JPH0678504B2 - 粘着シ−ト - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 （産業上の利用分野） 本発明は粘着シートに関する。さらに詳しくは，本発明
は，基材シート上に塗布した放熱線硬化性粘着剤組成物
を電子線照射および紫外線照射により硬化させてなる粘
着シートに関する。

（従来の技術） 従来から放射線硬化型の粘着シートは，プラスチックフ
ィルム，紙，繊維織物，不織布，金属箔などの基材シー
トの上に，紫外線硬化性粘着剤組成物を塗布した後紫外
線照射により，あるいは電子線硬化性粘着剤組成物を塗
布した後電子線照射により，上記粘着剤組成物を硬化さ
せて作られている。

上記紫外線硬化性粘着剤組成物としては，例えば，アク
リル系重合体などの熱可塑性樹脂，（メタ）アクリロイ
ル基を１個有する単量体，（メタ）アクリロイル基を２
個以上有する多官能単量体，および光重合開始剤からな
るものが検討された。しかしながら，これらの粘着剤組
成物を用いれば紫外線照射による硬化後の基材シートと
の接着性はよくなるものの，粘着剤組成物成分の熱可塑
性樹脂が硬化反応に関与しないために，硬化後の保持力
が低く硬化後の粘着シートの保存中に，あるいは粘着シ
ートを被着体に貼着した後に，熱可塑性樹脂がマイブレ
ートして粘着力の低下や粘着シートよごれなどのトラブ
ルの原因となっていた。

一方，上記電子線硬化性粘着剤組成物としてはアクリル
系重合体などの熱可塑性樹脂，（メタ）アクリロイル基
を１個有する単量体，および（メタ）アクリロイル基を
２個以上有する多官能単量体からなり，無溶剤であるも
のが用いられている。これらの粘着剤組成物では，塗布
に適する程度に低粘度でかつ臭気が少ないものとするた
めに，分子量が比較的大きく高沸点の（メタ）アクリロ
イル基を１個有する単量体を多量に含んでいる。このた
め，これらの粘着剤組成物を十分に硬化させ，未反応の
単量体が残らず，臭気や衛生上の問題がないようにする
には，高線量の電子線照射が必要であるが、このような
高線量の電子線を照射すると，粘着剤組成物に含まれる
アクリル系重合体などの熱可塑性樹脂の架橋が過度に進
み，電子線硬化後の粘着剤組成物の粘着力やタックが低
下するとともに，紙，ある種のプラスチックフィルムな
ど基材シートの種類によっては基材シートが劣化すると
いう欠点があった。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明は，上記の種々の欠点を改良し，（ｉ）粘着剤組
成物の硬化後に未反応の単量体が残留しないために，臭
気や衛生上の問題がない，（ii）硬化後の粘着剤組成物
の粘着力，タック，保持力などの接着性能が十分であ
る，（iii）粘着シートの保存中や粘着シートを被着体
に貼着した後に，熱可塑性樹脂がマイグレートして粘着
力が低下したり粘着シートがよごれたりすることがな
い，放射線硬化型の粘着シートを提供するものである。

（問題点を解決するための手段） 本発明は，基材シート上に，アクリル系重合体，（メ
タ）アクリロイル基を１個有する単量体，（メタ）アク
リロイル基を２個以上有する多官能単量体，および光重
合開始剤からなる放射線硬化性粘着剤組成物を塗布した
後，電子線照射および紫外線照射により上記粘着剤組成
物を硬化させてなる粘着シートである。

本発明において基材シートとしては，粘着シートの基材
シートとして従来公知のものを用いることができ，この
ような基材シートとしては，紙，プラスチックフィル
ム，繊維織物，不織布，金属箔などがある。

本発明において放射線硬化性粘着剤組成物としては，硬
化性，硬化後の粘着力，タックおよび保持力などの面か
ら，アクリル系重合体，（メタ）アクリロイル基を１個
有する単量体，（メタ）アクリロイル基を２個以上有す
る多官能単量体，および光重合開始剤からなるものを用
いる。

上記アクリル系重合体としては，アクリル酸アルキルエ
ステルの単独重合体または共重合体，アクリル酸アルキ
ルエステルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合
体，あるいはこれらの混合物がある。アクリル酸アルキ
ルエステルと共重合可能な他の単量体としてはスチレ
ン，酢酸ビニル，（メタ）アクリル酸，メタアクリル酸
アルキルエステル，（メタ）アクリロニトリル，（メ
タ）アクリル酸アミド，（メタ）アクリル酸２−ヒドロ
キシエチル，（メタ）アクリ酸グリシジルなどがある。

