JPH0698500B2 - 耐サワーガス性に優れた大径鋼管の製造方法 - Google Patents

耐サワーガス性に優れた大径鋼管の製造方法

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JPH0698500B2
JPH0698500B2 JP2084399A JP8439990A JPH0698500B2 JP H0698500 B2 JPH0698500 B2 JP H0698500B2 JP 2084399 A JP2084399 A JP 2084399A JP 8439990 A JP8439990 A JP 8439990A JP H0698500 B2 JPH0698500 B2 JP H0698500B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は耐サワーガス性に優れた大径鋼管の製造法に関
するものであり、とくに、該鋼管を海底等に敷設する場
合の現地における鋼管の円周溶接(以下現地溶接、およ
びガース溶接と云う。)において、大径鋼管シーム溶接
部の交差部(通常、便宜上この部分をT−クロスとも云
う。)の低硬化性と、該シーム溶接金属に対して優れた
靭性を具備する前記大径鋼管の溶接製造法に係わるもの
である。
(従来の技術) 近年、海底ガス井や油田の開発に敷設されるUOラインパ
イプは、サワーガス環境下での使用を前提に、高強度・
高靭性および耐HIC性加え、耐SSC性が要求されている。
ラインパイプの海底敷設にはレイバージ工法が採用さ
れ、ガース溶接には高能率なガスメタルアーク溶接が通
常用いられる。しかしこの溶接法は溶接入熱が低い上
に、大幅な能率向上を目的とするため、予熱フリーが要
求される結果、ガース溶接と鋼管シーム溶接の交差部の
硬度が上昇し、且つガース溶接で再加熱された潜弧溶接
(SAW)金属の硬度上昇が著しく、その部分が最高硬度
を示す。このような溶接部の硬度上昇は、SSC感受性を
高める方向に作用し好ましくない。従って耐SSC性の観
点から溶接部の最高硬さを規制するのが通例となってい
る。
一般に該溶接部の硬度を低くせしめる方法として、ガー
ス溶接部を後熱処理する方法、あるいはシーム溶接金属
の再加熱部の硬度上昇を抑えるため、シーム溶接金属成
分の合金を低くする方法などが挙げられる。しかし、前
者の方法は現地での作業能率の低下、高コスト面から現
実的でない。また、後者の方法は成分調整によって合金
成分を低める方向、すなわち溶接金属の焼入れ性を極力
小さくする方法であり、最も現実的な方法とならしむる
可能性がある。しかし、溶接金属の焼入れ性を低くした
場合、低硬度化は可能であっても他の重要な特性である
靭性の低下が懸念される。通常、溶接金属は鋼材の製造
とは異なり、凝固ままで鋼材と同程度の特性が要求され
るため、特に強度、靭性面から母材成分以上の高合金設
計とし、すなわち焼入れ性を高めることによってその特
性が達成されている。
溶接部の切欠靭性を向上するために溶着金属の成分を調
整する方法が特公昭57-17637号公報に開示されている。
すなわち溶着金属中に微量のBまたはTiを添加し、鋼中
の酸素、窒素をTiで固定し、Bを固溶させることにより
切欠靭性の向上を図るものである。しかし該公報には、
溶接部の硬度については触れていない。
(発明が解決しようとする課題) 前記したように、耐サワーガス用大径鋼管のガース溶接
部は、特に硫化水素にもとづく応力腐食割れ感受性を低
下させるために、硬度を抑える必要があり、現状ではHv
(10kg)max≦248が耐SSC性の面から要求されるのが通
例である。特に造管シームとガース溶接部の交差部にお
いて冷却速度の速いガース溶接表層部、および造管シー
ム溶接金属のガース溶接によって再加熱を受けた熱影響
部部分では、最高硬度となりやすいために上記要求は大
きい。
しかし、硬度を抑えることは、靭性も低下することにな
りこれでは目的とする低硬化性と高靭性を同時に具備し
た耐サワーガス性の優れた大径鋼管を得ることはできな
い。
本発明は、このような相反する特性を改善するものであ
って、溶接部の最高硬さHv(10kg)を248以下になるよ
うに抑えると共に、更に高靭性化させることを特徴とす
