JPH0616769U - グラファイト層を備えた金属積層形ガスケット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 使用中にフローを起こさずに接合面の細かな
凹部や傷をシールし、しかも、軽量且つ簡単な構造の金
属積層形ガスケットを提供すること。 【構成】 金属板から成る基板２を、シールする穴Hcの
周囲で折り返してシール部10を形成し、副板３は、シー
ル部10を囲む穴12を開口して基板２に積層し、グラファ
イト層４を、少なくとも副板３の外側面に形成した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、グラファイト層を備えた金属積層形ガスケットに関するものである 。

【０００２】

【従来の技術】

金属積層形ガスケットは、複数の金属薄板を重ね合わせて形成し、シールする 穴の周囲を取り巻いて、金属板にビードを設けたり、シールリングを組付けるな ど、シールする穴の周囲にシール部を形成していることは周知である。したがっ て、高温・高圧のシールする流体のシールに高い性能を発揮する反面、ガスケッ トの構造が複雑となり、小型、軽量とすることが難しく、また生産性が悪く、他 のガスケットに比し高価となる傾向がある。

【０００３】 ところで、例えば、小型エンジンの性能向上に伴い、ガスケットに対しても高 いシール性能が要求されるようになっているにも関わらず、小型、軽量、且つ、 低価格であることが要求されるため、一般に、金属積層形ガスケットが使用され ていない。 以上と別の金属ガスケットの問題として、例えばエンジンのシリンダヘッドや シリンダブロックなどのデッキ面には、小さな突起、、打ち傷、引っ掻き傷など が、カッター跡として形成されている問題がある。即ち、これらエンジン部材間 をガスケットで確実にシールするためには、これらの凹部や傷を埋めることが必 要となる。特にガスケットに高圧が掛かると、これらの凹部や傷を通じて、シー ルする流体が漏洩する。

【０００４】 そこで、これら小さな凹部や傷を埋めるために、従来から、ガスケットの表面 にコーティングを施している。これらのコーティングのうち、ゴムや合成樹脂な どのような柔らかいコーティングは、薄く施す必要がある。即ち、柔らかいコー ティングは、８〜10ミクロメーター以下の凹部又は傷を埋めるために設ける場合 には有効であるが、それ以上に深い凹部又は傷を埋めるために大量の柔らかいコ ーティングを、ガスケットに施すと、使用中にコーティング材がフローを起こし 、ガスケットの表面圧を低下させ、終にシールする流体が漏れ出すようになる。 したがって、大量の柔らかいコーティングを、ガスケットに施してはならない。

【０００５】 それ故、８〜10ミクロメーター以上の深い凹部又は傷があるときは、エンジン 部材の表面を、前記深さが８〜10ミクロメーター以下となるように研削する必要 がある。 前記と別のコーティング材を使用する先行技術として、アメリカ特許第3,841, 289 号公報には、金属板上にグラファイトシートを積層した金属ガスケットが記 載されている。該金属ガスケットを締め付けると、グラファイトシートが更に圧 縮されて前記凹部や傷を埋め、しかも、シリンダの内圧及び温度に耐えることが できる。しかしながら、グラファイトシートを最大密度にまで圧縮した状態で、 高い温度と圧力が作用すると、グラファイトシートは、部分的にフローを起こし 、面圧を低下させるという問題がある。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

以上説明したように、金属積層形ガスケットは、高温・高圧に耐え、しかも、 高いシール性能を有する反面、シール部分の構造が複雑となるために小型化が困 難であり、また、工具などによって接合面にできた細かな凹部や傷からのシール する流体の漏れを防止することが困難であるという問題がある。

【０００７】 本考案は、以上の問題に着目して成されたものであり、軽量且つ簡単な構造で 、しかも、使用中にフローを起こさずにエンジン部材などの接合面にできた凹部 や傷を埋める部材を設けたグラファイト層を備えた金属積層形ガスケットを提供 することを第１の目的としている。 また、本考案は、エンジンの振動によってシール性能が低下しないグラファイ ト層を備えた金属積層形ガスケットを提供することも第２の目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】

以上の目的を達成する本考案のグラファイト層を備えた金属積層形ガスケット の構成は、少なくとも金属板から成る基板と、これに積層した副板とから成り、 基板は、該基板に開口するシール穴の周囲で、該基板を外側に折返してシール部 を形成し、副板は、前記シール部を囲む大きさの穴を開口し、シール部に副板が 重ならないように重ね、且つ、グラファイト層が少なくとも副板の外側となる面 に形成したものである。

