JPH0669761B2 - 車輛用装飾成形品 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、成形品本体の少なくとも一部に内部の透視可
能な窓部が設けられ、その窓部と空間を介して装飾部材
が成形品本体の内表面側に取り付けられる車輌用装飾成
形品の改良に関するものである。

従来の技術 一般に、この種の車輌用装飾成形品としてはホイールカ
バー，グリル，フィニッシャ，オペラウインドゥ等を挙
げることができる。そのうち、第６図で示すホイールカ
バーを例示すると、第７及び８図に示す如くホイールカ
バー本体１はポリカーボネイト樹脂，メチルメタクル樹
脂等の透明な合成樹脂からほぼ円板状にインジェクショ
ン成形されるものがある。

このホイールカバー本体１には中心部分を除く内表面に
有色な非透明塗料で塗膜２を設け、その塗膜２のない中
心部分を内部の透視可能な窓部３とし、この窓部３と空
間４を隔ててアルミニウム銘板等の識別模様５が設けら
れたプレート状の装飾部材６をホイールカバー本体１の
内表面側に取り付けることが考えられる。また、その装
飾部材６を取り付けるにはシーリング剤７を装飾部材６
の全外周縁とホイールカバー本体１の内表面との臨界に
沿って塗布し、このシーリング剤７が硬化すると共にゴ
ム弾性を呈することにより気密に固着することが考えら
れる。なお、その装飾部材には金属光沢色を含む各種の
着色部分を文字，図形，記号等の識別模様５に合せて表
面側に形成すると装飾性を高められるところから好まし
い。

第９図で示すようなフィニッシャにおいても、第10〜12
図で示す如くフィニッシャ本体10を透明な合成樹脂で形
成し、このフィニッシャ本体10の内表面に一部を除き有
色塗膜11を形成して内部が透視可能な窓部12を設け、そ
の窓部12の内表面側に空間13を隔てて識別表示14等を付
形した装飾部材15をシーリング剤16で気密に固着するこ
とが考えられる。

然し、この車輌用装飾成形品では特別な処理を施さない
限り、空間4,13内に存在する大気中の酸化成分が着色層
成分や液状のシーリング剤に含まれる溶剤或いは外部か
ら入光する紫外線等と相俟って、着色層，特に黄色系統
等を酸化することにより変色させたりまたは退色させた
りする。そのような事態が生じても、装飾部材6,15が既
に固着されているから酸化膜等を抜き取ることができ
ず、装飾性の著しく損なわれたものになってしまう。

発明が解決しようとする課題 本発明は、装飾部材の装飾性を長期間に亘って良好に保
て、また、大気中の酸素の影響や使用環境の温度の影響
等を受け易い車輌用部材の特殊性から劣化等が生ずるの
を防ぐよう改良した車輌用装飾成形品を提供することを
目的とする。

課題を解決するための手段 本発明に係る車輌用装飾成形品においては、透明な材料
から外表面と内表面とを有する所定形状に形成された成
形品本体の表面には所定の形状並びに大きさの窓部を残
して着色層が設けられ、該窓部と対向する位置に、窓部
の形状と対応する形状で且つその大きさよりもやや大き
い大きさを有するほぼ板状の装飾部材が成形品本体の内
表面側に配置され、この装飾部材は、成形品本体の内表
面に窓部と空間を保って気密に取り付けられた裏蓋の窓
部側に支持され、裏蓋には空間内の圧力変化を吸収する
可撓部分が設けられ、該空間内には化学的に不活性なガ
スが封入されて構成されている。

作 用 この車輌用装飾成形品では、成形品本体と装飾部材との
空間内に封入した化学的に不活性なガスが成形品本体の
窓部内表面及び装飾部材の表面の着色層を酸化させない
よう作用し、また、当該空間内が熱変化で気圧変化して
も、その気圧変化を裏蓋の可撓部分で吸収できるところ
から装飾部材が変形し或いは裏蓋が剥離する如き事態が
生ずるのも防げる。

実施例 以下、第１〜５図を参照して説明すれば、次の通りであ
る。

第１及び２図に示す車輌用装飾成形品としては、第６図
で示すと同様なホイールカバーが例示されている。この
ホイールカバー本体20は、ポリカーボネート樹脂，メチ
ルメタクリル樹脂等の透明な合成樹脂からほぼ円板状に
インジェクション成形されている。そのホイールカバー
本体20の内表面には中心部分を除いて、有色塗料で塗膜
21が形成されている。この塗膜21が付着されていない中
央部分は内部を透視可能な窓部22として、所定な形状並
びに大きさで成形品本体20の一部に形成されている。そ
の内表面側には、窓部22と対向する位置に、窓部22の形
状と対応する形状で且つその大きさよりもやや大きい大
きさを有するほぼ板状の装飾部材24が取り付けられてい
る。