る、耐サワーガス性に優れた大径鋼管を提供することを
目的とするものである。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、UOE法で製造した鋼管のガース溶接部、
特にUO造管シーム溶接部とガース溶接の交差部(以下T
−クロス部という)における低硬度化と造管シーム溶接
金属の高靭性化について次のような知見を得た。
すなわち、ガース溶接部によって得た溶接部、特にT−
クロス部における表層溶接部(潜弧溶接金属のガース溶
接によって再加熱され、かつ後熱を受けない部分)が急
速に冷却され、また後熱もないことから焼入れ組織とな
って硬度が上昇する。従って硬度を下げるためには焼の
入りにくい組織にすればよく、そのためには溶接金属
中の成分パラメーター(本発明ではPMWで表示)を低く
調整すると共に〔B〕濃度を可能な限り低くすることが
有効であること、また、このような低硬度化に伴う靭性
低下を防ぎ、さらに高靭化を達成するために溶接部靭
性劣化の原因となる〔O〕量を、Tiで固溶しうる範囲ま
で下げること、すなわちTiを添加してTi2O3を形成する
と、オーステナイト→フェライトへの変態時にオーステ
ナイト粒内にこのTi2O3を核として微細なアシキュラー
フェライトの生成に役立つため、かかるTi2O3の生成に
必要な〔O〕濃度までとすることが好ましいこと。およ
び前記した微量〔B〕を有効に活用し、溶接金属中に
固溶させ、変態時のオーステナイト結晶粒界でのフェラ
イト発生を抑制して粗大組織となるのを防ぐと共に、
剰除〔Ti〕による脆化を防止するためにTiの添加量を
〔Al〕,〔O〕,〔N〕とのバランスを考慮して狭い範
囲とすることが重要であることがわかった。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであっ
て、その要旨は以下の構成の通りである。
すなわち、 UOE鋼管において、母材の化学成分が重量%で、 C:0.020〜0.050%、Si:0.5%以下、 Mn:1.0〜1.5%、P:0.02%以下、 S:0.0015%以下、Nb:0.01〜0.05%、 Ti:0.010〜0.025%、Al:0.05%以下、 N:0.005%以下、O:0.0025%以下、 Ca:0.002〜0.005%を含み、 さらにMo,Vの1種または2種以上であって、 Mo:0.05〜0.30%、V:0.01〜0.08%、 を含有し、かつ下式のESSPが1.5〜6.0を満足し、残部不
可避不純物およびFeからなり、上記母材を低酸素系フラ
ックスおよび極低炭素系高Mn−低N−Ti系溶接ワイヤー
を用いて内外面に1パス潜弧溶接を行い、 重量%で、 C:0.020〜0.060%、Si:0.5%以下、 Mn:1.35〜1.65%、P:0.03%以下、 S:0.006%以下、Ti:0.005〜0.025%、 Al:0.005〜0.030%、Mo:0.30%以下、 B:0.0004〜0.0012%、O:0.015〜0.025%、 N:0.004%以下を含有し、 かつ、下式のPWMが0.13〜0.16であり、下式のαが−10
〜+10を満足し、残部不可避不純物およびFeからなる溶
接金属を得ることを特徴とする耐サワーガス性に優れた
大径鋼管の製造方法。
ESSP=Ca〔1−124(O)〕/1.25S PWM=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20 +Ni/60+Mo/15+V/10 α=〔1.5(O−0.89Al)+3.4N−Ti〕×103 上記母材成分には必要に応じNi:0.05〜0.3%、Cu:0.05
〜0.30%、Cr:0.05〜1.0%、の1種または2種以上を含
有させることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明によって製造する大径鋼管は、工場内でUOE成形
し、シーム部を潜弧溶接等により接合して造管されると
ころの耐サワーガス特性の優れた鋼管であってAPI規格
Xシリーズで規定されるX−65以上の高靭性高張力鋼を
母材とする。
すなわち、所望の強度靭性を付与するために合金元素を
所定量添加すると共に炭素を低くした低合金鋼であり、
