JP3264294B2 - 捩じり振動減衰装置 - Google Patents

捩じり振動減衰装置

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JP3264294B2
JP3264294B2 JP15349393A JP15349393A JP3264294B2 JP 3264294 B2 JP3264294 B2 JP 3264294B2 JP 15349393 A JP15349393 A JP 15349393A JP 15349393 A JP15349393 A JP 15349393A JP 3264294 B2 JP3264294 B2 JP 3264294B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、捩じり振動減衰装置、
特に、動力伝達装置の入力側回転体と出力側回転体との
間の捩じり振動を減衰するための捩じり振動減衰装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】動力伝達装置の入力側回転体と出力側回
転体との間に配置され両回転体間の捩じり振動を減衰す
る装置として、流体の粘性力を利用したものが知られて
いる。この種の装置として、たとえば、円周方向に延び
る環状流体室と環状流体室内に円周方向移動自在に配置
されたスライドストッパーとから構成されたものがあ
る。環状流体室はたとえば入力側回転体と一体回転する
ケースにより構成されている。一方、出力側部材の外周
端部には複数の突起部が形成されており、この突起部が
環状ケース内に露出している。前記スライドストッパー
はこの突起に嵌め込まれたキャップ状であり、突起に対
して所定角度円周方向に移動可能である。スライドスト
ッパーと突起との間には粘性流体が通過可能なチョーク
が形成されており、スライドストッパーの一端が突起に
当接するとチョークは閉じられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の捩じり振動
減衰装置では、出力側部材が外周に複数の突起を有して
いるために、この出力側部材を旋盤加工することができ
ない。特に、出力側部材の突起以外の部分をもチョーク
として機能させたい場合には、当該部分を精度良く加工
する必要があるが、突起のために加工が非常に困難とな
る。このため、製造コストが上昇してしまう。
【0004】本発明の目的は、出力側部材の加工を容易
にすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る捩じり振動
減衰装置は動力伝達装置の捩じり振動減衰装置である。
捩じり振動減衰装置は、第1回転部材と、環状の第2回
部材と、複数のスライドストッパーとを備えている。
【0006】前記第1回転部材は環状の流体室を形成す
るための部材である。前記環状の第2回転部材は、外周
面が流体室の一部を形成するとともに、外周面に半径方
向内方へ向かう複数の凹部を有している。前記複数のス
ライドストッパーは環状流体室内に円周方向に移動自
在に配置され、流体室内の内壁と対向する外周面及び内
周面を有し、第2回転部材の凹部内に突出する凹部との
間に流体が通過可能なチョークを形成する突出部を有し
ている。そして、第2回転部材の凹部の円周方向端面
と、スライドストッパーの突出部の円周方向端面に当接
する面とは、外方にいくに従って広がるように同じ角度
で傾斜している。
【0007】
【作用】本発明に係る捩じり振動減衰装置では、環状の
流体室内にスライドストッパーが配置され、このスライ
ドストッパーの突出部が第2回転部材の凹部内に突出し
ている。そして、突出部と凹部との間には流体が通過す
るチョークが形成されており、捩じり振動によりスライ
ドストッパーが流体室内を移動すると、流体がチョーク
を通過する際の抵抗力によって捩じり振動が減衰され
る。また、スライドストッパーの突出部が凹部の円周方
向端面に当接したとき、これらの当接面は互いに傾斜し
ているので、スライドストッパーは半径方向外側に移動
させられるような力が発生し、スライドストッパーの外
