ところで、これら特許文献1、2に記載された超高硬度焼結体付きドリルでは、超高硬度焼結体が配設される2つの凹溝が上述のように外周側に向かうに従い後端側に向かうように傾斜して延びていて、台金に切屑排出溝を形成して切刃を形成した際に、該切刃のすくい面とされる切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面に、同じく外周側に向かうに従い後端側に向けて傾斜する切刃から所定の範囲で帯状に超高硬度焼結体が露出して耐摩耗性等が確保されるようになされている。
その一方で、このような超高硬度焼結体付きドリルを初め、一般的なソリッドドリルでも、穴明け加工時のスラスト加重を軽減するため、切刃の内周端がドリル本体のより軸線近傍の内周側に位置するように、切屑排出溝先端のドリル外周側を向く底面からドリル回転方向後方側を向く壁面を削り込んでシンニングを施すことが多い。このようにシンニングを施すことによって主切刃の内周側に形成されるシンニング刃は、ドリル本体の先端逃げ面がドリル回転方向後方側に向かうに従いドリル本体の後端側に向かうように逃げ角を有していることから、切刃外周側の主切刃部分の内周側への延長線に対して後端側に位置するように、先端角が大きく形成されることになる。
従って、このようなシンニングを施した超高硬度焼結体付きドリルでは、すくい面に超高硬度焼結体が露出する部分のドリル本体における軸線方向の幅が、シンニング刃の部分において主切刃の部分よりも小さくなってしまう。このため、切刃の摩耗等が生じたときに先端逃げ面を研磨し直してすくい面との交差稜線に新たな切刃を形成する、再研磨を施す場合に、再研磨可能な回数が、切刃の大部分を占める主切刃の部分ではなくシンニング刃の部分で決定されてしまい、主切刃の部分には超高硬度焼結体が残されていても、シンニング刃の超高硬度焼結体における再研磨代が先に無くなってドリル寿命を迎える結果となっていた。
本発明は、このような背景の下になされたもので、切刃が超高硬度焼結体上に形成された超高硬度焼結体付きドリルにおいて、切刃の内周側にシンニングが施されていても、シンニング刃の再研磨代を大きく確保して再研磨回数を多くすることができ、主切刃部分の超高硬度焼結体が残されたまま寿命となるのを避けることができる超高硬度焼結体付きドリルを提供し、またそのような超高硬度焼結体付きドリルの製造方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の超高硬度焼結体付きドリルは、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部外周に、上記ドリル本体の先端逃げ面に開口して後端側に延びる切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に超高硬度焼結体よりなる切刃部が配設されており、この切刃部上に、上記軸線側から上記ドリル本体の外周側に向かうに従い後端側に延びる切刃が形成された超高硬度焼結体付きドリルであって、上記ドリル本体先端部には、上記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面に開口して、上記切刃に沿って外周側に向かうに従い後端側に延びる外周凹部が形成されるとともに、この外周凹部の内周端から内周側には、上記軸線に直交する断面において該軸線を中心として上記切屑排出溝の底面に接する心厚円の直径以上の範囲に、上記軸線に直交する方向または後端側に凹曲しつつ該軸線に交差する方向に延びて先端側を向く内周凹部底面を有する内周凹部が、上記外周凹部に連通するように形成されており、これらの内外周凹部に上記切刃部が配設されていることを特徴とする。
