JPH0673994B2 - 熱転写用インク原料組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は熱転写型プリンターに供する熱転写記録シート
のインク組成物に関する。

〔従来の技術〕

近年、熱転写記録はノンインパクトで無騒音、メンテナ
ンスフリー、低コスト、小型軽量化可能、カラー化可能
等の特徴を有するためにファクシミリ、コンピューター
端末、レコーダー、プリンター等の多くの分野で用いら
れている。特に通電ヘッドにより通電熱転写する方法
は、中間階調を有するカラー記録に適しており、今後益
々注目される方法になってきた。通電転写記録について
は、詳しくは、例えば、「日経エレクトロニクス」,64
〜68頁,6月25日号,1979年を参照されたい。

熱転写型プリンターに供される熱転写記録シートのイン
クは、熱溶融性であり、熱転写時に固形−溶融−固形の
相変化をシャープに行なわせるために、従来からインク
組成の主成分は炭化水素を主体とする天然ワックス又は
合成ワックスに顔料、染料等の着色剤を分散したもので
あり、これに皮膜強化、接着性向上等のために若干の合
成樹脂や可塑剤を添加していた。

しかし、主成分であるワックス系のインク組成物に顔
料，染料を粉砕して均一に分散させることは非常に困難
な技術であった。従来からパタフライミキサー、プラネ
タリーミキサー、サンドミルミキサー、三本ロールミキ
サー、アトライター等の分散機で分散させていたが、剪
断力を加えて顔料，染料を粉砕しようとしてもワックス
分子は滑り易く、均一に、一次粒子に近い状態にまで顔
料，染料を分散することは困難であった。

分散が均一でないことは種々の弊害をもたらした。第１
点は印画ドットの濃度のバラツキである。特に中間階調
を有するフルカラー印画の場合には画像品位を著しく低
下させる。第２点は、顔料、染料が一次粒子に近くまで
粉砕されないために、インクの透明性が低いことであ
る。この場合も、フルカラー印画の透明感が低く、採度
が低下した画像になってしまう。第３点は、インクの凝
集力が小さいことである。この原因の一つには、着色剤
の分散性の不均一なことも大きく寄与している。凝集力
が小さいために、転写時にインク層内で凝集破壊が起こ
り、インクの一部は被記録紙へ転写し、残りは被記録紙
へ転写されずに熱転写シートの基材側に残ってしまう。
転写時の凝集破壊は濃度斑を発生させたり、印画表面の
光沢を著しく低下させる等の画像品位に悪影響を及ぼし
ていた。

〔発明が解決しようとする問題点〕

前述の従来技術では、ワックスを主成分とするインク組
成物中の顔料、染料の分散が不均一で且つ、分散粒子サ
イズが大きいために、印画像のドットのバラツキ、透明
感、インクの凝集破壊、光沢などに問題を有していた。

本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的
とするところは、ワックスを主成分として含有する熱溶
融性インク中の着色剤を均一に分散させ、且つ分散粒子
サイズを小さくさせることにより、熱転写時のインクの
凝集破壊を防ぎ、印画像のドットのバラツキを小さく
し、透明感、光沢を向上することにある。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は、発熱手段により熱溶融性インクを溶融させ、
被記録紙にインクを転写して記録を得るプリンターに供
する熱溶融性インクに含有させるインク原料組成物とし
て、着色剤、10〜30重量部を、スチレンおよびマレイン
酸ジエチルより成り、次の構造式、 ここで、Etはエチル基を表わす。

で示され、流動点55〜70℃,150℃での粘度250〜450セン
チポアズを有する、スチレン／マレイン酸ジエチル共重
合物、85〜65重量部に混合し、分散せしめて成るインク
原料組成物を、熱溶融性インクに30〜50重量％含有せし
めることを特徴とする熱転写用インク原料組成物であ
る。

〔作用〕

本発明は、着色剤を微粒子に均一に分散させるために、
該着色剤を前述のスチレン／マレイン酸ジエチル共重合
物（以下、該共重合物をSEM共重合物と略称する）に分
散させてインク原料組成物（マスターバッチ）をつく
り、然る後、該組成物とワックスと、必要に応じて若干
の添加物とを混合、混練し、最終の熱溶融性インクとす
るものである。着色剤はSEM共重合物には極めて良好に
分散することを発見した。かくして得られたインク原料
組成物とワックスとは良好に混合混練され、最終の熱溶
融性インク中で着色剤は均一に且つ粒子サイズが小さく
分散されることを発見した。

SEM共重合物への着色剤の分散は、従来のプラネタリー
ミキサー、バタフライミキサー、サンドミル、タンクミ
キサー、アトライター、三本ロールミル等で行なうこと
ができる。

