JPH0657288A - 植物体の芳香増強剤及び芳香増強方法並びに芳香増強植物体 - Google Patents

植物体の芳香増強剤及び芳香増強方法並びに芳香増強植物体

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JPH0657288A
JPH0657288A JP23536992A JP23536992A JPH0657288A JP H0657288 A JPH0657288 A JP H0657288A JP 23536992 A JP23536992 A JP 23536992A JP 23536992 A JP23536992 A JP 23536992A JP H0657288 A JPH0657288 A JP H0657288A
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JP23536992A
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Inventor
Shingo Sakai
進吾 酒井
Takeshi Ikemoto
毅 池本
Kazuo Ogino
和男 荻野
Yuji Matsunaga
祐士 松永
Taira Takemoto
平 竹本
Masayoshi Inui
全良 乾
Minoru Iwamoto
実 岩本
Akira Fujita
藤田  明
Tsutomu Honda
勉 本多
Shinobu Gocho
忍 牛腸
Mitsuru Waku
充 和久
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
T Hasegawa Co Ltd
Kanebo Ltd
Original Assignee
T Hasegawa Co Ltd
Kanebo Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 植物体の芳香増強剤、及び芳香増強方法、並
びに芳香増強植物体を提供することにある。 【構成】 香料の配糖体、リン酸エステル誘導体、アミ
ノ酸誘導体、カルボン酸誘導体を含有することを特徴と
する芳香増強剤、及び該芳香増強剤を植物体の根あるい
は茎より吸収させることを特徴とする芳香増強方法、並
びに芳香を増強、変調、または付加せしめた植物体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は植物体の芳香増強剤に関
し、更に詳しくは植物体、特に切り花の芳香増強、香り
の変調、マスキングあるいは新規芳香の付与に有用な芳
香増強剤及び芳香増強方法並びに芳香が増強された植物
体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、主として切り花用の植物は耐病
性、花色、形態等の面から育種されてきたため、芳香に
関する育種は軽視されていた。そのため今日の切り花の
中には、芳香が弱くなってしまったもの、芳香がなくな
ってしまったもの、不快な匂いを放つようになったもの
が多く存在する。一方、近年匂いに対する人々の関心は
非常に高く、特に、切り花において香りを増強したり変
調したりすることが非常に望まれている。
【0003】唯一、植物体に芳香を付加する方法として
香料を含有した水溶液を植物体に与える方法が知られて
いる(特開平4−108317号公報)。しかし、この
方法では、香料そのものに芳香があるため、植物体のみ
から芳香を発生させたい際には、特別な密閉容器を用
い、香料そのものの芳香がもれないようにして、植物体
に与えねばならない。鉢植え植物体の場合は、鉢を密閉
容器として利用すればよいが、他の植物、特に切り花の
場合は植物体ごとに容器を加工するのは非常に困難であ
る。また、大量に植物体を処理する場合、香料自身の香
りが回りに蔓延し、植物体からの芳香と香料自体の芳香
との区別がつかない等の問題があった。
【0004】また、香料によって植物体に芳香を付加す
る場合、疎水性の高い香料ではその毒性により植物体の
茎、葉、花に黒い斑点等の薬害が生じることが多かっ
た。更に、香料には水に不溶性のものが多いため水溶液
として植物体に吸収させる量には限界があり、たとえ吸
