JPH0684066U - 補助シール部材を有する膨張黒鉛製ガスケット及び密封機構 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 実装時の締付け力で環状膨張黒鉛成形体の一
部が食み出すのを阻止できるうえ、膨張黒鉛の高温使用
による酸化消耗を抑制して良好なシール性能を長期にわ
たって確保する。 【構成】 環状膨張黒鉛成形体１の内周面１ｃおよび外
周面１ｄ側にそれぞれ僅かに延出する内周および外周側
折曲縁部３ａ，３ｂを有する金属製補助シール部材３を
嵌着し固定してなる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、圧力容器、流体機器などや、特にバルブの軸封用として好適に使用 される補助シール部材を有する膨張黒鉛製ガスケット及び該膨張黒鉛製ガスケッ トを使用してなる密封機構に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

この種のガスケットは、膨張黒鉛テープを環状に積層し巻回した状態で軸心方 向から圧縮力を加えることによって得られる環状膨張黒鉛成形体からなり、パッ キンとしては、圧力容器などの内周に収容された状態でリテーナリングなどの位 置決め・固定用部材を介して軸心方向から締め付け固定されるものである。

【０００３】 この膨張黒鉛製ガスケットは、適当な柔軟性ならびに黒鉛がもつ自己潤滑性な どの特性を活用できる点で高い評価を受けているが、酸化雰囲気中で約４００℃ 以上の高温に置いたとき、酸化減量を生じるため、使用温度に制約があった。ま た、膨張黒鉛のみで構成する場合は、上記のように締め付け固定された際に、環 状膨張黒鉛成形体の軸心方向の端面がリテーナリングなどの位置決め・固定用部 材と圧力容器の内周との隙間に食み出すことがあり、その結果、応力緩和によっ てシール特性の低下をもたらす欠点があった。

【０００４】 このため、従来、膨張黒鉛材料の食み出しを防止する手段として、例えば実公 昭６３−２９９７２号公報に示されているような構成の膨張黒鉛製ガスケットが 提案されている。すなわち、食み出しによる応力緩和が発生しないようにした従 来のガスケットは、図７に示すように、環状膨張黒鉛成形体１の軸心方向（締付 け方向）の両端面１ａ，１ｂに金属細線製編物シート６１，６１をそれぞれ添着 固定してなるものである。このような膨張黒鉛製ガスケットは、図８に示すよう に、圧力容器１１内の軸孔部に蓋１２を挿通させ、この蓋１２のガスケット接触 面１４と、該ガスケット接触面１４に対向させて蓋１２に外嵌させたリテーナリ ング１３との間に介在されて引張りボルト１５を介して軸心方向から締付け固定 することにより、上記圧力容器１１の内周面および蓋１２の外周面にそれぞれ密 着され両者１１，１２間を封止するように使用される。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

上記したような構成の従来の膨張黒鉛製ガスケットは、金属細線製編物シート ６１，６１により、締付け時の環状膨張黒鉛成形体１の軸心方向への食み出しを 防止できるものの、対応できる圧力容器１１とリテーナリング１３との隙間Ｇは 小さく、その隙間Ｇからも大気側の空気（酸素）が上記金属細線製編物シート６ １を通って環状膨張黒鉛成形体１に侵入して、４００℃以上の高温条件下では、 酸化作用によって経時的に膨張黒鉛の体積減少が進み易く、早期のうちにシール 機能が低下する傾向があった。

【０００６】 本考案は上記実情に鑑みてなされたもので、膨張黒鉛成形体の内周面や外周面 に金属製の補助シール部材を設けることによって、ガスケット周辺部材の隙間の 拡大に対しても食み出しを有効に防止するとともに、大気側からの空気の侵入を 防止して膨張黒鉛成形体の高温酸化による体積減少をなくして、４００℃以上の 高温で使用するときにも長期にわたって良好なシール機能を保持することができ る補助シール部材を有する膨張黒鉛製ガスケット及び密封機構を提供することを 目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、本考案に係る膨張黒鉛製ガスケットは、環状膨張 黒鉛成形体の軸心方向の端面に、上記環状膨張黒鉛成形体の内周面および外周面 側にそれぞれ僅かに延出する内周側折曲縁部および外周側折曲縁部をもった金属 製補助シール部材を嵌着し固定したものである。

