JPH0683927B2 - 切削工具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は切削除去の機械工作用、即ち切粉出し切削工具
に関する。該工具は柄部分をもつ工具本体と、少くとも
一つの切削溝（チップ溝）と、工具本体の先端工作部に
設けた少くも一つの植刃着座部分と、切削植刃とにより
形成されている。切削部は工具の先端工作部に組付けら
れた少くとも二個の切削植刃（インサート）を有し、そ
の植刃の一つ（半径方向内位の植刃）は他方の（外位
の）植刃に比し硬さの異なる、具体的には相対的に軟質
の材料から作られたものである。各切削植刃の切刃線は
実質的に連続的に相互に接続している。

（従来の技術） ドリルの先端工作部に二個の切削植刃をロー付け（蝋付
け）したものはこれまで知られており、このドリルはド
リルの半径方向に配置された切刃に沿って均一の硬さを
もつ植刃を具備したものである。両切削植刃の材質はド
リル中心先端に生ずる圧縮応力に対し優れた抵抗力を示
す軟質材料とドリル周辺に生ずる高切削速度に優れた抵
抗力を示す硬質材料との間の中間的硬さの同じ材料が使
用される。このようにして選ばれた切削植刃の材質は圧
縮応力に対しても可成りの抵抗力を示すと同時に高速度
切削にも可成りの抵抗力を有するが、ドリルの切削切刃
は最適な耐用寿命を発揮することは出来ない。二個の切
削植刃間のロー付け接合継目部がドリルの中心部に配置
されるために、この中心部分の強度が減少する。

（発明の解決しようとする課題） 本発明の目的は最良の切削性能を発揮させるように複数
の植刃に相対的に異なる硬度を有する切削工具を提供す
ることにある。

他の目的は切削植刃間にいくつかの接合継目部を設けて
ロー付け効果を最適に発揮させることにある。

更にもう一つの目的は前述した植刃間の接合継目部を被
加工素材表面に対して強い衝撃を与えないように設ける
ことである。

これらの目的およびその他の目的は本発明に係る切削工
具によって達成される。

以下添付図面を参照してより一そう詳細に本発明を述べ
るが、これにより本発明の特徴とする性質及び利点がよ
り一そう明らかにされる。

（実施例） 本発明に係るドリル10は第１図乃至第６図に示される。
ドリル10はドリル本体部11と切削部12とから成る。ドリ
ル本体部11は大体において円柱形状の基本的形状をな
す。ドリル本体部11は螺旋状切屑溝13と14、固定部15と
先端工作部16とを具備する。先端工作部16にはドリルの
中心線CLに垂直をなす略平坦な第一の支持表面17が形成
される。また該先端工作部16にはドリル本体部の中心部
に一個の中心溝部が形成され、この中心溝部の壁面18と
19は上記支持表面17に垂直である。上記中心溝部はドリ
ル本体部の中心C_Dに対し偏位し該中心溝部の中心C_Sがド
リル本体部の中心C_Dに対し或るわずかな間隔ｄを置いて
形成される。上記中心溝部の壁面18と19は略平坦な第２
の支持表面20と21と鈍角をなして接続するように形成さ
れる。この第２の支持表面20と21は半径を含む平面内に
あって、上記第１の支持表面17に垂直である。切削用液
の溢流通路22,23の出口が円錐形状の切片面表面に開口
している。

