JPH0684530B2 - ジルコニウム基合金部材及び製造法 - Google Patents

ジルコニウム基合金部材及び製造法

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JPH0684530B2
JPH0684530B2 JP61133686A JP13368686A JPH0684530B2 JP H0684530 B2 JPH0684530 B2 JP H0684530B2 JP 61133686 A JP61133686 A JP 61133686A JP 13368686 A JP13368686 A JP 13368686A JP H0684530 B2 JPH0684530 B2 JP H0684530B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、新規なジルコニウム基合金部材とその製造法
に係り、特に原子力燃料集合体としてスペーサ及びチヤ
ンネルボツクスに使用するNbを含むZr基合金部材とその
熱処理方法に関する。
〔従来の技術〕
ジルコニウム基合金は、優れた耐食性と小さい中性子吸
収断面積とを有する合金であり、これらの特性は原子力
燃料集合体用材料として適している。実用に供されてい
るジルコニウム基合金を大別する。ジルカロイと呼ばれ
るZr−Sn−Fe−Cr−Ni合金と、Nbを合金元素として含む
合金である。ジルカロイの開発経緯及びその特性につい
ては、エー・エス・エー・エム,エス・テー・ピー・N
o.365(1963)第3頁から第27頁(ASTM,STPNo.365(196
3)pp3−27)に論じられている。
Nbを含む合金は主にキヤンドウ−ピエイチダブリユ(CA
NDU−PHW)原子炉カナダ−デユートリウム−ウラニウム
−プレツシユアライズド−ヘビイ ウオータ リアクタ
(Canda-Deuterium-Uranium-Pressurized-Heavy Water
Reactor)用圧力管材料として用いられており、Zr−2.5
wt%Nb合金,Zr−2.5〜4wt%Sn−0.5〜1.5wt%Mo−0.5〜
1.5wt%Nb合金,Zr−3Nb−1Sn合金等がある。
これら合金の特性及び熱処理・加工方法カナデイアン・
メタラジカル・クウオータリイ・No.11,vol.1(197
2),(Canadian Metallurgical Quaterly No.11,vol.1
(1972))に詳しく論じられているように、いずれの合
金もジルカロイに比べて強度が高い特徴を有している。
これらの合金は、α+β温度範囲あるいは、β相温度か
ら急冷しNbあるいはMoを過飽和に固溶した針状組織を有
する非平衡相を含む金属組織とした後、加工度:10%前
後の冷間加工を施して使用に供するか、あるいは、冷間
加工後、400℃〜600℃の温度範囲での時効処理により微
細なβNb相あるいは金属間化合物相Mo2Zrを析出させて
硬化させて使用に供される。
特開昭51−134304によれば、850℃〜900℃の温度範囲で
熱間押出し加工を施し、押出し部を急冷した後、冷間加
工と時効処理とを施すことにより管体を製造するプロセ
スが提案されている。この方法において製造される管体
の金属組織は、押し出し方向に細長く伸びたα−Zr相
(平衡相)粒界に非平衡相が形成されたものとなること
が述べられている。これらα−Zr相の粒界に存在する非
平衡相(特にω相と呼ばれる粒界相)が変形抵抗を高
め、高強度と優れたクリープ特性をもたらすことが、ジ
ヤーナル・オブ・ニユークリア・マテリアルズ 第42号
(1972)第32頁〜42頁(Jounal of Nuclear Materials
42(1972)pp32−42)に述べられている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
これら従来の合金は、非平衡相とα−Zr相(平衡相)と
を混在させることにより高強度が得られる合金である