【０００８】 特に、上記環状膨張黒鉛成形体の軸心方向の両端面にそれぞれ上記金属製補助 シール部材を嵌着し固定することが望ましい。

【０００９】 また、上記補助シール部材は、環状膨張黒鉛成形体の一端面または両端面の内 周面と外周面のいずれか一方に嵌着し固定してもよい。

【００１０】 さらに、本考案に係る密封機構は、上記膨張黒鉛製ガスケットの軸心方向の端 面の一方または両方に接する圧縮用部材に、上記補助シール部材を設けたもので ある。

【００１１】

【作用】

本考案の補助シール部材を有する膨張黒鉛製ガスケットによれば、当該ガスケ ットを、たとえば圧力容器内に、その軸心方向端面に嵌着した補助シール部材側 を大気側にして蓋に挿入し、ネジや割りリングなどによって位置決めされたリテ ーナリングを介して上記蓋を引張りボルトによって軸心方向から締付けると、膨 張黒鉛成形体が圧縮されて補助シール部材は径方向の内方および外方へ変形して 圧力容器の内周面と蓋の外周面とに密着し、両者が封止される。この時、環状膨 張黒鉛成形体に締付け力が作用するが、上記補助シール部材による端面規制によ り環状膨張黒鉛成形体の一部が軸心方向へ食み出すのが防止され、さらに、上記 補助シール部材の存在によって大気側から空気が侵入することが阻止されるので 、４００℃以上の高温条件で使用するときにも、膨張黒鉛の酸化による体積減少 が抑制され、シール性を長期間に亘って良好に維持することが可能である。

【００１２】 特に、環状膨張黒鉛成形体の軸心方向の他方の端面、つまり流体側の端面にも 上記金属製補助シール部材を嵌着し固定する場合は、酸素注入流体を扱う使用状 況下であっても、その酸素が環状膨張黒鉛成形体に侵入することが阻止されて該 成形体の体積減少を抑制することができる。

【００１３】 また、本考案の密封機構によれば、圧縮用部材を圧縮操作していくだけで、該 圧縮部材に設けられた補助シール部材が圧縮されて径方向の内方および外方へ変 形して圧力容器の内周面と蓋の外周面とに密着し、両者を上記と同様に封止する ことが可能である。

【００１４】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 図１は本考案の一実施例として、断面が略角形の膨張黒鉛製ガスケットに適用 したものを示す半縦断面図であり、図７に示す従来例と同一の構成要素には、同 一の符号を付して、それらの説明を省略する。

【００１５】 図１において、３は金属製、たとえばステンレス鋼で、厚さ０．０５ｍｍ程度 の薄板からなり、内外周用を一体として制作したリング状の補助シール部材であ り、環状膨張黒鉛成形体１の内周面１ｃおよび外周面１ｄ側にそれぞれ僅かに延 出する内周および外周側折曲縁部３ａ，３ｂを有する。この補助シール部材３は 、その内周および外周側折曲縁部３ａ，３ｂがそれぞれ環状膨張黒鉛成形体１の 内周面１ｃおよび外周面１ｄに対して略面一となるように、上記環状膨張黒鉛成 形体１の軸心方向の一方の端面１ａに嵌着し固定されている。

【００１６】 このように構成されたガスケットは、たとえば圧力容器の軸封用として、図２ のように使用されるもので、上記補助シール部材３側を大気側にして蓋１２に挿 入し、リテーナリング１３で固定し、引張りボルト１５で軸心方向から締付けら れる。 図２についても、図８で示す従来例と同一部所には、同一符号を付して、それ らの説明を省略する。

【００１７】 上記引張りボルト１５による締付け力により上記金属製補助シール部材３が変 形して圧力容器１１の内周面と蓋１２の外周面とに密着し、両者１１，１２間に シール機能が付与される。この時の締付け力は環状膨張黒鉛成形体１に作用する が、この環状膨張黒鉛成形体１の端面１ａに固定した金属製補助シール部材３が 規制板として働き、該成形体１の一部が圧力容器１１の内周面とリテーナリング １３の外周面との隙間Ｇなどに食み出すことが有効に防止され、そのため、上記 封止機能が長期に亘り良好に維持される。