また溶接部熱影響部の靭性を向上するためにTiを添加
し、鋼中に含有する酸素をTi2O3等の酸化物として有害
酸素を除去すると共に、該Ti2O3が溶接冷却過程でのオ
ーステナイト→フェライト変態点、オーステナイト粒内
の初析フェライト生成核となり、組織を微細化してい
る。
一方鋼中のSはMnとMnSを形成するが、このMnSは水素と
結合しやすく、この部分で硫化水素となって応力腐食割
れの原因となる。本発明ではSができるだけMnと結合す
るのを防ぐためCaを添加し、硫化物の形態を変えるよう
にしている。Caは酸素と結合するが、あまり多量に添加
すると他の介在物ができたり、大型化するため好ましく
ない。そこで、残存する酸素と結合する量の外にSを固
定するに十分な量とする必要がある。そのために、本発
明ではESSP(Effective Sulfide Shape Parameter)を
設けて管理することに特徴がある。
本発明は上記母材よりUOE法で大径管を製造し、これを
現地で接合するものであるが、海底等に敷設し、硫化水
素を含むいわゆるサワー性のガスやオイルの輸送にあた
って母材より接合部および熱影響部の方がSSC感受性が
高い。すなわち硬度が高いからであり、特にT−クロス
部には、前記したように最高硬度が出現する。鋼管同志
の接合でガース溶接をする場合に、開先内部側は、多層
盛りで層毎に加熱され、靭性は回復するが円周外、内面
(最外層)は、冷却が早い。しかも小入熱溶接であるこ
とも原因するがこの溶接部の硬度は上昇する。特に鋼管
シーム溶接部と交差部(T−クロス)では、シーム溶接
金属が再び加熱され、しかも、小入熱溶接のため急冷と
あいまってその部分の硬さが著しく高くなる。
本発明は、このT−クロス部における硬度を下げ、しか
も、それに伴って起こる靭性の低下を防ぐための最低限
の焼入性指標であるPWMの範囲を設定すると共に、組織
微細化元素を有効に利用するα値を設定し、すなわちAl
-Ti−O−Nの濃度バランスを狭い範囲に調整すること
によって構成させることに最大の特徴を有する。
上記特徴を有するT−クロス部の溶接金属を得るための
溶接材料はフラックスとしては低炭素系を選択し、また
溶接棒には極低炭素高Mn−低N−Ti系ワイヤーの使用が
好ましい。
低酸素系フラックスとしては特公平1-18836号公報に開
示されている成分からなるものを採用するものであり、
このようにフラックス系として低炭素系が望ましい理由
は、酸素量が多過ぎると、介在物を増加させ、靭性に悪
影響を及ぼすからである。
また溶接ワイヤーの成分は以下のものが好ましい。すな
わち重量%として、 C:0.01〜0.10%、Si:0.5%以下、 Mn:1.5〜3.5%、P:0.01%以下、 S:0.01%以下、Ni:0.1〜2.0%、 Ti:0.01〜0.2%、Al:0.5%以下、 N:0.1%以下、 残部Feおよび不可避的不純物からなる。
本発明に使用する溶接ワイヤーを上記成分範囲とした理
由を以下に説明する。
C:Cは溶接金属中の焼入れ性を最も高める元素であり、
少ないほど低硬度化の達成を容易にするが、あまり少な
すぎるとCO反応が弱まり大気中のNを巻き込み、Nの悪
影響によって溶接金属の靭性が劣化すること、および溶
接ワイヤー製造上の問題が生じてくるため上記の範囲と
した。
Si:Siは主成分でなく使用フラックスや、母材希釈によ
って溶接金属中に入ってくるもので、高靭性を得るため
には0.5%以下が好ましい。
Mn:Mnは本発明溶接金属の主成分の1つである。即ちC
量を低く抑え、靭性に必要な焼入れ性をMnで補うことを
狙いとしている。したがってMnが低すぎると必要な焼入
れ性を確保できず、また逆に多過ぎるとCと同様に焼入
れ性を高めるため上記の範囲とした。
P,S:P,Sは不純物として含まれるもので極力少ない程好
ましく、0.01%以下が好ましい。
Ti:TiはOと結びつかせTi2O3を形成させ、高靭性化を得
るための本発明溶接金属を得るための主要成分の1つ
で、Ti量が少な過ぎると必要なTi2O3が不足し、また多
過ぎると過剰Tiによる靭性劣化が懸念されるため上記範
囲とした。
Al:AlはTiと同様に脱酸材であるが、上記したように本
発明溶接金属ではTi2O3の形成が非常に重要で、低酸素