収されても植物体内で移行が阻害されることが多く、芳
香を付加させる程度は非常に小さいものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的と
するところは、 (1)香料そのものの芳香のもれ防止。 (2)香料そのものが植物に与える毒性の回避。 (3)香料そのものの植物体への移行、吸収の向上。 (4)芳香のない植物への賦香及びその持続。 (5)芳香の弱い植物への芳香増強及びその持続。 (6)不快な匂いを持つ植物の香りの変調(マスキン
グ)及びその持続。 等の特性を持つ芳香増強剤を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、香料を有
効成分として含有する芳香増強剤であって、香料成分が
香料誘導体であることを特徴とする植物体の芳香増強
剤、及び該芳香増強剤を植物体に処理することを特徴と
する植物体の芳香増強方法、並びに該芳香増強剤によっ
て芳香が増強された植物体によって達成される。
【0007】以下、本発明の詳細について記載する。
【0008】本発明に用いられる香料誘導体は、香料を
誘導体化し、芳香を抑えたものならどのようなものでも
よいが、植物体への吸収がよく植物体内を速やかに移行
し、植物体内で内在性酵素等により分解されて香料を遊
離するものが好ましく、また、水溶性のものが植物体へ
の吸収性の点で望ましい。具体的には、配糖体、リン酸
エステル誘導体、アミノ酸誘導体、カルボン酸誘導体等
が挙げられる。
【0009】本発明に用いられる、香料の配糖体として
は、O−グリコシド結合をもつものだけに限定されるも
のではなく、C−グリコシド結合、S−グリコシド結
合、N−グリコシド結合等の結合を持つものも挙げられ
る。
【0010】具体的には、糖部分として、単糖類(グル
コース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、キシ
ロース、リボース、アラビノース、グルコサミン、ガラ
クトサミン等)、二糖類(ラクトース、マルトース、シ
ュウクロース、セロビオース、イソマルトース、エピラ
クトース等)、多糖類(デンプン等)、還元糖(ソルビ
トール、ガラクチトール、マンニトール、アラビトー
ル、キシリトール等)が挙げらる。
【0011】香料成分に相当するアグリコンとしては、
アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノー
ル、イソプロパノール、イソブタノール、ブタノール、
ペンタノール、3−メチル−ブタノール、3−メチル−
1−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノー
ル、ウンデカノール、シス−3−ヘキセノール、シス−
6−ノネノール、2、6−ノナジエン−1−オール、9
−デセノール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、
シトロネロール、ヒドロキシシトロネロール、ミルセノ
ール、3、7−ジメチルオクタノール、ファルネソー
ル、ネロリドール、ラバンジュロールなどのごとき脂肪
族アルコール類、メントール、ターピネオール、ピペリ
トール、ペリラアルコール、カルベオール、ミルテノー
ル、サンタロール、セドロール、パチュリアルコール、
イオノール、ヒドロキシダマスコンなどのごとき脂環族
アルコール類、ベンジルアルコール、クミンアルコー
ル、2−フェニルエチルアルコール、フェニルプロピル
アルコール、シンナミルアルコール、α−アミルシンナ
ミルアルコールなどのごとき芳香族アルコール類、アニ
スアルコール、バニリルアルコール、ピペロニルアルコ
ールなどのフェノール類)、チオール類(メチルメルカ
プタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタ
ン、プロピルメルカプタン、アリルメルカプタンチオゲ
ラニオール、チオターピネオール、チオリナロール、チ
オメントール等)等が挙げられる。
【0012】なお、本発明でいうアグリコンとは、糖と
C−グリコシド結合、N−グリコシド結合、O−グリコ
シド結合、S−グリコシド結合を介して結合している非
糖部分全体を意味するものである。
【0013】アグリコンと糖の結合はα体、β体いずれ