第３図と第４図はドリル先端部に固定化される切削植刃
を示す。ドリル本体部は第３図において点線で示され
る。中心部に配位する中心切削植刃24は長辺側と短辺側
を有する略菱形状の基部を有し、その表面の大部分に亘
ってＳ字形状の湾曲切刃26が延在する。湾曲切刃26は菱
形状基部の鋭角コーナからその対角点の鋭角コーナーに
延びる非対称的伸張部分として形成される。この湾曲切
刃はドリル中心或いはその近傍に変曲点を有している。
湾曲切刃26に沿ってチップ面（すくい面）27,28および
逃げ面29,30が形成される。切削植刃24の上記鋭角度の
頂点は45゜乃至75゜の角度範囲にあり、好適に55゜乃至
65゜の範囲である。上記切削植刃の長辺側31,32は短辺
側33,34に接合されてそれらの間に鋭各コーナと鈍角コ
ーナとを形成する。切刃26は鋭角コーナの短辺側端部か
ら最大寸法距離L₁に亘り各短辺側33,34に接触し又はそ
れと平行に走る。上記短辺側上の切刃部接触距離L₁は短
辺側34の長さの略0.1乃至0.6倍の間にあり好しくは0.3
〜0.4倍である。その対向する短辺側33におけるそれに
対応する距離はどのような場合でも上記L₁よりは短か
い。中央切削植刃は圧縮強度が第で、耐摩耗性を有する
材料、例えば硬質金属又は鋼材の製品である。

長さは相違しているが、幾何学的形状を等しくする半径
方向外側にある二個の周辺植刃35と36により中央植刃24
は部分的に取り囲まれている。両周辺植刃は相似である
が故に、周辺切削植刃35だけを以下に説明する。周辺植
刃35は多角形状をなして相互に略直角に交わる表面状支
持表面37,38を有し、かつ加工穴底を切削する切刃41と
加工穴周面を切削する短い切刃42の夫々に対する逃げ面
40,39を有し、更に両切刃に共通の切屑面43と半径方向
内側に平面状支持表面（辺側）44を有する。内側支持表
面、即ち辺側44は外側切刃41の刃線と鈍角βをなして交
差し、支持表面37に対しては鈍角γをなして交差する。
要するに、本発明によれば、周辺植刃35,36の辺側44は
湾曲中央切刃26に対しドリル回転方向ａにおいて背後に
位置付けられるように、外側切刃41に対し前述の鈍角β
をなしている。周辺切削植刃35,36は中央切削植刃24の
材料よりも硬い材料例えば硬質金属または鋼製材料で製
作される。内外側の各植刃材料に硬さに差をつけた目的
は周辺植刃35,36は中央植刃24よりも高速の切速度を有
するからであり、従って、周辺植刃は中央植刃よりも硬
い材質のものを選ぶのが望まれる。ところで、周辺植刃
35,36は材質硬度が増加するに従ってその強靭性が減少
するので、より一そうし脆性は大となる。硬いがしかし
脆い材料の植刃であれば、それはドリルの中心部に生ず
る圧縮応力に耐えられない。それ故軟質であるが、しか
し強靭性のある材料が切削速度の小さい中央植刃24のた
めの材料に選定されたのである。中央植刃24は工具先端
工作部16の中心溝部内に好適にはロー付けによりその主
要底面が支持表面17上に固着され固定化される。そのと
き溶融ロー（蝋）はドリル本体側の各支持表面17,20,21
及び中央切削植刃24の長辺側31,32の面上に施され、そ
の後に周辺植刃35,36は第３図の矢印方向に押圧され
る。周辺切削植刃35,36の鈍角コーナは中央切削植刃24
の対応する鋭角コーナーに向けて衝合される。従って周
辺植刃はドリル本体の支持表面20,21に押付けられると
共に切刃41,26は大部分が連続的な直線状に継ぎ合わさ
れる。前述した鈍角βと鋭角αとは殆んど互に余角をな
し、その誤差は１゜〜４゜である。それ故周辺及び中央
の植刃間に形成されたロー付接合継目部は楔形状をな
し、従って、継目部の頂角部分は両植刃間の継目点とな
って形成されることになる。その頂角部分は出来るだけ
狭い角度に形成して被削材が継目内に刺し込まれて植刃
を損傷しないようにしなければならない。内側支持表面
44が図示のようにドリル平面視において傾斜している利
点は、たとえ軟質切削植刃26の破砕される事態が起った
としても、支持表面44と逃げ面40の接合綾線上に（切削
力方向a₁に対し湾曲切刃26の後側に）形成される切刃に
より、穴明け加工を継続して行なうことができることで
ある。

