JPH0669374U - 斜板式圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 斜板の外周面とピストンの凹部の底面との間
に潤滑油を供給して、接触抵抗を低減すること。 【構成】 圧縮機本体３の中心に支持された回転軸５の
周りにシリンダボア１ａ，２ａを形成し、内部に両頭の
ピストン４を摺動可能に嵌装する。回転軸５には、一定
角度傾斜した斜板８を固定する。ピストン４の中央部
に、斜板８の外縁部を受け入れる凹部１１を形成する。
この凹部１１の前後端部に半球状の摺動子１０，１０を
摺動自在に嵌合させる。斜板８の軸心側には油溜溝１２
を設ける。この油溜溝１２から斜板８の外周面までのび
た給油孔１３を形成する。回転軸５と共に斜板８が回転
すると、摺動子１０を介してピストン４が往復動する。
このとき、被圧縮ガス中に含まれた潤滑油ミストが斜板
８に付着し、油溜溝１２に集まり、遠心力により給油孔
１３を通じて斜板８の外周面に吐出される。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、斜板の回転をピストンの往復動に変換して圧縮作用を得る斜板式圧 縮機、特に斜板の外周部とこれに対向するピストンとの摩擦の対策に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来の斜板式圧縮機は、回転軸に一定角度傾斜して斜板が固着されており、回 転軸の軸周りに平行に複数のシリンダが設けられている。シリンダ内のピストン の軸側中間部には、斜板を受け入れる凹部が設けられている。この凹部には、斜 板を挟むように対向してほぼ半球状の摺動子が係合している。この摺動子の平面 部は斜板に摺接して、斜板の駆動力をピストンに伝達する。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

この種の斜板式圧縮機においては、衝撃音を低減するために斜板の外周面とピ ストンの凹部底面との間隙が小さく形成されている。従って、運転時に常時接触 し、これによって斜板と凹部の底面との接触部が摩耗したり、焼き付け等が生じ る。また、斜板に押されてピストンが湾曲し、ピストンの摺動抵抗が増し、駆動 効率を低下させるという問題がある。

【０００４】 そこで、本考案は、斜板の外周面とピストンの凹部底面とに潤滑油を供給して 、接触抵抗を低減することを課題としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

本考案によれば、回転軸に一定角度傾斜して固着された斜板と、前記回転軸に 平行に設けられたシリンダ内に嵌装されたピストンと、前記ピストンに設けられ た凹部に係合する球面部をもち、前記斜板の軸方向端面に接して該斜板の回転を 許容しつつこれに伴う軸方向の往復動を前記ピストンに伝達する摺動子とを含む 斜板式圧縮機において、前記斜板の軸方向端面のうち前記摺動子に接触する部分 よりも径方向内側の部分に形成した部分的な溝と、前記溝と前記斜板の外周面と を結ぶ貫通孔とを設けたことを特徴とする斜板式圧縮機が得られる。

【０００６】

【作用】

本考案の斜板式圧縮機においては、斜板が回転してピストンが往復動すると、 被圧縮ガス中に混入された潤滑油ミストが斜板の軸方向端面に付着して溝内に液 状潤滑油として集まる。さらにこの液状潤滑油は遠心力によって貫通孔を通じて 斜板の外周面に吐出される。これによって、斜板の外周面とこれに対向するピス トンとの間に油膜が形成され摩擦接触を円滑にする。

【０００７】

【実施例】

本考案の実施例を図面を参照して説明する。

【０００８】 図１は本考案による斜板式圧縮機の一実施例を示している。図１において、１ ，２は互いにほぼ対称な形状を成すシリンダブロックである。シリンダブロック １，２を接合することにより圧縮機本体３が構成される。各シリンダブロック１ ，２の内部には、軸周りに平行に複数のシリンダボア１ａ，２ａが形成されてい る。シリンダボア１ａ，２ａ内には、両頭のピストン４が摺動可能に嵌装されて いる。圧縮機本体３の中心孔３ａには、軸受け６，７によって回転可能に支持さ れた回転軸５が挿通している。回転軸５の中央部には、斜板８がスプリングピン ９によって固定されている。この斜板８は回転軸５に直交する平面に対して所定 の角度で傾斜している。

【０００９】 ピストン４の中央部には凹部１１が形成されている。この凹部１１の前後端面 は半球状を成し、ここに摺動子１０，１０が摺動自在に嵌合している。即ち、摺 動子１０は半球状を成す。

【００１０】 斜板８の周縁部はピストン４の凹部１１内において摺動子１０，１０に摺動接 触するように挟まれている。従って、摺動子１０は、斜板８の軸方向端面のピス トン４に対する当たり角度の変化に応じて揺動及び自転する。

【００１１】 斜板８の外周面とピストン４の凹部１１の底面とは僅かな間隙を有する。斜板 ８の軸方向端面のうち摺動子１０に接触する部分よりも径方向内側の部分には、 軸方向端面に対して段部を形成するように部分的に油溜溝１２が設けられている 。油溜溝１２は、斜板８の回転時に液体を保持する機能をもつ形状を有する。

【００１２】 斜板８にはさらに、油溜溝１２と斜板１２の外周面とを結ぶ貫通した給油孔（ 貫通孔）１３が設けられている。給油孔１３は、油溜溝１２の内面のうち斜板８ の放射方向で最も外側に位置する部分に開口し、かつ回転軸５に直交する平面と 実質的に平行にのびている。

