JPH0691616A - 装飾体付きコンクリート部材の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 熟練者でなくても容易にその作業ができ、し
かも、コンクリート中のモルタル分やセメントペースト
分が装飾体の表面に付着することのない装飾体付きコン
クリート部材の製造方法を提供すること。 【構成】 多数の装飾体を型枠内にそれらの表面側が上
方に向いた状態で配列し、該装飾体の表面上に一次発泡
された発泡ビーズを充填し、該発泡ビーズを二次発泡さ
せて上記装飾体と一体成形し、該一体成形された発泡体
と装飾体とのユニットを脱型し、該ユニットをその装飾
体の裏面側を上方に向けて型枠内に配置し、該ユニット
の表面上にコンクリートを打設し、コンクリートが固化
したのち脱型し、その後上記発泡体を除去して装飾体付
きコンクリート部材を製造した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、装飾体付きコンクリー
ト部材の製造方法に関し、特に、装飾体が、その表面に
凹凸を有する装飾体である場合に好適な、装飾体付きコ
ンクリート部材の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、ビルの外壁工事等において
は、下地モルタルにタイル等の装飾体を一枚一枚張り付
ける工法が広く知られている。ところが、この現場工法
によると、足場が必要となり施行能率が非常に悪く、ま
た、施行する職人が不足しているという課題がある。ま
た、設計又は施行が不完全な場合には、耐久性不足によ
るタイルの剥離事故が起こり得るという課題もある。

【０００３】そこで、近年においては、前記装飾体付き
コンクリートパネルを工場で製造し、これを建築現場に
搬入して外壁に組み付けるユニット工法が採用されつつ
ある。このユニット工法によると、工場生産のため装飾
体付きコンクリートパネルの品質が安定し、耐久性が良
く、工期の短縮が可能になるという利点がある。

【０００４】この装飾体付きコンクリートパネルを製造
する従来方法は、例えば、型枠の内側にコンクリートを
打設して基板を成形し、未固化状態の該基板の表面に多
数のタイルを一枚一枚水糸に沿って張り付け、固化した
後に脱型してタイル付きコンクリートパネルを製造する
方法。

【０００５】また、タイルをそれらの表面側が上方に向
いた状態で配列し、その隙間に目地棒を設置してからタ
イル表面側を粘着テープにて固定し、この様にして作ら
れたタイルユニットを型枠にタイルの裏面側が上方に向
く状態で配置し、その上方よりコンクリートを打設して
タイル付きコンクリートパネルを製造する方法等が存在
した。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たタイルを一枚一枚張り付ける方法にあっては、該張り
付け作業に特別な左官技術が要求され、熟練者でないと
良好な仕上がりが得られず、特に表面に不規則な凹凸が
あるタイルを張り付ける場合には、目地方向ばかりでな
く高さ方向にも注意を払う必要があり、タイルの張り付
け工程に相当の時間がかかり、生産性が低下するという
課題があった。また、タイル張り付け中の振動により、
該タイルが沈下したり移動したりすることもあり、良好
な仕上がり面を得ることがなかなか難しい方法でもあっ
た。

【０００７】また、上記した粘着テープによりタイルユ
ニットを形成する方法にあっては、該粘着テープによる
シール作用は少なく、コンクリート中のモルタル分やセ
メントペースト分がタイル表面と粘着テープとの隙間に
入り込み、タイル表面に付着して汚れとなることが多
く、この汚れは容易には取れないためその清掃に大変な
手間が掛かるという課題があった。またこのことは、表
面に不規則な凹凸があるタイルの場合には特に顕著に現
れ、実際上、この方法は表面が平らなタイルのみにしか
適用できないという課題があった。

【０００８】さらに、上述した両方法にあっては、コン
クリート打設時の衝撃を考慮し、鉄製型枠が用いられて
いる。この鉄製型枠は、その重量が重く作業性を悪化さ
せると共に、製作費も嵩むという課題を有していた。ま
た、鉄製型枠では、役物、特殊サイズ品に対する成型機
能が劣悪で、湾曲部、特殊変形部位等の仕上がり面のキ
メに欠けるという課題もあった。

