JPH0667947U - 捩り振動低減装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 サイドカバーを貫通する組付構造を無くすこ
とによってシール部品を少なくする。部品点数を少なく
して組付作業を容易にする。 【構成】 ハブ１とサイドカバー４とを圧縮ばね８を介
して回動方向で弾性的に連結する。ハブ１とサイドカバ
ー４の間を液密封止し、その間に粘性流体を充填する。
圧縮ばね８の端部を支持するアーム１９と、回動規制機
構を構成するストッパ部２０とを補助プレート１６，１
７に形成する。補助プレート１６，１７をサイドカバー
４の内側壁に溶接固定する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は自動車のエンジンと変速機の間の動力伝達部等に用いられる捩り振動 低減装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

自動車の動力伝達系に用いられる捩り振動低減装置は、エンジン側に結合され る入力部材と変速機側に結合される出力部材とを所定角度相対回動できるように 組み付けると共に、これら両者を圧縮ばねによって回動方向で弾性的に連結し、 エンジン側から変速機側に入力される捩り振動を圧縮ばねの吸振作用によって低 減させるようになっている。ところが、このように入力部材と出力部材とを圧縮 ばねによって連結すると、エンジンの回転数がアイドル回転数以下の所定値に達 したときに動力伝達系が共振する不具合を生じるため、粘性流体の減衰作用を利 用してこの共振を抑えるようにした捩り振動低減装置が案出されている。

【０００３】 この装置は、入力部材としてのハブの軸方向両側に、このハブの外縁部を覆う ように出力部材としてのサイドカバーが液密封止下に組み付けられ、ハブとサイ ドカバーとが圧縮ばねによって回動方向で弾性的に連結されると共に、サイドカ バーとハブの間に粘性流体が充填され、両者の間の捩り方向の過大振動をこの粘 性流体の減衰作用によって低減させるようになってる。そして、ハブとサイドカ バーの間には回動規制機構が設けられていて、この回動規制機構によって両者の 相対回動角度を設定値以下に抑えるようになっている。

【０００４】 ところで、従来におけるこの種の捩り振動低減装置の場合、ハブ側には、圧縮 ばねを収容するためのばね受容部と、回動規制機構を構成するストッパ溝とが形 成されており、サイドカバー側には、前記ばねの両端をハブの両側から支持する ばね支持片と、前記ストッパ溝と共に回動規制機構を構成するストッパピンとが 設けられている。そして、ばね支持片はサイドカバーの各側壁の内面に夫々リベ ットによって取り付けられ、ストッパピンは、両端部がサイドカバーの側壁にか しめ固定によって取り付けられている。

【０００５】 尚、この類似技術は、例えば、実開昭５５−７４８２号公報等に示されている 。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

上記従来の捩り振動低減装置の場合、サイドカバーに対してばね支持片やスト ッパピンをリベット止めやかしめ固定によって取り付けているため、サイドカバ ーの各側壁にこれらの部品を取り付けるための貫通孔を穿設しなければならず、 そのために、これらの取付部の周域には複雑なシール構造を配設する必要がある 。このため、上記従来の装置においては、部品点数が多く組付作業が煩雑である ことが問題となっていた。

【０００７】 そこで本考案は、サイドカバーを貫通する部品の組付構造を無くすことによっ てシール部品を少なくし、部品点数が少なく組付作業が容易な捩り振動低減装置 を提供しようとするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

本考案は上述した課題を解決するための手段として、ハブと、このハブの外縁 部を液密封止下に覆うサイドカバーとが圧縮ばねを介して回動方向で弾性的に連 結され、前記サイドカバーとハブの間に、ハブとサイドカバーの相対回動時に減 衰力を発生する粘性流体が充填されると共に、両者の相対回動角度を規制する回 動規制機構が設けられた捩り振動低減装置であって、サイドカバー側に、圧縮ば ねの端部を支持するばね支持部と、前記回動規制機構を構成するストッパ部とが 設けられたものにおいて、前記サイドカバーの内側壁に、前記ばね支持部とスト ッパ部とを有する補助プレートを固定するようにした。

【０００９】

【作用】 補助プレートをサイドカバーに固定するだけで、ばね支持部とストッパ部とが サイドカバーの内部に配置されることとなる。

【００１０】

【実施例】

次に、本考案の一実施例を図１〜図９に基づいて説明する。

【００１１】 図面において、１は、ボルト２によってエンジンのクランクシャフト３に結合 されるハブであり、このハブ１には、その外縁部を液密封止下に覆うサイドカバ ー４が組み付けられ、さらに、このサイドカバー４がその両側壁を軸方向に貫通 する複数のボルト５によってトルクコンバータのコンバータハウジング６に結合 されている。

