JPH0643351U - 電食防止転がり軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 急激な温度変化や衝撃に対して強く過酷な条
件下でも電気絶縁性や耐クリ−プ性に優れた電食防止転
がり軸受を提供すること。 【構成】 転がり軸受の軌道輪１嵌め合い面１１及び側
面１２に、メタキシレンジアミンポリアミド樹脂（ＭＸ
ＤＰＡ６）とポリファニレンサルファイド樹脂（ＰＰ
Ｓ）と非導電性強化繊維材とから成る絶縁皮膜５を形成
したことを特徴とする電食防止転がり軸受。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、電食防止転がり軸受、より詳しくは漏電や静電現象によって軌道 輪と転動体との間に生じる電食を防止することの出来る電食防止転がり軸受に関 する。

【０００２】

【従来の技術】

鉄道車両用トラクションモ−タなどの電動機で使用される軸受は軸受軌道面と 転動体との間に生じる電食を防止するため絶縁性を有することが要求される。こ の電食防止対策としては軸受外輪外周面や内輪内周面に樹脂コ−ティングするこ とが多いが、コ−ティングされる樹脂自身に耐熱性、耐吸湿性が要求され、更に 所定の締代をもって嵌合されるため耐クリ−プ性が要求される。このような樹脂 としてポリアミド６６、ポリアミド６、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチ レンテレフタレ−ト等が用いられるが高温になるにつれ或いは吸湿するにつれて 絶縁特性が悪くなるという問題がある。また、電食防止のための軸受として、例 えば特開平３−２７７８１８号では軌道輪の表面に絶縁皮膜を形成し、その絶縁 皮膜としてガラス繊維を含有したポリフェニレンサルファイド樹脂（ＰＰＳ）に より形成したことを特徴とする電食防止転がり軸受、が提案されている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

電食防止軸受はかなり過酷な条件下で使用されることが多いが、従来から知ら れている電食防止軸受には急激な温度変化によりクラックが発生するものもあり 厳冬期での使用が制限されたり、落下衝撃に弱いため取扱時の作業性が悪い等信 頼性に問題のあるものが多い。また吸湿性による寸法変化のためクリ−プを生じ るものもある。この考案はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的と する所は急激な温度変化や衝撃に対して強く過酷な条件下でも電気絶縁性や耐ク リ−プ性に優れた電食防止転がり軸受を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

即ち、この考案は上記する課題を解決するために、電食防止転がり軸受は軌道 輪の嵌め合い面及び側面に、メタキシレンジミンポリアミド樹脂（ＭＸＤＰＡ６ ）とポリフェニレンサルファイド樹脂（ＰＰＳ）と非導電性強化繊維材とから成 る絶縁皮膜を形成したことを特徴とする。

【０００５】

【作用】

電食防止電食防止転がり軸受を上記手段とすれば、ＰＰＳによる耐熱性や耐薬 品性或いは寸法安定性の良さと、ＭＸＤＰＡ６による耐熱性や低吸水性の良さ及 び非導電性繊維のそれぞれの特徴を生かした転がり軸受とすることが出来る。

【０００６】

【実施例】

以下、この考案の具体的実施例について図面を参照して説明する。 図１はこの考案の電食防止転がり軸受の実施例の軸方向断面図の一部である。 この軸受は外輪１と内輪２と転動体（玉）３と保持器４とより構成される。 即ち、この実施例ではハウジング等との嵌め合い面となる外輪１の外周面１１ に周溝１ａ、１ａを形成すると共に側面１２にも周溝１ｂ、１ｂを形成し、これ ら外周面１１と側面１２に絶縁皮膜５が被覆形成される。

【０００７】 前記絶縁皮膜５には、特殊ポリアミド樹脂としてメタキシレンジアミンポリア ミド樹脂（ＭＸＤＰＡ６）とポリフェニレンサルファイド樹脂（ＰＰＳ）とをア ロイ化したものを用いる。また、強化繊維材として金属繊維や炭素繊維等導電材 以外の繊維、例えばガラス繊維やガラスビ−ズやマイカ或いは無機ファイバ等を その用途や使用条件に応じて選定する。即ち、温度変化や落下衝撃に耐えるには 靱性を有するポリアミド樹脂が有利であるが耐熱性や耐薬品性或いは非吸湿性に よる寸法安定性ではＰＰＳに劣る。そこで耐熱性、低吸湿性を備えたＭＸＤＰＡ ６とＰＰＳとをアロイ化し更に靱性を備えた絶縁皮膜５とするものである。こう して靱性、耐熱性、耐薬品性、及び寸法安定性を十分満足する電食防止軸受を得 ることが出来る。

【０００８】 次に、軸受として特にクリ−プ強度を必要とする場合にはガラス繊維を４０％ 〜５０％（重量％）の割合で配合する。このような配合割合とするのはガラス繊 維を４０％未満とすると必要な強度を得にくくなり、また５０％を越えると製造 時の樹脂流動性が悪くなるからである。

【０００９】 また、前記構成からなる絶縁皮膜５を形成するに際しては、図２に示すように 外輪１表面を良く清浄した後所定の比率で組成さたリン酸塩水溶液で表面処理し 、化学反応による不溶解性の金属リン酸塩からなる金属酸化皮膜６を形成し、前 記ＭＸＤＰＡ６とＰＰＳからなる絶縁皮膜５を形成すれば皮膜の密着強度及び絶 縁抵抗の向上を図ることが出来る。

【００１０】 この考案の電食防止転がり軸受の構成は以上のようであるが、ＰＰＳによる耐 熱性や耐薬品性或いは寸法安定性の良さと、ＭＸＤＰＡ６による耐熱性や低吸水 性及び非導電性繊維のそれぞれの特徴を生かした転がり軸受とすることが出来る 。

【００１１】 図３は、電食防止転がり軸受として内輪２側内周面２１及び側面２２に周溝２ ａ及び２ｂ等を形成加工し樹脂アロイ化による絶縁皮膜５を形成した場合の実施 例である。このようにこの考案の電食防止転がり軸受は内輪２の内周側に形成し ても良い。更に、外輪１と内輪２両方に周溝１ａ及び２ａ等を形成加工し絶縁皮 膜５、５を形成しても良い。

【００１２】

【考案の効果】

この考案の電食防止転がり軸受は以上詳述したような構成としたので、絶縁抵 抗が温度変化によって悪化するということは無くなる。また、吸湿性の改善によ り寸法変化も少なくなりクリ−プ強度も向上させることが出来る。更に冷熱時の 衝撃強度或いは落下時の衝撃強度を大きくすることが出来る。またリン酸塩処理 による金属酸化皮膜を形成しその上に上記する構成の絶縁皮膜を形成すれば更に その効果は大きくなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の電食防止転がり軸受の実施例の軸方
向断面図の一部である。

【図２】この考案の電食防止転がり軸受の外輪の一部を
拡大した断面図である。

【図３】この考案の電食防止転がり軸受の実施例の軸方
向断面図の一部である。

【符号の説明】

１ 外輪 ２ 内輪 ３
転動体 ４ 保持器 ５ 樹脂絶縁皮膜 ６ 金属酸化皮膜

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 転がり軸受の軌道輪嵌め合い面及び側面
   に、メタキシレンジアミンポリアミド樹脂（ＭＸＤＰＡ
   ６）とポリフェニレンサルファイド樹脂（ＰＰＳ）と非
   導電性強化繊維材とから成る絶縁皮膜を形成したことを
   特徴とする電食防止転がり軸受。