周面が流体室の内壁に押し付けられて摩擦力が発生す
る。これにより、比較的大きな減衰力が得られ、振動を
効果的に減衰できる。
【0008】ここでは、第2回転部材の外周部に突起を
設ける必要がない。したがって、第2回転部材の外周面
を旋盤加工でき、この外周面で他のチョークを形成した
い場合にも容易に精度の高いチョークを実現できる。な
お、スライドストッパーは一般的に樹脂等の成形品であ
り、また環状の部品でないため、加工が困難になること
はない。
【0009】
【実施例】図1は、本発明の一実施例が採用された動力
伝達装置全体を示している。以後の説明では、図1の左
方(エンジン側)を前方とし、右方(トランスミッショ
ン側)を後方とする。この動力伝達装置は、主に、フラ
イホイール組立体1と、クラッチディスク101と、ク
ラッチカバー組立体102とから構成されている。
【0010】図1〜図4に示すように、フライホイール
組立体1は、主に、第1フライホイール2と、第2フラ
イホイール3と、第1フライホイール2と第2フライホ
イール3との間に配置された粘性ダンパー機構4とを備
えている。第1フライホイール2はエンジンのクランク
軸の軸端にボルト25によって固定されるようになって
いる。また、第2フライホイール3は、後方の側面にク
ラッチディスク101の摩擦部材が押圧される摩擦面3
aを有している。また、第2フライホイール3の摩擦面
3a側の外周部にはクラッチカバー組立体102のクラ
ッチカバーが固定されている。
【0011】第1フライホイール2は概ね円板状の部材
であり、中心部において後方に突出するボス部2aと、
ボス部2aから外方に延び一体に形成された円板部2b
と、円板部2bの外周側から後方に延びるリム部2cと
を有している。ボス部2aとリム部2cとの間には環状
凹部が形成され、この凹部内には粘性ダンパー機構4が
収容される。ボス部2aの外周には軸方向に並んだ2個
の転がり軸受22,23が装着される。軸受22,23
は、それぞれ両側方にシール部材が装着された潤滑剤密
封型のものであり、ボス部2aの外周面に嵌入されたス
ナップリング24によって、後方への移動を規制されて
いる。
【0012】第2フライホイール3は概ね円板状の部材
であり、内周部がボルト21により粘性ダンパー機構4
のドリブン部材6(後述)に着脱自在に固定されてい
る。また、第2フライホイール3の内周端も転がり軸受
22,23の後方への移動を規制している。また、第2
フライホイール3の内周部には、クラッチディスク10
1側と粘性ダンパー機構4側とを連通させる孔3bが形
成されている。
【0013】粘性ダンパー機構4は、図2及び図3に示
すように、第1フライホイール2に固定された円板状ド
ライブプレート5と、内周部が転がり軸受22,23を
介して第1フライホイール2に支持された円板状のドリ
ブン部材6と、第1フライホイール2及びドライブプレ
ート5からなる入力側の部材とドリブン部材6とを円周
方向に弾性的に連結するコイルスプリング12a,12
b及び12cと、流体の粘性力により捩じり振動を減衰
するための粘性ダンパー部7とから主に構成されてい
る。この粘性ダンパー機構4において、第1フライホイ
ール2とドライブプレート5とドリブン部材6のドリブ
ンボス部6aとにより形成される空間内には粘性流体が
充填されている。ドライブプレート5は、外周端が複数
のボルト19により第1フライホイール2のリム部2c
に固定されており、内周端とドリブン部材6のドリブン
ボス部6aとの間には環状のシール部材20が配置され
ている。このシール部材20及び前述の軸受22,23
のシール部材が、前記空間の半径方向内周端をシールし
ている。
【0014】ドリブン部材6は、円板状に形成された鋳
造部材であり、第1フライホイール2の円板部2bとド
ライブプレート5との間に配置されている。ドリブン部
材6は前述したように内周部に後方に延びるドリブンボ
ス部6aを有している。ドリブンボス部6aには内周側
に転がり軸受22,23が装着されており、またボルト
21により第2フライホイール3の内周部が固定されて
いる。ドリブン部材6には、半径方向中間部に回転方向
