JPH0642135Y2 - シリンダヘッド用金属積層形ガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はシリンダヘッド用金属積
層形ガスケットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】シリンダ穴と油穴等の液体穴は、エンジ
ンの熱負荷或いは筒内圧等々の要因によってシール環境
を異にし、従って、シリンダブロックとヘッド間に介在
させたシリンダヘッド用金属積層形ガスケットにおいて
もシリンダ穴周囲は該シリンダ穴周囲の環境に適合する
ように、また、液体穴周囲は該液体穴周囲の環境に適合
するようにそれぞれシール部を設けている。

【０００３】シリンダ穴周囲と液体穴周囲のシールバラ
ンスをとりつつ両穴をシールする構造のものとして、シ
リンダ穴周囲に該シリンダ穴を取り囲むビードを設けて
シール面圧を生じさせる一方、液体穴周囲にガスケット
を構成する上板等の構成板とは別体のシールリングを配
し、液体穴周囲に必要なシール面圧を生じさせ、しか
も、シールリングによるシール面圧はビードによるシー
ル面圧より低くするようにしたものがある（第一従来
例）。

【０００４】また、シールリングを用いず構成板にＮＢ
Ｒゴム等のゴムを被覆した板を配し、シリンダ穴および
液体穴を各々取り囲むビードを配した構造の積層形ガス
ケットがある（第二従来例）。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】第一従来例は、シール
リングを当該ガスケットと別体にして準備し、エンジン
組付け時にガスケットと共にシリンダヘッドとブロック
との間に介在させて用いるようにするか、又は、ガスケ
ット組立て時に当該シールリングをガスケット構成板と
互いに組付けるか、いずれにしてもシールリングを準備
する必要があり、従って、誤組が生じてガスケット又は
エンジンの欠陥製品が生じるおそれがある。

【０００６】また、第二従来例はシリンダ穴を取り囲む
ビードにゴムの被覆層があるため、シリンダ穴の高温に
よって該被覆層が劣化し耐久性が劣る欠点があり、従っ
て、被覆層の素材をフッ素ゴム等の高価な材料としなけ
ればならず構造は簡単であるがコストの高いガスケット
になる。

【０００７】本考案は斯様な現状に鑑み、前記従来例の
欠点を除去し、構造が簡単でシリンダ穴と液体穴をバラ
ンス良くシールできるシリンダヘッド用金属積層形ガス
ケットを提供することを目的として案出したものであ
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上板、下板および中板に
よってガスケット本体を構成し、該ガスケット本体の中
板の端部を折り返してシリンダ穴を取り囲む内側折り返
し部を設け、この内側折り返し部を、前記上板又は下板
を折り返して設けたシリンダ穴を構成する外側折り返し
部の内側に配設し、また、前記ガスケット本体の中板等
の適宜の構成板に前記外側折り返し部より外側にして弾
性の被膜層を設け、この被膜層がガスケット本体の中板
等の各構成板間に層設されるようにすると共に、該被膜
層部と前記外側折り返し部の間にビードを配し、このビ
ードを前記上板又は下板に設けた構成としたものであ
る。

【０００９】

【実施例】図面は本考案のシリンダヘッド用金属積層形
ガスケットの実施例を示し、図１は第一実施例の一部の
平面図、図２は図１Ｘ−Ｘ線に沿う断面図、図３は第二
実施例の断面図を示し、ガスケットＡは、従来のシリン
ダヘッド用金属積層形ガスケットと同様、シリンダ穴Ｈ
ｃ、ボルト穴Ｈｂ、水穴Ｈｗ、オイル穴Ｈｏおよびプッ
シュロッド穴Ｈｐを備え、水穴Ｈｗ、オイル穴Ｈｏおよ
びプッシュロッド穴Ｈｐは同一手段でシールするように
なっている。