【００１２】 ハブ１は、円周方向に沿う複数のばね受容部７を有し、この各ばね受容部７に 一対の圧縮ばね８，８が収容されている。ばね受容部７の仕切部には、サイドカ バー４のボルト貫通部４ａを回避して径方向外方に延出するアーム９が設けられ ており、この各アーム９の先端にはローラ１０がピン１１によって取り付けられ ている。また、ハブ１の内周縁部には、軸方向に所定長さ突出する円筒部１２が 一体に形成されていて、この円筒部１２の内周側にシール部材１３が取り付けら れ、外周側に軸受１４が取り付けられている。尚、図中１５は、ハブ１の各ばね 受容部７に臨む部位に円周方向に沿って形成されたストッパ溝である。

【００１３】 一方、サイドカバー４は２枚の円盤状プレートが外周端部で互いに溶接されて 成り、両プレートの側壁部内側には本考案の要部をなす補助プレート１６，１７ が溶接固定されている。この補助プレート１６，１７は、環状のプレート基体１ ８の外周にばね支持部としての扇状のアーム１９が複数個突設されると共に、プ レート基体１８の内側面の所定位置に、前記ストッパ溝１５と共に回動規制機構 を構成するストッパ部２０が突設されている。アーム１９は、サイドカバー４の 内部において前記ばね受容部７内の圧縮ばね８，８の端部と当接し、ハブ１とサ イドカバー４とを圧縮ばね８，８によって回動方向で弾性的に連結させるように なっている。また、両補助プレート１６，１７のストッパ部２０，２０は、ハブ １のストッパ溝１５内で互いに突き合わされ、ハブ１とサイドカバー４が設定角 度以上相対回動したときにストッパ溝１５の端部と当接して両者１，４の相対回 動を規制するようになっている。さらに、こうしてサイドカバー４と一体化され た補助プレート１６，１７は夫々軸受１４によってハブ１の円筒部１２に支持さ れ、サイドカバー４とハブ１とはシール部材１３によって回転可能に液密封止さ れている。そして、こうして液密封止されたサイドカバー４の内部には粘性流体 が充填されている。

【００１４】 また、サイドカバー４の内壁のボルト貫通部４ａからその径方向外方に亙る部 位には、外周端に折曲片２１ａを有するガイドプレート２１が溶接固定されてお り、このガイドプレート２１の折曲片２１ａには複数の環状プレート２２が外周 溝２２ａ部分で係止されている。この各環状プレート２２の間には隙間設定リン グ２３が介装され、こうして形成された各プレート２２間の隙間にはディスクプ レート２４が介装されている。ディスクプレート２４はその径方向内側端に周方 向に沿う長孔２４ａを有し、この長孔２４ａが前記ハブ１に取り付けられたロー ラ１０に嵌合されている。環状プレート２２とディスクプレート２４はサイドカ バー４の内部で減衰力発生部を構成するもので、ハブ１とサイドカバー４が設定 角度θ₀以上相対回動したときに、プレート２２，２４が相対回動して両者間の 隙間で粘性流体による減衰力を発生するようになっている。つまり、ディスクプ レート２４とハブ１は長孔２４ａとローラ１０とで係合されているため、ハブ１ とサイドカバー４が設定角度θ₀相対回動したところではじめてディスクプレー ト２４とハブ１とが一体化され、この後さらにハブ１とサイドカバー４が相対回 動すると、プレート２２，２４が相対回動して減衰力を発生する。

【００１５】 さらにまた、サイドカバー４内のボルト貫通部４ａの径方向内方位置には、環 状の基部２５ａと、この基部２５ａから径方向内方に突出する複数の突起２５ｂ とから成る遊動子２５が内装されている。この遊動子２５は、ハブ１とサイドカ バー４に対して相対回動可能に組み付けられると共に、各突起２５ｂがばね受容 部７内の圧縮ばね８，８間に介装されて両ばね８，８を常時直列に作用させるよ うになっている。また、環状の基部２５ａの側面には周方向に亙って複数の凹部 ２６が形成されていて、この凹部２６によって基部２５ａがハブ１のアーム９と 干渉するのを回避するようになっている。

【００１６】 尚、図中２７は、サイドカバー４の外周側に溶接固定されて、エンジン始動時 にスタータモータのピニオン（図示せず。）と噛合するリングギヤであり、２８ は、サイドカバー４とガイドプレート２１のボルト貫通部を液密封止するシール リング、２９は、環状プレート２２を位置決めするためのリング部材である。