【０００９】 本考案に使用するグラファイトは、特に限定はないが、好ましくは、膨張黒鉛 である。グラファイト層は、シート状としたグラファイトを副板の上に常法にし たがって固着したものである。該グラファイト層は、基板と副板との間にも設け 、基板と副板との間のシール性能と、滑り性を改善することができる。 基板は、硬度が低い鋼、例えば軟鋼などを使用してもよく、また、ばね鋼など の弾性金属を使用することもできる。弾性金属を使用すると、基板の折返し部が ばね状となり、ガスケットを締め付ける際の弾性変形による面圧を生じさせ、ビ ードと同様のシール効果を発揮させることができる。また、副板は、一般に硬質 又は軟質の金属板で形成するが、例えば、セラミックなどの非金属板を使用する こともできる。副板を硬質の金属板とし、該板にビードを設け、複数のシール部 を設けることもできる。

【００１０】

【作用】 グラファイトは、ゴムや合成樹脂などの軟質コーティング材と同 様に、接合面の細かな凹部や傷を埋め、しかも、圧縮状態で、熱歪みや、振動が 作用してもフローを起すことがない。但し、好ましくは、グラファイト層の厚さ を、ほぼ30〜100 ミクロンの厚さとすると、通常の前記凹部や傷を十分にシール し、しかも、エンジンなどのような激しい振動と高い熱荷重が加わってもフロー 発生を確実に防止することができる。グラファイト層が30ミクロン以下だと、接 合面上の工具などによる凹部や傷を十分に埋めることができなくなり、また、10 0 ミクロン以上だと、高温・高圧が作用する際に部分的フローを生じるおそれが あり好ましくない。

【００１１】 前記の基板の折返しによるシール部は、ガスケットを締め付ける際に、内フラ ンジとして作用し、該部分にシール用の面圧を発生し、その周囲に設けたグラフ ァイト層が、細かな凹部や傷を埋めてシールする流体の漏れ出しを防止する。副 板は、基板の厚さより厚くすると、基板を折返した部分をシール部とすることが できないことは明らかである。好ましくは、副板は、基板より薄い板を使用する 。

【００１２】

【実施例】

以下、添付の図を対照して、実施例により本考案を具体的に説明する。 図１及び図２に示す実施例１のグラファイト層を備えた金属積層形ガスケット （以下単にガスケットという）１は、エンジンのシリンダヘッドガスケットであ り、シリンダ穴Hc、水穴Hw、オイル穴Ho及びボルト穴Hbなどを設けている。そし て、図２に示すように、ガスケット１は、硬質のステンレス鋼から成る基板２と 、軟鋼などの金属から成る副板３とを積層したものであり、副板３の全面にグラ ファイト層４を設けたものである。

【００１３】 基板２は、実質上、ガスケット１の全域に延びる平坦状の基部６と、シリンダ 穴Hcを形成する折返し部８を基板２に設け、内フランジ状のシール部10とを形成 している。また、副板３も、実質上、ガスケット１の全域に延び、シール部10よ り大きな穴12を形成し、基板２を折返した側に積層している。副板３の板厚は、 基板２の板厚以下とし、ガスケット締め付け力がシール部10に集中するようにし ている。

【００１４】 副板３は、シール部10の面圧調整板として作用する。即ち、図１に示すように 、ボルト穴Hbは、シール部10の外側に配置されているので、副板３の板厚を変え ると、シール部10を圧縮する強さが変わり、シール面圧を調節することができる 。実施例１では、図２に示すように、副板３の板厚は、基板２より薄い板厚とし た。

【００１５】 グラファイト層４は、0.8 〜1.8g/cm³の密度を有し、70ミクロンの厚さに形成 した。グラファイト層４は、ガスケットをボルト（図示せず）で締め付けること により、シリンダブロック（図示せず）のデッキ面に形成された小さな傷を埋め 、副板３とシリンダブロックとの間を密封する。しかも、このように傷をグラフ ァイト層４が埋めた状態で、ガスケット１がシリンダブロック上を滑ることがで きる。したがって、振動、温度変化によるガスケット１及びシリンダブロックそ れぞれの変形が容易になる。

【００１６】 また、図２に示すように、グラファイト層４は、シール部10によって、シリン ダ穴Hcと隔てられているので、直接、シリンダ穴Hc内の高温・高圧による影響を 受けることがなく、使用中のフローを防止することができる。 前記したとおり基板２は硬質金属板で形成しているので、ガスケット１を圧縮 すると、シール部10の折返し部８は、空隙14が押し潰されるように弾性変形して 面圧を発生する。したがって、シール部10には良好なシール圧を発生させること ができる。

【００１７】 図３に示す実施例２のガスケット１の基板２の外側面に、従来から行われてい るニッケル、亜鉛、鉛などの金属メッキ層16を形成したものであり、その他の構 成は、図１，２に示したガスケット１と同様に形成した。したがって、実施例１ と同様の部材には同じ符号を付して説明を省略する。金属メッキ層16は、ニッケ ルなどの高い耐熱性を有するものを使用したり、基板２の全面にメッキを施して 防錆するなどにより、基板２を燃焼ガスから遮断するようにしたので、基板２に は通常のばね鋼を使用することができる。

