JPH0642134Y2 - 金属ガスケットのビ−ド構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は、ガスケットの挟着時にシール面に発生する面
圧を、シールする穴の全周でほぼ均一にすることがで
き、シール性能に優れた金属ガスケットのビード構造に
関する。

〔従来技術〕

近年のエンジンの高出力化・軽量化に伴う構造並びに、
エンジン各部に使用する材料の変遷に従い、エンジンの
シリンダブロックとシリンダヘッドとの間に装着するシ
リンダヘッドガスケット、またはシリンダヘッドと吸排
気マニホールドとの間に装着するマニホールドガスケッ
トには、より高温・高圧の燃焼ガスや、潤滑油及び冷却
水をシールする性能が要求されている。

このような問題に対する対策として、高温・高圧の流体
に対する耐久性を持った金属ガスケットを使用すること
によって、従来のシール技術では充分でなかった燃焼ガ
スや冷却水、潤滑油等の流体の漏洩を充分に防止しよう
とすることが試みられている。

このような金属ガスケットとしては、例えば第６図に示
すような金属積層形ガスケット１が使用されている。こ
の金属積層形ガスケット１は、金属薄板によって形成さ
れた上板２、平板状の中板３、シールビード４を設けた
中板５、及び下板６からなっている。

そして、シールすべき穴Ｈの周縁部において、下板６を
折り返して上板２に重ねて、この下板６と上板２の接触
部分の巾をシール面圧発生部７とし、折り返し部８によ
って、この上板２と下板６の間に積層される中板３及び
中板５の方にシールすべき流体が浸入することを防止し
ている。

一方、通常、ガスケットを挟着するのにボルトによって
締結しており、このボルトが貫通するボルト穴の近傍の
ガスケットのシール面は比較的に強いシール面圧が得ら
れるのに対して、ボルト穴から離れた部分や、シリンダ
ブロックやシリンダヘッド等の肉抜き部分の近傍のガス
ケットのシール面は充分なシール面圧が得難いという問
題がある。

そして、このようなことから、高温・高圧の流体に対す
る耐久性を持った金属ガスケットを使用する場合にも、
シールする穴の全周でほぼ均一なシール面圧を得るのが
困難であるという問題がある。

また、別の従来例としては、例えば特開昭59-97364号公
報のような金属ガスケットが知られている。この金属ガ
スケットは、ビードの二つの基端部が当接するシール面
に発生するシール面圧の配分を、シールする流体に近い
側のシール面に、より多く配分することによって、シー
ルする流体に近い側のビードの基端部に発生するシール
面圧を、ビードの頂部に発生するシール面圧に近づけて
バランスをとり、頂部側のシール面を傷つけずに。流体
をシールすることを目的としたものである。

そして、その目的を達成するための構成として、ビード
の頂部から基端部にかけての傾斜を、シールする流体に
近い側できつくし、シール面圧の配分を少なくする側の
傾斜は緩やかに形成している。

また、この金属ガスケットは、これを挟着した状態にお
いて、ビードの一方の基端部から、他方の基端部までの
間のビード山の内側に空間部を形成することによって、
圧力配分を多く受けた基端部のシール面から漏洩した圧
力流体をこの空間部で拡散して、その圧力を減圧するよ
うにしている。

このように空間部はできるだけ減圧効果を高めるため
に、大きく形成した方が良いので、ビード山の頂部を窪
ませて、谷部を形成した実施例においても、この谷部は
ビードの基端部側の副板に接触させないようにしてい
る。

しかしながら、このように谷部を基端部側の副板に接触
させないようにすると、エンジンの燃焼・爆発による振
動によって、この部位が大きな振幅で振動することとな
り、金属疲労による亀裂の発生を起こし易いという問題
がある。

また、このように谷部を基端部側の副板に押圧状態で当
接させていないので、このビード全体に発生する面圧
は、谷部を形成していない実施例のビードと殆ど変わり
がなく、ガスケットの挟着時に、このように基端部側の
副板に触れないように形成された谷部ではシール面圧を
向上させるという効果を得ることはできないという問題
があった。

〔考案の目的〕

本考案は以上の問題点に鑑みて、比較的にシール面圧が
低くなり、高温・高圧の流体が漏洩し易い部分の面圧を
向上させることによって、この部位のシール面圧をボル
ト穴近傍のように充分なシール面圧が得られる部分の面
圧と同等にし、シールすべき穴の全周において、均一
で、しかも充分なシール性能を発揮することができる金
属ガスケットのビード構造を提供することを目的とす
る。