また、このような超高硬度焼結体付きドリルを製造するための本発明の超高硬度焼結体付きドリルの製造方法は、上記ドリル本体の先端部となる上記軸線を中心とした外形円柱状または円板状の台金に、上記外周凹部となる外周溝部と上記内周凹部となる内周溝部とを形成する溝部形成工程と、この溝部形成工程によって形成された上記外周溝部および内周溝部に超高硬度焼結体の原料粉末を充填して焼結する焼結工程と、この焼結工程によって上記超高硬度焼結体が焼結して接合された上記台金に上記先端逃げ面と上記外周溝部に沿って上記切屑排出溝とを形成して、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面と上記先端逃げ面との交差稜線部に上記超高硬度焼結体よりなる切刃部を配設するとともに、この切刃部上に上記切刃を形成する切刃形成工程とを備えることを特徴とする。
従って、例えばこのような製造方法によって製造される上記構成の超高硬度焼結体付きドリルにおいては、超高硬度焼結体よりなる切刃部が配設される内外周凹部のうち内周側の内周凹部が、ドリル本体の軸線に直交する断面において切屑排出溝の底面に接する心厚円の直径以上の範囲に延びるように形成されているので、切刃(主切刃)の内周側にシンニングを施すと、シンニング刃はこの内周凹部に配設された切刃部上に形成されることになる。
そして、この内周凹部の底面は、ドリル本体の軸線に直交する方向、またはドリル本体の後退側に凹曲しつつ上記軸線に交差する方向に延びるように形成されており、すなわち内周側に向かうに従い、外周側の主切刃よりも大きな先端角で先端側に延びるシンニング刃との間隔が大きくなるようにされることになる。このため、この内周凹部に配設されてシンニング刃が形成される超高硬度焼結体よりなる切刃部の軸線方向の幅も、内周側に向かうに従い大きくなる。
このように、上記構成の超高硬度焼結体付きドリルによれば、シンニング刃が形成される超高硬度焼結体よりなる切刃部のドリル本体軸線方向における幅を大きくすることができるので、シンニング刃の再研磨代も大きく確保することができ、シンニング刃の再研磨可能な回数を多くすることができる。従って、切刃の大部分を占める主切刃の再研磨代が無くなる前にシンニング刃の再研磨代が無くなってドリル寿命となるのを防ぐことが可能となり、ダイヤモンド焼結体やcBN焼結体のような超高硬度焼結体の有効利用を図ることができる。
さらに、上記内周凹部は、上記内周凹部底面から先端側に延びる内周凹部壁面を有することになり、また上記外周凹部も、上記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面からドリル回転方向後方側に後退して上記内周凹部壁面に連なる外周凹部壁面を有することになるが、これら内周凹部壁面と外周凹部壁面とを、上記軸線方向先端側から見て鈍角に交差する方向に延びるように形成することにより、超高硬度焼結体の一層の有効利用を図ってドリル寿命の延長を促すことができる。
すなわち、例えば特許文献2に記載されているように、台金の直径方向に延びる2つの凹溝が互いに行き違うように形成されていて、これらの凹溝部分に超高硬度焼結体よりなる切刃部が配設されるものでは、凹溝を形成する円板型砥石の外周部が丸みを帯びたものであると、2つの凹溝が重なり合って連通する台金内周部にシャープなエッジが形成されてしまい、これらの凹溝に原料粉末が充填されて焼結された超高硬度焼結体には、この特許文献2の図7a〜dや図9a、図10に示されるように上記エッジが反転した凹みが形成されてしまう。
このため、そのような特許文献2に記載の超高硬度焼結体付きドリルでは、穴明け加工の際に切刃部となる超高硬度焼結体に切削負荷が作用して、上記凹みの部分に応力が集中すると、この凹みから亀裂が生じて超高硬度焼結体が割損することによりドリル寿命となってしまうおそれがあるが、本発明の超高硬度焼結体付きドリルの製造方法においては、溝部形成工程が外周凹部となる外周溝部を形成する工程と内周凹部となる内周溝部を形成する工程とを備えているので、これらの溝部を外周部が丸みを帯びた円板型砥石によって形成しても、内外周溝部の上記壁面同士を鈍角に交差する方向に形成することができて、シャープなエッジが形成されるのを避けることができる。