フラックスとの組合せにおいては、むしろAl量が少ない
方が好ましく0.5%以下とした。
N:Nはその量が多いと靭性を低下させるため、上限を0.1
%以下とした。
本発明においてPWMを0.13〜0.16の範囲に制限し設定し
たのは以下の理由による。PWMは、CE(炭素当量)と同
様に焼入れ性を示す式であり、その数値が大きいほど焼
入れ性が高く、すなわち高硬度であることを示すが、本
発明者らは、溶接金属の硬さと成分の関係について種々
検討した結果、CEよりもPWMの方が適切であることを確
認した。PWMの値が0.13以下では十分な焼入れ性が得ら
れず、低硬度化の達成は容易であるが、必要な靭性を確
保できない。逆にPWM値が0.16以上では焼入れ性が過剰
となるため、低硬度化の達成(Hv(10kg)max≦248)は
期待できない。
なお、上記PWM値を0.13〜0.16の範囲とすることによっ
て硬度の目標Hv(10kg)max≦248は可能であるが、しか
し溶接金属の靭性は必ずしも満足できるものではない。
靭性を高位に安定させるためには、さらに組織の微細化
が必要である。本発明では高靭化の方法として、Ti−B
の利用を骨子とするが、特にBは溶接金属の焼入れ性を
著しく高める作用があり、粒界のフェライト生成を抑制
する効果がある。本発明者らは、このBを微量、かつ有
効に利用することを前提として高靭性化を試みた。すな
わち、α値(式)の導入によって、限られたPWM値の範
囲内において、溶接金属の高靭性化を画期的に向上し
た。
その理由は以下による。
αはO,N,Al,およびTiの元素から構成され、過剰Tiによ
る脆化を防ぐための指標とすることができる。すなわ
ち、本式は、O,N,Al,Tiとの化学量論的な過不足をTi当
量として示すものである。つまり、例えばα値が+側に
大幅にずれることはAl,N量がO量に対して不足すること
を示し、過剰のOは他の元素とも結びつき、介在物など
を増加させ、高靭性は期待できない。また、逆に−側に
大幅にずれることは、O量に対してAl,Ti量が過剰であ
ることを示し、過剰のTiがCと結びついてTiCを形成す
るなど、高硬度化を助長する好ましくない結果となる。
以下本発明の成分を限定した理由について説明する。
母材成分について、 Cは母材に所望の強度を確保するために0.020%以上必
要であるが、量が多くなると溶接性、HAZ靭性が劣化す
る。また母材の低温靭性に影響が現われるので0.050%
を上限とした。
Siは脱酸上鋼に含まれる元素であるが大量に添加すると
HAZ靭性を劣化させる。そのために0.5%以下とした。
Mnは強度、靭性を確保するために必要な元素であり、そ
のために1.0%以上添加する。またMnはγ粒界に粗大な
初析フェライトを生成するのを抑制し、HAZ靭性を改善
する効果を有するが多量になると焼入れ性が増大し、溶
接性、HAZ靭性の劣化をもたらす。従って上限を1.5%に
おさえた。
Pは不純物として含まれ、ミクロ偏析による溶接部靭
性、割れなどの発生を防止することからできるだけ低い
含有量とすべきであり0.02%以下とする。
Sも不純物元素であるが、これの多量の含有は粗大な硫
化物系介在物を形成し、母材の靭性を低下させる。特に
MnSを形成して水素を吸着し、割れの原因となるので耐
サワーガス性を要求する鋼には有害である。そのために
できるだけ少なくすることが好ましく、0.0015%以下と
した。
Nbは優れたHAZ靭性を得るために必須な元素であり、γ
粒界に生成するフェライトを抑制し、Ti2O3を核とする
微細なアシキュラーフェライトの生成を促進させる効果
がある。そのために0.01%以上が必要である。しかし、
0.05%を超えて多くなると、前記効果を妨げる傾向にな
る。
Tiは鋼中で微細なTiNを形成し、スラグ加熱時のオース
テナイト粒粗大化を抑制して母材靭性、HAZ靭性の改善
に効果があるが、0.01%以下では効果が期待できない。
しかしあまり多過ぎるとTiCなどを形成して悪影響をも
たらす。そのため上限を0.025%とした。
Alは通常脱酸剤として添加されるが、脱酸はTi,Siでも
可能であり、必ずしも添加する必要はない。むしろAl量
が0.05%を超えるとAl系非金属介在物が増加して鋼の清