また、顔料製造工程において、顔料をドライパウダーに
することなしに、顔料の水性スラリーを漏過して得られ
るフィルターケーキ製造後、該フィルターケーキに、SE
M共重合物を添加し、強力に混合するいわゆるフラッシ
ング工程により、本発明のインク原料組成物とすること
ができる。SEM共重合物に分散する着色剤の量は、SEM共
重合物85〜65重量部に対し、着色剤は10〜30重量部であ
る。上記２種の原料に対し、５重量部程度の可塑剤、粘
度調節剤、分散剤、凝集力向上剤、接着剤等の添加剤を
添加して分散してもよい。着色剤の含有量が30重量部を
越えると、SEM共重合物に対する分散性が悪くなる。他
方、着色剤が10重量部未満であると、分散性は良好であ
るが、着色剤含有量が少ないために、本発明のインク原
料組成物に、更にワックス、樹脂等を加えて分散させた
最終の熱溶融性インクの着色剤濃度が不足する。

本発明で使用するSEM共重合物の流動点は、55〜70℃で
ある。ここで、流動点の測定は、JIS K2269 によるもの
とする。流動点が55℃未満のSEM共重合物を使用した場
合、熱転写印刷時に、被転写紙へのインクドットが流れ
易くなり、ドットの形状が均一に保持できにくくなる。
他方、流動点が70℃を越えるSEM共重合物を使用した場
合、熱転写に要する印加エネルギーが大きくなること
と、低中濃度でのドット抜けが起き易くなる。

SEM共重合物の粘度は150℃で250〜450センチポアズであ
る。SEM共重合物への着色材の分散は、該共重合物の溶
融状態で行なうが、150℃での粘性が250センチポアズ未
満、450センチポアズを越える、いづれの場合にも着色
剤の分散性が悪くなる。SEM共重合物の溶融時の粘性は
最終熱溶融性インクの溶融粘度を大きく支配する。特
に、中間階調を有する印画像において、低中濃度でのド
ット抜けに大きく影響する。この点からも、SEM共重合
物の粘度は、150℃で250〜450センチポアズの範囲にあ
ることが妥当である。

最終の熱溶融性インクに占める本発明のインク原料組成
物の含有量は30〜50重量％である。残りの70〜50重量％
の主成分はワックスおよび樹脂である。ワックスは、パ
ラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カ
ルナバワックス、酸化ワックス、低分子量ポリエチレン
ワックス等であり、最終のインクの内、ワックス含有量
は、65〜30重量％である。樹脂成分として、エチレン／
酢ビ共重合体（EVA）、エチレン／エチルアクリレート
共重合体（EEA）、ポリエチレン、ポリブチラール、ポ
リアミド、ポリエステル等を５〜20重量％添加すると、
インクの凝集力が向上する。

以上に、本発明の熱転写用インク原料組成物について詳
述した。以下に本発明を実施例により説明する。勿論、
本発明はこれにより制限されるものではない。

〔実施例〕

実施例１〜２および比較例１〜６ 流動点60℃(JIS K2269)、150℃での粘度375センチポア
ズ（東洋精機製作所，レオログラフゾルNo.653）を有す
るSEM共重合物を、顔料として、有機顔料のフタロシア
ニンブルー（シアン）と第１表に示す割合で混合し、分
散機により分散してインク原料組成物を作成した。な
お、比較例として、上記のSEM共重合物の代りにパラフ
ィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナ
バワックス、酸化ワックス（日本精ロウ製NPS9210）等
をそれぞれ、上記顔料と混合し分散機により分散した。

なお、混合・分散は、先ず、プラネタリーミキサーによ
り予備分散し（160℃,30分）、冷却、固化後、粉砕して
から３本ロールミルにより本分散した（後ロールと中ロ
ールは78℃，前ロールは水冷して10回通し）。

分散物の分散性は、スライドグラス上に、分散物をメル
トコーティングして薄い皮膜とし、これを光学顕微鏡
で、顔料の分散状態、分散粒子の大きさを観察した。分
散物の透明性は、ポリエステルフィルム（12μｍ厚）上
に、分散物をホットメルト状態でバーコーター（ワイヤ
ー径８μｍ）によりコーティングして得たインク皮膜を
目視観察した。

比較例１は、分散性、透明性はすぐれているが顔料の含
有量が少ないために、このインク原料組成物を、後にワ
ックスと混合分散して最終の熱溶融性インクにしたとき
に、インク濃度が薄くなり、適切な混合割合いとはいえ
ない。

実施例１および２は分散性、透明性ともにすぐれてい
た。他方、比較例２に示すように、SEM共重合物に対す
る顔料の混合割合いが一定量以上になると、たとえSEM
共重合物への分散の場合でも分散性が悪くなり、透明性
も秀れているとは云えなくなる。