かもしくはα体、β体の混合物でもよいが、植物体内で
蓄積、分解されやすいと考えられるβ体の方が望まし
い。
【0014】上記の配糖体中、エチルグルコサイド、フ
ェニルエチルグルコサイド、シス−3−ヘキセニルグル
コサイドは、香料そのものに比べ、植物の鮮度を長く保
つという点で好ましい。
【0015】配糖体は、市販されているものも多くあり
容易に入手する事ができるが、公知の方法で容易に合成
することもできる。例えば糖類と上記アルコール、チオ
ール類とを酸類の存在下に反応させることにより容易に
合成できる。また従来公知のKoenigs−Knor
r反応等を用いることにより、β−体のみを合成するこ
とも可能である[Chem.ber.,34,957(1901)] 。更にカラ
ムクロマトなどの手段を用いてこれらの配糖体を精製す
る事もできる。
【0016】本発明に用いられる、香料のリン酸エステ
ルとしては、ホスフェート、ピロホスフェート等が挙げ
られ、香料成分に相当するアルキル種としてはC1〜C
15のアルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル
等が挙げられるが、側鎖に官能基を含んだものでもよい
(メチル、アミノ、ノニル、ゲラニル、ネリル、リナリ
ル、ヘキセニル、ノナジエニル、フェネチル、シンナミ
ル等)。
【0017】リン酸エステル誘導体は、市販されている
ものも多くあり容易に入手する事ができるが、公知の方
法で容易に合成することもできる。例えばアルキルアル
コール類、またはアルキルハロゲン化物とオキシ塩化リ
ン、二リン酸エステル等を用い、従来公知の方法〔J.Or
g.Chem. 1989 54 、1338-1342 、Methods.Enzymol.,11
0, 130(1985) 等〕に準じて容易に合成することができ
る。
【0018】本発明に用いられる、香料のアミノ酸誘導
体としては、アミノ酸エステル類、N−アルキルアミノ
酸類、S−アルキルアミノ酸類、S−オキシドアルキル
アミノ酸等が挙げられる。アミノ酸誘導体を構成してい
るアミノ酸としては、システイン、アラニン、グルタミ
ン酸、グリシン、フェニルアラニン等が挙げられ、香料
成分に相当するアルキル種としては、C1〜C15のア
ルキル、アルケニル、アルキニル、アラルキル等が挙げ
られるが、側鎖に官能基を含んだものでもよい(メチ
ル、アミノ、ノニル、ゲラニル、ネリル、リナリル、ヘ
キセニル、ノナジエニル、フェネチル、シンナミル
等)。
【0019】上記のアミノ酸誘導体中、アリシンを香気
成分としてもつアリインの場合は、アリシンの芳香の増
強だけでなく、植物体水揚げ量の増大が見られ、植物体
が、水に生けたものより鮮度を保つという点で好まし
い。
【0020】本発明に用いられる、香料のカルボン酸誘
導体としては、カルボン酸エステル等が挙げられる。カ
ルボン酸としては、キナ酸、カフェ酸、アスコルビン
酸、グルクロン酸等が挙げられ、香料成分に相当するア
ルコール類としては、脂肪族アルコール類(メタノー
ル、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イ
ソブタノール、ブタノール、ペンタノール、3−メチル
−ブタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−ヘ
キサノール、2−ヘプタノール、ウンデカノール、シス
−3−ヘキセノール、シス−6−ノネノール、2、6−
ノナジエン−1−オール、9−デセノール、ゲラニオー
ル、ネロール、リナロール、シトロネロール、ヒドロキ
シシトロネロール、ミルセノール、3、7−ジメチルオ
クタノール、ファルネソール、ネロリドール、ラバンジ
ュロール)、脂環族アルコール類(メントール、ターピ
ネオール、ピペリトール、ペリラアルコール、カルベオ
ール、ミルテノール、サンタロール、セドロール、パチ
ュリアルコール)、芳香族アルコール類(ベンジルアル
コール、クミンアルコール、2−フェニルエチルアルコ
ール、フェニルプロピルアルコール、シンナミルアルコ
ール、α−アミルシンナミルアルコール)、フェノール
類(アニスアルコール、バニリルアルコール、ピペロニ
ルアルコール等)が挙げられ、チオール類としては、メ
チルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピル
メルカプタン、プロピルメルカプタン、アリルメルカプ
タンチオゲラニオール、チオターピネオール、チオリナ
ロール、チオメントール等が挙げられる。
【0021】アミノ酸誘導体、カルボン酸誘導体は、市
販されているものも多くあり容易に入手する事ができる
が、公知の方法で容易に合成することもできる。例えば
アミノ酸またはカルボン酸類とアルコール、アルキルハ
ロゲン化物等を用いて、「日本化学会編 新実験科学講
座 14 有機化合物の合成と反応(丸善株式会社)」等
に記載されている方法に準じて容易に合成することがで
きる。
【0022】さらに、上記の配糖体等のような香料誘導
体には植物体の花、茎、葉、根に、もともと蓄積されて
いるものも多数存在している。本発明においては、これ
らの配糖体等を、公知の方法〔日本農芸化学会誌vol.6
2, No.10,p.p.1475〜1477(1988)等〕で植物体より抽
出したものも用いることができる。具体的にはRosa属、
Jasminum属、Iris属、Narcissus 属、 Eugenia属、Vani
lla 属等の香料植物や、Dianthus属、Lilium属、Calant
he属、Limonium属、Freesia 属、Lathyrus属、Matthiol
a 属、Dendrobium属などが挙げられるが、これらに限定
されるものではなく、望ましくは芳香を持った植物体よ
り抽出された配糖体がよい。
【0023】本発明の芳香増強剤は、上記のような香料
誘導体の一種又は二種以上を配合して製造することがで
きる。
【0024】本発明の芳香増強剤は、香料誘導体が水溶
性である場合が多いため、水溶液として利用できるが、
水に対する溶解度が小さい場合、必要に応じて可溶化、
乳化して用いることができる。
【0025】可溶化の方法としては、香料誘導体を多量
のエタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カ
ルビトール、ダイアセチン、トリアセチン、ソルビット
などのアルコールおよび多価アルコール、またはアルキ
ルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル
塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベタイ
ン型、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポ
リオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレ
ンポリオキシプロピレンブロックポリマー、しょ糖脂肪
族エステルのような界面活性剤に溶解して、必要に応じ
て水に希釈して得られる。
【0026】乳化の方法としては、香料誘導体を、しょ
糖脂肪族エステル、脂肪族モノグリセライド、ソルビタ
ン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステ
ル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ア
ラビアガム、トラガントガム、メチルセルロース、カゼ
イン、大豆レシチン、卵黄レシチン、デンプン、アルギ
ン酸ナトリウム、ローカストビーンガム、グァーガム、
カラギーナン、ソルビット、プロピレングリコール、グ
リセリン、キサンタンガム、ペクチン、セルロース誘導
体、デンプン誘導体、サイクロデキストリン、ポリグリ
セリン脂肪酸エステル、サポニン、しょ糖液などの乳化
剤、乳化安定剤もしくは界面活性剤の適当量と適宜組み
合わせて、コロイドミルあるいはホモゲナイザーによっ
て均質化する方法等が挙げられる。
【0027】また、所望により上述の水溶性香料あるい
は分散性香料に適当な賦形剤、例えばデキストリン、デ
ンプン、加工デンプンなどを加えて、例えば噴霧乾燥、
真空乾燥などの手段により乾燥して粉末化し、賦香増強
剤としてもよい。
【0028】本発明でいう植物体としては、Rosa属、Gy
psophila属、Dianthus属、Tulipa属、Lilium属、Dendro
