JPH0691635B2 - 微小変位装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、同一面上任意方向の精密な位置決めを行うた
めの微小変位装置に関する。この装置は、ビデオカメラ
のカラー用固体撮像素子の位置合わせ、高解像度化の固
体撮像素子用変位装置、精密パターン位置合わせ装置等
に利用することができる。

従来の技術 ミクロン、サブミクロンという微小変位による位置決め
は、従来はステッピング・モータや、DC・サーボモータ
を使い、ボールねじで回転運動を直進運動に変換する機
械的な手段で行われていた。このため機械的な結合によ
る誤差をなくせず、精度を上げるためには、装置が大型
化してしまう。

そこで、電気的な制御が可能な圧電素子の逆圧電効果を
利用した微小変位装置が考えられ、特公昭51−12497号
公報に示されているようなシャクトリ虫型の移動機構が
ある。第８図は、前記シャクトリ虫型の移動機構の説明
図で、円筒型圧電素子１の両端に静電力、あるいは電磁
力を利用したクランプ素子２、３を取り付けた構造であ
る。同図（ａ）では、クランプ素子２、３は固定台４に
クランプされ、同図（ｂ）でクランプ素子３をフリーに
し、同図（ｃ）で圧電素子１に電圧を印加して圧電素子
１を伸ばている。同図（ｄ）では、伸びている状態で再
びクランプ素子３を固定台４にクランプし、同図（ｅ）
でクランプ素子２をフリーにし、同図（ｆ）で印加電圧
を取り去り、同図（ｇ）で再びクランプ素子２をクラン
プしている。これは、同図（ａ）と同じ状態になり、Δ
ｌだけ変位したことになる。前記移動機構を２方向に取
り付けることにより、簡単に２方向微小変位装置を得る
ことができる。逆圧電効果によるひずみが小さいことか
ら、高精度な位置決めが可能である。

また、特公昭58−130677号、同58−196773号公報には厚
さ方向に分極軸を有する短冊状圧電素子を同形の薄い金
属板の上下面に貼り合わせ、一端を固定、あるいは両端
を固定した屈曲振動子（バイモルフ振動子）を使い、固
体撮像素子を変位させて受光面積を増やし高解像度化す
る固体撮像素子用変位装置が開示されている。第９図は
その１例の前記屈曲振動子を用いた１方向の微小変位装
置を示す。両端固定の屈曲振動子５、５′を平行に配置
し、変位量の最大となる前記屈曲振動子５、５′の中心
位置に固体撮像素子等を載せた移動台６が設けられてい
る。

発明が解決しようとする問題点 上述したシャクトリ虫型の微小変位装置を、同一面２方
向に取り付けることにより、容易に２方向微小変位装置
が考えられるが、絶えず駆動体の一方を静電力、あるい
は電磁力でクランプしておかなければならないので、携
帯、或は傾けて使うような装置では、動作させない時に
移動する物の固定が別途必要で構造が複雑となり、装置
が大型化してくる。また、移動している時はクランプを
外している部分に移動する物の重量が集中し、機械的に
不安定となる。さらに移動方向は装置の取り付けで決ま
ってしまい、取り付け後の任意の方向への移動はできな
い。

屈曲振動子を用いた微小変位装置の場合は、ひずみ量が
大きくとれるが、発生する力が弱く重いものを動かすこ
とができない。また、大きな荷重がかかると振動子の共
振周波数が下がり、駆動周波数の高調波成分により共振
しやすくなり、耐久性に問題が生じる。したがって、任
意方向への微小変位装置とするために前記屈曲振動子を
用いた変位装置（第１変位ユニット）で、他の変位装置
（第２変位ユニット）を変位させることが考えられる
が、第２変位ユニットの重量が第１変位ユニットにかか
るため、第２変位ユニットの重量の影響を少なくするた
めに、第１変位ユニットの屈曲振動子を大きくする必要
があり大型化してしまう。また、耐久性にも問題が生じ
る。

問題点を解決するための手段 ４角形となるように作られた矩形状金属薄板の各面の上
下に、厚さ方向に分極軸を有し上下面に電極を配した板
状圧電素子２枚を互いに分極軸方向が同一となるよう貼
り合わせて、互いに独立な貼り合わせ圧電振動子を構成
し、向かい合う１対の前記貼り合わせ圧電振動子の中央
部を、固定部材を用いて接着等により固定支持し、向か
い合う他１対の前記貼り合わせ圧電振動子の中央部に移
動台を取り付け、前記貼り合わせ圧電振動子の上下面電
極の導通を図り個々に独立した１つの印加電圧端子と
し、前記金属薄板を前記貼り合わせ圧電振動子総てに共
通の他印加電圧端子として構成し、前記圧電振動子を独
立に駆動することにより移動台を同一面２方向へ独立に
微小変位させることが出来るようにする。