が、強度が高いために冷間加工性が低下し、燃料集合体
部材の製造プロセスにおいて強冷間加工を施すと割れが
発生するという問題があつた。また、溶接部及びその熱
影響部では、α+β相あるいはβ相温度範囲から急冷さ
れる温度履歴を受けるため前述した針状組織を有する非
平衡相が多量に残留し、耐食性を低下させるという問題
があつた。従来の合金は、主にキヤンドウーピーエイチ
ダブル(CANDU−PHW)原子炉圧力管を適用対象として開
発されたものである。圧力管には溶接部が存在しないの
で、かかる溶接部の耐食性に関する配慮がなされていな
かつたものと推定される。しかし、BWRあるいはBWR(軽
水炉)燃料集合体部材は、溶接部を含むので、かかる従
来合金をそのまま使用することには問題があつた。
本発明の目的は、溶接部の耐食性が高く、かつ冷間加工
性の優れた高強度Zr−Sn−Nb−Mo合金部材とその製造法
を提供することである。
〔問題点を解決するための手段〕 ω相,残留β相,あるいはマルテンサイト相等の非平衡
相の発生を防止し、α−Zr相,β−Nb相及び金属間化合
物相Mo2Zrからなる金属組織とすることにより冷間加工
性は向上し、溶接部においても同様な金属組織とするこ
とにより耐食性は向上する。よつて、上記目的は、合金
成分の適正化及び熱処理方法の改善により達成される。
Zr−Nb系2元平衡状態図の室温における平衡相は、Nbを
約1wt%固溶した六方晶の相Zrと、Zrを15wt%以下固溶
したβ相Nbとである。溶接部及びその周辺の熱影響部
は、高温から急冷されるので、平衡状態図には現われな
い非平衡相が発生する。第1図は、830℃(α+β相温
度範囲)から毎秒100℃の平均冷却速度で冷却させたZr
−2.5wt%Nb合金の金属組織を示す。図中白色の部分はN
bを約1.5wt%固溶したα−Zr相である。α−Zr相を取囲
む針状の金属組織は、高温においてβ相であつた部分が
急冷されることにより発生したものであり、Nbを約3.5w
t%固溶した残留β−Zr相,ω−Zr相あるいはマルテン
サイト(α′−Zr相)と呼ばれる非平衡相からなる複雑
な金属組織である。溶接部及びその周辺の熱影響部にお
いても同様な金属組織となる。すなわち、862℃以上の
β相温度範囲に加熱された領域では針状組織となり、α
+β相温度範囲に加熱された領域では、第1図に示した
金属組織と類似なα−Zr相結晶粒と針状組織との混合組
織となる。加熱温度の上昇に伴い、針状組織の部分が増
加し、加熱温度がβ相温度範囲になるとα−Zr相結晶粒
は見られず、すべて針状組織となる。第2図は、耐食性
と金属組織との関係を示す模式図である。第1図に示し
た金属組織を有する合金を高温水中で腐食させると、非
平衡相である針状組織の部分のみが選択的に腐食が加速
され、ポーラスな白色の厚い酸化膜が形成される。一方
Nbを1.5wt%前後固溶したα−Zr相の部分の耐食性は極
めて高い。Nbを1.5wt%以上含むZr−Nb合金の溶接部及
び熱影響部では上述した白色の加速腐食が発生し、かか
る合金を溶接構造原子力燃料集合体部材として使用する
大きな障害となることがわかる。
上記目的は溶接部に残存する非平衡相を消失させること
により達成される。非平衡相とは、Nbを過飽和に固溶し
た残留β相,ω相及びマルテンサイト(α′相)からな
る複雑な組織であり、このような金属組織の耐食性は低
い。かかる金属組織は融点以上、β相温度範囲、並びに
α−β相温度範囲から急冷されることにより発生し、同
様な温度履歴を受ける溶接部並びにその熱影響部の耐食
性は著しく低下する。Nb含有量が高いほどかかる低食性
の低い非平衡相は発生しやすいので、溶接部の耐食性向
上の観点からNb含有量を低下させる方が望ましいが、強
度を高めるためにはNb含有量を約2wt%以上にする必要
がある。本発明では、強度及び耐食性の2点を満足させ
る溶接構造原子力燃料集合体部材を得るために以下に示
す手段を採用した。
(1)Snを添加することにより非平衡相を発生しにくく