bium属、Cymbidium 属、Calanthe属、Eustoma 属、Limo
nium属、Freesia 属、Lathyrus属、Matthiola 属、Chry
sathemum属、Scabiosa属、Gentiana属などが挙げられる
が、これらの植物体に限定されるものではない。また、
本発明でいう植物体とは、切り花はもとより、例えば路
地、ハウス、植木鉢等で栽培される植物体も含まれる。
【0029】植物体の芳香を増強させる方法は、例えば
切り花の場合を例にとると切り花の切り口を本発明の香
料誘導体の水溶液、もしくは分散液に浸漬して、切り花
に吸収させることだけでよく、特別な処理を何ら必要と
しないので容易に実施することができる。
【0030】本発明の芳香増強剤の処理濃度は、対象と
なる植物体の種類や、香料誘導体を構成している香料の
いき値など様々な条件によって変化し、一概には規定で
きないが、例えば水溶液として用いる場合、一般的に香
料誘導体濃度として約0.1〜10重量%の範囲が好ま
しく、更に好ましくは約0.1〜1.0重量%である。
【0031】切り花に吸収させる際、香料誘導体水溶液
もしくは分散液に浸漬したままで芳香を増強させればよ
いが、一定時間のみ浸漬することにより、その後の芳香
を増強することもできる。前者としては、例えば店舗に
おいてバケツなどの容器に切り花を差して販売する場合
や、家庭や展覧会などで花器に切り花を生けておく場合
等があり、後者としては、例えば花の収穫後に生産者が
一定時間香料誘導体処理を行い、その後出荷する場合等
がある。このように本発明は多くの場面で利用すること
ができる。いずれの処理方法においても、芳香増強剤そ
のものが芳香が抑えられているので、花屋等の屋内でも
容易に大量処理が可能である。また同方法で、植物体の
新しい芳香の付加や、マスキング効果も得られる。
【0032】切り花以外の植物体の芳香増強方法として
は、例えば植物を植えつけている路地、ハウス、植木鉢
などの土壌中に適当量の香料誘導体の水溶液、もしくは
分散液を灌水、散布すればよい。灌水、散布された香料
誘導体は植物体の根を通じて植物体に吸収され、花もし
くは葉から芳香が持続的に発散される。また同方法で、
植物体の新しい芳香の付加や、マスキング効果も得られ
る。
【0033】本発明の芳香増強方法は、植物体が一般的
に含有するとされているグルコシダーゼ、エステラーゼ
等の内在性の酵素等によって、香料誘導体が分解されて
香料部分が遊離し、持続的に飛散することを利用してい
る。そのため、誘導体化する香料を変えることによっ
て、花の芳香の増強のみならず、例えば全く新しい芳香
の植物体への付加、植物体の不快な匂いのマスキング
(変調)等にも用いることができる。また、香料の中に
は、さまざまな生理活性、例えば抗菌性、抗酸化作用等
が知られている。香料誘導体においても、植物体に対
し、同様な効果(鮮度保持、延命効果等)が期待され、
その効果は、吸収、転流が促進されているため、香料そ
のものを植物体に与える場合より、大きくなるものと期
待される。
【0034】
【発明の効果】本発明の芳香増強剤は、特殊な容器を用
いずに植物体の芳香だけを漂わせることができるため、
花屋等の屋内で大量に処理しても、香気成分が蔓延する
おそれがない。また、本発明の芳香増強剤は、通常の香
料成分を用いた場合よりも、植物体からの香気成分の発
生量が多く、香りの持続性にも優れている。更に、芳香
増強の他、香りの変調、マスキング、新しい芳香の付加
等に用いることもできる。
【0035】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説
明する。
【0036】実施例1 2−フェニルエチルグルコサ
イド(β体)の合成方法 Molecular Sieves 4A 125g、
AgOTf 30.8g、dryエーテル300ml中
に氷水で冷却しつつ、アセトブロモグルコース40g、
dryエーテル100mlの溶液に滴下した。次にβ−
フェニルエチルアルコール12.2g、dryエテール
30mlの溶液を滴下した。その後、室温下に8時間反
応した。反応終了後、酢酸エチルを加え反応液をセライ
トろ過し、濾液を重曹水で洗い、油層を脱水後、減圧下
に濃縮し、シリカゲルカラムによりテトラアセチル体を
精製した。このテトラアセチル体をメタノール300m