作用 貼り合わせ圧電振動子の上下面電極の印加電圧端子と金
属薄板の印加電圧端子に電圧を印加すれば、貼り合わせ
た板状圧電素子の１方が伸び、他方が縮み、その結果屈
曲振動が生じる屈曲振動子として機能する。中央部が固
定されている貼り合わせ圧電振動子は固定部分の両側が
片持ち構造の屈曲振動子となり、移動台を取り付けた貼
り合わせ圧電振動子そのものを前記片持ち構造屈曲振動
子の電極面に対し法線方向へ変位させることが出来る。
中央に移動台を取り付けた貼り合わせ圧電振動子は両端
を固定支持された構造の屈曲振動子であり、移動台を電
極面に対し法線方向に変位させることが出来る。この結
果、２方向へ独立な微小変位装置として小型化でき、構
造の簡単なものとなる。

実施例 以下、本発明の実施例について、図面を用いて詳細に説
明する。

第１図は、本発明の一実施例を示し、同図（ａ）は斜視
図、同図（ｂ）は分解斜視図、同図（ｃ）は貼り合わせ
圧電振動子を示す分解斜視図である。４角形とした矩形
状金属薄板７の各面の上下に、第１図（ｃ）に示すよう
に、厚さ方向に分極軸を有し上下面に電極を配した板状
圧電素子（8a,8b）、（9a,9b）、（10a,10b）、（11a,1
1b）を、それぞれ分極軸方向が同一となるよう貼り合わ
せて、互いに独立な貼り合わせ圧電振動子8,9,10,11を
構成している。貼り合わせ圧電振動子10,11の中央部
を、基台12に取り付け可能な凹形固定部材13a,13bを用
いて接着、あるいはビス等により固定支持し、貼り合わ
せ圧電振動子8,9の中央部には、固体撮像素子14等の移
動させる物を載せる移動台15を取り付けている。貼り合
わせ圧電振動子8,9,10,11の上下面電極の導通を図り、
印加電圧端子16,17,18,19とし、金属薄板７を印加電圧
端子16,17,18,19に対して共通の印加電圧端子20とすれ
ば、印加電圧端子20と16,17に電圧を印加することによ
り貼り合わせ圧電振動子8,9は両端支持構造の屈曲振動
子として機能し、電極面に対し法線方向に変位する。そ
の変位量は印加電界と圧電定数d₃₁に比例する。貼り合
わせる圧電素子8a,8b,9a,9bの厚さが同一で、向かい合
う貼り合わせ圧電振動子8,9の分極軸方向が同一であれ
ば同位相、同電圧を与えると、貼り合わせ圧電振動子8,
9の変位量、変位方向が同一となり、中央部に取り付け
た移動台15を貼り合わせ圧電振動子8,9の変位方向、す
なわち電極面に対し法線方向へ変位させることができ
る。中央部を固定部材13a,13bで固定支持している貼り
合わせ圧電振動子10,11は、片持ち構造の屈曲振動子と
して機能し、印加電圧端子20と18,19に、変位量、変位
方向が同一となるよう印加電圧を与えると、貼り合わせ
圧電振動子8,9を変位方向と同一方向、すなわち圧電振
動子10,11の電極面に対し法線方向へ変位させるので移
動台15も同一方向へ変位することになる。貼り合わせ圧
電振動子8,9と10,11は独立に駆動できるので、移動台15
を同一面２方向へ変位させることができる。また、貼り
合わせ圧電振動子8,9,10,11を同一平面に構成している
ため、２方向へ独立な微小変位装置として小型化でき、
構造の簡単なものとなる。また貼り合わせ圧電振動子の
上下面電極の印加電圧端子16,17,18,19と固定部材との
導通を図り接地端子とすれば、共通印加電圧端子20であ
る金属薄板７は接地電極に挟まれているため、雑音の混
入が少なくなると共に、外部からの接触による短絡を防
ぐことが出来る。

さらに小型化できるという利点は、固体撮像素子等の半
導体素子を微小変位させるような用途では、変位装置そ
のものを半導体素子と共にパッケージ化してしまうこと
ができるという、大きな特徴を有する。第２図にパッケ
ージ化の一例を示す。２方向微小変位装置の移動台15に
固体撮像素子14を導電性接着剤等で固着し、２方向微小
変位装置をセラミックの等のケース21の内部に固定し、
固体撮像素子14の受光面上に光を透過するガラスによっ
てケース21内に封入する。固体撮像素子14、および２方
向変位に必要な圧電素子への電気配線は、ケース21に印
刷された電極20を通して外部へ取り出される。

