JPH0642354A - 内燃機関の排気管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ２サイクルエンジンの排気管構造を改善し、
該エンジン特有の低回転、低負荷時の排気管から燃焼室
への既燃ガスの逆流を防止する。これにより新気混合ガ
スの充填効率を高め、低回転時の燃焼の安定化と高トル
クを得る。 【構成】 排気管の入口から排気管膨脹部の最大径に至
るまでの排気管内部に抵抗体を設置し、この抵抗体は、
排気流路に沿う方向に断面積が増えるような形状に成形
され、且つその先端部を燃焼室側に向ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の排気管に関
し、特に２サイクルエンジンの逆流防止構造を有する排
気管に関する。

【０００２】

【従来の技術】２サイクルエンジンでは、高温高圧の燃
焼ガスが排気管を通って大気に放出されるときのエネル
ギーを利用して、シリンダ内の掃気の促進および新気の
過給という２つの作用を行なわせることが公知である。

【０００３】エンジンからの排気は、エンジンの回転数
に従って周期的に行なわれるので、排気管内の圧力振動
は以前のサイクルによって発生した振動が重畳してくる
ことになる。この圧力振動とエンジン回転の対応では、
次のことが知られている。すなわち、ピストン下死点
後、排気孔が閉じるまでの間に負の圧力波が排気孔出口
に到達する場合に、シリンダ内の掃気が促進され、負の
圧力波の後、正の圧力波が掃気孔閉時期に到達する場合
は、シリンダ内に過給を行なった状態になる。

【０００４】以上のことから、排気管内に負の反射機能
を持つディフューザと呼ばれる膨脹部１５と、正の反射
機能を持つ絞り板１６とを備えることが行なわれてい
る。この従来の排気管の構造を図５に示す。

【０００５】このようなディフューザ１５と絞り板１６
を備えた図５の排気管でも、その排気管内の流速を測定
してみると、図４の破線に示すように排気が逆流してい
る時期がある。図４において、縦軸は流速であり、その
正の値は排気孔から大気へ向かう方向（正流）を示し、
その負の値は逆流を示す。従来の図５の構造を持つ排気
管では、図４の排気孔開（ＥＯ）掃気孔開（Ｓ．Ｏ）の
中間と、下死点（ＢＤＣ）直前に流速が大きく負の値と
なっていて、この時期に大きな逆流が残っていることが
わかる。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】従来、この排気管の逆
流を防止する目的で図６、図７に示す方法が提案されて
いる。図６に示す排気孔近くに設けられた絞り板３５
は、排気の正流の流量を絞りによって少量で長時間維持
させる効果を期待するものであるが、エンジンの高回
転、高負荷時の既燃ガス排出の大きな抵抗となり実用的
ではない。

【０００７】また、図７に示すような２次元的な曲げ板
３６を排気管内に設けた例（実公昭４６−３１２８６号
等）もあるが、排気の正流を考えた場合、排気通路の断
面積を縮小し、排気の抵抗が大きくなる形状であるの
で、この方法も図６の方法と同様に、低回転、低負荷時
の逆流防止が、高回転、高負荷時の高性能維持と両立し
ないという問題点がある。

【０００８】本発明は、前記問題点を解決すべくなされ
たものであって、エンジンの低回転、低負荷時の排気の
逆流を防止し、低回転においても高トルクを得て、しか
も高回転、高負荷時の大量の排気に対して抵抗とならな
いようなエンジンの排気管を提供することを課題とす
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、内燃機関の排
気孔に接続された排気管において、内燃機関の排気孔出
口近くのほぼ断面積が一定の部分と最大径に至るまでの
膨脹部とを含む排気管内部に、排気流路に沿う方向に断
面積が増加する抵抗体を備えることにより上記課題を解
決するものである。

【００１０】

【作用】この発明においては、エンジンの排気孔に接続
される断面積がほぼ一定の排気管上流部と、これに続く
最大径に至る膨脹部とを備える排気管内部に、排気流路
に沿う方向に断面積が増加する抵抗体を、排気管中心線
に対して、等方的に備えることにより、排気の正方向の
流れに対しては抵抗係数が小さく、逆方向の流れに対し
ては抵抗係数が大きな抵抗を作る。これにより、エンジ
ンの高回転時の排気の抵抗を増加させることなく、低回
転、低負荷時の排気管内逆流を防止し、シリンダ内の掃
気の促進および新気の充填効率を高めることが可能とな
る。