する。
(2)Nb含有量を低下させることによる強度低下を、強
度向上元素であるMoを添加し、Nb+Mo量が約1.5wt%以
上とするのが好ましい。
(3)溶接後、時効処理を施すことにより、β−Nb相及
びMo2Zrを析出させ、残存非平衡相を分解させる。
本発明は、多数の燃料棒,該燃料棒の両端を保持する上
部及び下部タイプレート、該上部及び下部タイプレート
間に設けられ前記燃料棒を所定の間隔で配列するスペー
サ、前記燃料棒、上部及び下部タイプレート及びスペー
サを収納する角筒からなるチヤンネルボツクス及び前記
燃料棒の全体を一体に搬送するためのハンドルを備えた
原子力燃料集合体において、前記スペーサ又は/及び前
記チヤンネルボツクスは、重量で、Sn0.5〜2.0%及びNb
1.0〜2.5%及びMoを1%以下含有するZr基合金からなる
薄板を溶接によつて接合したものであり、該溶接部及び
その熱影響部は、六方晶α−Zr相の結晶粒界及び粒内に
面心立方晶β−Nb相及び体心立方晶金属間化合物相Mo2Z
rが微細に析出し、実質的にNbを過飽和に固溶した残留
β−Zr相及びω−Zr相を含まない金属組織からなり、高
温水環境下で前記溶接部に白色の腐食が生じないことを
特徴とする原子力燃料集合体にある。チヤンネルボツク
スは沸騰水型原子炉に設けられるが、加圧水型原子炉に
はない。チヤンネルボツクスがない場合のハンドルは上
部タイプレートに保持される。
燃料棒としてジルコニウム基合金が用いられ、特に重量
で、Sn1〜2%,Fe0.05〜0.3%,Cr0.05〜0.15%,Ni0〜0.
1%及びFe+Cr+Ni0.15〜0.4%を含むZr基合金が用いら
れる。また、この燃料棒はこのZr基合金からなる被覆管
とその内側に設けられた純Zr層からなるものが用いられ
る。
〔作用〕
(Sn添加の効果) 第3図は、Zr−Nb−Sn系3元合金の725℃における平衡
状態図を示す。Snを添加しない場合、α相Zr中へのNbの
最大固溶量は約1.5wt%であるが、Sn含有量を2wt%まで
増加させると、α相Zr中へのNb固溶量は、最大2.5wt%
まで増加することがわかる。よつてNb添加量は2.5wt%
以下であることが好ましい。前述した針状組織を有する
非平衡相は、高温で生成したβ−Zr相が急冷されること
により発生する。Sn添加によりα相Zr中へのNbの固溶量
が増加すると、β相Zr中でのNb固溶量は低下し、冷却過
程において非平衡相が発生しにくくなる。
Sn添加の効果は、高温α−Zr相中へのNb固溶量を増加さ
せることによりβ−Zr相中のNb量を減少させると共に、
冷却過程において残留β−Zr相,ω−Zr相並びにマルテ
ンサイト(α′相)の生成を抑制することである。Sbの
最大添加量は2wt%であり、それ以上の添加は効果を減
少させる。Nbを多量に固溶したα相Zrは、温度の低下と
共に固溶度が減少するため、β−Nb相がα−Zr相結晶粒
内及び粒界に析出し、15wt%前後のNbを固溶したα−Zr
相と、微細なβ−Nb相とからなる金属組織となる。β相
中のNb量が低いため、針状組織中にも非平衡相が生成し
にくい。
Snは0.7〜1.5%が好ましい。
(Mo添加の効果) Moはα相Zr中にほとんど固溶せず、体心立方晶の金属間
化合物Mo2Zrとして微細析出する。微細析出物が結晶粒
内及び粒界に均一に分散することにより合金の変形抵抗
を高け強度を上昇させる効果がある。耐食性に悪影響を
及ぼすNbを減少させても、Moを同時に添加することによ
り、強度を維持できる効果がある。Nb添加においては、
β−Nb相が微細析出することにより強度が向上し、Mo添
加においては、Mo2Zrが微細析出することにより強度が
向上する。このような析出による合金の強化効果は、実
施例の項で述べるようにNb単独では2wt%Nbの添加が必
要であり、MoとNbとの複合添加では、Nb+Mo≧1.5wt%
とするのが好ましい。
Moは0.15〜0.6%が好ましい。また、Nbは1.5〜2.5%が
好ましい。