上記（メタ）アクリロイル基を１個有する単量体として
は，（メタ）アクリル酸，（メタ）アクリル酸メチル，
（メタ）アクリル酸エチル，（メタ）アクリル酸ブチ
ル，（メタ）アクリル酸２−エチルヘキシルなどの（メ
タ）アクリル酸アルキルエステル，（メタ）アクリル酸
ヒドロキシエチル，（メタ）アクリル酸ヒドロキシプロ
ピル，（メタ）アクリル酸アミド，（メタ）アクリル酸
グリシジル，（メタ）アクリル酸フェノキシエチル，イ
ソシアナトアルキル（メタ）アクリレート,N−アルキル
カルバモイルオキシアルキル（メタ）アクリレート,N−
アルキルカルバモイルオキシアルコキシアルキル（メ
タ）アクリレートなどがある。

また上記（メタ）アクリロイル基を２個以上有する多官
能単量体としては，エチレングリコールジ（メタ）アク
リレート，プロピレングリコールジ（メタ）アクリレー
ト，ジエチレングリコールジ（メタ）アクリレート，ネ
オペンチルグリコールジ（メタ）アクリレート，トリメ
チロールプロパントリ（メタ）アクリレート，ペンタエ
リストリールトリ（メタ）アクリレート，ジペンタエリ
スリトールヘキサ（メタ）アクリレート，テトラエチレ
ングリコールジ（メタ）アクリレート，ポリエチレング
リコールジ（メタ）アクリレート，エポキシポリ（メ
タ）アクリレート，ポリウレタン（メタ）アクリレート
などがある。

上記光重合開始剤としては，ベンゾフェノン，メチルベ
ンゾフェノン,o−ベンゾイル安息香酸メチルｐベンゾイ
ンエチルエーテルなどがある。これらの光重合開始剤
は,4,4′−ビス（ジエチルアミノ）ベンゾフェノン,N−
ジメチルアミノ安息香酸エチル，ジメチルエタノールア
ミン，グリシンなどの光重合促進剤と併用することもで
きる。

本発明における放射線硬化性粘着剤組成物には，これら
の他，本発明の効果を阻害しない範囲で，洗顔料，充填
剤，粘着付与剤，可塑剤，溶剤，酸化防止剤などの他，
暗反応を抑制し保存時の安定性を増大させるために，ハ
イドロキノン，ハイドロキノンモノメチルエーテル，ベ
ンゾキノンなどの重合禁止剤を添加することもできる。

本発明において放射線硬化性粘着剤組成物は，基材シー
ト上に，ロールコーティング，ナイフコーティング，ス
プレーコーティングなど従来公知の方法により塗布さ
れ，電子線照射および紫外線照射により上記粘着剤組成
物を硬化させて粘着シートとされる。

電子線照射およひ紫外線照射は，酸素阻害を防止するた
めに，ちっ素、二酸化炭素などの不活性雰囲気中で行な
うことが好ましく，また，電子線照射量は通常0.5〜20M
rad程度である。

電子線照射および紫外線照射の順序は，目的に応じて選
択される。たとえば，（ｉ）電子線照射後に紫外線を照
射する方法，（ii）紫外線照射後に電子線を照射する方
法，（iii）紫外線照射後に電子線を照射し，さらに紫
外線を照射する方法などがある。

（ｉ）電子線照射後に紫外線を照射する方法では，電子
線照射により，粘着剤組成物中のアクリル系重合体，
（メタ）アクリロイル基を１個有する単量体および（メ
タ）アクリロイル基を２個以上有する多官能単量体が同
時に反応するが，粘着剤組成物中に（メタ）アクリロイ
ル基を１個有する単量体の多くが未反応のまま残留す
る。続く紫外線照射によって，これら未反応のまま残留
した（メタ）アクリロイル基を１個有する単量体はすべ
て反応させられ，粘着剤組成物中に未反応の化合物は残
留しなくなる。また紫外線照射時にアクリル系重合体は
反応しないために，粘着剤組成物としての性質の低下は
おこらない。

（ii）紫外線照射後に電子線を照射する方法では，紫外
線照射により，粘着剤組成物中の（メタ）アクリロイル
基を有する単量体が反応し，この反応によって生じた架
橋共重合体中にアクリル系重合体が反応せずに閉じ込め
られた状態となり，粘着剤組成物の粘着力は良好となる
ものの，保持力は小さくなるとともに，経時，アクリル
系重合体がマイグレートし，種々のトラブルの原因とな
る。しかしながら，続く電子線照射により，上記架橋共
重合体アクリル系重合体とが反応して，粘着剤組成物の
保持力が大きくなるとともに，アクリル系重合体が経時
マイグレートするようなことも生じなくなる。