の間隔を隔てて6つの窓孔6bが形成されている。窓孔
6bは回転方向に延びており、この窓孔6b内にコイル
スプリング12a,12b及び12cが収容される。
【0015】図3に示すように、ドリブン部材6の6個
の窓孔6bのうち、半径方向に対向する2つの窓孔6b
(図3の上下方向の窓孔)にはコイルスプリング12c
が収容されている。コイルスプリング12cはスプリン
グシート13を介して窓孔6bの円周方向両端面に当接
している。残る4個の窓孔6b内には、大径のコイルス
プリング12aとその中に配置された小径のコイルスプ
リング12bとが収容されている。両コイルスプリング
12a,12bの両端にはスプリングシート13が配置
されているが、自由状態においてはスプリングシート1
3と窓孔6bの円周方向両端面との間には所定の隙間が
確保されている。スプリングシート13は外周支持部1
3aと中央ボス部13bとを有しており、大径のコイル
スプリング12aは外周部がスプリングシート13の外
周支持部13aに支持されており、小径のコイルスプリ
ング12bは内周部がスプリングシート13のボス部1
3bに支持されている。このようにして、コイルスプリ
ング12a,12bがスプリングシート13によって同
心に配置され、互いに干渉するのが防止されている。
【0016】第1フライホイール2とドライブプレート
5とは、それぞれ、各スプリングシート13の端部に当
接する当接部を有しており、これにより第1フライホイ
ール2及びドライブプレート5の入力側の部材とドリブ
ン部材6とは、回転方向に弾性的に連結されていること
になる。図3においては、第1フライホイール2の当接
部2eが図示されている。
【0017】粘性ダンパー部7は、環状流体室7aと、
環状流体室7a内に配置された樹脂成形ストッパー部材
8と、スライドストッパー10とから主に構成されてい
る。環状流体室7aは、第1フライホイールリム部2c
の内周面と、ドリブン部材6の外周面と、第1フライホ
イール円板部2b及びドライブプレート5とで囲まれた
空間によって形成されており、粘性流体が充填されてい
る。ストッパー部材8は、環状流体室7a内において円
周方向等角度間隔で6箇所設けられており、環状流体室
7aを回転方向に6つの室に分割している。ストッパー
部材8はピン9により第1フライホイール2及びドライ
ブプレート5に相対回転不能に連結されている。なお、
ストッパー部材8の半径方向内側面とドリブン部材6の
外周面との間には、分割された室間を粘性流体が通過可
能なチョークC2 が形成されている。ドリブン部材6に
おいて、外周縁で窓孔6b間には、半径方向内側に凹ん
だ凹部6cが形成されている。隣接する凹部6cの中間
には、窓孔6bの中心から半径方向外側に延びて環状流
体室7aに開口する流体補給用孔6dが形成されてい
る。この孔6dは、自由状態においてストッパー部材8
の中心に位置している。
【0018】スライドストッパー10は樹脂成形の部品
であり、各ストッパー部材8の間に配置され、ストッパ
ー部材8によって得られた室をさらに第1大分室14と
第2大分室15とに分割している。スライドストッパー
10は、外周面がリム2cの内周面に沿った円弧状であ
り、内周面はドリブン部材6の外周面に沿った円弧状に
なっている。スライドストッパー10は、半径方向内側
に突出する突起10aを中心に有している。突起10a
は、ドリブン部材6の凹部6c内に配置されて、凹部6
c内を回転方向に第1小分室16と第2小分室17とに
分割している。また、突起10a先端と凹部6cの底面
との間には第1小分室16と第2小分割17との間で粘
性流体が通過可能なチョークC1 が形成されている。チ
ョークC 1 はチョークC2 より流路断面積が大きく形成
されている。さらに、凹部6cの円周方向端面と、そこ
に当接することによりチョークC1 を閉じるスライドス
トッパー突起10aとは、外方にいくに従って広がるよ
うに同じ角度で傾斜している。これにより、スライドス
トッパー10が円周方向に移動して凹部6cの円周方向
端面に当接しさらに押され続けると、スライドストッパ
ー10を半径方向外側へと移動させる分力が発生するよ
