JPH0649901B2 - けい素鋼板の磁気特性改善方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） けい素鋼板表面に連続的なイオンプレーテング又は化学
蒸着などのドライプレーティングによりセラミックない
しは金属の成膜を施す際この成膜による磁気特性の改善
効果を最大限度に引き出すことについての開発研究の成
果を以下に開示する。

（従来の技術） 特公昭和52-24499号公報においては、一方向性けい素鋼
板の仕上げ焼鈍後の鋼板表面を鏡面仕上げするか又はそ
の鏡面仕上げ面上に金属薄めっきやさらにその上に絶縁
被膜を塗布焼付けすることによる低鉄損一方向性けい素
鋼板の製造方法が提案されている。しかしながらこの鏡
面仕上げによる鉄損向上手法は、鏡面仕上げ後に不可欠
な絶縁被膜を塗布焼付した後の密着性に問題があるため
現在の製造工程においては採用されるに至っていない。

また特公昭56-4150号公報において鋼板表面を鏡面仕上
げ後、酸化物系セラミックス被膜を蒸着する方法が提案
されている。しかしこの方法も600℃以上の高温焼鈍を
施すと酸化物系セラミック層がはく離するため実際の製
造工程では採用できない。

（発明が解決しようとする問題点） 上記したような欠点にともなうけい素鋼板の磁気特性と
くに鉄損のばらつきを改善し、この際に磁気特性の改善
を阻害する要因の抜本的な究明によって、けい素鋼板表
面に、セラミック膜や金属膜をドライプレーティングす
ことによる鋼板磁気特性の改善効果を最大限度に発揮さ
せるのに好適な手法を与えることがこの発明の目的であ
る。

（問題点を解決するための手段） この発明はけい素鋼板表面に連続的に蒸着層を成膜する
際、該蒸着層の成膜後に該鋼板の接触下の誘導に供する
案内部材の表面温度を、該鋼板温度±100℃以内とする
ことを特徴とするけい素鋼板の磁気特性改善方法であ
る。

さて発明者らはドライプレーティングをけい素鋼板に連
続的に行った場合に非連続的に処理した場合と比較して
生じる種々の品質劣化、とくに方向性けい素鋼板上のセ
ラミックス又は蒸着膜による成膜を行った際に生じる磁
気特性の劣化の原因が成膜後に接触する通板用案内部材
例えばロール類の温度にあり、高温の被膜被成後のけい
素鋼板と低温のロール表面との接触で被成被膜およびサ
ブストレートが不適当なひずみを受けたりはく離したり
することにあることをつきとめた。

第１図はドライプレーティングにより蒸着TiN膜厚が１
μｍの場合蒸着直後加熱ヒーター付の種々の温度のロー
ルに巻きがけして通過させた場合に、ロールに接触させ
ずに徐冷を行って得た非連続実験材を比較とする鉄損比
較試験の結果の１例でここにロール通過直前の板温は52
0℃であり、この場合、方向変換ロールの直径は400mmφ
であった。図から判るように、ロール表面温度が板温±
100℃の範囲では方向性けい素鋼板の鉄損劣化がほとん
ど生じてない。

この実験は蒸着膜がTiNよりなる場合の成績であるがTiN
のほか、TiCなどのイオンプレーティング膜やスパッタ
リング膜その他Al，Znなどの真空蒸着膜などについても
ほぼ同様な傾向をとることが解明されている。

次に第２図は良く知られている連続式のドライプレーテ
ィング装置の１例で、図中１は真空チャンバー、２は減
圧室、３はサブストレート、４は蒸着室である。

減圧室２は通常複数個設けられ、蒸着室４に近いほど一
般的には低圧に保たれる。

また５は蒸発源で抵抗加熱や電子線ビーム加熱などによ
り蒸着物質を蒸発させる。

６および７はシールロールであり、減圧室２の相互間、
および蒸着室４と減圧室２間におけるような差圧を保持
するのに役立てる。

図中、８は冷却室であ、ノズル９からの不活性ガスの噴
射によって蒸着処理後の板温を一様に冷却させる。この
発明ではたとえばシールロール７を加熱ヒーターなどに
より加熱して、蒸着処理後の鋼板に対しその表面温度±
100℃の範囲に保持する。もちろんこの発明では、この
シールロール７を含めて、蒸着後から処理鋼板が冷却さ
れるまでに板と接触する案内部材のあるとき、そのすべ
てについて上記温度域への加熱を必要とする。