この装飾部材24は樹脂プレート或いはアルミ等の金属板
材を基板とし、その表面には凸または凹状に付形成形し
た文字，図形，記号等の識別模様（図示せず）が設けら
れている。この識別模様の表面は他の部分と異なる色調
に着色することにより、窓部22を介して外部側から明瞭
に視認可能なものに形成するとよい。その装飾部材24
は、クッション性を有する弾性材料25を介して裏蓋26で
押えることによりホイールカバー本体20の内表面側に固
着されている。この弾性材料25としては、発泡体で形成
した両面粘着テープ（例えば、米国スリーエム社製「ス
コッチマウント」等）を用いることができる。その両面
粘着テープ25は装飾部材24と裏蓋26との対向面間に挾み
込み、発泡シートの両面に付着した粘着剤を感圧接着す
ることにより両者を固定することができる。また、この
両面粘着テープ25は装飾部材24の数個所に切り貼りし、
部分的に固定するだけでも十分に互いを接合することが
できる。

裏蓋26は第１図で示すように凹状の受縁26aまたはＬ字
状の枠縁を周縁に形成し、ホイールカバー本体20の窓部
22に沿って立ち上げ成形された環状リブ20aと嵌め合せ
ることによりホイールカバー本体20の内表面に窓部22と
空間を保って気密に固着されている。その環状リブ20a
はホイールカバー本体20に形成することに限らず、裏蓋
26の外周縁からホイールカバー本体20に向けてまたは両
者から互いに対向するように設けることができる。ま
た、環状リブ20aと受縁26aとの固着にあたっては装着剤
を用いることができる。或いは、各対向面を高周波振
動，スピン等で摩擦させて摩擦熱による熱溶着で互いを
一体的に融合することにより緊密に固着するようにでき
る。この熱溶着による場合、裏蓋26の材質としてはホイ
ールカバー本体20と相溶性のある材料を用いるのが望ま
しく、更に望ましくは同一または類似の熱膨張係数を有
する材料を用いるのがよい。この裏蓋26をホイールカバ
ー本体20の内表面に固着すると、装飾部材24は窓部22と
の間に空間23を隔ててホイールカバー本体20に取り付け
られる。その装飾部材24はホイールカバー本体20の内表
面に当接配置し、或いはその内表面から多少浮かせて配
置することもできる。また、裏蓋26には装飾部材24との
接合部分を除く個所を伸縮自在な蛇腹状の薄肉部として
付形することにより可撓部分26bが設けられている。こ
の可撓部分26bは空間23の気体が熱膨張または収縮で気
圧変化しても、その気圧変化を吸収するものとして設け
られている。

この裏蓋26とホイールカバー本体20との空間23内には、
ヘリウムガス等の希ガスで化学的に不活性なガス27（点
描）が封入されている。その不活性ガス27は、不活性ガ
スを充填した雰囲気中で装飾部材24が取り付けられた裏
蓋26をホイールカバー本体20の内表面に固着することに
より封入できる。また、予め空間23に連通する微小な透
孔を裏蓋26に二個設け、裏蓋26を固着後に一方の孔から
空気を吸引しつつ他方の孔から不活性ガス27を注入し、
各孔を事後に閉鎖することにより不活性ガス27を空間23
内に封入することができる。この不活性ガス27としては
ヘリウムガス以外に、ネオン，アルゴン等の希ガス或い
は100℃程度までは化学的に不活性な窒素ガス等を用い
ることができる。

第3,4図で示す車輌用装飾成形品としては、第９図と同
様なフィニッシャが示されている。このフィニッシャ本
体30には、一部内表面を横長方形に残して他の部分が有
色塗膜31で塗布されている。その横長方形部分は内部の
透視可能な窓部32として形成され、内表面側には空間33
を隔てて装飾部材34が取り付けられている。この装飾部
材34でも、クッション性のある発泡シートを用いた両面
粘着テープ35で裏蓋36に部分的に固定することによりフ
ィニッシャ本体30に固着するとよい。その裏蓋36は、フ
ィニッシャ本体30に立上り縁30aを設けてフィニッシャ
本体30の内表面に気密に固定されている。また、この裏
蓋36には伸縮自在な蛇腹状の薄肉部による可撓部分36b
が設けられ、その裏蓋36の内部空間33には不活性ガス37
が封入されている。