うになっている。
【0019】環状流体室7aの半径方向内側は、テフロ
ンまたは耐熱性及び耐磨耗性の樹脂により形成された環
状のシール部材11によりシールされている。シール部
材11は、第1フライホイール2及びドリブン部材6の
間とドライブプレート5及びドリブン部材6の間とに配
置されている。図5に詳細に示すように、一方のシール
部材11は、第1フライホイール2に形成された環状溝
2dとドリブン部材6の端面との間で移動自在に配置さ
れている。環状流体室7aに圧力がかかっていないとき
はシール部材11は、図で点線で示すように環状溝2d
内に配置されているが、環状流体室7aに圧力がかかる
と図の実線の位置に移動し、環状流体室7aの半径方向
内周側をシールする。ドライブプレート5側にも同様な
環状溝が形成されており、この環状溝内に他方のシール
部材11が配置されている。
【0020】このような構成では、ドリブン部材6は、
外周側に突出する突起を有していないため、チョークC
2 を形成する外周面を旋盤により容易にかつ高精度に加
工できる。このように加工が容易になることで、製造コ
ストが低下する。なお、スライドストッパー10は成形
品であるので、突起の形成は容易である。次に上述の実
施例の動作について説明する。
【0021】エンジン側のクランク軸から第1フライホ
イールにトルクが入力されると、粘性ダンパー機構4の
ドリブン部材6、コイルスプリング12a,12b,1
2c等を介して第2フライホイール3にトルクが伝達さ
れる。このとき、エンジン側から捩じり振動が入力され
ると、コイルスプリング12a,12b,12cが伸縮
を繰り返し、粘性減衰部7が粘性抵抗力を発生させて捩
じり振動を減衰する。
【0022】次に、第1フライホイール2と第2フライ
ホイール3との相対回転時の動作について説明する。エ
ンジン側のクランク軸から第1フライホイール2にトル
クが入力されると、第1フライホイール2及びドライブ
プレート5がドリブン部材6に対して捩じれる。ここで
は、自由状態の図4からR1 側に回転するとする。ドラ
イブ部材6に対してドライブプレート5が回転方向R1
側に捩じれると、スライドストッパー10も同様にR1
側へと移動する。これにより、第2小分室17の容積が
小さくなると同時に、第1小分室16の容積が大きくな
る。すなわち、スライドストッパー10の移動に伴って
第2小分室17の流体がチョークC1 を通って第1小分
室16へと流れる。チョークC1 は流路断面積が大きい
ので、粘性抵抗は小さい。また、この小さな捩じり角度
範囲では、コイルスプリング12cのみが圧縮され、コ
イルスプリング12a,12bはスプリングシート13
がドリブン部材6の窓孔6b面に当接するまで圧縮され
ない。このようにして、捩じり角度の小さい範囲では、
低剛性かつ小さな粘性力が働く。
【0023】回転方向R1 側への捩じり角度が大きくな
ると、スライドストッパー10の突起10aがドリブン
部材6の凹部6cの円周方向端面に当接する(図6)。
これにより、チョークC1 は閉鎖され、以後はチョーク
2 が機能する。突起10aが凹部6c円周方向端面に
押し付けられることにより、両当接傾斜面に垂直な力A
が発生する。力Aは、円周方向への分力Bと半径方向外
側への分力Cとに分解できる。この分力Cと遠心力とに
より、スライドストッパー10は半径方向外側に押さ
れ、スライドストッパー10の外周面がリム部2cの内
周面に押し付けられ、その隙間内の粘性流体を押し出
す。このようにして、以後ドリブン部材6側に固定され
た状態のスライドストッパー10に対して、第1フライ
ホイール2が相対回転を続けると、両者間に乾燥摩擦に
より大きな抵抗力が生じる。この抵抗力は、両当接傾斜
面の角度を変更することで調整できる。
【0024】図6から図7へとさらに捩じり角度が大き
くなると、コイルスプリング12a,12bの圧縮が開
始される。このため、剛性の高い2段目の捩じり特性が
得られる。同時に、第1大分室14内の流体がチョーク
2 を通って第2大分室15へと流れる。ここでは、チ
ョークC2 の流路断面積が小さいために大きな粘性抵抗
が得られる。この粘性抵抗に前述の乾燥摩擦抵抗が加わ