【００１８】 また、上記大気側の空気が上記隙間Ｇからガスケット側に侵入しようとしても 、金属製補助シール部材３により環状膨張黒鉛成形体１の内外周のコーナ部１ｅ ，１ｆが覆われているので、上記空気の侵入が阻止されて上記成形体１における 膨張黒鉛が酸化して消耗する恐れが解消され、高温の使用条件でも長期に亘って 高いシール性能が発揮される。

【００１９】 図３は本考案による膨張黒鉛製ガスケットの試料を圧力容器の軸封部に実装し 、環状膨張黒鉛成形体１の重量変化を確認した結果を、従来品のそれと対比して 示す図である。 ここでは、加速試験として圧力容器１１と蓋１２との隙間Ｇを、一般的に使用 されるＪＩＳ Ｂ０４０１のスキマバメ程度にした標準隙間と、それよりも＋０ ．６ｍｍ、＋０．９ｍｍにそれぞれ拡大し、試験温度を６００℃とした際の例を 示している。図３中の折線ａ，ｂはそれぞれ本考案品による標準隙間適用時およ び拡大隙間適用時の特性、折線ｃ，ｄはそれぞれ従来品による標準隙間適用時お よび拡大隙間適用時の特性である。 この図３の特性から明らかなように、本考案品は大気側隙間Ｇが標準の時は６ ００℃の加速試験の条件で熱減量がほとんど無いばかりか、隙間Ｇを拡大した不 利な条件下でも、熱減量が少なく、膨張黒鉛の酸化が有効に防止されることが判 った。

【００２０】 図４は上記本考案品に対して行なった耐水圧試験の結果を、従来品のそれと対 比して示す図であり、同図中の折線αは本考案品の耐水圧特性、折線βは従来品 の耐水圧特性である。 この図４の特性から明らかなように、本考案品では上記隙間の増加量が大とな っても、最終耐水圧力を高いレベルに維持できることが判った。

【００２１】 図５は本考案の他の実施例を示し、環状膨張黒鉛成形体１の軸心方向の両端面 １ａ，１ｂにそれぞれ厚さ０．２ｍｍ程度の金属製補助シール部材３，３を嵌着 し固定したものである。この他の実施例による場合は、上記実施例と同様の効果 が発揮されるうえ、内部流体に酸素が溶存している使用状況下でも対応可能とな る。

【００２２】 例えば、ボイラーなどの配管系では管内スケールの生成による配管抵抗の増大 や給水ポンプに対する負荷の増大などが問題となっており、最近では、この管内 スケールの生成を抑制するため、給水処理方法として、流体内に積極的に酸素を 注入する酸素処理法が案出されている。その場合、上記ガスケットにとっては、 流体側も酸化性雰囲気となり、そのままでは、環状膨張黒鉛成形体１の酸化の恐 れが大きい。ここで、上記のように、環状膨張黒鉛成形体１の軸心方向の他方の 端面１ｂにも、上記金属製補助シール部材３を設けたガスケットを使用すること により、酸素注入流体の膨張黒鉛成形体１への侵入が阻止されるので、酸素処理 法が適用される配管系のシールとして支障なく使用することが可能となる。

【００２３】 また、図６は本考案の密封機構を示す半縦断面図であり、上記の膨張黒鉛製ガ スケットの軸心方向の端面に接して、このガスケットを圧縮する圧縮用部材であ るリテーナリング１３の内外両周面にそれぞれ補助シール部材３Ａ，３Ｂを嵌着 し固定したものである。この場合も上記各実施例と同様に、環状膨張黒鉛成形体 １の食み出し防止により、封止機能が長期に亘り良好に維持される。なお、この 実施例においても、補助シール部材をリテーナリング１３の内外周面のいずれか 一方にのみ設けてもよい。