従って、本発明の超高硬度焼結体付きドリルにおいても、上述のように内外周凹部の上記壁面同士を鈍角に交差する方向に延びるように形成することができて、超高硬度焼結体よりなる切刃部にシャープなエッジを反転した凹みが形成されるのを防ぐことができるので、穴明け加工時の切削負荷によってこのような凹みに応力が集中することにより切刃部に亀裂が生じて超高硬度焼結体が割損するような事態を防ぐことができる。このため、かかる割損によってドリル寿命が費えるのを防いで超高硬度焼結体の有効利用を図ることができるのである。
以上説明したように、本発明によれば、切刃の内周部にシンニングが施されていても、シンニング刃が形成される超高硬度焼結体部分のドリル本体軸線方向の幅を大きくすることができ、シンニング刃の再研磨代を大きく確保して再研磨可能回数を増やすことができるので、切刃の大部分を占める主切刃の超高硬度焼結体を再研磨によって十分に使い切ることができ、超高硬度焼結体の有効利用を図るとともにドリル寿命を延長することができる。
図1および図2は本発明の超高硬度焼結体付きドリルの一実施形態を示すものであり、図3はこの実施形態の超高硬度焼結体付きドリルに再研磨を施したものを示し、さらに図4はこの実施形態の超高硬度焼結体付きドリルを製造する際に用いられる台金を示すものである。本実施形態において、ドリル本体1は、外形が軸線Oを中心とした略円柱状をなし、図示されないその後端部が超硬合金等の硬質材料により一体に形成されるとともに、図1および図2に示す先端部が図4に示す超高硬度焼結体付きの台金から製造されて上記後端部の先端にロウ付け等によって接合されることにより構成される。
このような超高硬度焼結体付きドリルは、ドリル本体1の上記後端部の後端側に設けられたシャンク部が工作機械の主軸に把持されて、上記軸線O回りに図1に符号Tで示すドリル回転方向に回転されつつ該軸線O方向先端側に送り出され、ドリル本体1の上記先端部に形成された切刃2によって被削材に穴明け加工を行う。
ドリル本体1の先端部から後端部のシャンク部手前にかけては、軸線Oに直交する断面が凹曲線状をなす切屑排出溝3が、後端側に向かうに従いドリル回転方向Tの後方側に捩れるように形成されており、切刃2は、この切屑排出溝3先端のドリル回転方向Tを向く壁面と、軸線O方向先端側を向くドリル本体1先端の先端逃げ面4との交差稜線に形成される。
なお、本実施形態では、切刃2のすくい面とされる切屑排出溝3先端のドリル回転方向Tを向く上記壁面は、切屑排出溝3の捩れ角よりも小さな角度で後端側に向かうに従いドリル回転方向Tの後方側に向かうように軸線Oに対して傾斜する平面状とされている。従って、切刃2は、後述するドリル本体1内周側のシンニング刃を除く外周側の大部分を占める主切刃2aが軸線O方向先端視において図1に示すように直線状に形成され、この主切刃2aは同先端視において該主切刃2aに平行で軸線Oを通る直線よりもドリル回転方向T側に位置させられている。
本実施形態では、ドリル本体1に2条の切屑排出溝3が軸線Oに関して対称に形成されていて、これらの切屑排出溝3の先端に切刃2がそれぞれ形成されており、2枚刃のツイストドリルとされている。また、先端逃げ面4は、ドリル本体1内周側の軸線O近傍から外周側に向かうに従い後端側に向かうように形成されて、これにより切刃2にも外周側に向かうに従い後端側に向かうように先端角が与えられるとともに、切刃2からドリル回転方向T後方側に向けてもドリル本体1の後端側に向かうように形成されて、これにより切刃2に逃げ角が与えられる。
さらに、切屑排出溝3の先端中央部においては、本実施形態では切屑排出溝3のドリル本体1外周側を向く底面からドリル回転方向T後方側を向く壁面にかけてを削り込むようにしてシンニングが施されており、これにより切刃2の内周側には、主切刃2aの内周端から軸線Oの近傍に向けて延びるシンニング刃2bが形成される。なお、本実施形態におけるシンニング刃2bは、軸線O方向先端視において図1に示すように、主切刃2aの内周端からドリル回転方向Tに向けて凸となる凸曲線を描きつつ軸線O近傍に延びるように形成されている。