〔考案の構成〕

前記目的を達成するための本考案の金属ガスケットのビ
ード構造は、シールする穴の周囲に一山形のシールビー
ドを設けた金属ガスケットであって、このガスケットに
よってシールされるシール面の面圧が低くなる部分に、
前記シールビードの長手方向に沿って、この一山形のシ
ールビードの頂部を窪ませて谷部を形成した二山形のシ
ールビードを、このガスケットの挟着時に、前記谷部と
その両側の頂部がシール面に押圧状態で当接するように
配設したものである。

本考案の金属ガスケットのビード構造によると、一山形
のシールビードの頂部を窪ませて形成した谷部が、この
ガスケットによってシールされるシール面の面圧が低く
なる部分に対して選択的に配設されており、ガスケット
の挟着時には、この谷部とその両側に形成される頂部が
シール面に押圧状態で当接することとなるので、この部
位のシール面圧を選択的に向上させることができる。

ガスケットの挟着時にこのシールビードが押圧される
と、先ず一山形のシールビードの裾部が拡がると共に、
頂部にシール面圧が発生する。この時、この一山形のシ
ールビードの裾部に対応する部分の二山形のシールビー
ドの裾部も同様に拡がり、二つの頂部にシール面圧が発
生する。

また、前記二山形のシールビードは、一山形のシールビ
ードの頂部を屈曲させて谷部を形成するとによって、こ
の谷部から、その両側に形成される頂部にかけての部分
の剛性を向上させているので、そのまま、ガスケットの
挟着力を強めていくと、この谷部が当接するシール面に
は、更に強いシール面圧が発生する。

即ち、谷部がシール面に当接する前と後では前記二山形
のシールビードの弾性係数が増加するように変化し、一
山形のシールビードの持つ弾性係数よりも高い弾性係数
となるように作用するのである。

従って、一山形のシールビードでも元々充分なシール面
圧が得られていた部分と、シール面圧が低い部分に二山
形のシールビードを配設してシール面圧を向上させた部
分とが、同程度のシール面圧を得られるようになるの
で、前記シールビードの全周において、均一で、しかも
充分なシール性能を発揮することができる。

〔実施例〕

次に図面を参照して、本考案の金属ガスケットのビード
構造を、エンジンのシリンダブロックと、シリンダヘッ
ドの間に介装するヘッドガスケットに適用した実施例を
説明する。

第２図は、本考案の金属ガスケットのビード構造を適用
し、金属積層形ガスケット１に使用されるシールビード
４を設けた中板５の部分平面図であり、第１図は第２図
のI-I線で断面にした部分斜視図である。

第２図に示す中板５には、シリンダ用穴Ｈ、その周囲に
設けたシールビード４、金属積層形ガスケット１を挟着
するために使用されるボルトが貫通するボルト用穴Hb、
潤滑油用穴Ho、冷却水用穴Hwがそれぞれ設けられてい
る。この中板５を使用した金属積層形ガスケット１は、
金属薄板によって形成された上板２及び下板６からなる
二枚の外板の内、下板６のシリンダ用穴Ｈの周縁部を折
り返し、上板２のシリンダ用穴Ｈの周縁部に重ねて、こ
の積層させた部分をシール面発生部７としている。

また、この上板２と下板６間に、このシール面発生部７
の巾の範囲内にシールビード４が配設されるように、前
記中板５と、シールビード４を形成していない中板３を
設けている。そして、折り返し部８によって、この上板
２と下板６の間に積層される中板３及び中板５の方にシ
ールすべき流体、即ち、燃焼ガスや潤滑油、冷却水が浸
入することを防止している。

また、シールすべき穴である前記シリンダ用穴Ｈの周囲
において、ボルト用穴Hb近傍のように充分なシール面圧
が得られる部分には、従来の一山型のシールビード４を
設けており、一方、ボルト用穴Hbから離れた部分や、シ
リンダブロックやシリンダヘッド等の肉抜き部分の近傍
のように、シール面の面圧が低くなる部分に対して、選
択的に前記一山形のシールビードの頂部を窪ませて谷部
ａを形成した二山形のシールビード４を設けている。

第１図に示した挟着前の金属積層形ガスケット１を、第
３図に示すようにシリンダヘッド11及びシリンダブロッ
ク12の間に挟んで、ボルト締めすると、図中に示すよう
に押し潰されて変形する。