【００１３】 １４はスラスト軸受である。シリンダブロック２の端面には、サクションバル ブシート１５、バルブプレート１６及びガスケット１７を間に挟んでフロントハ ウジング２０が固定されている。バルブプレート１６には吸入口１６ａ，吐出口 １６ｂが形成されており、夫々サクショウバルブシート１５、及び図示しないデ ィスチャージバルブリードと共同して複数の吸入弁１８及び吐出弁１９を構成し ている。各吸入弁１８はフロントハウジング２０に形成された共通の吸入室２１ から被圧縮ガスを吸入し得る位置に設けられており、各吐出弁１９は共通の吐出 室２２へ圧縮ガスを吐出し得る位置に設けられている。

【００１４】 回転軸５は、フロントハウジング２０の中央部を貫通して外部に突出し、この 突出端において自動車のエンジン等の駆動源（図示せず）に接続される。回転軸 ５とフロントハウジング２０とは軸封装置２３によって気密が保たれている。

【００１５】 一方、シリンダブロック１の端面には、サクションバルブシート３１、バルブ プレート３２、ガスケット３３を挟んでリヤハンジング３４が固定されており、 各シリンダボア１ａは吸入弁３５を介して吸入室３６に、また吐出弁３７を介し て吐出室３８に接続されている。

【００１６】 吸入室２１と吸入室３６とは圧縮機本体３を軸方向に貫通して形成された図示 しない吸入通路よって互いに連通しており、同じく図示しない共通の吸入フラン ジによって吸入管に接続されている。また、吐出室２２と３８とは夫々バルブプ レート１６，３２に形成された孔３９，４０とシリンダブロック２，１に形成さ れた吐出通路４１，４２によって共通の吐出フランジ４３に接続されている。

【００１７】 本実施例の斜板式圧縮機においては、回転軸５が駆動源によって回転させられ ると、回転軸５に固定された斜板８が回転し、摺動子１０を介してピストン４が 往復動する。このとき、摺動子１０は、斜板８面のピストン４に対する当たり角 度の変化に応じて揺動及び自転すると共に、その平面部１０ｂが斜板８に摩擦接 触する。ピストン４の往復動により、吸入室２１，３６から吸引した被圧縮ガス が圧縮され、吐出室２２，３８を通じて吐出フランジ４３から排出される。この 際、被圧縮ガス中に含まれた潤滑油ミストが斜板８に付着し、油溜溝１２に溜ま る。そして、その潤滑油は、遠心力により給油孔１３を通じて斜板８の外周面に 吐出する。従って、この外周面とピストン４の凹部１１の底面との間に油膜が形 成されて両者の直接の摩擦接触が回避され摺動を円滑にする。

【００１８】 図２に示すように、給油孔１３を回転軸５に直交する平面に関し斜板８とは反 対向きに傾斜してのびるように形成するとともに、油溜溝１２を給油孔１３の延 長軸線に沿って形成することは好ましい。これによれば、給油孔１３の形成作業 を簡単に実施できる。即ち、ドリルを斜板８の外周面側から又は油溜溝１２の内 部から適用して貫通させることで、給油孔１３を簡単に形成することができる。

【００１９】

【考案の効果】

以上のように、本考案によれば、斜板の外周面とピストンの凹部の底面とが振 動等により接触しても、被圧縮ガス中に混合された潤滑油が溝から貫通孔を通し て斜板の外周面に供給されるので、斜板の外周面と凹部の底面との摩耗や焼き付 き等を防止することができる。従って、ピストンの湾曲による摺動抵抗の増加を 回避し、駆動効率を向上させることができるという効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案による斜板式圧縮機の一実施例の縦断面
図である。

【図２】本考案による斜板式圧縮機の他の実施例の要部
のみの拡大断面図である。斜板縁部の拡大断面図であ
る。

【符号の説明】

４ ピストン ５ 回転軸 ８ 斜板 １０ 摺動子 １１ 凹部 １２ 油溜溝 １３ 給油孔（貫通孔）

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転軸に一定角度傾斜して固着された斜
   板と、前記回転軸に平行に設けられたシリンダ内に嵌装
   されたピストンと、前記ピストンに設けられた凹部に係
   合する球面部をもち、前記斜板の軸方向端面に接して該
   斜板の回転を許容しつつこれに伴う軸方向の往復動を前
   記ピストンに伝達する摺動子とを含む斜板式圧縮機にお
   いて、前記斜板の軸方向端面のうち前記摺動子に接触す
   る部分よりも径方向内側の部分に形成した部分的な溝
   と、前記溝と前記斜板の外周面とを結ぶ貫通孔とを設け
   たことを特徴とする斜板式圧縮機。
2. 【請求項２】 請求項１記載の斜板式圧縮機において、
   前記溝は前記斜板の回転時に液体を保持する機能をもつ
   形状を有し、前記貫通孔は前記溝の内面のうち前記斜板
   の放射方向で最も外側に位置する部分に開口しているこ
   とを特徴とする斜板式圧縮機。
3. 【請求項３】 請求項１又は２記載の斜板式圧縮機にお
   いて、前記貫通孔は前記回転軸に直交する平面と実質的
   に平行にのびていることを特徴とする斜板式圧縮機。
4. 【請求項４】 請求項１又は２記載の斜板式圧縮機にお
   いて、前記貫通孔は前記回転軸に直交する平面に関し前
   記斜板とは反対向きに傾斜してのびており、前記溝は前
   記貫通孔の延長軸線に沿って形成されたものであること
   を特徴とする斜板式圧縮機。