【００１８】 金属メッキ層16は、シリンダヘッド（図示せず）のデッキ面に形成された凹部 や傷を完全には埋めることはできないが、シリンダヘッドをアルミニウム合金で 形成すると、鋳鉄と異なり精度の高い表面仕上げが容易なので、ガスケット１と シリンダヘッドの接合面との間のシール性能を高めることができる。その他の作 用・効果については、実施例１と全く同じである。

【００１９】 図４に示す実施例３のガスケット１は、基板２にステンレス鋼を使用し、ソリ ッド状のシール部10を形成すると共に、空隙14（図１，２）を設けることなく折 返し部８を形成した。したがって、シール部10は、実施例１，２と同じ締め付け 力で実施例３のガスケット１を締め付けると、締め付け力が比較的弱くても、前 記ソリッド状としたために経時変化が少なくなりシリンダ穴Hcのシール性能を向 上させることができる。

【００２０】 そして、副板３は、ばね鋼板とし、外側面にグラファイト層４を、また、基板 ２側にグラファイト層18を、それぞれ設け、シール部10の外側を囲むビード20を 形成した。副板３の板厚は、基板２より薄くし、また、ビード20の高さは、基板 ２の板厚より高くして、ガスケット１を圧縮する際に、ビード20が圧縮されて面 圧を発生し、該部分にもシール面圧を発生させ、多段シール部を形成した。この 場合、シール部10の折返し側の基板１は、ビード20の圧縮を制限する面圧調整板 として作用する。

【００２１】 図５に示す実施例４のガスケット１は、実施例１の応用であり、折返し方向を 図２とは逆にしたものである。図５に示すガスケット１も、実施例１と同様に優 れたシール性能を示すことができる。 グラファイト層18は、基板２と副板３との間を密封し、該部分からシールする 流体が漏れることを防止することができる。また、グラファイト層４，18は、エ ンジンの振動や熱膨張収縮などによりビード20が変形する際に、副板３が、基板 ２及びシリンダボディ（図示せず）のデッキ面を滑り振動による変形を容易にす る。

【００２２】

【考案の効果】

以上説明したように本考案のグラファイト層を備えた金属積層形ガスケットは 、次の効果を得ることができる。 グラファイト層を設けた副板を積層することにより、接合面の細かな凹部や傷 を埋めると共に、フローの発生を防止し、基板をシール穴の周囲で折返して形成 したシール部と、前記グラファイト層とでシールするようにしたので、シール性 能がよく、しかも、薄く、且つ軽い金属積層形ガスケットを形成することができ る。

【００２３】 また、グラファイトは化学的に安定した材料であり、しかも、前記シール部が 、グラファイト層をシールする流体から隔てる構成としたために、高温、高圧の シールに対しても高いシール性能を発揮することができる。 更に、グラファイト層は、接触面の滑りを良くしてガスケットの変形を容易に したので、高温・高圧の燃焼ガスが発生し、激しく振動するエンジンを、薄く、 且つ、軽いガスケットでシールすることが可能となり、小型エンジンのシリンダ ヘッドガスケットを提供することが可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例１のグラファイト層を備えた金
属積層形ガスケットの部分平面図である。

【図２】図１のII−II線断面図である。

【図３】本考案の実施例２のグラファイト層を備えた金
属積層形ガスケットの部分断面図である。

【図４】本考案の実施例３のグラファイト層を備えた金
属積層形ガスケットの部分断面図である。

【図５】本考案の実施例４のグラファイト層を備えた金
属積層形ガスケットの部分断面図である。

【符号の説明】

１ グラファイト層を備えた金属積層形ガスケット（ガ
スケット） ２ 基板 ３ 副板 ４ グラファイト層 ８ 折返し部 10 シール部 12 穴 16 金属メッキ層 18 グラファイト
層 20 ビード Hc シリンダ穴
（シールする穴）

Claims (5)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも金属板から成る基板と、これ
   に積層した副板とから成り、基板は、該基板に開口する
   シール穴の周囲で、該基板を外側に折返してシール部を
   形成し、副板は、前記シール部を囲む大きさの穴を開口
   し、シール部に副板が重ならないように積層し、且つ、
   グラファイト層が少なくとも副板の外側となる面に形成
   したグラファイト層を備えた金属積層形ガスケット。
2. 【請求項２】 前記グラファイト層の厚さが、30〜100
   ミクロンである請求項１のグラファイト層を備えた金属
   積層形ガスケット。
3. 【請求項３】 前記基板と副板との間に、グラファイト
   層を形成した請求項１又は２のグラファイト層を備えた
   金属積層形ガスケット。
4. 【請求項４】 副板を弾性金属板で形成し、基板に設け
   た前記シール部の外側を取り巻くビードを副板に形成し
   た請求項１、２又は３のグラファイト層を備えた金属積
   層形ガスケット。
5. 【請求項５】 基板を弾性金属板で形成した請求項１、
   ２、３又は４のグラファイト層を備えた金属積層形ガス
   ケット。