浄度を害するので上限を0.05%とした。
Nは不純物元素であり、これは少ない方がよく0.005%
は許容の上限を示したものである。
Oも不可避的に混入する元素である。前述したようにA
l,Si,Ti等で脱酸するのであるが、多量に存在すると各
種の大型介在物(酸化物)を作り、特性、特にHAZ靭性
に大きな影響を及ぼす。従って少ない程よく、許容量と
して0.0025%以下とする。
Caは本発明母材成分の特徴のひとつであり、低温靭性の
向上、耐水素誘起割れ性の改善に有効な元素である。S
は通常Mnと化合し、MnSを形成するが、MnSには水素が入
りやすく、H2Sを生成して鋼を脆化する。CaはこのMnSの
形態を制御し脆化を防止して上記効果を付与する。この
ために0.002%は必要である。Ca添加量は酸素含有量と
のかね合いで決める。すなわちCaは同時に脱酸作用も強
く、脱酸に添加Caが消費される量以上必要なことは、前
述(ESSPの説明)した通りであるが、これがあまり多量
になると大型介在物となり、鋼の靭性のみならず、清浄
度も害し、溶接性にも悪影響が出る。そのために0.005
%以下とした。
Mo,Vは母材強度を高め、靭性にも有効に作用するが、そ
のためには0.05,0.01%以上必要とするが、逆に多量の
添加は母材、溶接部の靭性劣化を招き、溶接性にも好ま
しくない。従ってそれぞれ0.3,0.08%を上限とし、これ
らは何れか1種又は2種を必要に応じて選択、併合添加
する。
Ni,Cu,Crは必要に応じて添加する元素であり、Niは母材
強度靭性を向上させるため、Cuは更に耐食性、耐水素誘
起割れ性などにも有効であり、またCrは、母材及び溶接
部の強度を高める元素であり、これらのためにそれぞれ
0.05%以上添加するが、その上限は溶接性やHAZ靭性の
劣化を起さないようにそれぞれ0.3%,0.3%,1.0%以下
にする。
次に溶接金属の成分を特定した理由は以下の通りであ
る。C,Si,MnやMoについては前記母材成分の添加理由と
同様でありこれらの元素の上下限が母材とは多少異なる
ものゝ、これらは溶接金属を制約したPWM範囲の成分と
すればよいからである。すなわち上記各元素の添加量を
0.13≦PMW≦0.16にすることによって、溶接金属の硬さ
を本発明の目標上限値であるHv(10kg)≦248に抑える
ことが可能となる。
N,Oは溶接金属中に不可避的に混入する元素であるが、
これらが多量に混入することは溶接金属中の靭性を著し
く劣化する。そのためNは0.004%以下のできるだけ少
い量とし、Oも0.025%以下にする必要がある。これら
の元素、特にOはTiで脱酸する場合に、Al等とのバラン
スを考慮して小量の添加Tiとほゞ当量となる程度の低含
有量としておくことが好ましく、これにより靭性向上に
必要な固溶Bを確保することができる。Oの下限を0.00
15%としたのは、Ti2O3を形成するために必要であるか
らである。
Alは脱酸元素であり、N,Oを固定し、微細AlN,Al2O3を形
成し溶接金属の靭性を向上させるために0.005〜0.030%
とする。このAlはTiとバランスさせて添加させる必要が
ある。
Tiは、脱酸、脱窒元素であるが、本発明溶接金属構成成
分の特徴の一つであって、特に微細、分散するTi2O3
形成し、溶接金属のγ−α変態時に、γ粒内にTi2O3
核として粒内初析フェライトを微細に生成させて、靭性
を向上させる効果を有する。そのためにAl,N,Oとのバラ
ンスで所用量添加する。しかし、0.005%未満では効果
なく0.025%を超える過剰Ti量になると溶接金属を脆化
する。
BはTiと共に本発明溶接金属の特徴成分であり、前記α
値内でバランスさせるTiにより〔O〕,〔N〕を十分に
固定して、溶接金属中のBを固溶させる。固溶Bはγ→
α変態時、γ粒界より生成する粗大フェライトを抑制
し、Ti2O3を核とするγ粒内変態による微細針状フェラ
イトの生成を促進する。すなわち上記針状フェライトの
生成には或る程度の焼入れ性が必要であり、固溶Bは、
この焼入れ性を確保するためにも役立っている。この結
果、微細組織となって高靭性が得られる。上記した効果
をもたらすためにB添加量は最低0.0004%必要であり、
あまり多量になると焼入れ性の過剰による高硬度化につ