ることで、従来得られなかった大きな抵抗力が得られ
る。
【0025】さらに、このときに、ストッパー部材8が
1 側に移動することによって、ドリブン部材6の液体
補給用孔6dが第2大分室15に対して開口する。その
ため、ドリブン部材6の窓孔6b内に溜まっている流体
は、遠心力と拡大する第2大分室15からの吸引力とに
より、速やかに第2大分室15内に流れ込む。窓孔6b
内は、環状流体室7aの半径方向内側で最も多く粘性流
体が溜まっている個所であるために、環状流体室7aに
充分な量の流体を戻すことができ、環状流体室7aに流
体が不足しにくくなる。
【0026】図7から図8へと捩じり角度が大きくなる
と、ストッパー部材8がスライドストッパー10に当接
する。これにより、第1フライホイール2及びドライブ
プレート5とドリブン部材6との間の相対回転は停止す
る。図9は、フライホイール組立体1の捩じり特性線図
であり、実線で静的捩じり特性を、点線で動的捩じり特
性を示している。静的捩じり特性において、捩じり角度
が小さい範囲で見られる小さなヒステリシスH1 の領域
は、スライドストッパー10がドリブン部材6に対して
捩じれてチョークC1 が機能する角度範囲である。大き
いヒステリシストルクH2 は、チョークC2 によって発
生する大きなヒステリシストルクである。捩じり角度が
大きくなった領域での小さなヒステリシストルクH1
見られるのは、ドリブン部材6に対してドライブプレー
ト5が一定角度捩じれた状態で、小さな捩じり振動(例
えば燃焼変動)が生じた際には、スライドストッパー1
0がドリブン部材凹部6c円周方向端から離れてチョー
クC1 が機能するからである。このようにして、ドライ
ブプレート5とドリブン部材6との相対角度にかかわら
ず小さなヒステリシストルクH1 を発生することができ
るので、たとえば燃焼変動時の微少振動を効果的に減衰
できる。
【0027】この図の動的捩じり特性において、粘性力
は従来に比べて非常に大きくなっている。この理由とし
ては、主に以下の点が挙げられる。 ◎環状流体室7aにドリブン部材6の窓孔6aから充分
な量の流体が戻されるので粘性流体が不足しにくい。 ◎シール部材11が環状流体室7aをシールしており、
さらにドリブン部材6が一体物であるので流体の漏れが
少なくなっている。
【0028】◎スライドストッパー10の外周面がリム
部2cの内周面に押し付けられることにより生じる乾燥
摩擦力が加わっている。このように大きな捩じり角度に
対して大きな粘性減衰力が働くようになっているので、
ティップイン・ティップアウト時の車体の前後振動やエ
ンジン始動時の振動が抑制される。
【0029】次に、このフライホイール組立体1の組立
方法について説明する。まず、ドリブン部材6のドリブ
ンボス部6aの内周部に転がり軸受22,23を圧入す
る。次に、この軸受22,23が装着されたドリブン部
材6を第1フライホイール2に取り付ける。このとき、
軸受22,23を第1フライホイール2のボス部2a外
周に圧入する。なお、シール部材11は第1フライホイ
ール2の環状溝2d内に予め挿入しておく。ドリブン部
材6を第1フライホイール2に装着した後、スナップリ
ング24をボス部2aに装着する。さらに、ドリブン部
材6にスプリングシート13、コイルスプリング12
a,12b,12cを取り付ける。そして、環状流体室
7aにストッパー部材8をピン9により取り付け、さら
にスライドストッパー10を挿入する。次に、シール部
材11が環状溝内に挿入されたドライブプレート5をボ
ルト19により第1フライホイール2のリム部2cに固
定する。続いて、ドライブプレート5の内周とドリブン
ボス部6a外周との間にシール部材20を挿入する。
【0030】以上のようにして粘性ダンパー機構4を組
み立てた後、ボルト21を用いてドリブン部材6のドリ
ブンボス部6aに第2フライホイール3を固定する。こ
のような組立方法では、ボルト21を取り外したりある
いは締め付けるだけで容易に第2フライホイール3を着
脱できる。しかも第2フライホイール3の着脱に際し
て、軸受22,23やシール部材20を着脱する必要が