(時効処理の効果) Sn添加により非平衡相の発生は抑制されるが、冷却速度
が速い溶接条件下では、なお非平衡相が残存する場合が
ある。そこで610℃以下の温度範囲で時効処理を施すこ
とにより、非平衡相は、この温度範囲で安定なα−Zr相
とβ−Nb相並びにMo2Zr金属間化合物とに分解し、実質
的に非平衡相が残存しない溶接部及び熱影響部の金属組
織にすることができる。よつて溶接後時効処理を施すこ
とにより、α相Zr中に固溶するNb量の上限値(第3図の
AA′線)よりNb添加量を0.5wt%程度増加させても溶接
部及び熱影響部の耐食性は低下しない。溶接部及び溶接
熱影響部はNbを過飽和に固溶した非平衡相が形成するの
で、溶接したままでは耐食性が低い。従つて、溶接後時
効処理又は冷間加工と時効処理により耐食性を改善でき
る。
以上述べた本発明の内容は、第4図に示すように要約す
ることができる。Sn添加量の増加に伴い、α相Zr中に固
溶するNb量が増加するのでNb量も高くすることができ
る。時効処理を施さない場合Nbの最大添加量は2.5wt%
であり、時効処理を施す場合最大3.0wt%まで増加させ
ることができる。Snの最大添加量は2wt%であり、それ
以上の添加は効果がない。Nb添加量の下限は、1.0wt%
(時効処理なし)及び1.5wt%(時効処理あり)であ
る。この理由は、Nbを1.0wt%〜1.5wt%固溶したα−Zr
相が最も高い耐食性を有するからである。Mo添加量は、
Nb+Mo添加量が1.5wt%以上となるように添加される。N
b+Moが3wt%を越えると合金が著しく硬くなり加工性が
低下するので、好ましくは、Nb+Mo量≦2.5wt%である
ことが好ましい。
前述したように第3図よりSnを添加しない場合はα相Zr
中へのNb固溶量は最大1.5wt%であるが、Snを添加する
ことによりα相Zr中へのNb固溶量はA′−A線に沿つて
増加し、2wt%のSn添加により最大2.5wt%のNbをα相中
に固溶できることがわかる。Snを1wt%添加すると2.0w
%のNbがα相Zr中に固溶できる。α相Zr中へのMoの固溶
度はNbより低く、700℃において約0.2wt%であり、Sn量
を増加させてもNbの固溶量は増加しない。よつて、Sn:
1.0〜2.0w%,Nb:1.5〜2.5wt%,Mo0.2wt%、又は0.2〜0.
5wt%の合金を725℃前後の温度範囲に所定時間保持する
ことにより、α−Zr相単相あるいは金属間化合物相Mo2Z
rとα−Zr相からなる金属組織となることがわかる。こ
の熱処理温度範囲は650〜780℃であり特に、700℃〜735
℃が好ましい。
冷間加工性を低下させる非平衡相針状組織は、高温で生
成したNb,Moを固溶したβ相Zrが急冷されることにより
形成されるが、上記、熱処理(725℃前後に加熱)後急
冷すると、β相→α相への変態を伴わないので、針状組
織の発生は防止できる。この熱処理を以後αクエンチと
記す。冷却速度は、10℃/s以上が好ましい。かかる熱処
理を施した合金の金属組織は、丸みを帯びた等軸晶α−
Zr相の結晶粒からなり、高い冷間加工性を有している。
かかる熱処理を施した後、冷間加工を行うと、強加工が
可能となり、製造プロセスにおいて、冷間加工回数を大
幅に減少させることができる。
一方、等軸晶α−Zr相からなる金属組織を有する合金の
強度は低下する。よつて最終冷間加工の後に、α+β相
あるいはβ相単相となる790℃以上の温度範囲に加熱
後、急冷する熱処理を施すことにより、針状組織を含む
金属組織となり、強度を高めることができる。急冷のま
まの状態では、β相中でのNb固溶量が高く、耐食性が低
下するので、400℃〜610℃の時効処理を施し、βNb相を
析出させ、非平衡相中のNb量を低下させることにより耐
食性も良好となる。時効温度は、480〜530℃が好まし
く、時効処理時間は24h前後が好ましい。最終冷間加工
の前に、790℃以上の温度範囲に加熱し、冷間加工と時
効処理とを施すことにより、耐食性改善効果はより顕著