【００１０】図２で示すように第一実施例のガスケット
Ａは、上板１、下板２およびこれら上板１と下板２との
間に介在させた中板３とで本体を構成し、上板１を下板
２方向に折り返して前記シリンダ穴Ｈｃを構成する外側
折り返し部４を設け、該外側折り返し部４の内側に、前
記中板３の端部を折り返して設けたシリンダ穴Ｈｃを取
り囲む内側折り返し部５を配設してシリンダ穴シール部
６と成し、このシリンダ穴シール部６の外側に位置する
中板３の上面および下面の全域に弾性の被膜層７，７を
設け、該被膜層７，７が上板１、下板２および中板３の
ガスケット構成板間に層設されるようにし、前記外側折
り返し部４と被膜層７の間にシリンダ穴Ｈｃを取り囲む
ビード８を配し、このビード８を前記下板２に設けたも
のである。

【００１１】下板２は折り返し構造でないために、しぼ
り加工に不適当なバネ材を使用することができ、弾性に
富むビード８を形成することができる。なお、ビード８
は外側折り返し部４によってエンジンの実働によって発
生する微少の振動から保護され（へたりの防止）、しか
も、弾力性の有るビードがエンジンの実働によって発生
する微少の振動に追従して良好なシールが得られる。

【００１２】前記の被膜層７は、例えば、ＮＢＲゴム或
いはシリコンゴムのようなゴムが好ましく、弾性のシリ
コン樹脂などの樹脂を用いても良く、厚さは１０〜５０
ミクロンが最適である。

【００１３】なお、上板の下面或いは下板２の上面に被
膜層を設けて該被膜層が各ガスケット構成板間に層設さ
れるようにしても良い。

【００１４】図３で示す第二実施例はビード８を上板１
に設けたもので残余は第一実施例と同じである。

【００１５】

【考案の効果】本考案は前記の通り、上板又は下板を折
り返して設けた外側折り返し部の内側に中板の端部を折
り返した内側折り返し部を配設してあるから、該部分が
シール面圧を確保してシリンダ穴のシールを行え、仮
に、シール漏れが生じても二次的にビード部がシール機
能を発揮し、これらシール機能に影響し、影響されるこ
となく、被膜層によって各ガスケット構成板間がシール
され、従って、水穴等の液体穴からの液体漏れを未然に
防ぐことができる。

【００１６】また、現在の技術では前記の被膜層を構成
する素材はいずれも熱に弱く、これが高熱によって破損
或いは劣化することを防げないが、本考案によれば被膜
層をシリンダ穴のシール部である外側折り返し部より外
側に配してあるから高熱に冒されることなく前記の液体
シールを支障なく行うことができ、被膜層の外側折り返
し部内の存在によるシリンダ穴シール機能が低減するこ
ともなく、総じてシール性能の優れたシリンダヘッド用
金属積層形ガスケットを提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】第一実施例の一部の平面図。

【図２】図１Ｘ−Ｘ線に沿う断面図。

【図３】第二実施例の断面図。

【符号の説明】

１ 上板 ２ 下板 ３ 中板 ４ 外側折り返し部 ５ 内側折り返し部 ７ 被膜層 ８ ビード Ｈｃ シリンダ穴

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 上板、下板および中板によってガスケッ
   ト本体を構成し、該ガスケット本体の中板の端部を折り
   返してシリンダ穴を取り囲む内側折り返し部を設け、こ
   の内側折り返し部を、前記上板又は下板を折り返して設
   けたシリンダ穴を構成する外側折り返し部の内側に配設
   し、また、前記ガスケット本体の中板等の適宜の構成板
   に前記外側折り返し部より外側にして弾性の被膜層を設
   け、この被膜層がガスケット本体の中板等の各構成板間
   に層設されるようにすると共に、該被膜層部と前記外側
   折り返し部の間にビードを配し、このビードを前記上板
   又は下板に設けたシリンダヘッド用金属積層形ガスケッ
   ト。