顔料を、カルナバワックス（比較例５）、酸化ワックス
（比較例６）に、直接分散させると、分散性、透明性は
中程度であり、SEM共重合物の場合よりも劣る。

顔料を、パラフィンワックス（比較例３）、マイクロク
リスタリンワックス（比較例４）に直接分散させると、
分散性は非常に悪く、分散させることはほとんど不可能
である。また、不透明に濁っている。

上表で、○は秀れている、△は中程度、×は劣っている
ことを示す。

実施例３〜９および比較例７〜10 インク原料組成物として、先の実施例２と比較例６の組
成物を用いて、これに、第２表に示すワックス、樹脂を
種々の割合いに加えて、プラネタリーミキサー（130℃,
30分）で混合混練し、最終の熱溶融性インクを作成し
た。

上記インクを、第１図に示すような、通電熱転写シート
１のインク層４として用いた。PET2軸延伸フィルム（６
μｍ厚）３の片面にカーボンブラック粒子を含有したバ
インダーを塗布して通電抵抗層２（抵抗値5.5KΩ／口）
を形成し、PETフィルムの反対側面に、上記インクをホ
ットメルト状態で、バーコーダーによりインク層４（６
μｍ厚）を形成した。

上記通電熱転写シート１に、記録電極５と帰路電極６を
有する通電ヘッドを用いて、熱転写紙（三菱製紙製TT
R）に、シアン色のグレースケール印画を行なった。

ヘッド針巾:55μｍ、印加電圧:25V、パルス巾変調:50μ
sec〜2msec。

印画像について、ドットの均一性（光学顕微鏡）画像の
透明感（目視）、画像の光沢（目視）、インク層が凝集
破壊してドットの一部は転写紙に、残りはシートに残っ
ているか否かの有無（光学顕微鏡）を観察した。これら
の特性値が秀れている場合は○印、劣っている場合は×
印で評価した。

第２表において、本発明のインク原料組成物でも、最終
インクへの含有量が少ないと、印画の特性値が、いづれ
も劣る（比較例７）。

他方、逆に該インク原料組成物の含有量が一定量を越え
ると、却ってドットの均一性、透明感、光沢が劣ってく
る（比較例８）。

最初の顔料分散に、本発明で用いるSEM共重合物を用い
ない場合（比較例9,10）には、印画の特性値は、いずれ
も極めて劣るものであった。

実施例３〜９は、本発明のインク原料組成物を種々のワ
ックス、樹脂と該インク原料組成物の含有量が30〜50重
量％となるように混合混練して最終の熱溶融性インクに
したものであり、これらを用いて通電熱転写した印画像
の特性値は、いずれも従来になく秀れたものであった。

〔発明の効果〕 以上述べたように、着色剤を特定のSEM共重合物と特定
の割合いで混合分散せしめてインク原料組成物となし、
該組成物をワックス系の熱溶融性インクに特定量含有さ
せることにより、着色剤の分散性を均一に微細にし、熱
転写した印画像のドットの均一性、透明感、光沢を良く
し、インクの凝集破壊を無くす、等の効果を有する。

本発明の熱転写用インク原料組成物は、従来のサーマル
ヘッドによる熱転写、通電ヘッドによる通電熱転写等、
いずれの原理であっても、熱付与手段により、熱溶融性
インクを被記録紙に転写して記録を得ることが原理であ
れば、いかなるタイプのプリンターにも供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、通電熱転写シートの構造と、それを通電ヘッ
ドにより通電している原理図を示す。 １……通電熱転写シート ２……通電抵抗層 ３……シート支持体層 ４……熱溶融性インク層 ５……記録電極 ６……帰路電極

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷口 誠 長野県諏訪市大和３丁目３番５号 株式会 社諏訪精工舎内 (72)発明者 臼井 隆寛 長野県諏訪市大和３丁目３番５号 株式会 社諏訪精工舎内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】発熱手段により熱溶融性インクを溶融さ
   せ、被記録紙にインクを転写して記録を得るプリンター
   に共する熱溶融性インクに含有させるインク原料組成物
   として、着色剤、10〜30重量部をスチレンおよびマレイ
   ン酸ジエチルより成り、次の構造式、 ここで、Etはエチル基を表す。 で示され、流動点55〜70℃、150℃での粘度250〜450セ
   ンチポアズを有するスチレン／マレイン酸ジエチル共重
   合物、85〜65重量部に混合し、分散せしめて成るインク
   原料組成物を、熱溶融性インクに30〜50重量％含有せし
   めることを特徴とする熱転写用インク原料組成物。