次に本発明の他の実施例について説明する。

第３図は、他の一実施例を示し、同図（ａ）は斜視図、
同図（ｂ）は分解斜視図である。中央部を固定部材で固
定支持された圧電振動子10,11の上下面電極（10a′,10
b′），（11a′,11b′）を、同図（ｂ）の斜線で示した
ように中央部で分離し、それぞれ上下面電極の導通を図
り、印加電圧端子18a,18b、19a,19bとし、共通印加電圧
端子20との間で電圧を印加することにより、固定部両側
の片持ち構造の屈曲振動子を独立に駆動させることが出
来る。例えば貼り合わせる圧電素子の厚さが同一で、向
かい合う貼り合わせ圧電振動子10,11の分極軸方向が同
一であれば同位相、同電圧を印加電圧端子20と18a,19b
に印加することにより、貼り合わせ圧電振動子８を変位
させ、同様に同位相、同電圧を電圧印加端子20と18b,19
bに印加することにより、貼り合わせ圧電振動子９を変
位させることができる。すなわち貼り合わせ圧電振動子
8,9を独立に変位させることが出来るので、印加電圧端
子18a,19aと18b,19bに印加する電圧を異ならせることに
より、貼り合わせ圧電振動子8,9の変位量を変えて、移
動台15を水平面内に傾きをもたせることができる。この
ことは、固体撮像素子を基台に取り付けた場合に生じる
水平面内の傾きを補正できたり、集積回路等のマスク合
わせの精密微小位置合わせにおいて角度調整が出来ると
いう大きな特徴を有する。

第４図は、本発明の他の一実施例を示す貼り合わせ圧電
素子の分解斜視図である。中央部を固定部材で固定支持
する圧電振動子を、板状圧電素子（21a,21b）、（22a,2
2b）、（23a,23b）、（24a,24b）を金属薄板７の上下面
に中央部分が分離するように貼り合わせて構成したもの
で、固定部両側の圧電振動子を独立に駆動出来るので、
前述した傾きを補正できたり、微小位置合わせが出来る
という大きな特徴を有する。

第５図は、本発明の他の一実施例を示す貼り合わせ圧電
素子の分解斜視図である。矩形状金属薄板を折り曲げて
いくことにより４角形をした矩形状金属薄板７を形成
し、金属薄板７の両端が貼り合わせる圧電素子10a,10b
の中央部分にくるよう構成したものである。金属薄板の
両端が固定部材により固定される部分に来ることから、
圧電振動子として変位量に与える影響がなく、４角形と
した矩形状金属薄板を１枚の薄板からつくりだせるの
で、簡単な構造で作り易いものとなる。

第６図は、本発明の他の一実施例を示す貼り合わせ圧電
振動子の分解斜視図である。コの字状に折り曲げた矩形
状金属薄板7a,7bを向き合わせて、４角形をした矩形状
金属薄板を構成し、金属薄板7a,7bの両端が貼り合わせ
る圧電素子（10a,10b）、（11a,11b）の中央部分にくる
よう構成したものである。金属薄板7a、7bの作製におい
て、折り曲げる方向が１方向しかなく量産性の良い構造
である。

第７図は、本発明の他の一実施例を示す微小変位装置の
分解斜視図である。コの字状に折り曲げた矩形状金属薄
板7a,7bの上下面に板状圧電素子を貼り合わせた微小変
位ユニット25a、25bを構成し、微小変位ユニット25a、2
5bの両端部分が向き合うよう配置し、微小変位ユニット
25a、25bの両端部分を固定部材13a、13bにより支持固定
した構造である。全く独立な微小変位ユニットから構成
されているため、片持ち構造となる圧電振動子の特性バ
ラツキを、固定部材による取り付け時に圧電振動子の固
定部分の長さを調整することにより吸収出来るという大
きな特徴を有する。

片持ち構造の貼り合わせ圧電振動子と両端支持構造の貼
り合わせ圧電振動子は、金属薄板を通して結合されてい
るため、互いに影響を受けることは避けられないが、第
７図に示したように両端支持構造の貼り合わせ圧電振動
子両側の金属薄板にＵ型のへこみ26a,26b,26c,26dを設
けたり、あるいは穴を設けたりして曲げ剛性率を大きく
して、影響を少なくし、信頼性の向上が図られる。