l、NaOMeで室温下に脱アセチル化を行い、カラム
クロマト精製し、目的物を15.3g得た。この構造
は、NMRで確認した。
【0037】実施例2 2−フェニルエチルリン酸ナ
トリウムの合成方法 β−フェニルエチルアルコール36.7g中に室温下に
オキシ塩化リン46.0gを滴下した。その後、室温下
に5時間反応後、冷水500ml中に反応液を注ぎ、5
時間反応した。エーテルを加え抽出し、濃縮後、NaO
H22.5g、エタノール600mlと反応し、トルエ
ン500mlとメタノール50mlを加え析出した物を
濾別し、目的物60gを得た。この構造は、NMRで確
認した。
【0038】 実施例3 イソプロピルチオガラクトシドの合成方法 イソプロピルチオトリブチルチン65g、ペンタアセチ
ルガラクトース50g、ジクロロエタン300mlの溶
液中に四塩化スズ43gを氷水冷下に滴下した。その後
室温下に3時間反応し、反応液をKF水溶液中に注ぎ、
析出する結晶を濾別した。濾液を重曹水で洗浄し、脱水
後濃縮しテトラアセチル体を得た。このものをメタノー
ル400ml、NaOMeで脱アセチル化し目的物24
gを得た。この構造は、NMRで確認した。
【0039】 実施例4 キナ酸9−デセニルエステルの合成 キナ酸カリウム塩23.0gと9−デセニルクロリド1
3.8gとをN,N−ジメチルホルムアミド200ml
中で100℃で4時間反応させる。反応終了後N,N−
ジメチルホルムアミドを減圧下に回収する。メタノール
を加え、不溶物を濾別により除去する。減圧下にメタノ
ールを回収し、目的物31.3gを得た。この構造は、
NMRで確認した。
【0040】実施例5・比較例1 実施例1で得られたβ−フェニルエチルグルコサイドの
水溶液(18mM)を調製した。その水溶液に芳香の弱
いバラ(Rosa属)の切り花を生け(実施例5)、フェニ
ルエチルアルコールを添加した水溶液(18mM)に同
じバラの切り花を生けた(比較例1)。一方、水に同じ
バラの切り花を生けた(コントロール)。3日後、ヘッ
ドスペ−ス分析によりバラの花から揮発する成分を分析
し、10人の専門パネルにより官能評価を行い、さらに
薬害の程度を観察した。
【0041】フェニルエチルグルコサイドを添加した場
合、香料そのものであるフェニルエチルアルコールを添
加する場合に比べ、約10倍の揮発量増大の効果を示し
た。官能評価においても、パネルの全員がβ−フェニル
エチルグルコサイドを添加した場合の方がフェニルエチ
ルアルコールを添加したものより花の香気の中でフェニ
ルエチルアルコールの香りを非常に強く感じたと評価し
た。また、フェニルエチルアルコールを添加することに
よって、葉の退色、黄化、茎の褐変等、著しい薬害を示
した。しかし、β−フェニルエチルグルコサイドを添加
したものは、コントロール以上に鮮度を保っていた(表
1)。
【0042】この結果から、β−フェニルエチルグルコ
サイド処理による芳香増強作用と鮮度保持作用が認めら
れた。
【0043】
【表1】
【0044】実施例6 公知の方法〔Helv.Chem.Acta 34,481(1951) 〕により合
成したアリインの0.3%水溶液に芳香のないバラ(Ro
sa属)の切り花を生けた。一方、コントロールとして水
にも同じバラの切り花を生けた。経日的にこの両方の切
り花から発散される芳香の強弱について、10人の専門
パネルにより官能テストを行った。
【0045】その結果、専門パネル全員が花の芳香が増
強し、特に香気の中で非常に強いアリシンの香りを感じ
たと評価した。また、アリインで処理したバラの花は6
日後でも完全に鮮度を保持しており、コントロールより
むしろ水揚げもよく鮮度よく維持されていた。
【0046】実施例7 芳香の強いバラである品種ホワイトクリスマス(Rosa
属)の花をメタノールに浸漬し、メタノールを留去し
て、水溶性画分を抽出し、配糖体混合物を得た。得られ
た配糖体混合物の0.5%水溶液に、芳香のないバラ
(Rosa属)の切り花を生けた。一方、コントロールとし
て水にも同じ芳香のないバラの切り花を生けた。経日的
にこの両方の切り花の花から発散される芳香の強弱につ
いて、10人の専門パネルにより官能テストを行った。
【0047】その結果、専門パネルの全員が配糖体混合