こうして形成されたシンニング刃2bの先端角は、ドリル本体1の先端逃げ面4が上述のようにドリル回転方向T後方側に向けてドリル本体1の後端側に向かうように形成されていることから、図2に示すように主切刃2aの先端角よりも大きくなり、すなわち主切刃2aの内周側への延長線よりもシンニング刃2bはドリル本体1後端側に位置して外周側に向かうに従い後端側に向かうことになる。また、2つの切刃2のシンニング刃2b内周端同士の間には、各切刃2の先端逃げ面4同士が交差して軸線Oに垂直な直線状のチゼル2cが形成される。
なお、ドリル本体1の周方向において2条の切屑排出溝3の間に形成されるランド部には、切屑排出溝3の捩れに合わせて捩れるクーラント孔5がシャンク部から形成されて先端逃げ面4に開口させられている。また、切屑排出溝3のドリル回転方向T後方側に連なるランド部の外周面には、ドリル外径(切刃2の直径)と等しい外径の軸線Oを中心とした円筒面上に位置するようにマージン部6が形成され、このマージン部6のさらにドリル回転方向T後方のランド部外周面はマージン部6より僅かに小径の外周逃げ面とされている。なお、マージン部6にはバックテーパが与えられていてもよい。
さらに、ドリル本体1先端部において切刃2が形成される部分には、シンニング刃2bおよびチゼル2cが形成される部分に内周凹部7が形成されるとともに、主切刃2aが形成される部分には外周凹部8が形成されている。外周凹部8は、切屑排出溝3のドリル回転方向Tを向く壁面と先端逃げ面4、さらにマージン部6の先端側にも開口して、ドリル本体1先端側を向く外周凹部底面8aと、この外周凹部底面8aに直交してドリル回転方向Tを向き、切屑排出溝3のドリル回転方向Tを壁面からドリル回転方向T後方に一段後退する外周凹部壁面8bとを有する断面L字状に形成されており、ドリル本体1の外周側に向かうに従い後端側に延びるように形成されている。
また、内周凹部7は、この外周凹部8の内周端に連通していて、本実施形態では両外周凹部8の内周端からドリル本体1の内周側に向かうに従いドリル本体1の後端側に凹円弧等を描いて凹曲しつつ軸線Oに交差する方向に延びる先端側を向く内周凹部底面7aと、この内周凹部底面7aから軸線Oに平行にドリル本体1先端側に延びる互いに平行な一対の内周凹部壁面7bを有している。ただし、内周凹部底面7aがなす凹曲面の曲率半径(凹円弧の場合は半径)は、例えば製造される超高硬度焼結体付きドリルの外径(切刃2の直径)の0.5倍以上と大きくされており、場合によっては無限大でもよく、すなわち内周凹部底面7aは軸線Oに直交する方向に延びていてもよい。
さらにまた、内周凹部7は、軸線Oに直交する断面において軸線Oを中心として切屑排出溝3の底面に接する心厚円Cの直径以上の範囲に延びるように形成されており、具体的には軸線Oを中心として上記ドリル外径の0.1倍〜0.5倍の範囲に形成されている。なお、内周凹部底面7aは、内周凹部7が延びる方向に直交する断面もドリル本体1の後端側に凹となる円弧等をなす凹曲面状とされていて、同断面において内周凹部7はU字状に形成されており、ただしこの断面において内周凹部底面7aがなす凹曲の曲率半径は、内周凹部7がその延びる方向になす凹曲の曲率半径よりも十分に小さくされている。さらに、2つの外周凹部8のそれぞれの外周凹部壁面8bは、該外周凹部壁面8bが連なる内周凹部壁面7bに対して、図1に示すように軸線O方向先端視において鈍角に交差させられている。
そして、これら内外周凹部7、8には、ダイヤモンド焼結体またはcBN焼結体の超高硬度焼結体よりなる切刃部9が配設されていて、切刃2はこの切刃部9上に形成されている。すなわち、切刃部9の表面は、切屑排出溝3先端の切刃2のすくい面とされるドリル回転方向Tを向く壁面と、シンニングにより削り込まれたドリル本体1外周側を向く底面およびドリル回転方向T後方を向く壁面と、先端逃げ面4およびマージン部6とに連続するように形成されていて、切刃2の主切刃2aおよびシンニング刃2bは、この切刃部9における切屑排出溝3のすくい面とされる壁面およびシンニングされた底面と先端逃げ面4との交差稜線に形成されている。
