JPH064563B2 - トリテルペン化合物及び制癌剤 - Google Patents

トリテルペン化合物及び制癌剤

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JPH064563B2
JPH064563B2 JP20289786A JP20289786A JPH064563B2 JP H064563 B2 JPH064563 B2 JP H064563B2 JP 20289786 A JP20289786 A JP 20289786A JP 20289786 A JP20289786 A JP 20289786A JP H064563 B2 JPH064563 B2 JP H064563B2
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康雄 藤本
スマトラ マデ
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【発明の詳細な説明】 (技術分野) 本発明は、新規なトリテルペン化合物及び該化合物を有
効成分として含有する制癌剤に関する。
(発明の背景) 従来、癌化学療法剤として、アルキル化剤(ナイトロジ
エンマスタード類、エチレンイミン類、スルホン酸エス
エル類)、代謝拮抗物質(葉酸拮抗剤、プリン拮抗剤、
ピリミジン拮抗剤)、植物性核分裂毒(コルセミド、ビ
ンブラスチン等)、抗生物質(ザルコマイシン、カルチ
ノフイリン、マイトマイシン等)、ホルモン類(副腎ス
テロイド、男性ホルモン、女性ホルモン)及びポルフィ
リン錯塩(マーフィリンCOPP)等が用いられてい
る。しかしながら、その殆んどは、細胞毒型の物質であ
り、重大な副作用を呈するため、低毒性で優れた制癌活
性を有する制癌剤の開発が強く望まれている。
本発明者らは、上記趣旨に鑑み、低毒性で制癌性を有す
る物質を動・植物、微生物界の広い生物範囲から探索を
行ってきたが、プルメリア・アクティフォリア・ポイル
(Plumeria actifolia Poir)(インドネシア名:Kembodj
a Putih)より抽出された新規なトリテルペン化合物
が、優れた制癌活性を有することを見出し、本発明を完
成したものである。
プルメリア・アクティフォリア・ポイルは、インドネシ
ア産植物であり、古来より歯痛、皮ふ病等の治療に用い
られているといわれる。今回、本発明者らは、上記プル
メリア・アクティフォリア・ポイルの葉の成分につい
て、その生理活性を探索したところ、本発明の新規なト
リテルペン化合物を単離・精製し、該化合物が優れた制
癌活性を示すことを見出した。
(発明の目的) 本発明の目的は、よりすぐれた制癌活性を有する新規な
化合物を提供することにある。又、本発明の目的は、上
記新規な化合物を有効成分とする制癌剤を提供すること
にある。
(発明の構成) 本発明の新規なトリテルペン化合物は、後述の理化学的
性質を示し、プルメリア・アクティフォリア・ポイルよ
り抽出・単離される。以下、その抽出・単離方法の一例
を示す。
プルメリア・アクティフォリア・ポイルの乾燥葉を粉末
化した後、90%エタノール溶液にて抽出し、減圧濃縮
して粗抽出物を得る。次いで、得られた粗抽出物を吸着
クロマトグラフィーに付し、水−メタノール系溶媒にて
順次溶出する。得られた各分画について吉田肉腫培養細
胞に対して生育阻害活性の強い分画から得られた粗結晶
を酢酸エチルにて処理し、酢酸エチル可溶部と難溶性粗
結晶に分離する。得られた酢酸エチル可溶部を、無水酢
酸−ピリジンにてアセチル化処理後、高速液体クロマト
グラフィーにて分離・精製し、5%NeOH-KOHにより脱ア
セチル化し、元の化合物に戻し3種の化合物を単離す
る。これらの化合物のうち、2種はマススペクトル、N
MRスペクトルデータから公知物質であると同定された
が、他の1種は、そのスペクトルデータより新規物質と
同定された。
かくして単離された本発明のトリテルペン化合物は、下
記の構造式及び物理的性質を有する。
化合物〔I〕(R=H)(プルメル酸(Plumeric acid)
と命名した。) 化合物〔II〕(R=CH3)(プルメル酸メチル(Methyl P
lumerate)と命名した。) 〔物理的性質〕 化合物〔I〕(R=H) m.p.:209.5〜212.5℃(エタノールより再結晶、微細結
晶) マス・スペクトル:m/Z;456(M)C29H44O4、 248(ベースピーク)、207(8%)、203(3