となる。これは、冷間加工時に導入された転位が析出位
置となるため、400℃〜600℃の時効処理時にβNb相の析
出が促進される。
第5図は本発明による製造プロセスの一例を示す。溶解
インゴツトは熱間鍛造によりスラブに整形し、β相温度
範囲で溶体化処理後、熱処理圧延する。その後、650℃
〜780℃の温度範囲に30分〜20時間保持し10℃/s以上の
冷却速度で室温まで冷却するαクエンチ処理を施す。熱
間圧延温度を650℃〜780℃とし熱間圧延ロール出口部に
水スプレーカーテンあるいはアルゴンガス等不活性ガス
吹出し部を設け、熱間圧延直後の板材を急冷することに
よつても、αクエンチと同様な効果が得られる。αクエ
ンチあるいは熱間圧延後急冷する処理により冷間加工性
の高い板材となる。その後加工と500℃〜780℃(再結晶
温度)での焼まなし処理とを交互に繰返すことにより板
厚を減少させる。引き続いて、強度を回復させるため
に、α相結晶粒界にβ相が生成する温度以上(790℃以
上)に板材を加熱し、急冷する(好ましくは平均冷却速
度10℃/秒以上で室温まで冷却する)熱処理を施す。こ
の処理をβクエンチと記す。1100℃以上の加熱は、β−
Zr相結晶粒の粗大化をひきおこすので、加熱温度範囲は
790℃〜1100℃が好ましい。直前の熱処理である焼なま
しを省略し、冷間加工後直ちにβクエンチを行つてもよ
い。
βクエンチされた板材を用いて溶接,切断,曲げ加工、
等により部材として組立てる。溶接部の耐食性を回復さ
せるために、部材組立て後、時効処理を施すか、あるい
は、溶接ビードに10%前後の冷間加工を施した後時効処
理を施す。以上述べた製造プロセスで製造された、部材
は高強度を有し、洋接部の耐食性も高く、かつ製造プロ
セス中の冷間加工も容易である。
〔実施例〕
実施例1 第6図は本発明に係る燃料集合体の部分断面図であり、
一例として沸騰軽水型原子炉用のものである。
沸騰型水型原子炉に使用される本発明に係る燃料集合体
1は、多数の棒2,上部タイプレート3,下部タイプレート
4,平板状各筒型チヤンネル・ボツクス5(以下チヤンネ
ル・ボツクスという)およびスペーサ6から成つてい
る。燃料棒2の両端は、上記タイプレート3および下部
タイプレート4によつて保持され、上部タイプレート3
と下部タイプレート4はタイプロツド(図示せず)によ
つて連結されている。燃料棒2の軸方向には幾つかのス
ペーサ6が挿入され、燃料棒2相互間に間隙ができるよ
うに燃料棒2を保持している。この間隙は冷却材の流路
7となる。前述のように構成された多数の燃料棒2は、
チヤンネル・ホツクス5の中に挿入される。チヤンネル
・ボツクス5の上端は上部タイプレート3に固定され
る。下部タイプレート4の一部はチヤンネル・ボツクス
5の下方に挿入され、下部タイプレート4とチヤンネル
・ボツクス5の下部とはとまり嵌めに近い状態で接して
いる。
冷却材は、下部タイプレート4から燃料集合体1内に流
入し、流路7を上昇しながら燃料棒2を冷却し、上部タ
イプレート3より流出する。原子炉の炉心部には多数の
燃料集合体が存在し、燃料集合体間には間隙が有りこの
間隙にも冷却材が存在する。原子炉の運転中、燃料集合
体1内の冷却材の圧力と燃料集合体1外の冷却材の圧力
を比較すると内部の圧力が高い状態にある。
なお、加圧水型原子炉用の燃料集合体においてはチヤン
ネルボツクスが設けられていない。
本実施例では図に示すチヤンネルボツクス5の例を示
す。
第1表に示す合金をアーム溶接によつてインゴツトを製
造し、熱間鍛造後、1000℃で加熱後水冷する液体化処理
した後、熱間圧延を繰返すことにより厚さ10mmの板材と
した。この板材を980℃で再び同様に溶体化処理し、冷
間圧延(板厚減少率40%)と650℃での焼なましとを交
互に3回繰返すことにより厚さ2.2mmの板材とした。こ
の板材を830℃に加熱し1時間保持した後、Arガスを吹
付けることにより平均冷却速度50℃/sで室温まで冷却し
た。板材をコの字型に曲げ加工し、第7図に示すように