このような超高硬度焼結体よりなる切刃部9に切刃2が形成されるドリル本体1の先端部は、本発明の超高硬度焼結体付きドリルの製造方法の一実施形態により、上述したように図4に示す台金11から製造される。この台金11は、ドリル本体1の後端部と同じく超硬合金等の硬質焼結体により軸線Oを中心とするように円柱状に形成された台金本体12と、この台金本体12に形成された溝部に原料粉末が充填されて焼結された超高硬度焼結体13とにより構成されている。
台金本体12は上述のような硬質焼結体を本焼結して所定の寸法、形状に形成され、この台金本体12には、上記溝部として、1つの内周溝部14と2つの外周溝部15とが形成されている。これらの内外周溝部14、15は、本実施形態の製造方法における溝部形成工程において、例えば円板状の砥石をその中心線回りに回転しつつ、本焼結した台金本体12に切り込ませることによりスリット状に形成される。
このうち、2つの外周溝部15は、軸線Oに関して対称に該軸線Oの両側に形成されており、台金11の先端側(図4(b)、(c)において左側)において該軸線Oと交差するとともに、この先端側において軸線Oに直交する仮想直線Lを含み、切刃2のすくい面とされる切屑排出溝3先端のドリル回転方向Tを向く上記壁面が軸線Oに対してなす傾斜角と等しい角度で、台金11の先端側から後端側(図4(b)、(c)において右側)に向かうに従い、図4(a)に示すドリル回転方向T後方となる方向に向かうように傾斜させられている。従って、図4(c)に示すように上記仮想直線Lに沿って透過した側面視において2つの外周溝部15は、先端側に凸となるV字状または先端側が仮想直線L上で交差して僅かに反対側に延びたX字状をなすように配設される。
また、外周溝部15を形成する砥石は、製造される超高硬度焼結体付きドリルの外周凹部8の断面形状に合わせて、本実施形態ではその外周面が円板状の砥石の中心線に平行な円筒面状とされて円形の両側面に垂直とされたものであり、従って外周溝部15はそれぞれ、この外周面により形成されて台金11の先端側に向けられる外周溝部底面15aと、上記両側面により形成されてこの外周溝部底面15aに垂直に先端側に延びる互いに平行な、ドリル回転方向Tに向けられる外周溝部壁面15bおよびドリル回転方向T後方に向けられる外周溝部壁面15cとから形成される。
さらに、外周溝部底面15aは図4(b)に示すように先端側から後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜させられており、各外周溝部15は円柱状の台金本体12の先端面と外周面の先端側とに開口させられる。ここで、図4(b)に示すように軸線Oと上記仮想直線Lとに垂直な方向から透過した側面視においてこの外周溝部底面15aが軸線Oに対してなす傾斜角は、製造された超高硬度焼結体付きドリルにおいて軸線Oと主切刃2aとに垂直な方向から見て主切刃2aが軸線Oに対してなす傾斜角(主切刃2aの先端角の1/2)より僅かに小さくされている。
一方、内周溝部14も、製造される超高硬度焼結体付きドリルの内周凹部7に合わせ、本実施形態では外周面が断面半円弧等の凸曲面とされた円板状砥石により、軸線Oと上記仮想直線Lとを含む平面上に形成され、2つの外周溝部15の双方に交差させられて連通している。従って、この内周溝部14も、台金11の先端側に向けられる、上記仮想直線Lに沿った方向から見て断面半円弧等の後端側に凹となる凹曲面状をなす内周溝部底面14aと、この内周溝部底面14aから軸線Oに平行に先端側に延びる互いに平行な一対の内周溝部壁面14bから形成される。なお、内周溝部14は、台金本体12の先端側に、この台金本体12の直径の全長に亙って形成されている。
また、この内周溝部14は、本実施形態では図4(b)に示すように上記軸線Oと仮想直線Lとに垂直な方向から透過した側面視においても、先端側を向く内周溝部底面14aが両外周溝部15の内周端から内周側に向かうに従い後端側に凹曲する凹円弧等の凹曲面状をなして軸線Oに交差するように形成されている。ただし、この凹曲面がなす曲率半径(凹円弧の場合は半径)は、例えば製造される超高硬度焼結体付きドリルの外径(切刃2の直径)の0.5倍以上とされて、仮想直線Lに沿った方向から見た内周溝部底面14aの凹曲面の半径よりも十分に大きくされており、この曲率半径が無限大であって、すなわち内周溝部底面14aが軸線Oに直交する方向に延びていてもよい。