物を添加した場合のほうが、バラの切り花の香気の中
に、より強いバラの香気を感じるとした。また、配糖体
混合物を添加したバラの切り花は、6日後でもコントロ
ールと同様に鮮度を保持していた。
【0048】実施例8 実施例1で得られたβ−フェニルエチルグルコサイドの
0.5%水溶液を調製し、その水溶液に不快な匂いの強
いカスミソウ(Gypsophila属)の切り花を生け、一方コ
ントロ−ルとして、水にも同じカスミソウの切り花を生
けた。経日的にこの両方の切り花から発散される芳香の
強弱について、10人の専門パネルにより官能テストを
行った。
【0049】その結果、専門パネルの全員がβ−フェニ
ルエチルグルコサイドを添加した場合の方が、カスミソ
ウの不快な匂いが変化し、不快な匂いを全く感じないと
評価した。また、β−フェニルエチルグルコサイドを添
加したカスミソウの切り花は6日後においても完全に鮮
度を保持していたが、コントロールの切り花は鮮度が落
ちていた。
【0050】実施例9 実施例3で合成されたイソプロピルチオガラクトシドの
0.5%水溶液に芳香のないバラ(Rosa属)の切り花を
生けた。一方、コントロールとして水にも同じバラの切
り花を生けた。経日的にこの両方の切り花から発散され
る芳香の強弱について、10人の専門パネルにより官能
テストを行った。
【0051】その結果、専門パネル全員が花と葉の芳香
が増強し、特に香気の中で非常に強いイソプロピルチオ
ールの香りを感じたと評価した。また、イソプロピルチ
オガラクトシドで処理したバラの花は6日後でも完全に
鮮度を保持しており、コントロールと同等であった。
【0052】実施例10 実施例1と同様にして合成されたβ−3(Z)−ヘキセ
ニルグルコサイドの0.5%水溶液を鉢植えの菊(Chry
sathemum属)に毎日灌水した。一方、コントロールとし
て水のみを同じ鉢植えの菊に毎日灌水した。経日的にこ
の両方の菊から発散される芳香の強弱について、10人
の専門パネルにより官能テストを行った。
【0053】その結果、専門パネル全員が葉の芳香が増
強し、特に香気の中で非常に強い3(Z)−ヘキセノー
ルの香りを感じたと評価した。また、β−3(Z)−ヘ
キセニルグルコサイドで処理した菊は2週間後でも完全
にコントロールと同等に正常に成長していた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松永 祐士 神奈川県南足柄市岩原171番地 (72)発明者 竹本 平 神奈川県中郡二宮町富士見が丘3丁目8番 19号 (72)発明者 乾 全良 神奈川県平塚市桃浜町3番8 (72)発明者 岩本 実 神奈川県川崎市中原区苅宿335 (72)発明者 藤田 明 神奈川県川崎市中原区苅宿335 (72)発明者 本多 勉 神奈川県川崎市中原区苅宿335 (72)発明者 牛腸 忍 神奈川県川崎市中原区苅宿335 (72)発明者 和久 充 神奈川県川崎市中原区苅宿335

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 香料を有効成分として含有する植物体の
    芳香増強剤であって、該香料が香料誘導体であることを
    特徴とする植物体の芳香増強剤。
  2. 【請求項2】 香料誘導体が、配糖体、リン酸エステル
    誘導体、アミノ酸誘導体、カルボン酸誘導体のいずれか
    である請求項1記載の植物体の芳香増強剤。
  3. 【請求項3】 香料誘導体が、水溶液中に可溶化または
    分散されたものである請求項1又は2記載の植物体の芳
    香増強剤。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3記載の芳香増強剤を植物
    体に接触処理することを特徴とする植物体の芳香増強方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4記載の芳香増強剤によっ
    て芳香が増強された植物体。
JP23536992A 1992-08-10 1992-08-10 植物体の芳香増強剤及び芳香増強方法並びに芳香増強植物体 Pending JPH0657288A (ja)

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