コの字状に曲げ加工した薄板をプラズマ溶接し角筒状の
チヤンネルボツクスを組立てた。プラズマ溶接後、ビー
ドを平坦化する冷間塑性加工を施した。その後、500℃
で24時間の時効処理を施した。
プラズマ溶接直後の角筒及び時効処理終了後の角筒よ
り、溶接部を含む試験片を切り出し、金属組織観察及び
腐食試験に供した。
第2表は、溶接部の金属組織を示す。No.1合金は、溶接
材,溶接時効材のいずれにおいても非平衡相を含まな
い。No.2合金は、溶接のままではα′相Zr(非平衡相)
を含むが、溶接後時効処理することにより非平衡相は消
失する。No.3合金は、溶接材,溶接時効材ともに非平衡
相が残存する。Snを含まないNo.4のZr−2.5Nb合金にお
いては、No.3合返より多量の非平衡相が残存していた。
この非平衡相は、時効処理によつても消失しない。
第3表は、各試験片を288℃の高温水中に300時間保持す
る腐食試験結果を示す。高温水中の溶存酸素は5−8ppm
であり、オートクレーブ中の高温水は10/hで循環させ
た。
表中○印は酸化膜厚さが1μm以下であり光沢のある黒
色の酸化膜が形成されたことを示し、耐食性は高い。
△印は、灰色の光沢のない酸化膜が形成されたことを示
し酸化膜厚さは1〜3μmであつた。耐食性はやや劣
る。
×印は白色のポーラスな酸化膜が形成されたことを示
し、酸化膜厚さは4μm以上となる。耐食性は低い。
No.1合金においては、溶接部,熱影響部ともに黒色の薄
い酸化膜が形成され、良好な耐食性を示した。No.2合金
においては、溶接材の熱影響部において灰色の光沢のな
い酸化膜が形成されやや耐食性が低下したが、時効処理
を施すことにより耐食性は良好となる。No.3,4合金の耐
食性は低く時効処理を施しても耐食性は良好とはならな
い。No.3合金の耐食性はNo.4合金より優れており、Snを
添加した効果である。No.1及び2合金は、No.4合金と同
等な引張強さを有し強度,耐食性ともに優れた合金であ
ることがわかつた。
実施例2 第7図は、BWR用チヤンネルボツクスの製造プロセスで
ある。
実施例1に示したNo.1及び2に示す合金を同様に溶解及
びアーク溶解インゴツトは熱間鍛造し、スラブとした。
980℃に2時間保持する溶体化処理を施した後、650℃〜
750℃の温度範囲で熱間圧延し、厚さ9.5mmの板とした。
この板を710℃±20℃に2時間保持し水スプレー吹きつ
けにより室温まで冷却した(αクエンチ)。冷却速度は
約30℃/sであつた。板厚減少率約40%の冷間圧延と、55
0,2時間の焼なましとを3回交互に繰返すことにより厚
さ2mmの板とした。圧延材長さ4200mmに切断し、850℃の
温度に1時間保持後、水スプレー冷却より室温まで冷却
した(βクエンチ)。βクエンチ時に付着した表面酸化
を除去した後、コの字状の曲げ加工を行い、2個の曲げ
加工材をつき合せて溶接を行つた。溶接後、溶接ビード
の凸部をロールにより押しつぶす加工により平坦し、50
0℃,24時間の時効処理を施した。本製造プロセスにより
製造されたチヤンネルボツクス長手方向の引張試験片を
切り出し、強度を測定したところ、No.1;0.2%耐力,75k
gf/mm2,引張強さ89kgf/mm2,絞り57%、No.2;0.2%耐力,
68kgf/mm2,引張強さ58kgf/mm2,絞り70%であり、いずれ
もジルカロイよりも高強度を有していることがわかる。
最終の時効処理を施さなかつたチヤンネルボツクス及び
時効処理を施したチヤンネルボツクス溶接部より試験片
を切り出し、温度280℃,圧力85kgf/mm2の高温高圧水蒸
気中に500時間保持した。その結果、時効処理を施さな
かつた試験片では、溶接部及びその熱影響部に白色の厚
い酸化膜が形成され耐食性が低かつたのに対し、時効処
理した試験片では均一な黒色の薄い酸化膜が形成され高
い耐食性を示した。
実施例3 第8図は、原子炉用燃料スペーサーの形状を示し、第9
図はスペーサーの製造プロセスを示す。