発明の効果 本発明は片持ち構造の貼り合わせ圧電振動子と両端支持
構造の貼り合わせ圧電振動子を同一平面内に構成するこ
とにより、２方向へ独立に微小変位させることができ
る。この結果、２方向へ独立な微小変位装置として小型
化でき、構造の簡単なものとなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の２方向微小変位装置を示
し、同図（ａ）は斜視図、同図（ｂ）は分解斜視図、同
図（ｃ）は貼り合わせ圧電振動子を示す分解斜視図、第
２図は本発明による２方向微小変位装置をパッケージ化
した時の分解斜視図、第３図、第４図、第５図、第６図
及び第７図は、本発明による他の実施例を示し、第３図
（ａ）は斜視図、同図（ｂ）は分解斜視図、第４図、第
５図、第６図は貼り合わせ圧電振動子の分解斜視図、第
７図は微小変位装置の分解斜視図、第８図、第９図は従
来例を示す微小変位装置の各々正面図および斜視図であ
る。 ７……金属薄板、8,9,10,11……貼り合わせ圧電振動
子、8a,8b,9a,9b,10a,10b,11a,11b,21a,21b,22a,22b,23
a,24a……圧電素子、12……基台、13a,13b……固定部
材、15……移動台、25a,25b……微小変位ユニット。

Claims (9)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】４角形とした矩形状金属薄板の各辺の両面
   に、厚さ方向に分極軸を有し上下面に電極を配した板状
   圧電素子２枚を、分極軸方向が同一となるよう貼り合わ
   せて貼り合わせ圧電振動子を構成し、向かい合う１対の
   前記貼り合わせ圧電振動子の中央部を固定部材により固
   定支持し、向かい合う他の１対の前記貼り合わせ圧電振
   動子の中央部に移動台を取り付け、前記貼り合わせ圧電
   振動子の上下面電極の導通を図り個々に独立した１つの
   印加電圧端子とし、前記金属薄板を前記貼り合わせ圧電
   振動子総てに共通の印加電圧端子として構成したことを
   特徴とする微小変位装置。
2. 【請求項２】貼り合わせ圧電振動子の中央部を固定支持
   する固定部材と前記貼り合わせ圧電振動子の上下面電極
   との導通を図り、前記固定部材と金属薄板とは絶縁を図
   るよう構成したことを特徴とする特許請求の範囲第１項
   記載の微小変位装置。
3. 【請求項３】貼り合わせ圧電振動子の中央部を固定支持
   する固定部材と前記金属薄板との導通をとり、前記固定
   部材と前記貼り合わせ圧電振動子の上下面電極とは絶縁
   を図るよう構成したことを特徴とする特許請求の範囲第
   １項記載の微小変位装置。
4. 【請求項４】中央部を固定部材により固定支持する貼り
   合わせ圧電振動子の上下面電極を中央部で分離し、それ
   ぞれ上下面電極の導通を図り、個々に独立した１つの印
   加電圧端子としたことを特徴とする特許請求の範囲第１
   項記載の微小変位装置。
5. 【請求項５】中央部を固定部材により固定支持する前記
   １対の貼り合わせ圧電振動子において、貼り合わせる板
   状圧電素子を固定部分で分離して構成したことを特徴と
   する特許請求の範囲第１項記載の微小変位装置。
6. 【請求項６】１枚の矩形状金属薄板を折り曲げることに
   より４角形をした矩形状金属薄板を構成し、前記金属薄
   板の両端が、中央部を固定部材により固定支持する前記
   貼り合わせ圧電振動子の中央固定部分に位置するよう構
   成したことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の微
   小変位装置。
7. 【請求項７】コの字状に折り曲げた矩形状金属薄板を２
   つ用いて４角形をした矩形状金属薄板を構成し、前記２
   つの金属薄板の両端が、中央部を固定部材により固定支
   持する前記貼り合わせ圧電振動子の中央固定部分に位置
   するよう構成したことを特徴とする特許請求の範囲第１
   項記載の微小変位装置。
8. 【請求項８】コの字状に折り曲げた矩形状金属薄板の上
   下面に板状圧電素子を貼り合わせて構成された微小変位
   ユニット２つを用い、微小変位ユニットの両端部分が向
   き合うよう配置し、前記両端部分を固定部材により固定
   支持したことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の
   微小変位装置。
9. 【請求項９】移動台を取り付けた前記貼り合わせ圧電振
   動子両端部分の金属薄板の曲げ剛性率を大きくするよう
   構成したことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の
   微小変位装置。