JPH0649618Y2 - 鋼管杭のクランプ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は鋼管杭の圧入、引抜き時
の反力を生じさせるため杭圧入引抜機に装着されたクラ
ンプ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】杭圧入引抜機は杭を挾持した状態でチャ
ックを下降せしめ杭を地盤に圧入するが、この圧入時の
地盤からの反力を受けるためクランプ装置が備えられて
いる。このクランプ装置は既設杭を挟持することにより
杭圧入引抜機を既設杭上に固定する。鋼矢板形状の杭の
場合には、クランプ装置の挾持爪の先端面を平坦面に形
成すれば鋼矢板の平面部分を挟持できるが、断面が円形
となっている鋼管杭の場合には平坦面の挾持爪を使用す
ることができない。

【０００３】図５および図６はこのような鋼管杭Ｐを挟
持する従来のクランプ装置を示す。クランプ装置５０は
杭圧入引抜機のサドル５１からクランプ５２、５２を垂
下して構成されている。各クランプ５２、５２はサドル
５１に水平方向に設けられた調整シリンダ５３、５３に
より水平方向に摺動して鋼管杭Ｐに対する間隔調整が行
われる。また、各クランプ５２は鋼管杭Ｐの内外面を挟
持する一対の挾持爪５４、５５を備えている。各クラン
プ５２における挾持爪５４、５５の先端面は鋼管杭Ｐの
曲率に合わせた曲面形状に形成されている。一対の挾持
爪の内、鋼管杭Ｐの外面側に位置する挾持爪５４は固定
側となっていて、鋼管杭Ｐの内面側に位置する挾持爪５
５は可動側となっている。この可動側の挾持爪５５はク
ランプシリンダ５６に連結されており、このシリンダ５
６の作動によって鋼管杭Ｐの内面に押圧する。これによ
り一対の挾持爪５４、５５による鋼管杭Ｐの挟持が行わ
れる。

【０００４】上記構造のクランプ装置５０において、可
動側の挾持爪５５が鋼管杭Ｐに当接する際に、挾持爪５
５が回転すると鋼管杭Ｐの挟持が不安定となるため、こ
の挾持爪５５の回転を防止する必要がある。このため図
示例では、各挾持爪５５に対して、２基のクランプシリ
ンダ５６を連結して回転を防止している。また同様な目
的で、挾持爪５５をキーおよびキー溝（図示省略）の係
合により回転防止させることも行われている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】従来のクランプ装置で
は、挾持爪の回転を防止するため、１個の挾持爪５５に
対して２基のクランプシリンダ５６を必要としているた
め、部品点数が多く、構造が複雑になっている。また、
２基のクランプシリンダ５６を同期して作動させるため
の油圧回路が必要であり作動の制御も難しい。また、キ
ーおよびキー溝によって挾持爪の回転を防止する場合も
同様であり、構造が複雑で組み立ても面倒となってい
る。さらに、従来のクランプ装置は鋼管杭を挟持できる
だけであり、鋼矢板などの他の平坦状の杭の挟持には使
用できず、汎用性に乏しい等の問題点があった。本考案
は上記事情を考慮してなされたものであり、単一のクラ
ンプシリンダでも挾持爪の回転を防止でき、構造および
制御を簡略化できると共に、鋼管杭以外の他の杭の挟持
も可能なクランプ装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本考案は既設鋼管杭の内外面を挟持する少なくとも
一対の挾持爪を備え、鋼管杭の圧入または引抜時に地盤
より反力を得るクランプ装置において、前記一対の挾持
爪が、鋼管杭の内面に当接する固定側とクランプシリン
ダに連結されて鋼管杭の外面を押圧する可動側とからな
り、上記固定側の挾持爪の当接面が鋼管杭の曲率に合わ
せた曲面に形成され、かつ可動側の挾持爪の押圧面が直
線状の平坦面に形成されたことを特徴とする。

【０００７】

【作用】押圧面が平坦面となっている可動側の挾持爪は
鋼管杭を押圧する際に、鋼管杭の曲面に影響されること
がなく押圧時に回転することがない。このため、クラン
プシリンダを単一としても、あらゆる径の鋼管杭の確実
な挟持が可能となる。また、この平坦面からなる挾持爪
の押圧面は平坦部分に対しても良好に当接するため、鋼
矢板などの他の杭の挟持も可能となる。

【０００８】

【実施例】図１は本考案の一実施例を適用した杭圧入引
抜機１の全体構成を示す。杭圧入引抜機１は、複数の既
設鋼管杭Ｐのそれぞれを挟持する複数のクランプ２と、
新たな鋼管杭ＰＯを挾持して昇降するチャック３とを備
えている。そして既設鋼管杭Ｐ上を移動しながら新たな
鋼管杭ＰＯを圧入して杭列を施工する。各クランプ２は
サドル４から垂下していて、このサドル４上には既設鋼
管杭Ｐの少なくとも１ピッチ以上、杭列方向に相対移動
可能なスライドベース５が搭載され、このスライドベー
ス５上にマスト６が立設されている。マスト６の前側に
はガイドレール７が上下方向に設けられており、このガ
イドレール７には前記チャック３を取り付けた昇降体８
が摺動自在に取り付けられている。