（iii）紫外線照射後に電子線を照射し，さらに紫外線
を照射する方法では，最初の紫外線照射によって，粘着
剤組成物中の（メタ）アクリロイル基を有する単量体の
一部が反応し，架橋共重合体を生じ，次いで電子線照射
により，未反応の（メタ）アクリロイル基を有する単量
体の一部，上記架橋共重合体およびアクリル系重合体が
反応し，続く紫外線照射により，残留の未反応の（メ
タ）アクリロイル基を有する単量体が全部反応させられ
る。この方法では,2回の紫外線照射および１回の電子線
照射のそれぞれの線量を適宜調節することにより，
（ｉ）電子線照射後に紫外線照射する方法および（ii）
紫外線照射後に電子線を照射する方法のそれぞれの特徴
をいかし，硬化後の粘着剤組成物の架橋密度を自由にコ
ントロールすることができ，幅広い用途に対応し得る粘
着シートを得ることができる。

（実施例） 以下，実施例により本発明を説明する。例中，部とは重
量部を，％とは重量％を，それぞれ表わす。

実施例１〜３および比較例１〜３ アクリル酸ｎ−ブチル41部，アクリル酸２−エチルヘキ
シル41部，酢酸ビニル10部およびアクリル酸８部をトル
エン中にて共重合させ，脱溶剤させてアクリル系重合体
を得た。

得られたアクリル系重合体100部に,N−ブチルカルバモ
イルオキシエチルアクリレート60部，ポリエチレングリ
コール（分子量約400）ジアクリレート３部，および光
重合開始剤「ダロキュア1173」（商品名メルク社製）２
部を混合し，放射線硬化性粘着剤組成物を得た。

得られた放射線硬化性粘着剤組成物を，厚さ25μｍのポ
リエステルフィルムに膜厚25μｍとなるように塗布した
後，ちっ素雰囲気中で，塗布面側から表１に示す照射条
件で電子線および（または）紫外線を照射し，粘着剤組
成物を硬化させ，粘着シートを得た。この際の紫外線照
射は,80W/cm高圧水銀灯１灯下15cmの位置で行なった。

得られた粘着シートの粘着力，タックおよび保持力，お
よび硬化後の粘着剤組成物中の未反応単量体の量を測定
した結果をあわせて表１に示した。

なお，粘着シートの粘着力，タックおよび保持力，およ
び硬化後の粘着剤組成物中の未反応単量体の量の測定方
法は，次の通りである。

（ｉ）粘着力の測定 試験片の幅を12mmとした以外はJIS Z0237に準拠して，
ステンレス板に粘着30分後に180゜剥離し測定した。測
定結果はg/12mmを単位として表示した。用途により異な
るが,400g/12mm以上あれば実用域にあるものとした。

（ii）タックの測定 試験片の幅を12mmとした以外はJIS Z0237に準拠して，
球転法にて測定し傾斜角30゜で止まる最大の鋼球の番号
で表示した。用途により異なるが,7以上あれば実用域に
あるものとした。

（iii）保持力の測定 試験片の大きさを12mm×25mmとした以外はJIS Z0237に
準拠し，ステンレス板に貼着30分後,40℃で1kgの荷重を
かけ，試験片がステンレス板かち脱落するまでの時間
（秒），または３時間以内に脱落しなかった場合のもと
の位置からのずれの距離（cm）を測定した。用途により
異なるが,1時間以上脱落しなければ実用域にあるものと
した。

（iv）未反応単量体の量の測定 硬化後の粘着剤組成物を一定量，粘着シートから採取
し，これを50mlのテトラヒドロフランに加え24時間その
まま放置した。放置後ろ過し，ろ液をサンプルとしてゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し，
硬化後の粘着剤組成物中の未反応の単量体Ｎ−ブチルカ
ルバモイルオキシエチルアクリレートの量（％）を決定
した。なお，濃度決定にあたっては，濃度既知のＮ−ブ
チルカルバモイルエチルアクリレートのテトラヒドロフ
ラン溶液を用いて作成した濃度〜面積の検量線を使用し
た。

硬化後の粘着剤組成物中の未反応単量体の量が,1.0％未
満ならば実用域にあるものとした。

〔発明の効果〕 本発明により，（ｉ）粘着剤組成物の硬化後に，未反応
の単量体が残留しないために，臭気や衛生上の問題がな
い，（ii）硬化後の粘着剤組成物の粘着力，タック，保
持力などの接着性能が十分である，（iii）粘着シート
の保存中や粘着シートを被着体に貼着した後に，熱可塑
性樹脂がマイグレートして，粘着力が低下したり，粘着
シートがよごれたりすることがない，放射線硬化型の粘
着シートが得られるようになった。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基材シート上に，アクリル系重合体，（メ
   タ）アクリロイル基を１個有する単量体，（メタ）アク
   リロイル基を２個以上有する多官能単量体，および光重
   合開始剤からなる放射線硬化性粘着剤組成物を塗布した
   後，電子線照射および紫外線照射により上記粘着剤組成
   物を硬化させてなる粘着シート。