本考案を適用した金属積層形ガスケット１のシールビー
ド４が押圧されると、先ず一山形のシールビードの裾部
が拡がると共に、頂部にシール面圧が発生する。この
時、この一山形のシールビード４の裾部に対応する部分
の二山形のシールビード４の裾部b,cも同様に拡がり、
二つの頂部d,eにシール面圧が発生する。そして、その
ままガスケットの挟着力を強めていくと、シールビード
４の谷部ａが下板６に押圧状態で当接するようになり、
谷部ａが当接するシール面には、強いシール面圧が発生
するようになる。

これは一山形のシールビード４の頂部を屈曲させて谷部
ａを形成することによって、この谷部ａから、その両側
に形成される頂部d,eにかけての部分の剛性を向上させ
ているからである。つまり、谷部ａがシール面に当接す
る前と後では前記二山形のシールビード４の弾性係数が
増加するように変化し、一山形のシールビード４の持つ
弾性係数よりも高い弾性係数となるように作用するので
ある。

このようなことから、金属積層形ガスケット１の挟着時
に、二山形のシールビード４に発生するシール面圧の分
布は、頂部d,eにおいてP₁、谷部ａにおいてP₂、裾部b,c
においてP₃となり、これらのシール面圧の拡がりは、面
圧分布曲線13,14に示すように発生する。

従って、シール面の面圧が低くなる部分に対して従来の
一山形のシールビード４を適用したために、図中にP₁，
P₂，P₃及び鎖線で示すように発生する面圧分布よりも強
いシール面圧を得ることができる。

また、本考案の金属ガスケットのビード構造は、上記の
実施例に限定されるものではなく、例えば、第４図に示
すように、比較的に広い巾で平らに形成された一山形の
シールビード４の頂部に、Ｕ字形の谷部ａを形成したも
のでも良く、或いは、第５図に示すように、第４図と同
様に比較的に広い巾で平らに形成された一山形のシール
ビード４の頂部に、Ｖ字形の谷部ａを形成したものでも
良い。

このように、本考案の金属ガスケットのビード構造によ
ると、一山形のシールビードの頂部を窪ませて形成した
谷部ａが、シール面の面圧が低くなる部分に対して選択
的に配設されているため、この部位のシール面圧を選択
的に向上させることができる。

そして、一山形のシールビードでも元々充分なシール面
圧が得られていた部分と同程度のシール面圧を得られる
ようになるので、前記シールビードの全周において、均
一で、しかも充分なシール性能を発揮することができ
る。

〔考案の効果〕

本考案の金属ガスケットのビード構造は、シールする穴
の周囲に一山形のシールビードを設けた金属ガスケット
であって、このガスケットによってシールされるシール
面の面圧が低くなる部分に、前記シールビードの長手方
向に沿って、この一山形のシールビードの頂部を窪ませ
て谷部を形成した二山形のシールビードを、このガスケ
ットの挟着時に、前記谷部とその両側の頂部がシール面
に押圧状態で当接するように配置したので、以下の効果
を奏することができる。

一山形のシールビードの頂部を窪ませて形成した谷部
が、シール面の面圧が低くなる部分に選択的に配設され
ており、ガスケットの挟着時には、この谷部とその両側
に形成される頂部がシール面に押圧状態で当接すること
となるので、この部位のシール面圧を選択的に向上させ
ることができる。

従って、一山形のシールビードでも元々充分なシール面
圧が得られていた部分と、シール面圧が低い部分に二山
形のシールビードを配設してシール面圧を向上させた部
分とが、同程度のシール面圧を得られるようになるの
で、前記シールビードの全周において、均一で、しかも
充分なシール性能を発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例の金属ガスケットのビード
構造を示す一部を断面にした部分斜視図、第２図は第１
図のビードを形成した中板の部分平面図、第３図は第１
図のガスケットを挟着して変形した状態とそのシール面
圧を示す要部断面図、第４図は本考案の第２実施例の金
属ガスケットのビード構造を示す一部を断面にした部分
斜視図、第５図は本考案の第３実施例の金属ガスケット
のビード構造を示す一部を断面にした部分斜視図、第６
図は従来の金属ガスケットのビード構造を示す一部を断
面にした部分斜視図である。 １……金属（積層形）ガスケット、４……シールビー
ド、ａ……谷部、ｄ……頂部、ｅ……頂部、Ｈ……シー
ルする穴。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シールする穴の周囲に一山形のシールビー
   ドを設けた金属ガスケットであって、このガスケットに
   よってシールされるシール面の面圧が低くなる部分に、
   前記シールビードの長手方向に沿って、この一山形のシ
   ールビードの頂部を窪ませて谷部を形成した二山形のシ
   ールビードを、このガスケットの挟着時に、前記谷部と
   その両側の頂部がシール面に押圧状態で当接するように
   配設した金属ガスケットのビード構造。