第５図と第６図はドリルの平面図と側面図をそれぞれ示
す。この中央切削植刃24はドリルの中心から距離ｄのと
ころに植刃の中心が位置するようにその中心溝部内にロ
ー付け固定される。そのために植刃24の鋭角コーナはド
リルの中心からそれぞれ異った間隔位置に固定される。
第５図に示す左側下方のコーナは半径r₁の円周上に配置
され、他方の右側上方のコーナは半径r₂円周上にある。
中央切削植刃24と周辺植刃35,36間の接合継目部の頂角
部分、即ち継目点はそれ故に相互に偏位し、前記半径r₁
とr₂の夫々の円周上に回転する軌跡を形成する。その結
果として、被削材に明けた加工穴の底面には上記切刃線
上の継目部によって襞（リッジ）が生じるが、この襞は
後続回転する次の切削切刃26又は41により切り取れられ
るようになる。第５図には、ドリルの本体の先端工作部
上に異なる硬さの更にもう一つの切削値刃を挿入しうる
ことを点線で描き示してある。

ドリルの先端中心に切削植刃を使用する通常のドリルは
しばしば上述の接合継目部に関連してとかく破損し易
い、ドリル加工作業に不利な影響を与えている。これに
対し本発明に係るドリル工具の刃先中心部は調和のとれ
た均一性を奏するから上述した欠陥は回避される。切刃
と切屑溝の形状は米国特許第4222690号に詳細に述べら
れ、その記載はここにも引用されている。

第７図と第８図は本発明に係る穴明け用のエンドミル工
具を示す。このエンドミル10′は円柱状本体部11′と切
削部12′とから成る。この本体部11′柄部15′、切屑溝
13′及び植刃着座部を有する。先端工作部12′は二個の
切削植刃24′と35′から成る。そのうち半径方向内側の
植刃24′はその外側植刃35′より硬度が低い材料で作ら
れ、ロー付け手段によりその着座部に固着される。次い
で外側植刃35′は第８図の平面図で見たとき、少くとも
その切削切刃41′が連続した直線状に内側植刃24′の切
刃26′と継ぎ合わされる。切刃26′はエンドミルの中心
又はその近傍から切刃線が起され、その中心から遠ざか
るにつれて連続的に湾曲する。そのとき切刃26′の刃線
は外側植刃35′の切刃41′の内方へ向って半径方向に直
線的形態をとって接続する。両植刃間のロー付け接合継
目部は楔形状をなし、その頂点部は切刃26′と41′間に
位置付けらえる。その頂点部は非常に狭く一つの薄膜を
形成するのみである。この第２実施例もまた前述した第
１実施例と同様に、外側植刃35′の半径方向内側支持面
とその切刃41′間の鈍角交差角β′は鋭角α′と殆んど
余角関係に形成され、植刃24′の半径方向外側の支持表
面と切刃26′間の交差角α′と上記β′との余角形成誤
差は１゜〜４゜の範囲内にある。エンドミルの先端切刃
と切屑溝面の形状は米国特許第4,132,493号により一そ
う詳しく述べられているが、ここにもその記載が引用さ
れる。

本発明によれば、植刃は上記の２個や３個の植刃に限定
されず、必要に応じ、その内の１個を少くとも２個以上
の植刃に置き換えることが出来る。例えば、第５図に示
す周辺植刃35,36は、夫々２個の部分植刃を点線で図示
したようにロー付けの接合継目部で以って合体させるこ
とが出来る。