【０００９】本発明は、上述した従来技術が有する種々
の課題に鑑みなされたものであって、その目的は、熟練
者でなくても多数の装飾体を容易に配列することがで
き、しかも、コンクリート中のモルタル分やセメントペ
ースト分が装飾体の表面に付着することを防止して、仕
上時の清掃作業を簡略化できる装飾体付きコンクリート
部材の製造方法を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明は、上述した従来
技術が有する課題を解決するため、多数の装飾体を発泡
体成形用の型枠内にそれらの表面側が上方に向いた状態
で配列する工程と、前記配列された装飾体の表面上に一
次発泡された発泡ビーズを充填し、該発泡ビーズを二次
発泡させて前記装飾体と一体成形する工程と、前記一体
成形された発泡体と装飾体とのユニットを脱型し、該ユ
ニットをその装飾体の裏面側を上方に向けてコンクリー
ト部材成形用の型枠内に配置する工程と、前記配置され
たユニットの表面上にコンクリートを打設し、養生する
工程と、前記コンクリートが固化したのち脱型し、上記
発泡体を除去する工程とを含む装飾体付きコンクリート
部材の製造方法とした。

【００１１】本発明にかかる装飾体付きコンクリート部
材の製造方法によれば、上記した如く多数の装飾体を型
枠内にそれらの表面側が上方に向いた状態で配列し、そ
の上方から一次発泡された発泡ビーズを充填し、該発泡
ビーズを二次発泡させて前記装飾体と一体成形する工程
が存在するため、該成形された発泡体が、その後のコン
クリート打設時に装飾体を所定の位置で支持する型枠の
役目を果たし、前記装飾体の配列時には、直接未固化状
態のコンクリート基板上に装飾体を並べるのとは異な
り、さほどの注意力を必要とせず、熟練者でなくても容
易にその作業を実施できる。

【００１２】また、本発明においては、コンクリートの
打設前に、装飾体の表面側に発泡体を一体成形させてい
るため、該発泡体のシール作用により、コンクリートが
装飾体の表面側に侵入する現象を効果的に阻止すること
ができ、仕上時の清掃作業を簡略化できる。また、形成
する発泡体は、一次発泡された発泡ビーズを装飾体の表
面上に充填し、該発泡ビーズを二次発泡させて前記装飾
体と一体成形するものであるため、該装飾体の表面に凹
凸が存在する場合であっても、該凹凸を吸収し、凹凸に
沿って発泡体は密着して成形されることとなり、上記シ
ール作用は、このような表面に凹凸が存在する装飾体で
あっても損なわれることはない。

【００１３】さらに、本発明においては、上記したよう
に発泡体と装飾体とを一体成形したユニットを形成する
ものであるため、該ユニットは定形性を有するものの比
較的軽量なものとなり、その搬送が容易となると共に、
該発泡体が搬送時或いはその後のコンクリート打設時等
の衝撃を吸収する緩衝材としての作用を果たし、コンク
リート打設時の型枠を、木製とすることができると共
に、装飾体に無理な力がかかるのを防止でき、装飾体の
破損を効果的に阻止することができる。

【００１４】なおここで、上記装飾体としては、コンク
リート部材の表面に設けることができるものであれば、
その材質・寸法・形状等は何ら限定されるものではな
く、例えば粗面タイル、滑面タイル、自然石、人造石、
或いはレンガ等を挙げることができる。

【００１５】また、上記発泡ビーズのポリマーとして
は、その後の発泡体の除去工程を考慮した場合、非極性
型樹脂の重合体が望ましく、例えばオレフィン系樹脂で
あるポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等がその目
的特性を満足するため好ましい。