【０００９】図２および図３に示すように、各クランプ
２は１個の鋼管杭Ｐをそれぞれ２箇所で挟持するクラン
プ部材２０を有することにより構成されている。これら
のクランプ部材２０はサドル４に水平方向に設けられた
調整シリンダ１０、１０により水平方向に摺動して、鋼
管杭Ｐに対する間隔調整が行われる。各クランプ部材２
０は鋼管杭Ｐをその内外面から挟持するものであり、こ
のため各クランプ部材２０は一対の挾持爪２１、２２を
それぞれ有している。一対の挾持爪の内、一方の挾持爪
２２は鋼管杭Ｐの内部に進入して鋼管杭Ｐの内面に当接
する。この一方の挾持爪２２は固定側となっており、鋼
管杭Ｐの内面に当接する先端面は鋼管杭Ｐの曲率に合わ
せた曲面形状に成形されている。

【００１０】これに対し、他方の挾持爪２１は鋼管杭Ｐ
の外側に位置しており、鋼管杭Ｐの外面を押圧する。こ
の挾持爪２１はクランプ部材２０に設けられたクランプ
シリンダ２３に連結され、クランプシリンダ２３の作動
によって鋼管杭Ｐに接近または離反する方向に移動する
可動側となっている。そして、この可動側の挾持爪２１
における鋼管杭Ｐの外面への押圧を行う先端面は鋼管杭
Ｐの接線方向に沿って直線状に延びる平坦面に成形され
ている。

【００１１】上記のように構成した本実施例の作用にお
いて、クランプシリンダ２３が伸長作動すると、可動側
の挾持爪２１が進出して平坦な先端面が鋼管杭Ｐの外面
を押圧する。これにより固定側の挾持爪２２との間に鋼
管杭Ｐを挟持して、チャック３による新たな鋼管杭ＰＯ
の圧入時の反力を受けることができる。この挟持は固定
側の挾持爪２２が鋼管杭Ｐと大きな接触面積で当接した
状態で、可動側の挾持爪２１が押圧作用をするため、所
定の挟持力を得ることができる。

【００１２】また、可動側の挾持爪２１が鋼管杭Ｐの接
線方向に沿って押圧するため、鋼管杭Ｐの曲面の影響を
受けることがない。このため、クランプシリンダ２３お
よび挾持爪２１は回転することなく、鋼管杭Ｐを確実に
押圧することができる。従って、可動側の挾持爪２１を
単一のクランプシリンダ２３で作動させることができ
る。さらに、回転防止のためのキーおよびキー溝を設け
る必要もなくなり、部品点数が少なくなると共に、構造
が簡単で、制御も容易となる。

【００１３】図４は本実施例によって鋼矢板３０を挟持
した状態を示す。鋼矢板３０の挟持は、平坦部分のウエ
ブＷに挾持爪２１、２２が当接して行われるが、可動側
の挾持爪２１の先端面が平坦面となっているため、ウエ
ブＷとの接触面積を大きくすることができる。このた
め、鋼矢板をはじめとして平坦部分を有した鋼管杭以外
の杭の挟持も可能となり汎用性が拡大する。

【００１４】

【考案の効果】本考案は、可動側の挾持爪を直線状の平
坦面としたため、可動側の挾持爪が回転することがな
く、その回転防止構造が不要となって構造および制御を
簡素化でき、鋼管杭の径にあわせて爪を製作する必要も
なく、しかも鋼管杭以外の杭の挟持も可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を適用した杭圧入引抜機の全
体構成図

【図２】本考案の一実施例の側面断面図

【図３】本考案の一実施例の平面断面図

【図４】鋼矢板の挟持状態を示す平面断面図

【図５】従来装置の側面断面図

【図６】従来装置の平面断面図

【符号の説明】

２ クランプ ２０ クランプ体 ２１ 可動側の挾持爪 ２２ 固定側の挾持爪 ２３ クランプシリンダ Ｐ 鋼管杭

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 既設鋼管杭の内外面を挟持する少なくと
   も一対の挾持爪を備え、鋼管杭の圧入または引抜時に地
   盤より反力を得るクランプ装置において、 前記一対の挾持爪が、鋼管杭の内面に当接する固定側と
   クランプシリンダに連結されて鋼管杭の外面を押圧する
   可動側とからなり、上記固定側の挾持爪の当接面が鋼管
   杭の曲率に合わせた曲面に形成され、かつ可動側の挾持
   爪の押圧面が直線状の平坦面に形成された鋼管杭のクラ
   ンプ装置。