本発明は工具の半径方向において切削速度が変化するよ
うにした切削工作部を有する切削工具に関するものであ
り、その切削工作部は工具本体に安全に固定化され、且
つ均質なドリル中心部分を有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るドリルの斜視図、 第２図はドリルの頂部拡大平面図、 第３図は切削植刃の上部平面図、 第４図は切削植刃の斜視図、 第５図はドリルの頂部平面図、 第６図はドリルの部分的側面図、 第７図は本発明に係るエンドミル工具の斜視図、 第８図は第７図に示すエンドミル工具の頂部平面図。 10……ドリル、11……ドリル本体部、 12……切削工作部、13,14……切屑溝、 15……固定部、16……先端工作部 17……平坦な第１支持表面、CL……中心線 18,19……中心溝壁面、20,21……第２支持表面、 22,23……溢流通路、24……中央切削植刃、 26……Ｓ字形中央切刃、27,28……切屑表面、 29,30……逃げ面、31,32……長辺側、 33,34……短辺側、35,36……周辺植刃、 37,38……平坦支持表面、39,40……逃げ面、 41,42……切刃、43……切屑面、 44……平面状支持表面（辺側）、10′……エンドミル。

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】柄部（15;15′）と、少くとも一個の切屑
   溝部（13,14;13′）と、先端工作部（16）に形成された
   少くとも一個の植刃着座部および切削部（12;12′）を
   具えた工具であって、 前記切削部（12;12′）は工具の先端工作部（16）に組
   付けられた少くとも二個の切削植刃（24,35,36;24′,3
   5′）から形成され、該切削植刃の第１の植刃（24;2
   4′）は当該第１植刃の半径方向外側に配置された少く
   とも１個の第２植刃（35,36;35′）よりも軟質の材料に
   より形成されている、斯ゝる異種材料植刃を有する切削
   工具において、 ａ）植刃着座部に第１、第２植刃（24,35,36;24′,3
   5′）がロー付けで固定され； ｂ）半径方向内方に配置された第１植刃（24;24′）は
   工具本体（11;11′）の中心或いは中心近傍に切刃端或
   いは切刃変曲点を有し、そこから半径方向外方に進むに
   従って連続的に湾曲し、その後直線になっている斯ゝる
   形状の湾曲切刃（26;26′）を含んで成り；そして ｃ）第１、第２植刃（24,35,36;24′,35′）の互いに対
   面する植刃辺側（31,32,44）の間にはロー付けの接合継
   目部を形成し、当該植刃辺側とこれらに夫々関係する切
   刃（26,41;26′,41′）とのなす狹角を夫々鋭角度
   （α；α′）と鈍角度（β；β′）にして、外側の第２
   植刃（35,36;35′）の辺側（44）が、ドリル回転方向ａ
   に見て、中央の湾曲切刃（26;26′）に対して背後に位
   置付けられるようにしたことを特徴とする切削工具。
2. 【請求項２】前記第１切削植刃（24;24′）は略菱形形
   状をなして工具の先端工作部（16）内の中心溝内に固定
   され、該中心溝の中心（C_S）は工具本体（11）の中心
   （C_D）に対し半径方向に距離（ｄ）だけ偏位して形成さ
   れ、第１切削植刃は先端工作部に固定された二個の第２
   植刃（35,36）により部分的に包囲されて設けられ、第
   １植刃（24）の湾曲切刃（26）と２個の第２植刃（35,3
   6）の夫々の切刃（41）との間の接合継目部の頂角部分
   が異なる半径（r₁,r₂）を有する円周に沿って回転する
   軌跡を夫々形成することを特徴とする特許請求の範囲第
   １項記載の切削工具。
3. 【請求項３】前記第１植刃（24）の湾曲切刃（26）は該
   植刃の基部表面（25）上の前記鋭狹角αをなす鋭角コー
   ナーから他方の対応する鋭角コーナーに向って略Ｓ字形
   状をなして延在し、且つ工具本体（11）の中心線（CL）
   に１点において交差するように形成されていることを特
   徴とする特許請求の範囲第２項記載の切削工具。
4. 【請求項４】前記第１植刃（24）の湾曲切刃（26）の両
   端部分は直線状に延在し、当該直線両端部分は第１植刃
   （24）の前記辺側（31,32）に接続する対向辺側（33,3
   4）に夫々合致して又はこれらに平行して延在している
   ことを特徴とする特許請求の範囲第３項記載の切削工
   具。