【００１６】また、前記装飾体の配列工程においては、
装飾体間に目地を必要とする場合には、予め装飾体を配
列する発泡体成形用の型枠に、発泡ビーズの侵入を阻止
する凸条を装飾体の外寸法に合わせて形成しておき、該
凸条間に装飾体を挿入する状態で配列すれば良い。

【００１７】

【実施例】以下、本発明をタイル付きの外壁用コンクリ
ートパネル（カーテンウォール）の製造に具現化した一
実施例を、添付図面に従って詳細に説明する。

【００１８】ここで、図１はタイルの斜視図、図２はタ
イル付きの外壁用コンクリートパネルの斜視図である。
図３〜図１２は、前記タイル付きの外壁用コンクリート
パネルの製造工程及び各工程中の部材の断面を示した図
である。

【００１９】図１に示すように、本実施例においては装
飾体として外壁に好適な略直方体形状のタイル１が使用
される。該タイル１は、表面に不規則な凹凸を有する意
匠表面２が設けられた粗面タイルであって、該粗面タイ
ル１の裏面側には、あり溝形状の一対のコンクリート結
合溝３が刻設されている。

【００２０】上記粗面タイル１は、先ず図３に示すよう
に発泡体成形用の型枠４に、その意匠表面２側を上方に
向けた状態で配列される。この際、発泡体成形用の型枠
４には、目地部を形成するための凸条５がタイル１の外
寸法に合わせて形成されているため、該凸条５間にタイ
ル１を挿入する状態で配列する。

【００２１】次ぎに、図４に示したように、型枠４内に
配列された上記粗面タイル１上に、５〜２０倍に一次発
泡されたポリプロピレン発泡ビーズ６を充填し、該ポリ
プロピレン発泡ビーズ６を型枠４内で慣用の手段により
二次発泡させ、前記粗面タイル１と一体成形する。

【００２２】一体成形された発泡体７と粗面タイル１と
を型枠４から脱型すると、図５及び図６に示したよう
に、粗面タイル１の意匠表面２側の一部が発泡体７に埋
設し、粗面タイル１間に発泡体７による目地形成面９が
形成された状態のユニット８が形成される。

【００２３】次ぎに、該ユニット８をその粗面タイル１
の裏面側を上方に向けた状態で、図７に示したようにコ
ンクリート部材成形用の型枠１０内に複数配置し、その
上方から図８に示した如く、コンクリート１１を打設す
る。

【００２４】コンクリート１１の打設後、一昼夜加温養
生し、その後型枠１０から脱型すると、図９及び図１０
に示したように、粗面タイル１がコンクリート層１２と
発泡体７とによりサンドイッチ状態となった成形体１３
が得られる。

【００２５】次ぎに、該成形体１３から発泡体７を除去
することにより、図２或いは図１１、図１２に示したタ
イル付きの外壁用コンクリートパネル１４が完成する。

【００２６】以上、本発明の一実施例に付き説明した
が、本発明は既述の実施例に限定されるものではなく、
本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、種々の変更が
可能である。

【００２７】例えば、上記実施例においては、表面に不
規則な凹凸を有する意匠表面２が設けられた粗面タイル
１をコンクリート部材上に設ける場合に付き説明した
が、滑面タイル、或いは自然石、人造石等の装飾体であ
っても本発明は実施できる。但し、装飾体が表面に不規
則な凹凸を有するもの、或いは自然石のように高さがま
ちまちであるもの等の場合には、本発明において一次発
泡された発泡ビーズを該装飾体の表面上に充填し、発泡
ビーズを二次発泡させて前記装飾体と一体成形する工程
を設け、コンクリート打設前に、装飾体の凹凸を吸収し
安定した座り性を有するユニットを形成した作用・効果
が、有効に発揮され好ましい。