3%)、189(10%)1 H-NMR(400MHz,δ,CDCl3): 5.28(1H,bs,ビニル)、5.13(1H,bs,エキソメチレ
ン)、4.75(1H,bs,エキソメチレン)、 1.10(3H,S,-CH3) 0.97(3H,d,-CH3)、0.88(3H,d,-CH3)、 0.84(3H,S,-CH3)、0.79(3H,S,CH3) 化合物〔II〕(R=CH3) m.p.:130.5〜132.5℃(メタノールより再結晶、柱状
晶) マス・スペクトル:m/z;470(M)C30H46O4、 262(ベースピーク)、207(4%)、203(8
7%)、189(28%)1 H-NMR(400MHz,δ,CDCl3): 5.27(t,J=3.5Hz、ビニル)、5.14、4.75 (2H,bs,エキソメチレン)、 3.61(3H,-COOCH3)、 1.10(3H,s,CH3)、0.94(3H,d,-CH3)、 0.87(3H,d,-CH3)、0.79(3H,s,-CH3)、 0.78(3H,s,-CH3) いずれの化合物も、マウスに対し50mg/kg連続投与し
ても何ら毒性を認めない。
本発明の制癌剤は、経口及び非経口投与いずれも使用可
能であり、経口投与する場合は、軟・硬カプセル剤又は
錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤として投与され、非経口投
与する場合は、水溶性懸濁液、油性製剤などの皮下或い
は整脈注射剤、点滴剤及び固体状又は懸濁粘稠液状とし
て持続的な粘膜吸収が維持できるように坐薬のような剤
型で投与され得る。
本発明の有効成分の製剤化は、界面活性剤、賦形剤、滑
沢剤、佐剤、及び必要に応じて腸溶性製剤とするために
医薬的に許容し得る被膜形成物質、コーティング助剤等
を用いて適宜行うことができ、その具体例を挙げれば、
次のとおりである。
本発明の組成物の崩壊、溶出を良好ならしめるために、
界面活性剤、例えばアルコール、エステル類、ポリエチ
レングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル
類、硫酸化脂肪アルコール類等の1種又は2種以上を添
加することができる。
また、賦形剤として、例えば蔗糖、乳糖、デンプン、結
晶セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸
マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成
珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウ
ム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロー
スカルシウム等の1種又は2種以上を組合せて添加する
ことができる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タ
ルク、硬化油等を1種又は2種以上添加することがで
き、また矯味剤及び矯臭剤として、食塩、サッカリン、
糖、マンニット、オレンジ油カウンゾウエキス、クエン
酸、ブドウ糖、メントール、ユーカリ油、リンゴ酸等の
甘味剤、香料、着色料、保存料等を含有させてもよい。
懸濁剤、潤滑剤の如き佐剤としては、例えばココナット
油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、乳酸カルシウム、
ベニバナ油、大豆リン脂質等を含有させることができ
る。
また被膜形成物質としては、セルロース、糖類等の炭水
化物誘導体として酢酸フタル酸セルロース(CPA)、
またアクリル酸系共重合体、二塩基酸モノエステル類等
のポリビニル誘導体としてアクリル酸メチル・メタアク
リル酸共重合体、メタアクリル酸メチル・メタアクリル
酸共重合体が挙げられる。
また、上記皮膜形成物質をコーティングするに際し、通
常使用されるコーティング助剤、例えば可塑剤の他、コ
ーティング操作時の薬剤相互の付着防止のための各種添
加剤を添加することによって皮膜形成剤の性質を改良し
たり、コーティング操作をより容易ならしめることがで
きる。なお、有効成分を皮膜形成物質を用いてマイクロ
カプセル化してから賦形剤等を混合した剤型としても良
い。
次に代表的な剤型における配合比は下記の通りである。
特に好ましい賦形剤は、乳糖、結晶セルローズ、カルボ
キシメチルセルロースカルシウムである。
また、投与量は、対象腫瘍を有効に治療するに十分な量
であり、腫瘍の症状、投与経路、剤型などによって左右
されるが、一般に、経口投与の場合、大人では1日当
