5%以下の分布)は、受容体
ブロッキングなしでα−酸−(アシアロ)糖タンパク
質の注射後には血清1μ当り123dpmであるのに対し
て、アラビノガラクタンの前注射による受容体ブロッキ
ング後の血清1μ当り224dpmであることを示した。D
−ガラクトースの場合も同じであった。ただし、その迅
速な代謝および除去により、受容体のブロックが短時間
になった。30分後に90%以上の放射能増加が血清中に見
られた(受容体ブロッキングなしではα−酸−(アシ
アロ)糖タンパク質注射後は血清1μ当り105dpmであ
り、これに対して、D−ガラクトースの前注射による受
容体ブロッキング後は1μ当り200dpmである)。ブロ
ックは60分間インキュベーション後は約50%減少した。
このように、肝臓レクチン(HBP)は、D−ガラクトー
スの投与によって、およびガラクトース含有糖結合体
(アラビノガラクトン)によりブロックされた。
[実施例3] D−ガラクトースおよびアラビノガラクタンの投与によ
る肝臓転移増殖の阻止 悪性腫瘍の肝臓への定着が、拮抗的な糖結合体より阻害
される認識段階(D−ガラクトース特異的なレクチン炭
水化物の相互作用を含む)を伴うという説を証明するた
めに、バルブ/シー・マウス中の肉腫L−1腫瘍細胞の
コロニーを調べた。受容体ブロッキング活性度は、様々
な濃度のD−ガラクトースの幾つかの糖結合体、および
ガラクトースを含まない対照用の多糖類としてマンナン
を用いて調べた。前注射(ノイミニダーゼで処理した腫
瘍細胞の静脈内移植前1時間)およびアラビノガラクタ
ンの定期的な腹腔内注射(12時間の間隔で1〜3日、24
時間の間隔で4〜10日)で、肝臓への腫瘍細胞の定着は
完全に予防された。ただし、この処置は肺の機能に影響
しない。肺中の腫瘍小節の数および平均直径は対照群と
は異なった。ガラクトースを含まない対照用の多糖類で
あるマンナンは、肺および肝臓への転移増殖のパターン
またはこれらの器官中の腫瘍小節の数を変えなかった。
全ての他のガラクタン(および他の物質、例えばアラビ
アゴムからのガラクタン、アカシアの木からのアラビア
ゴム、デキストラン40、デキストラン70およびPBS)は
肝臓への転移を阻止することも、および肺と肝臓中の腫
瘍小節の数を減少させることもできなかった。
[実施例4] D−ガラクトース摂生の最適時間スケジュールの確立 D−ガラクトースによる肝臓転移の阻止のための最適量
およびタイミングを決定した。体重1g当りD−ガラクト
ース1または2gの腹腔内接種(腫瘍細胞接種前1時間、
および8時間の間隔で3日)が、肝臓内転移の減少に最
も効果的であった。上記D−ガラクトースの最後の腹腔
内接種から3日後に肉腫細胞を接種すると、肝臓転移に
対する防止効果は全く観察されなかった。この結果によ
り、D−ガラクトースが一時的に肝臓レクチン(HBP)
をブロックするという説が確認された。すなわち、これ
らのレセプターは、D−ガラクトースの最後の接種から
3日後に肉腫細胞を接種された時に、ふさがれた状態に
なく、再び受容可能な状態となっていた。
臨床的投与量: 患者への投与は手術または診断の8〜12時間前に開始す
るのが好ましく、通常は手術後3日間継続する。ただ
し、さらに長期間の投与も副作用なしで実施することが
できる。
D−ガラクトースは8時間毎に注入によって、24時間内
に体重1kg当り1〜3mgの総投与量が与えられるように投
与する。
アラビノガラクトンは体重1kg当り約0.1〜1mg、好まし
くは0.5mgの量を一旦当りの総投与量として、注入によ
り投与する。投与は24時間全体に分配して行なう。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ゲルハート・プルフェール ドイツ連邦共和国、ケルン、40、5000、モ ーンベック、25 (72)発明者 クルト・オエッテ ドイツ連邦共和国、ケルン、41、5000、ブ ラウンシュトラーセ、39 (72)発明者 ゲルト・ウーレンブルック ドイツ連邦共和国、ケルン、41、5000、グ ロイエラー・シュトラーセ、308 (56)参考文献 特開 昭60−190791(JP,A) 特開 昭61−83125(JP,A)

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガラクトース、マンノースおよびフコース
    から選ばれる器官細胞レクチンに対して特異的な単糖類
    および/またはこの単糖類部分を有する糖結合体を含有
    することを特徴とする悪性腫瘍の転移予防薬。
  2. 【請求項2】β−D−ガラクトースおよび/またはβ−
    D−ガラクトース部分を有する糖結合体を含有する特許
    請求の範囲第1項記載の予防薬。
  3. 【請求項3】糖結合体が、薬理学的に不活性の担体分子
    の末端または中央に結合した特異的な単糖類を有する物
    質である特許請求の範囲第1項記載の予防薬。
  4. 【請求項4】糖結合体が、薬理学的に不活性の担体分子
    の末端または中央に結合したβ−D−ガラクトースを有
    する物質である特許請求の範囲第2項記載の予防薬。
  5. 【請求項5】薬理学的に不活性の担体分子が、特異的な
    単糖類以外の糖類である特許請求の範囲第3項記載の予
    防薬。
  6. 【請求項6】薬理学的に不活性の担体分子が、β−D−
    ガラクトース以外の糖類である特許請求の範囲第4項記
    載の予防薬。
JP62113405A 1986-05-09 1987-05-09 悪性腫瘍の転移予防薬 Expired - Lifetime JPH07100658B2 (ja)

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DE3615621 1986-05-09
DE3615621.3 1986-05-09

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JPS62267234A JPS62267234A (ja) 1987-11-19
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US (1) US4946830A (ja)
EP (1) EP0249008B1 (ja)
JP (1) JPH07100658B2 (ja)
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DE (1) DE3787403D1 (ja)
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