ないので、軸受22,23の寿命低下を防止でき、シー
ル部材20を長期間にわたって使用できる。他の実施例 本発明の他の実施例として、図10に示すように、液体
補給用孔の位置を変更して、捩じり特性を調整すること
が可能である。図10に示すように流体補給用孔51が
回転方向R1 側にずれていると、スライドストッパー1
0がドリブン部材6に当接した時点で(前記実施例の図
6の状態)流体補給用孔51が第1大分室14に対して
開いている。すると、チョークC2 は、ストッパー部材
8が流体補給用孔51を塞ぐまで機能しない。このよう
に、流体補給用孔の位置、大きさ及び個数を変更するこ
とにより、捩じり特性の調整が可能である。
【0031】さらに他の実施例として、ドリブン部材と
ドリブンボス部が別体になった例を図11に示す。ここ
では、前記実施例のドリブン部材が3枚のドリブンプレ
ート66で構成されている。ドリブンプレート66の内
周には波形内歯66aが形成されており、この波形内歯
66aに噛み合う波形外歯がドリブンボス86外周に形
成されている。このようにドリブンプレート66とドリ
ブンボス86とがセレーションにより分離されているこ
とにより、第2フライホイール3の振れがドリブンプレ
ート66側に影響を与えにくくなる。この実施例でも、
第2フライホイール63の着脱は容易であり、転がり軸
受82,83の耐久性が向上している。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明に係る構造では、環
状の第2回転部材の外周部に突起を設ける必要がない。
このため、第2回転部材の外周面を旋盤加工することが
可能となり、容易に高精度の加工を行え、製造コストを
抑えることができる。また、スライドストッパーの突出
部が凹部の円周方向端面に当接することにより、スライ
ドストッパーの外周面が流体室の内壁に押し付けられて
摩擦力が発生し、これにより振動を効果的に減衰でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例が採用された動力伝達装置の
概略断面図。
【図2】図1の部分拡大図であり、フライホイール組立
体の断面図。
【図3】図2のIII −III 断面図。
【図4】図3の部分拡大図。
【図5】図2の部分拡大図。
【図6】捩じれ動作の一段階を示す図4に相当する図。
【図7】捩じれ動作の一段階を示す図4に相当する図。
【図8】捩じれ動作の一段階を示す図4に相当する図。
【図9】フライホイール組立体の捩じり特性線図。
【図10】別の実施例の図4に相当する図。
【図11】さらに別の実施例の図2に相当する図。
【符号の説明】
1 フライホイール組立体 2 第1フライホイール 3 第2フライホイール 4 粘性ダンパー機構 5 ドライブプレート 6 ドリブン部材 6c 凹部 7 粘性ダンパー部 10 スライドストッパー 10a 突起
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16F 15/16 F16F 15/129 F16F 15/139

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】動力伝達装置の捩じり振動減衰装置であっ
    て、 環状の流体室を形成するための第1回転部材と、 外周面が前記流体室の一部を形成するとともに、前記外
    周面に半径方向内方へ向かう複数の凹部を有する環状の
    第2回転部材と、 前記流体室内に円周方向に移動自在に配置され、前記流
    体室内の内壁と対向する外周面及び内周面を有し、前記
    第2回転部材の凹部内に突出し前記凹部との間に流体が
    通過可能なチョークを形成する突出部を有する複数のス
    ライドストッパーとを備え、前記第2回転部材の凹部の円周方向端面と、前記スライ
    ドストッパーの突出部の前記円周方向端面に当接する面
    とは、外方にいくに従って広がるように同じ角度で傾斜
    している、 捩じり振動減衰装置。
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