JPH0644930B2 - 脱臭方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は脱臭方法に関する。更に詳しくは、フタロシア
ニン系金属錯体類を消臭成分とする脱臭方法に関する。

〔従来の技術〕および〔発明が解決しようとする問題
点〕 悪臭を含め各種の臭を消す方法としては、感覚的消臭、
化学的脱臭、物理・化学的脱臭、物理的吸着脱臭、生物
的脱臭などの方法がとられている。

主な悪臭物質の多くは移動性水素が有し、これを脱水素
酸化し、二量化、水溶性化、不揮発化させることにより
消臭が可能と考えられ、生体内酵素が悪臭物質に作用す
る例をいくつかみることができる。これらの反応を行な
う酵素は、ヘマトポリフィリンを含み、アポたん白質と
結合して鉄は３価スピンの状態となり、たん白質のヒス
チジンイミダゾール窒素が第５配位座に配位している。
これと類似の触媒活性のあるフタロシアニン系金属錯体
類、例えばオクタカルボキシフタロシアニン鉄錯体は、
カタラーゼと類似の反応機構で分解し、比活性がヘミン
の約６倍という比較的高い活性を示している。

本発明者らは、かかる作用を有するフタロシアニン系金
属錯体類を中空糸に保持せしめ、かつ中空糸内部または
中空糸外部のいずれか一方に水分を含有する流体を接触
させ、他方に悪臭物質を含有する流体を接触させて互い
に流通せしめることによって、その脱臭作用がより効果
的に発揮できることを見出した。

〔問題点を解決するための手段〕および〔作用〕 従って、本発明は脱臭方法に係り、この脱臭方法は、フ
タロシアニン系金属錯体類を保持せしめた中空糸のモジ
ュールを用い、中空糸の内部または外部のいずれか一方
に水分を含有する流体を接触させ、他方に悪臭物質を含
有する流体を接触させて互いに流通せしめるものであ
る。

フタロシアニン系金属錯体類としては、フタロシアニン
４官能群または８官能群の物質が、単体としてあるいは
重合体に担持させた形で用いられる。

具体的には、次式で表される４，４′，４″，４−テ
トラカルボキシフタロシアニン−金属錯体 あるいは４，５，４′，５′，４″，５″，４，５
−オクタカルボキシフタロシアニン−金属錯体などをベ
ースとする物質が用いられる。

これらのテトラまたはオクタカルボキシフタロシアニン
−金属錯体は、例えば鉄錯体の場合、ニトロベンゼンな
どの溶媒中で、無水トリメリット酸（テトラカルボシキ
の場合）または無水ピロメリット酸（オクタカルボキシ
の場合）、尿素、モリブデン酸アンモニウムおよび塩化
第２鉄とを反応させてカルボン酸アミド型鉄フタロシア
ニンとし、これを水酸化ナトリウム水溶液などのアリカ
リの存在下で加水分解することにより、カルボン酸型鉄
フタロシアニンとしてまず取得される。同様に、塩化第
２鉄の代りに、ニッケル、コバルトまたは銅の塩化物を
用いることにより、対応するカルボン酸型の金属フタロ
シアニンが得られる。

中空糸としては、ポリビニルブチラール、ポリスルホ
ン、酢酸セルローズ、ポリフッ化ビニリデン、ポリカー
ボネート、ポリプロピレンなどから、乾湿式法等によっ
て紡糸されたものが用いられる。

中空糸にフタロシアニン系金属錯体類を保持させる方法
としては、中空糸が乾湿式法で紡糸されるものであれ
ば、それの紡糸原液（ドープ液）中に金属錯体を混入し
ておき、形成された中空糸内にそれを含有させることが
できる。また、金属錯体の溶液を用いる浸漬、噴霧など
による付着方法などの手段もとられる。フタロシアニン
系金属錯体の保持量は、一般に高分子中空糸の重量当り
の約１〜10重量％、好ましくは約２〜８重量％程度であ
る。

中空糸のモジュールとしては、例えば、第１図に中心線
断面図として示されるようなモジュール10の形で用いら
れる。即ち、中空糸１は、紐２、２′などを用いて両端
開口部３，３′を揃えて束ね（これは厳密に揃える必要
はなく、実質的に揃えられるように束ねられてあればよ
い）、この両端開口部で各中空糸の中空部を残して各中
空の外周表面同士を接着剤などを用いて接着して閉塞し
た閉塞部４、４′を設ける。このような中空糸群を筺体
５内に閉塞部４，４′を内接するように収容する。この
筺体５の両端部には、固定されるか或いは着脱自在とさ
れた蓋体６、６′が取付けられており、この蓋体６、
６′にはそれぞれ孔７、７′が、また筺体５の胴部５ａ
には少なくとも１個、図示された態様では互いに対向す
る位置に２個の孔９、９′がそれぞれ設けられている。
このような、中空糸１のモジュール10においては、第２
図に示すように、蓋体６、６′のそれぞれの孔７と孔
７′とは中空糸１の中空内部１ａを介して連通してい
る。また、筺体５の胴部５ａの２つの孔９と孔９′とは
中空糸１の中空外部１ｂ間の隙間１ｃを介して連通して
いる。