ながるので、0.0012%を上限とした。
尚、P,Sは不可避不純物であり、上述した母材成分と同
様の理由で、できるだけ低く抑えるべきであるが、許容
上限としてそれぞれ0.03%,0.006%とした。
上記溶接金属成分は使用する溶接ワイヤーおよび、フラ
ックスの成分によって可変であるが上述した溶接ワイヤ
ーおよびフラックス成分範囲の調整で特定範囲内とする
ことができる。
(実施例) 次に本発明の実施例について述べる。
第1表に示す現場出鋼した鋼1),2)(板厚12.27mmt
材)を用い、第2表に示す低酸素系フラックス、および
比較フラックス、さらに第3表に示す極低炭素系高Mn−
低N−Ti系溶接ワイヤーの組合せによってUO工場で大径
管を製造する場合と同じ方法で内外面1パス潜弧溶接を
行ない溶接継手を作製した。ただし継手の溶接にあた
り、上記表のみの組合せでは溶接金属成分を変化させる
ことが限られるため、特に微量成分の影響検討用として
それぞれ狙い成分となるように、あらかじめ開先内に炭
素粉末、Ti,Al線、その他の金属粉末を散布もしくは置
いて試験を行なった。該溶接継手の外面側から溶接金属
部の衝撃試験片と、現地溶接部の最高硬さをシュミレー
トするため第1図に示すようなサイズの試験片を採取し
た。
最高硬さ試験の方法を第1図に示す。すなわち最高硬さ
試験は、外面側の潜弧溶接ビード余盛を板面まで削除
し、潜弧溶接ビード部(A)にクロスするようにCO2
接で溶接入熱が10kj/cmの試験ビード(B)をおき、さ
らに、その試験溶接部から硬さ測定試料(C)を採取し
た。硬さの測定位置は潜弧溶接部(B)の表面、および
試験溶接によって再加熱された潜弧溶接部の熱影響部
(D)で且つ溶接境界部からマイクロビッカース硬さ測
定による圧疵の対角線距離内を狙った位置を測定し、最
も高硬度の値を最高硬さとして評価した。第4表に溶接
金属成分と溶接金属の靭性、および現地溶接部の最高硬
さシミュレーション結果を示す。
本発明方で得られた溶接金属成分系では良好な靭性と低
い硬さを備えた溶接金属の特性が得られた。しかし本発
明によらない従来の溶接金属成分では、その特性が両立
せず耐サワー用としては適切ではない。
従来の溶接金属において実施No.11はC量が多すぎるた
めMnを低くしても溶接金属のPWMが大きくなり、靭性の
確保は可能であるが硬化性が著しく高い。また実施No.1
2,13はC量を低くし、Mn量の比較的高いレベルでも同様
にPWMが高くなり高硬度となっている。No.14はPWMの値
は良好で−30℃での靭性も問題ないが硬さが本発明溶接
金属よりも高いレベルを示した。これはB量が発明金属
に比べて高く、溶接金属の焼入れ性を高める方に作用し
たためで硬化性の面から適切ではない。No.15,16も同様
にPWMの値は適正レベルで且つ靭性も良好であるがNo.14
と同様に高硬度で適正ではない。これはα値がマイナス
側へ行き過ぎたためで、酸素量に対してNo.15はTi過
剰、No.16はAl過剰による析出と脆化が溶接金属の高硬
度化に作用したためである。逆にNo.17は適正なPWM値で
硬度も低いが靭性が大幅に低い結果を示した。本実施N
o.材のみフラックスを比較フラックスで試験を行なった
もので、他の結果に比較して高酸素となっている。従っ
てO量に対してTiおよびAl量が少ないため過剰酸素によ
る靭性の大幅な低下をきたし、本発明溶接金属の特性に
及ばない。さらにNo.18はPWM値が低過ぎるため、低硬度
化は達成されるものの溶接金属の焼入れ性不足のため靭
性が低位である。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明方法によって得たUOE法大
径鋼管のガース溶接部は、目標硬さであるHv(10kg)ma
x≦248を充分に達成するところの低硬度特性を有すると
共に、本来ならばこのような低硬度化に伴って生じる靭
性の劣化を起すことなく、むしろ高靭性となっている。
従って入熱量の小さい現地でのガース溶接でも極めて安
定した継手部(特にT−クロス部)をもつ耐サワーガス
性に優れた大径鋼管を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は溶接継手部の硬さ試験用材を示す図、第2図は