すなわちスリット形状体などであっても鋼板と接触する
のであれば、同様とする。

また、鋼板表面温度センサー、鋼板接触部位温度センサ
ーおよび加熱装置を組合わせれば自動的にこの発明範囲
内に温度制御することは容易である。

さらに10は板の方向変換のためのロールであり、これに
ついてもヒーター付ロールとする必要があることは論を
またない。

また、ここでは、方向性けい素鋼板について述べたが、
無方向性けい素鋼板であっても、同様に磁気特性の改善
が得られる。

さらに第３図に示す両面同時蒸着装置にこの発明を適用
すると一層効果の確実性が高まる。

この図において11は蒸着ガイド、12は張力付与ロールで
ある。

（作用） 上にのべたようなドライプレーティングを経たけい素鋼
板がその成膜と直接に接触する通板用ガイドとしてのシ
ールロール、方向変換ロールその他の案内部材を通して
走行するとき、該けい素鋼板の表面温度との間における
案内部材の温度較差を100℃以内とすることによりドラ
イプレーティングによる磁気特性の改善効果の通板中に
おける劣化阻害が回避され得る理由は現時点で解明され
つくされたわけではないが、該温度較差が100℃をこえ
るほどに大きいときに成膜及びサブストレイトが不適当
なひずみを受けたり、はく離を生じたりすることによる
と推定される。

（実施例） 実施例１ 次に実施例を述べる。３％けい素鋼の表面を研磨して平
滑にし、片面づつ交互にTiNを0.5μｍイオンプレーティ
ングした。その際片面プレーティング後の板温はほぼ51
0℃であった。反対面に蒸着する際300φのロールで反転
させた。この際ロールの温度は470℃に加熱（本発明条
件）した。また特に加熱しない場合（比較条件）とを比
較した。比較条件では反転ロール表面温度は130℃であ
った。成膜後の磁気特性は以下のとおりであった。

ロール温度 鉄損W_17/50 470℃（本発明条件） 0.77W/kg 130℃（比較条件） 0.83W/kg 実施例２ ３％けい素鋼コイルの表面を研磨して平滑にし、AlNを
両面同時にイオンプレーティングした。

プレーティング時の下地温度は500℃で膜厚は0.8μｍで
あった。コイルは差圧室を経て順次低い圧力の部屋に送
り込まれ蒸着室は10^-3torrとした。蒸着室においては板
は垂直方向に走行せしめ、蒸着後の板はロールで方向を
変じて水平方向に走行させた。その際ロール表面の温度
は470℃に加熱した（本発明条件）。また、特に加熱し
ない場合（比較条件）とを比較した。比較条件ではロー
ル表面温度は140℃であった。成膜後の磁気特性は以下
のとおりであった。

ロール温度 鉄損W_17/50 470℃（本発明条件） 0.75W/kg 140℃（比較条件） 0.85W/kg （発明の効果） この発明によればけい素鋼板の磁気特性改善がその阻害
要因の有利な抑制の下に、有利に充実する。

【図面の簡単な説明】

第１図は蒸着直後の板が通板されるロールの表面温度
と、鉄損の劣化の関係を示したグラフ、 第２図、第３図は典型的なドライプレーティング装置を
示し、この発明のヒーター付ロールの配置例を示すスケ
ルトン図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 一弘 千葉県千葉市川崎町１番地 川崎製鉄株式 会社技術研究本部内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】けい素鋼板表面に連続的に蒸着層を成膜す
   る際、該蒸着層の成膜後に該鋼板の接触下の誘導に供す
   る案内部材の表面温度を、該鋼板温度±100℃以内とす
   ることを特徴とするけい素鋼板の磁気特性改善方法。