このような内周溝部底面14aは、上記軸線Oと仮想直線Lとに垂直な方向から透過した側面視において内周溝部底面14aがなす凹曲面の半径と等しい半径の円板状砥石を、その中心線(回転軸線)を軸線Oに直交させた状態で先端側から軸線O方向に送り出して台金本体12に切り込ませることにより形成することができる。また、この凹曲面の半径よりも小さな半径の円板状砥石を、その外周面を内周溝部底面14aがなす凹曲面に沿わせつつ台金本体12の直径方向に向けて送り出して切り込ませることによっても形成することができる。なお、内周溝部底面14aを上述のように軸線Oに直交する方向に形成する場合には、円板状砥石を軸線Oと上記仮想直線Lとを含む平面に位置させて軸線Oに直交する方向に送り出せばよい。
こうして溝部形成工程において台金本体12に形成された内外周溝部14、15には、本実施形態の製造方法における焼結工程において、ダイヤモンド焼結体またはcBN焼結体よりなる超高硬度焼結体の原料粉末が充填された後、例えば特許文献2に記載されているような高温、高圧下で焼結させられることにより、内外周溝部14、15に上記超高硬度焼結体13が配設されて台金本体12と接合され、図4に示したような台金11が製造される。
次いで、こうして製造された台金11に対し、本実施形態における切刃形成工程において研削加工等により上記切屑排出溝3と先端逃げ面4とを形成して、この先端逃げ面4と切屑排出溝3先端のドリル回転方向Tを向く壁面との交差稜線に切刃2(主切刃2a)を形成する。また、切屑排出溝3先端のドリル本体1外周側を向く底面とドリル回転方向T後方を向く壁面にシンニングを施してシンニング刃2bも形成する。
さらに、マージン部6は切屑排出溝3のドリル回転方向Tを向く壁面に連なる台金本体12の外周面が残されることによって形成され、外周逃げ面は該マージン部6のドリル回転方向T後方側に連なるランド部の外周面を、やはり研削加工等によって僅かに小径に削り落とすことによって形成する。なお、クーラント孔5は、台金本体12に焼結される前の圧粉体を成形する際に、予め捩れた孔が形成されるようにしておいて、先端逃げ面4を形成する際にこの孔がクーラント孔5として開口するようにすればよい。
ここで、この切刃形成工程において切刃2を形成する際に、主切刃2aのすくい面とされる切屑排出溝3先端のドリル回転方向Tを向く壁面は、台金11の外周溝部15のうち外周溝部底面15aおよびドリル回転方向Tを向く外周溝部壁面15bを残して、超高硬度焼結体13部分のドリル回転方向Tを向く面が露出するように、外周溝部15のドリル回転方向T後方を向く外周溝部壁面15cの先端側部分が削り落とされて形成される。
従って、台金11の外周溝部15は、外周溝部底面15aが製造された超高硬度焼結体付きドリルの外周凹部8の外周凹部底面8aとされ、ドリル回転方向Tを向く外周溝部壁面15bが外周凹部壁面8bとされる。なお、外周溝部15のドリル回転方向T後方を向く外周溝部壁面15cは、主切刃2aから僅かに離れた切屑排出溝3後端側の断面凹曲線状をなす部分では残され、これにより切屑排出溝3のドリル回転方向Tを向く壁面の先端側には、図2に示すように台金本体12と超高硬度焼結体13よりなる切刃部9との境界線が先端側に凸となる凸曲線状に露出する。
また、シンニング刃2bのすくい面とされる、シンニングが施される切屑排出溝3先端のドリル本体1外周側を向く底面も、超高硬度焼結体13部分のドリル回転方向Tを向く面が露出するように、内周溝部14の一対の内周溝部壁面14bそれぞれにおいてドリル回転方向T後方を向く部分が削り落とされて形成される。従って、台金11の内周溝部14は、内周溝部底面14aが製造された超高硬度焼結体付きドリルの内周凹部7の内周凹部底面7aとされ、一対の内周溝部壁面14bそれぞれにおいてドリル回転方向Tを向く部分が内周凹部壁面7bとされる。