り、薬0.01〜100mg/kg体重(小人では0.01〜60mg/
kg体重)の範囲で、その上限は好ましくは約50mg/kg
体重、更に好ましくは約10mg/kg体重程度であり、非
経口投与の場合、その上限は約10mg/kg体重程度であ
り、好ましくは5mg/kg体重、更に好ましくは2mg/kg体
重が適当である。
次に、本発明化合物の制癌活性を確認した制癌性試験法
について述べる。
15%の子牛血清を含有するMEM培地(ニッスイ製)
に、ラットの腹水から取り出した吉田肉腫細胞(Yoshida
sarcoma cells)を接種して培養し、細胞数が約10×
10cells/mlになった時点で上記倍地で5倍に希釈
(20×10cells/ml)し、1mlづつバイアルビンに
分注する。次いで、各濃度の本発明化合物のメタノール
又はアセトン溶液を加え、ゴム栓をして37℃で培養し
約3日後にトリパンブルーにて染色後、生細胞数を計測
する。供試細胞増殖の抑制率は、次式により求めた。
以下に本発明を実施例、製剤例及び試験例によって具体
的に説明する。
実施例1 インドネシアにて採集したプルメリア・アクティフォリ
ア・ポイルの葉を、自然乾燥させたもの500gを、ミ
キサーにて粉末状にし、90%EtOHに一晩浸漬した後濾
別し、抽出液を減圧下にて濃縮し黒褐色の油状物質を1
8.5gを得た。
これを、EtOAc、H2Oそれぞれ600ml、200mlに分配
し両層を減圧濃縮して、EtOAc層から黒色油状物質17.3
g、水層から茶色油状物質12.2gを得た。
EtOAc層を、逆相カラムクロマトグラフィー(ダイヤイ
オンHP−20 40φ×470mm)にてa〜gの7つ
の分画に分離した。展開溶媒は、H2O、H2O:MeOH=8
0:20、60:40、40:60各2、20:80
2.3、MeOH7、アセトン4を順次使用した。
各分画を、減圧濃縮した後、吉田肉腫培養細胞に対する
生育阻害活性試験を行なった結果、H2O:MeOH=60:
40、40:60及びMeOH100%の分画に強い活性が
認められた。
MeOH100%の分画にEtOAc 30mlを加え、吸引濾過
し、EtOAc難溶性の結晶を濾別し、さらに結晶をEtOAc
5mlで4回洗い、黄白色の粗結晶(α)3.60gとEtOAc
層から5.98gの粗結晶を得た。
EtOAc層(5.98g)をカラムクロマトグラフィー(Si
O2、40φ×250mm)にて7分画(h〜m)に分離し
た。展開溶媒は、ヘキサン:EtOAc=20:1、10:
1各400ml、7:3500ml、1:1 600ml、ヘ
キサン:EtOAc=3:7、EtOAc及びMeOH各500mlアセ
トン200mlを順次使用した。各分画について細胞活性
試験を行なった結果、ヘキサン:EtOAc=1:1及び
3:7の分画に強い活性が認められた。
活性の強かったヘキサン:EtOAc=3:7の分画をHPLC
(ヌクレオシル50−5 20φ×300mmヘキサン:
EtOAc=1:1)で7分画に分け、各分画について細胞
活性試験を行い、活性の強い分画(Rf値0.38〜0.32)
をさらに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(ヌクレオ
シル50−5 8φ×300mm ヘキサン:EtOAc=
1:1)で分離したところ、CHCl3難溶性(EtOAcも、同
様)の結晶F(6mg)、G(22mg)を得た。
F.Gの吉田肉腫培養細胞に対する活性は、それぞれ1
00、25μg/mlで、100%生育阻害を示した。
G(22mg)をHPLC(ODS-H-2151 6φ×150mm MeO
H:H2O=4:1)にて分離した後、主成分である無色微
細結晶M(18mg)を得た。この結晶M(8.3mg)にピ
リジン1.5ml、Ac2O150μlを加え室温で14時間攪
拌し、さらにベンゼンを加え減圧下で共沸し、濃縮した
後HPLC(ヌクレオシル50−5 8φ×300mmヘキサ
ン:EtOAc=8:1にて分離・精製(4−デメチル−
4,23−デヒドロ−2α−ヒドロキシウルソル酸ジア
セテート(4−demethyl−4,23−dehydro−2α−h
ydroxyursolic acid diacetate)〔A〕6.0mgを得
た。
(〔A〕の物理的性質) m.p.:167.3〜169.0℃(MeOHより再結晶、微細結晶) MS:m/z;540(M)C33H48O6、494(M-HCO2H 10%、2
48(ベースピーク)、203(40%)、189(1