第1図より切り出した硬さ試験試片を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 品田 功一 神奈川県相模原市淵野辺5―10―1 新日 本製鐵株式会社第二技術研究所内 (72)発明者 増井 浩昭 千葉県君津市君津1 新日本製鐵株式会社 君津製鐵所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】UOE鋼管において、母材の化学成分が重量
    %で、 C:0.020〜0.050%、Si:0.5%以下、 Mn:1.0〜1.5%、P:0.02%以下、 S:0.0015%以下、Nb:0.01〜0.05%、 Ti:0.010〜0.025%、Al:0.05%以下、 N:0.005%以下、O:0.0025%以下、 Ca:0.002〜0.005%を含み、 さらにMo,Vの1種または2種以上であって、 Mo:0.05〜0.30%、V:0.01〜0.08%、 を含有し、かつ下式のESSPが1.5〜6.0を満足し、残部不
    可避不純物およびFeからなり、上記母材を低酸素系フラ
    ックスおよび極低炭素系高Mn−低N−Ti系溶接ワイヤー
    を用いて内外面に1パス潜弧溶接を行い、 重量%で、 C:0.020〜0.060%、Si:0.5%以下、 Mn:1.35〜1.65%、P:0.03%以下、 S:0.006%以下、Ti:0.005〜0.025%、 Al:0.005〜0.030%、Mo:0.30%以下、 B:0.0004〜0.0012%、O:0.015〜0.025%、 N:0.004%以下を含有し、 かつ、下式のPWMが0.13〜0.16であり、下式のαが−10
    〜+10を満足し、残部不可避不純物およびFeからなる溶
    接金属を得ることを特徴とする耐サワーガス性に優れた
    大径鋼管の製造方法。 ESSP=Ca〔1−124(O)〕/1.25S PWM=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20 +Ni/60+Mo/15+V/10 α=〔1.5(O−0.89Al)+3.4N−Ti〕×103
  2. 【請求項2】UOE鋼管において、母材の化学成分が重量
    %で、 C:0.020〜0.050%、Si:0.5%以下、 Mn:1.0〜1.5%、P:0.02%以下、 S:0.0015%以下、Nb:0.01〜0.05%、 Ti:0.010〜0.025%、Al:0.05%以下、 N:0.005%以下、O:0.0025%以下、 Ca:0.002〜0.005%を含み、 さらにMo,Vの1種または2種以上であって、 Mo:0.05〜0.30%、V:0.01〜0.08%、 を含有し、さらに Ni:0.05〜0.30%、Cu:0.05〜0.30%、 Cr:0.05〜1.0%の1種または2種以上を含有し、かつ下
    式のESSPが1.5〜6.0を満足し、残部不可避不純物および
    Feよりなり、上記母材を低酸素系フラックスおよび極低
    炭素系高Mn−低N−Ti系溶接ワイヤーを用いて内外面に
    1パス潜弧溶接を行い、 重量%で、 C:0.020〜0.060%、Si:0.5%以下、 Mn:1.35〜1.65%、P:0.03%以下、 S:0.006%以下、Ti:0.005〜0.025%、 Al:0.005〜0.030%、Mo:0.30%以下、 B:0.0004〜0.0012%、O:0.015〜0.025%、 N:0.004%以下を含有し、 かつ、下式のPWMが0.13〜0.16であり、下式のαが−10
    〜+10を満足し、残部不可避不純物およびFeからなる溶
    接金属を得ることを特徴とする耐サワーガス性に優れた
    大径鋼管の製造方法。ESSP=Ca〔1−124(O)〕/1.25
    S PWM=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20 +Ni/60+Mo/15+V/10 α=〔1.5(O−0.89Al)+3.4N−Ti〕×103
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