スペーサ1の形状は第8図(a)の平面図及び(b)の
側面図に示すように、スペーサバンド10,格子状スペー
ザバー11,スペーサデバイダー12、及びスペーサスプリ
ング13からなり、格子点及びスペーサバー11とスペーサ
バンド10とはスポツト溶接されている。
熱間圧延により厚さ10mmの板とした後、再度熱間圧延す
ることにより厚さ3mmの板とした。この時、熱間圧延ロ
ールより送り出される板に水を吹きつけ急冷した。圧延
温度は730℃±20℃とした。40〜45%の冷間圧延と600
℃,2時間の焼なましとを交互に3回繰返すことにより厚
さ0.6mmの板とした。表面酸化膜等のよごれを除去した
後この板より打抜き加工により、第10図に示すスペーサ
バンド用板10及びスペーサーバンド用板を加工した。ス
ペーサーバンドには、第10図(b)に示すようにデイン
プル加工15及び曲げ加工を施した。スペーサバンド用板
には第10図(c)に示すように曲げ加工を施した。
インコネル製のランタンスプリングと共に組立て加工を
行い、所定の位置をTIG溶接し、第8図に示すスペーサ
を組立てた。組立て終了後、860℃に加熱しArガスによ
り急冷する熱処理を施し、500℃,24時間の時効処理を施
した。このスペーサを実施例2と同様な腐食試験に供し
たところ白色の加速腐食は発生せず、高い耐食性を有し
ていた。その後、材料中に吸収された水素量を測定した
ところ約10%以下の低い水素吸収率であることもわかつ
た。
以上のプロセスは、格子状スペーサーバーあるいは格子
状スペーサデバイダーの代りに燃料棒の外径より内径の
大きい当該Zr基合金の短い管(セル)を8×8に正方配
列し、それぞれのセルに燃料棒が挿入されることによつ
てスペーサとして機能を果す、丸セル型スペーサにおい
ても上記と同様の効果が得られる。
〔発明の効果〕
本発明によると高強度でかつ耐食性の高い部材が得ら
れ、これを軽水炉又は加圧水型炉用原子力燃料集合体に
用いることにより溶接部での耐食性低下が生ぜず、高燃
焼度運転においても高い信頼性が得られる。
更に、本発明に係る部材は核燃料廃棄物を硝酸溶液で処
理する容器材等としても使用でき、その溶接部での耐食
性低下が生ぜず、高い信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、830℃から急冷したZr−Nb合金の金属組織を
示す顕微鏡写真、第2図は、第1図金属組織を模式的に
示した図、第3図は、Zr−Nb−Sn3元合金の平衡状態
図、第4図は、本発明における合金組成範囲を示す線
図、第5図は、本発明の合金部材の製造プロセスの1例
を示すフローチャート、第6図は本発明に係る原子力燃
料集合体の部分断面図、第7図は本発明の製造プロセス
による原子炉用チヤンネルボツクスの製造工程を示すブ
ロツク図、第8図は本発明の一応用例を示す原子炉用ス
ペーサの平面図及び側面図、第9図はそのスペーサの製
造工程を示すブロツク図、第10図はスペーサの製造工程
を示す部品の平面図である。 10……スペーサバンド、11……スペーサバー、 12……スペーサデバイダ、13……スペーサスプリング、
14……溶接部、15……デンプル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G21C 3/34 (72)発明者 国谷 治郎 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 梅原 肇 茨城県日立市幸町3丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内 (72)発明者 牧 英夫 茨城県日立市幸町3丁目1番1号 株式会 社日立製作所日立工場内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量で、Sn0.5〜2.0%,Nb1.0〜2.5%及びM
    o1.0%以下含有し、残部が実質的にZrからなるジルコニ
    ウム基合金部材であつて、該部材の溶接部及びその熱影