5%)、 5.26(1H、t,ビニル)、 2.01(3H,CH3CO2)、1.10(3H,S,CH3)、 0.95(3H,d,CH3)、0.85(3H,d,CH3)、 0.84(3H,S,CH3)、0.82(3H,S,CH3)。
実施例2 得られた化合物〔A〕1.5mgに5%KOH-MeOH1mlを加
え、室温で90分間攪拌し、蒸留水を加え希HClでpH3
にした後、EtOAcで抽出、Na2SO4で乾燥後、減圧濃縮
し、HPLC(ヌクレオシル50−5、8φ×300mm、ヘ
キサン:EtOAc=2:1)で精製し、プルメル酸(4−d
emethyl−4、23−dehydro−2α−hydroxy ursolic
acid)〔I〕1.3mgを得た。
実施例3 結晶M(3.0mg)にCH2N2/Et2Oを加え、常法によりメチル
エステル化し、HPLC(ヌクレオシル50−5、8φ×3
00mm、ヘキサン:EtOAc=1:1)にて分離・精製
し、プルメル酸メチル(methyl−4−demethyl−4、2
3−dehydro−2α−hydroxy ursolate)〔II〕2.4mgを
得た。
製剤例1(注射・点滴剤) 本発明化合物〔I〕又は〔II〕10mgを含有するように
粉末ぶどう糖5gを加えてバイアルに無菌的に分配し、
密封した上、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを封入して
冷暗所に保存した。使用前にエタノールに溶解し、0.85
%生理的食塩水100mlを添加して静脈内注射剤とし、
1日、10〜100mlを症状に応じて静脈内注射又は点
滴で投与する。
製剤例2(注射・点滴剤) 本発明化合物〔I〕又は〔II〕2mgを用いて、製剤例1
と同様の方法により軽症用静脈内注射剤とし、1日、1
0〜100mlを症状に応じて静脈内注射又は点滴で投与
する。
製剤例3(腸溶性カプセル剤) 本発明化合物〔I〕又は〔II〕5g、乳糖2.46g及びヒ
ドロキシプロピルセルロース0.04gを各々とり、よく混
合した後、常法に従って粒状に成形し、これをよく乾燥
して篩別してピン、ヒートシール包装などに適した顆粒
剤を製造した。次に、酢酸フタル酸セルロース0.5g及
びヒドロキシプロピルセルロースフタレート0.5gを溶
解して被覆基材となし、前記顆粒を浮遊流動させつつこ
の基材を被覆して腸溶性の顆粒材とした。この組成物を
カプセルに充填して腸溶性カプセル製剤100個製造す
る。
試験例(制癌活性試験) 本発明化合物を用い、前記試験法により吉田肉腫細胞の
増殖抑制率(%)を算出したところ、第1表に示す結果
が得られた。
なお、比較例として、プルメリア・アクティフォリア・
ポイルより抽出された他のトリテルペン化合物(公知化
合物)である下記の化合物を用いた。
○化合物〔III〕:オレアノール酸(oleanolic acid) (参考文献:“The Merck Index”Nineth ed.p887) ○化合物〔IV〕:ウルソール酸(ursolic acid) (参考文献:“The Merck Index”Nineth ed.,p1269) ○化合物〔V〕:ウバオール(uvaol) (参考文献:W.H.Hui and M.M.Li,Phytochemistry 15 5
63(1967)) ○化合物〔VI〕:クラテゴール酸(crataegolic acid) (参考文献:A.Yagi,N.Okamura,Y.Haraguchi,K.Noda an
d Nishioka,Chem,Pharm.Bull.,263075(1978)) ○化合物〔VII〕2α−ヒドロウルソル酸(2α−hydro
xyursolic acid) (参考文献:A.F.Thomas and B.Willhalm,Tetrohedron
Letters,3177(1964))

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】構造式: (但し、式中Rは水素原子又はメチル基を示す。)で示
    されるトリテルペン化合物。
  2. 【請求項2】Rが水素原子である特許請求の範囲第(1)
    項記載の化合物。
  3. 【請求項3】Rがメチル基である特許請求の範囲第(1)
    項記載の化合物。
  4. 【請求項4】構造式: (但し、式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。) で示されるトリテルペン化合物を有効成分とする制癌
    剤。
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