【００２８】

【発明の効果】以上、説明した本発明にかかる装飾体付
きコンクリート部材の製造方法によれば、多数の装飾体
を型枠内にそれらの表面側が上方に向いた状態で配列
し、その上方から一次発泡された発泡ビーズを充填し、
該発泡ビーズを二次発泡させて前記装飾体と一体成形す
る工程を設けたため、該成形された発泡体が、その後の
コンクリート打設時に装飾体を所定の位置で支持する型
枠の役目を果たし、前記装飾体の配列時には、直接未固
化状態のコンクリート基板上に装飾体を並べるのとは異
なり、さほどの注意力を必要とせず、熟練者でなくても
容易にその作業を実施できる方法となる。

【００２９】また、本発明においては、コンクリートの
打設前に装飾体の表面側に発泡体を一体成形させている
ため、該発泡体のシール作用により、コンクリートが装
飾体の表面側に侵入する現象を効果的に阻止することが
でき、仕上時の清掃作業を簡略化できる。また、形成す
る発泡体は、一次発泡された発泡ビーズを装飾体の表面
上に充填し、該発泡ビーズを二次発泡させて前記装飾体
と一体成形するものであるため、該装飾体の表面に凹凸
が存在する場合であっても、該凹凸を吸収し、凹凸に沿
って発泡体は密着して成形されることとなり、上記シー
ル作用は、このような表面に凹凸が存在する装飾体であ
っても損なわれることはなく、後の仕上作業は、やはり
簡易なものとなる。

【００３０】さらに、本発明においては、上記したよう
に発泡体と装飾体とを一体成形したユニットを形成する
ものであるため、該ユニットは定形性を有するものの比
較的軽量なものとなり、その搬送が容易となると共に、
該発泡体が搬送時或いはその後のコンクリート打設時等
の衝撃を吸収する緩衝材としての作用を果たし、コンク
リート打設時の型枠を、安価でその製作も容易な木製型
枠とすることができると共に、装飾体に無理な力がかか
るのを防止でき、装飾体の破損を効果的に阻止すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】粗面タイルを示した斜視図である。

【図２】粗面タイル付きコンクリートパネルの一部を示
した斜視図である。

【図３】粗面タイルの配列工程を示した斜視図である。

【図４】発泡ビーズの充填工程を示した斜視図である。

【図５】発泡体と粗面タイルとのユニットを示した斜視
図である。

【図６】図５のＡ−Ａ線に沿う部分の断面図である。

【図７】ユニットの配列工程を示した斜視図である。

【図８】コンクリートの打設工程を示した斜視図であ
る。

【図９】成形体の斜視図である。

【図１０】図９のＢ−Ｂ線に沿う部分の断面図である。

【図１１】粗面タイル付きコンクリートパネルを示した
斜視図である。

【図１２】図１１のＣ−Ｃ線に沿う部分の断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 粗面タイル ２ 意匠表面 ３ コンクリート結合溝 ４ 発泡体成形用型枠 ５ 凸条 ６ 発泡ビーズ ７ 発泡体 ８ ユニット ９ 目地形成面 １０ コンクリート部材成形用型枠 １１ コンクリート １２ コンクリート層 １３ 成形体 １４ タイル付きの外壁用コンクリートパネル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 康則 東京都千代田区大手町１丁目６番１号 日 本セメント株式会社内 (72)発明者 小泉 壽章 埼玉県越谷市井原１丁目２番48号 (72)発明者 多賀 誠 東京都千代田区内幸町２丁目１番１号 株 式会社ジェイエスピー内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多数の装飾体を発泡体成形用の型枠内に
   それらの表面側が上方に向いた状態で配列する工程と、
   前記配列された装飾体の表面上に一次発泡された発泡ビ
   ーズを充填し、該発泡ビーズを二次発泡させて前記装飾
   体と一体成形する工程と、前記一体成形された発泡体と
   装飾体とのユニットを脱型し、該ユニットをその装飾体
   の裏面側を上方に向けてコンクリート部材成形用の型枠
   内に配置する工程と、前記配置されたユニットの表面上
   にコンクリートを打設し、養生する工程と、前記コンク
   リートが固化したのち脱型し、上記発泡体を除去する工
   程とを含むことを特徴とする装飾体付きコンクリート部
   材の製造方法。