【００１７】 この捩り振動低減装置は以上のような構成であるため、常用域における動力伝 達系の捩り振動は、ハブ１とサイドカバー４の間に介装した圧縮ばね８，８の吸 振作用によって低減させる。また、エンジンの回転数が動力伝達系の共振点に近 付き、ハブ１とサイドカバー４の相対回動角度が設定角度θ₀以上になった場合 には、ローラ１０と長孔２４の当接に伴ってディスクプレート２４と環状プレー ト２２とが相対回動し、両者間で発生する粘性流体による減衰力により動力伝達 系の捩り共振を低減させる。そして、ハブ１とサイドカバー４の間の回動方向の 過大変動はストッパ部２０とストッパ溝１５とから成る回動規制機構によって規 制される。

【００１８】 この捩り振動低減装置の場合、補助プレート１６，１７に、圧縮ばね８，８の 端部を支持するためのアーム１９と、回動規制機構を構成するストッパ部２０と を一体に形成して、この補助プレート１６，１７をサイドカバー４の内側壁に溶 接するようにしたため、部品取り付けのための貫通孔をサイドカバー４に設ける 必要が無くなり、その分シール部材の部品定数が少なくなり、組付作業も容易に なる。さらに、圧縮ばね８，８を支持する部品や回動規制機構を構成する部品を 夫々リベット止めやかしめ固定によってサイドカバー４に取り付けていた従来の ものに比較した場合、この装置においては、サイドカバー４に対して補助プレー ト１６，１７を溶接するだけで良いため、全体の部品点数も大幅に減少する。

【００１９】 また、この捩り振動低減装置においては、ハブ１に円筒部１２を一体に形成し て、この円筒部１２と各補助プレート１６，１７の間に軸受１４，１４を介装し たため、サイドカバー４はハブ１の軸方向両側で安定して支持されることとなる 。このため、ハブ１とサイドカバー４の間を液密封止するシール部材１３が常時 安定してサイドカバー４の内側壁に摺接することとなり、サイドカバー４とハブ １の間の液密封止はより確実なものとなる。

【００２０】 さらに、この実施例の装置においては、減衰力発生部を構成する環状プレート ２２とディスクプレート２４をサイドカバー４のボルト貫通部４ａの径方向外方 に配置し、発生減衰力に直接関係する剪断面積、及び、剪断トルク半径を大きく 確保しているため、捩り共振を低減させるのに充分な減衰力を得ることが可能で ある。また、この装置の場合、ハブ１とサイドカバー４の相対回動量が設定角度 θ₀以上にならないと、粘性流体による大きな減衰力が発生しないようになって いるため、高周波小振幅の振動の入力時に粘性減衰力が圧縮ばね８，８の吸振作 用に悪影響を及ぼす心配がない。

【００２１】 尚、以上の実施例ではサイドカバーに補助プレートを溶接固定しているが、こ れに限らず接着剤による固定も可能である。また、本考案にかかる捩り振動低減 装置を採用する場所も自動変速機を含む動力伝達系に限らず、手動変速機を含む 動力伝達系であっても良い。

【００２２】

【考案の効果】

以上のように本考案は、サイドカバーの内側壁に、ばね支持部とストッパ部と を有する補助プレートを固定して、サイドカバーを貫通する部品の組付構造を無 くしたため、ばね支持部とストッパ部の取付部周域にシール部品を配設する必要 がなく、従来のものに比較して部品点数が少なく組付作業も容易になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す断面図。

【図２】同実施例のサイドカバーの一部を破断した状態
を示す正面図。

【図３】同実施例の部品の正面図。

【図４】同実施例の部品の正面図。

【図５】同実施例の部品の正面図。

【図６】同実施例の部品の正面図。

【図７】同実施例の部品の正面図。

【図８】同実施例の部品の正面図。

【符号の説明】

１…ハブ、 ４…サイドカバー、 ８…圧縮ばね、 １６，１７…補助プレート、 １９…アーム（ばね支持部）、 ２０…ストッパ部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハブと、このハブの外縁部を液密封止下
   に覆うサイドカバーとが圧縮ばねを介して回動方向で弾
   性的に連結され、前記サイドカバーとハブの間に、ハブ
   とサイドカバーの相対回動時に減衰力を発生する粘性流
   体が充填されると共に、両者の相対回動角度を規制する
   回動規制機構が設けられた捩り振動低減装置であって、
   サイドカバー側に、圧縮ばねの端部を支持するばね支持
   部と、前記回動規制機構を構成するストッパ部とが設け
   られたものにおいて、前記サイドカバーの内側壁に、前
   記ばね支持部とストッパ部とを有する補助プレートを固
   定したことを特徴とする捩り振動低減装置。