すなわち、切刃2はチゼル2cも含めて超高硬度焼結体13よりなる切刃部9上に形成される。また、露出させられた超高硬度焼結体13のドリル回転方向Tを向く面に切刃2を介して連なる先端逃げ面4のドリル回転方向T側の部分と、マージン部6の先端部分も超高硬度焼結体13よりなる切刃部9上に形成される。こうして切刃2が形成されたドリル本体1の先端部は、予め切屑排出溝やシャンク部が形成されたドリル本体1の後端部にロウ付け等により接合されて超高硬度焼結体付きドリルに製造される。なお、台金11を、シャンク部が形成された後端部に接合してから、切屑排出溝3全体と先端逃げ面4を形成してもよい。
このような製造方法によって製造される上記構成の超高硬度焼結体付きドリルにおいては、内周凹部7が軸線Oに直交する断面において心厚円Cの直径以上の範囲に亙って形成されていて、この内周凹部7の内周凹部底面7aは、外周凹部8の内周端から内周側に向けて、ドリル本体1の後端側に向かうように凹曲しつつ軸線Oに交差する方向、または軸線Oに直交する方向に形成されており、すなわちドリル本体1の先端側に凸となることはない。従って、この内周凹部7においてシンニング刃2bが形成されるドリル本体1先端中心部の超高硬度焼結体13よりなる切刃部9の軸線O方向の幅を、図2に示すように内周側に向かうに従い大きくなるようにすることができる。
このため、上記構成の超高硬度焼結体付きドリルによれば、切刃2に摩耗等が生じたときに図3に破線で示すように先端逃げ面4を研磨し直して再研磨し、主切刃2aのすくい面とされる切屑排出溝3先端のドリル回転方向Tを向く壁面およびシンニング刃2bのすくい面とされる切屑排出溝3先端ドリル本体1外周側を向く底面との交差稜線に、新たな主切刃2aおよびシンニング刃2bを形成する場合に、このシンニング刃2bの再研磨代を大きく確保して再研磨可能な回数を多くすることができる。
従って、主切刃2aの再研磨代が無くなる前にシンニング刃2bの再研磨代が無くなって再研磨不能となることにより、ドリル寿命に達するのを防ぐことができる。このため、切刃2の大部分を占める主切刃2aが形成された切刃部9を十分に使い切ることができ、この切刃部9を形成するダイヤモンド焼結体またはcBN焼結体よりなる超高硬度焼結体13を有効に利用することが可能となる。
また、本実施形態の超高硬度焼結体付きドリルでは、2つの外周凹部8の外周凹部壁面8bと、各外周凹部壁面8bが連なる内周凹部7の内周凹部壁面7bとが、図1に示すように軸線O方向先端視において鈍角に交差する方向に形成されている。従って、これに伴い、切刃部9において外周凹部壁面8bに対向して接合される側面と、この側面に連なり内周凹部壁面7bに対向して接合される側面も鈍角に交差することになる。
このため、例えば特許文献2に記載された超高硬度焼結体付きドリルのように超高硬度焼結体よりなる切刃部に台金本体のシャープなエッジを反転させた凹みが形成されることはなく、穴明け加工時の負荷による応力がこのような凹みに集中することにより切刃部9に亀裂が生じて超高硬度焼結体13が割損するようなこともない。従って、このような割損によってドリル寿命となってしまうのも防ぐことができるので、本実施形態の超高硬度焼結体付きドリルによれば、超高硬度焼結体13の一層の有効利用を促すことが可能となる。
なお、本実施形態の超高硬度焼結体付きドリルでは、シンニング刃2bが軸線O方向先端視においてドリル回転方向T側に凸となる凸曲線状に形成されているが、これ以外の形状にシンニングが施されていてもよい。また、シンニングが切屑排出溝3の先端のドリル回転方向T後方を向く壁面に亙って施されているが、切屑排出溝3の先端のドリル本体1外周側を向く底面だけに施されていてもよい。さらに、本実施形態の製造方法では、内周溝部14を形成する砥石の外周面が断面凸曲線状、外周溝部15を形成する砥石の外周面が円筒面状とされているが、例えば内周溝部14を形成する砥石も外周面が円筒面状であってもよく、また外周側に向かうに従い幅狭となる断面等脚台形状の砥石などであってもよい。