このように構成する車輌用装飾成形品では、装飾部材2
4,34を配置する空間23,33内に化学的に不活性ガスが封
入されているため、成形品本体20,30の窓部内表面及び
装飾部材24,34の表面に形成した着色層が酸化すること
がなく、長期に亘って初期と同様な色調を保つことがで
きる。また、装飾部材24,34の表面の着色層には特別の
保護層を設ける必要がないところから成形品を安価に製
造できるようになる。その成形品本体20,30と装飾部材2
4,34との空間23,33が熱変化で気圧変化しても、裏蓋26,
36の可撓部分26b,36bが変形することにより気圧変化を
吸収するから、装飾部材24,34を押圧変形し或いは裏蓋2
6,36を成形品本体20,30から離反する方向に押圧するこ
とがない。従って、装飾部材24,34は変形することがな
く、裏蓋26,36が剥離するのも防げる。

また、装飾部材24,34は裏蓋26,36に固着する材料として
クッション性のある弾性材料25,35を用いて裏蓋26,36に
取り付けられている。このため、成形品本体20,30が車
体と共に振動しても、その弾性材料25,35が弾力性を発
揮することにより振動を吸収して装飾部材24,34に直接
伝えず、装飾部材24,34が剥離するのを防ぐ。また、装
飾部材24,34と裏蓋26,36とが熱膨張係数の異なる材料か
ら成形されているときでも、弾性材料25,35が両者の膨
張，収縮量の差を吸収するよう作用することにより装飾
部材が変形したりするのを防げる。更に、裏蓋26,36は
成形品本体20,30との間に比較的大きな空間を隔てて装
飾部材24,34を支持するから、造形的な深みを醸し出さ
せるよう装飾部材24,34を取り付けることができる。

なお、不活性ガス27,37としてヘリウム等の希ガスを使
用したときには、第５図で示すように希ガス検出具40を
用いて装飾部材24,34が確実に気密に取り付けられてい
るかどうかを簡単に検査できる。仮りに、希ガスの漏れ
が僅かでも検出されたときは再度振動，超音波溶着等で
シール加工を行うか、或いは補助的に液状のシール剤を
外周に付着することによりシールを補修することができ
る。

発明の効果 以上の如く、本発明に係る車輌用装飾成形品に依れば、
不活性なガス成形品本体と裏蓋の空間内に封入したこと
により、通常の使用状況下では装飾部材の表面が変色或
いは退色せずに長期間に亘って良好な装飾性を保つこと
ができる。また、成形品本体と裏蓋との間の空間が気圧
変化しても、裏蓋の可撓部分が変形して気圧変化を吸収
することから装飾部材が変形し或いは裏蓋が剥離するの
を防ぐことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る車輌用装飾成形品の一例を示すホ
イールカバーの部分側断面図、第２図は同成形品の正面
図、第３図は本発明に係る車輌用装飾成形品の別の実施
例として示すフィニッシャの側断面図、第４図は同フィ
ニッシャの部分斜視図、第５図は装飾部材の気密固着状
態を検査する工程の説明図、第６図は一般的な車輌用装
飾成形品として例示したホイールカバーの正面図、第７
図は従来例に係る車輌用ホイールカバーの側断面図、第
８図は同カバーの部分断面図、第９図は一般的な車輌用
装飾成形品として例示したフィニッシャの正面図、第10
図は従来例に係る車輌用フィニッシャの側断面図、第11
及び12図は同フィニッシャの部分断面図である。 20,30:成形品本体、22,32:窓部、23,33:空間、24,34:装
飾部材、26,36:裏蓋、26b,36b:裏蓋の可撓部分、27,37:
不活性ガス。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】透明な材料から外表面と内表面とを有する
   所定形状に形成された成形品本体の表面には所定の形状
   並びに大きさの窓部を残して着色層が設けられ、該窓部
   と対向する位置に、窓部の形状と対応する形状で且つそ
   の大きさよりもやや大きい大きさを有するほぼ板状の装
   飾部材が成形品本体の内表面側に配置され、この装飾部
   材は、成形品本体の内表面に窓部と空間を保って気密に
   取り付けられた裏蓋の窓部側に支持され、裏蓋には空間
   内の圧力変化を吸収する可撓部分が設けられ、該空間内
   には化学的に不活性なガスが封入されていることを特徴
   とする車輌用装飾成形品。
2. 【請求項２】上記不活性ガスとして、ヘリウムガス等の
   希ガスを封入したところの特許請求の範囲第１項記載の
   車輌用装飾成形品。