    響部は、六方晶α−Zr相の結晶粒界及び粒内に面心立方
    晶β−Nb相及び体心立方晶金属間化合物相Mo2Zrが微細
    に析出し、実質的にNbを過飽和に固溶したβ−Zr相及び
    ω−Zr相を含まない金属組織からなり、高温水環境下で
    前記溶接部に白色の腐食が生じないことを特徴とするジ
    ルコニウム基合金部材。
  2. 【請求項2】多数の燃料棒、該燃料棒の両端を保持する
    上部及び下部タイプレート、該上部及び下部タイプレー
    ト間に設けられ前記燃料棒を所定の間隔で配列するスペ
    ーサ、前記燃料棒,上部及び下部タイプレート及びスペ
    ーサを収納する角筒からなるチヤンネルボツクス及び前
    記燃料棒の全体を一体に搬送するハンドルを備えた原子
    力燃料集合体において、前記スペーサ又は/及び前記チ
    ヤンネルボツクスを構成する特許請求の範囲第1項に記
    載のジルコニウム基合金部材。
  3. 【請求項3】重量で、Sn0.5〜2.0%,Mo1.0%以下及びNi
    1.0〜2.5%を含有し、残部が実質的にZrであるジルコニ
    ウム基合金からなる部材の製造法であつて、該部材を最
    終冷間加工後にβ相を有する温度で加熱後急冷するβエ
    ンチを施し、溶接した後、所望の温度で時効処理を行な
    い、該溶接部及びその熱影響部が六方晶のα−Zr相結晶
    粒界及び粒内に面心立方晶β−Nb相及び体心立方晶金属
    間化合物相Mo2Zrが微細に析出し、実質にNbを過飽和に
    固溶したβ−Zr相及びω−Zr相を含まない金属組織とす
    ることを特徴とするジルコニウム基合金部材の製造法。
  4. 【請求項4】前記時効処理温度は500〜610℃である特許
    請求の範囲第3項記載のジルコニウム基合金部材の製造
    法。
  5. 【請求項5】前記溶接後熱処理前に少なくとも前記溶接
    部を冷間塑性加工する工程を含む特許請求の範囲第3項
    又は第4項に記載のジルコニウム基合金部材の製造法。
  6. 【請求項6】重量で、Sn0.5〜2.0%,Nb1.0〜2.5%及びM
    o1.0%以下を含有し、残部が実質的にZrであるジルコニ
    ウム基合金部材の製造法であつて、 (1)最終熱間塑性加工後、650〜780℃の温度で加熱後
    急冷するαクエンチを施し、Nbを過飽和に固溶したβ−
    Zr相,ω−Zr相を実質的に含まないα−Zr相,金属間化
    合物Mo2Zr及び平衡相のβ−Nb相を形成する工程、 (2)前記(1)の熱処理後、冷間塑性加工と焼まなし
    とを交互に繰返す工程、 (3)最終冷間圧延後に、β相を有する温度範囲に加熱
    後急冷するβクエンチの熱処理を施す工程、及び (4)上記(3)の熱処理後、該部材の溶接を行い、次
    いで所望の温度で時効処理を施し、前記溶接部及びその
    熱影響部にα−Zr相の結晶粒界及び粒内にβ−Nb相が析
    出し、実質的にNbを過飽和に固溶したβ−Zr相及びω−
    Zr相を含まない組織とすることを特徴とするジルコニウ
    ム基合金部材の製造法。
  7. 【請求項7】前記(3)の熱処理を前記αクエンチ直後
    の冷間加工後で、かつ最終冷間圧延前のいずれかの工程
    に挿入し、最終冷間圧延後、前記(4)の溶接及び時効
    処理を施し、かつ溶接後前記(3)の熱処理を行わない
    特許請求の範囲第6項記載のジルコニウム基合金の製造
    法。
  8. 【請求項8】前記部材を650℃〜780℃の温度範囲で熱間
    圧延し、10℃/s以上の冷却速度で冷却した後、前記
    (2),(3)及び(4)の加工及び熱処理を施す特許
    請求の範囲第6項又は第7項記載のジルコニウム基合金
    部材の製造法。
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