【００１１】

【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明
する。図１（ａ）は本発明の第１の実施例の排気管の縦
断面図であり、同図（ｂ）は抵抗体３０を備える部分Ａ
−Ａの横断面図であり、同図（ｃ）は抵抗体Ｂ−Ｂの縦
断面図である。本第１の実施例のように排気管の断面が
円状である場合には、抵抗体３０の形状を頂部に丸みを
つけた円錐体状に形成することが望ましい。なお、図４
に第１実施例においての排気管内流速のグラフを示す。
図４によれば、本発明例（実線）は、従来例（破線）に
比較して逆流防止効果が顕著であることがわかる。

【００１２】また図３に示す第２の実施例は、排気管の
断面形状が丸みを帯びた方形の場合を示し、この場合は
抵抗体３０の形状を頂部に丸みをつけた四角錐体とする
こともできる。その他、抵抗体の形状は、排気流路に沿
う方向に断面積が増加する形状である限り、いずれの形
状とすることも本発明の範囲である。また、いずれの場
合も、抵抗体はその尖頭部をシリンダ側に向けて排気管
の中心線上に、正方向の排気流が等方的に流れるように
設置することが好ましい。

【００１３】次に、本発明の抵抗体の製造方法並びに排
気管内への設置方法について説明する。本発明の第１の
実施例では、図１（ｂ）の断面図に示すように、抵抗体
３０は２分割されて一体となるステー部３１とともにプ
レス成形される。次いで、いわゆるモナカ合せで作られ
るマフラボディの片側それぞれに熔接（＊印で示す）し
ておき、マフラボディをシーム熔接（Π印で示す）で一
体に接合するときに、その内部に抵抗体が形成される。

【００１４】また抵抗体３０の形成は、上記の方法以外
に、半面ずつのプレス品をスポット熔接して形成し、そ
の後片側のプレス品から延長されたステーをマフラボデ
ィのモナカ合わせの間に挟み込み、共にシーム熔接する
方法もある（図２（ａ））。

【００１５】また別の方法として、円錐体をプレス品で
形成せず、機械加工品のものとし、ステーも熔接付けし
てマフラボディと接合する方法もある。（図２
（ｂ））。

【００１６】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、エ
ンジンの高回転時の排気の抵抗を増加させることなく、
低回転、低負荷時の排気の逆流を防止し、シリンダ内の
掃気を促進し、新気の充填効率を高め、低回転において
も高いエンジントルクを得るという効果がある。この逆
流防止は図４に示す排気管内流速グラフでもその効果が
明らかである。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の第１の実施例の内燃機関の排
気管を示し、（ａ）は縦断面図、（ｂ）はＡ−Ａの横断
面図、（ｃ）はＢ−Ｂの縦断面図である。

【図２】図２は、本発明の第１の実施例の別の製造方法
を示す断面図である。

【図３】図３は、本発明の第２の実施例の断面図であ
る。

【図４】図４は、排気管内流速を示すグラフであり、本
発明の第１の実施例について計測したものを実線で、比
較の為の従来例を破線で示す。

【図５】図５は、従来の排気管の全体図である。

【図６】図６は、従来の排気管の絞り板３５を示す排気
管断面図である。

【図７】図７は、従来の排気管の曲げ板３６による抵抗
物を示す排気管断面図である。

【符号の説明】

１ シリンダ ２ シリンダフランジ １０ 排気管ボディ １１ 排気管フランジ １５ ディフューザ １６ 絞り板 ２０ ボルト ３０ 抵抗体 ３１ ステー部 ３５ 絞り板 ３６ 曲げ板 ４０ マフラー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内燃機関の排気孔に接続された排気管に
   おいて、内燃機関の排気孔出口近くのほぼ断面積が一定
   の部分と最大径に至るまでの膨脹部とを含む排気管内部
   に、排気流路に沿う方向に断面積が増加する抵抗体を備
   えることを特徴とする内燃機関の排気管。