【００２４】 なお、上記各実施例では、膨張黒鉛成形体１の断面を略角形とし、金属製補助 シール部材３として、ステンレス鋼の薄板を使用したもので説明したが、ガスケ ットの断面形状や補助シール部材３の材質や厚さなどは任意に変更できるもので あり、たとえば、ガスケットの断面は丸形、長方形、六角形、クサビ形など任意 の形状に対応することが可能である。また、補助シール部材３の材質についても チタンなどを使用すれば、耐蝕性や強度の向上も同時に期待することができ、板 厚についてもガスケットの大きさや使用条件に合わせて任意に設定できるもので ある。

【００２５】

【考案の効果】

以上のように、本考案の請求項１によれば、環状膨張黒鉛成形体の軸心方向の 端面に、内周側折曲縁部および外周側折曲縁部を有する金属製補助シール部材を 嵌着し固定することにより、圧力容器などに実装された際の締付け力で環状膨張 黒鉛成形体の一部が上記端面から食み出すことを防止できるのはもちろん、大気 側の空気が侵入することを阻止できるので、膨張黒鉛の酸化消耗による体積減量 がなく、初期のシール性能を４００℃以上の高温条件下においても長期に亘って 良好に維持することができる。

【００２６】 また、請求項２によれば、環状膨張黒鉛成形体の軸心方向の他方の端面にも金 属製補助シール部材を嵌着し固定することにより、酸素注入流体を扱う使用態様 においても、膨張黒鉛の酸化消耗を抑制し、シール性能の保持効果を一層高める ことができる。

【００２７】 さらに、請求項４によれば、膨張黒鉛製ガスケットを軸心方向から圧縮するた めの圧縮用部材に補助シール部材を設けているので、その圧縮用部材を圧縮操作 するだけで、上述と同様にシール効果を発揮させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例による膨張黒鉛製ガスケット
を示す半縦断面図である。

【図２】同実施例における膨張黒鉛製ガスケットを圧力
容器の軸封用として実装した状態を示す縦断面図であ
る。

【図３】同実施例における膨張黒鉛製ガスケットの重量
変化を従来品のそれと対比して示す特性図である。

【図４】同実施例における膨張黒鉛製ガスケットの耐水
圧試験結果を従来品のそれと対比して示す特性図であ
る。

【図５】本考案の他の実施例による膨張黒鉛製ガスケッ
トを示す半縦断面図である。

【図６】本考案の密封機構を示す半縦断面図である。

【図７】従来の膨張黒鉛製ガスケットを示す半縦断面図
である。

【図８】従来の膨張黒鉛製ガスケットを圧力容器の軸封
用として実装した状態を示す半縦断面図である。

【符号の説明】

１ 環状膨張黒鉛成形体 １ａ，１ｂ環状膨張黒鉛成形体の端面 １ｃ 環状膨張黒鉛成形体の内周面 １ｄ 環状膨張黒鉛成形体の外内周面 １ｅ，１ｆ 環状膨張黒鉛成形体のコーナ部 ３ 金属製補助シール部材 ３ａ 金属製補助シール部材の内周側折曲縁部 ３ｂ 金属製補助シール部材の外内周側折曲縁部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 藤原 優 兵庫県三田市下内神字打場541番地の１ 日本ピラー工業株式会社三田工場内

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 環状膨張黒鉛成形体の軸心方向の端面
   に、上記環状膨張黒鉛成形体の内周面および外周面側に
   それぞれ僅かに延出する内周側折曲縁部および外周側折
   曲縁部をもった金属製補助シール部材を嵌着し固定した
   ことを特徴とする補助シール部材を有する膨張黒鉛製ガ
   スケット。
2. 【請求項２】 上記環状膨張黒鉛成形体の軸心方向の両
   端面にそれぞれ上記金属製補助シール部材が嵌着し固定
   されている請求項１の補助シール部材を有する膨張黒鉛
   製ガスケット。
3. 【請求項３】 上記環状膨張黒鉛成形体の補助シール部
   材が環状膨張黒鉛成形体の一端面または両端面の内周面
   と外周面のいずれか一方に嵌着し固定されている請求項
   １の補助シール部材を有する膨張黒鉛製ガスケット。
4. 【請求項４】 上記膨張黒鉛製ガスケットの軸心方向の
   端面の一方または両方に接する圧縮用部材に、上記補助
   シール部材を設けたことを特徴とする密封機構。