そこで、第１図に示すような多数の中空糸１を束ねた中
空糸１のモジュール10において、筺体５の胴部５ａの孔
９、９′間に水を通して中空糸外部１ｂ間の隙間１ｃに
水を送り込んで、中空糸外部１ｂを水に接触させ、他方
の蓋体６、６′の孔７、７′間、すなわち中空糸内部１
ａに悪臭物質を含有する流体を接触させ、互いに流通さ
せる。フタロシアニン糸金属錯体類を保持する中空糸１
は、その中空糸外部１ｂで水分に接触し、かつその表面
積が大きいので、フタロシアニン系金属錯体類の脱臭効
率は増加し、中空糸内部１ａを流通する悪臭物質はその
出口の孔７′において大幅に減少し、脱臭される。

中空糸の水との接触は、前述の方法以外に、蓋体６、
６′の孔７、７′間、すなわち中空糸内部１ａに水を送
り込み、筺体５の胴部５ａの孔９、９′間に悪臭物質を
含有する流体を流通させてもよい。

また、送り込まれる液体状の水の代わりとして、水分を
含有した湿度の高い気体等の流体などを用いることもで
きる。

また、流体状の水または水分を含有する気体は、中空糸
内部１ａまたは中空糸外部１ｂに継続的に送り込む代わ
りに、モジュール内に充填した状態で中空糸と水または
水分を含む流体とが常に接触した状態であってもよい。

〔発明の効果〕

本発明に係る脱臭方法は、フタロシアニン系金属錯体類
を保持するモジュール状の多数の中空糸の中空糸の内部
または外部のいずれか一方に水分を含有する流体を接触
させているので、中空糸は常に水分により湿潤状態にあ
る。このため、水分の存在下でよりその効果が発揮され
るフタロシアニン系金属錯体類の脱臭能力は大幅に向上
し、中空糸の脱臭効率を大幅に増大できる。

悪臭成分を脱臭すべき悪臭物質としては、活性水素を有
する悪臭物質のもの、例えば硫化水素、アルキルメロカ
プタン類、アルデヒド類、アンモニアなどであり、これ
らは水分の存在によって脱臭が大幅に促進される。ただ
し、アンモニアは水への吸収とアンモニウム塩の形成に
よると考えられる。

〔実施例〕

次に、実施例について本発明を説明する。

実施例１ ポリビニルブチラール（和光純薬製品）を水を芯液とし
て乾湿式紡糸して得られた中空糸を水切りした後、濃度
５重量％のオクタカルボキシフタロシアニン鉄錯体水溶
液中に室温下に１時間浸漬し、これを一旦引き上げて風
乾した後、0.1N酢酸水溶液中に30分間浸漬し、中性にな
るまで水洗してから風乾させた。

このようにしてカルボキシフタロシアニン金属錯体を付
着させた内径0.5mm、外径1.0mmのポリビニルブチラール
中空糸を300mmの長さに切断し、30℃で十分乾燥させた
後、それの300本を内径40mm、長さ300mmのポリカーボネ
ート製筺体内に収容し、前記第１図に示すようにしてモ
ジュール10を作製した。

このモジュール10を用い、水を入口の孔９から出口の孔
９′に、すなわち中空糸外部１ｂに通しつつ、図示して
いない悪臭発生機から悪臭成分のアンモニアの50ppm
（入口濃度）を含有する気体を入口の孔７から出口の孔
７′に、すなわち中空糸の内部１ａに0.5kg/に加圧し
ながら毎分10ｍの流量で送り込み、出口の孔７′を検
知管（図示せず）に連結して悪臭成分の出口濃度を測定
したところ、１ppmと大幅に低減していた。

比較例１ 実施例１において、モジュール10に水を通さないで、悪
臭成分のアンモニアの50ppm（入口濃度）を含有する気
体を同様の条件で送り込むと、悪臭成分の出口濃度は20
ppmもあり、脱臭は十分ではなかった。

実施例２ 実施例１において、アンモニアの代りに硫化水素の10pp
m（入口濃度）を含有する気体を用いると、悪臭成分の
出口濃度は１ppmと大幅に低減していた。

比較例２ 実施例１において、モジュール10に水を通さないで、悪
臭成分の硫化水素の10ppm（入口濃度）を含有する気体
を同様な条件で送り込むと、悪臭成分の出口濃度は３pp
mもあり、脱臭は十分でなかった。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る脱臭方法を実施するための装置の
態様を示したそれの中心線断面図でありる。第２図は第
１図の要部拡大図である。 〔符号の説明〕 １……中空糸、 １ａ……中空糸内部、 １ｂ……中空糸外部、 10……モジュール。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】フタロシアニン系金属錯体類を保持せしめ
   た中空糸のモジュールを用い、中空糸の内部および外部
   のいずれか一方に水分を含有する流体を接触させ、他方
   に悪臭物質を含有する流体を接触させて互いに流通せし
   めることを特徴とする脱臭方法。