JPH0641640B2 - チタン及びチタン合金の陽極酸化処理法 - Google Patents

チタン及びチタン合金の陽極酸化処理法

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JPH0641640B2
JPH0641640B2 JP62132065A JP13206587A JPH0641640B2 JP H0641640 B2 JPH0641640 B2 JP H0641640B2 JP 62132065 A JP62132065 A JP 62132065A JP 13206587 A JP13206587 A JP 13206587A JP H0641640 B2 JPH0641640 B2 JP H0641640B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、主として装飾品、建材、航空機及び機械部
品などチタン製品の表面処理に使用されるチタン及びチ
タン合金の陽極酸化処理法に関する。
(従来の技術) 従来、チタン及びチタン合金の陽極酸化処理法として、
例えば特開昭62−10299号公報及び特開昭57−
131391号公報記載の技術が知られており、前者
は、チタン及びチタン合金(以下チタンと略称する)を
無機酸や有機酸で陽極酸化処理して、着色皮膜を形成し
た後に、透明な塗装処理を行うものであり、また、後者
は、弗化物とアンモニア分及び過酸化水素水とから成る
3液タイプの電解浴を調製し、この電解浴中でチタンの
陽極酸化処理を行なおうとするものである。
なお、後者は、前記弗化物とアンモニア分の供給源とし
て、硼弗化アンモニウムを使用しているが、この硼弗化
アンモニウムは、電解浴としての使用時に加水分解し
て、弗化物とアンモニア分とに分解されることから、そ
の電解浴は、実質的には3液成分で構成されていると言
えるのである。
(発明が解決しようとする問題点) 而して、前者(特開昭62−10299号公報)のよう
に、チタンを無機酸や有機酸で陽極酸化処理して着色皮
膜を得る手段は、従来から広く知られているのである
が、斯かる手段で生成される着色皮膜は、所謂干渉皮膜
と称される極めて薄い膜厚のもので、強度的にも弱く、
そのままでは使用できないことから、二次処理として着
色皮膜の表面に別途塗装処理を施しているのであり、換
言すれば、チタンの電解浴として、無機酸や有機酸だけ
を使用した場合、実用可能な膜厚の酸化皮膜を得ること
ができないといった問題がある。
また、後者(特開昭57−131391号公報)のよう
に、弗化物、アンモニア分及び過酸化水素水の3液タイ
プの電解浴(3成分系電解浴)を用いるときには、浴管
理が非常に行い難くなる。その理由は、 (1)アンモニアが揮散し易く、一定濃度に管理するため
には常に補給する必要がある。
(2)アンモニアの分析は、吸光光度法で測定するが、弗
化物が存在すると発色を著しく妨害し、正確なアンモニ
アの数値が得られないため管理が不正確となる。
(3)過酸化水素の定量分析においても、フッ化物が妨害
し、フッ素イオンを除去してから行う必要があり、分析
が困難となる。
からである。
さらに、後者では、電解浴の浴組成として、過酸化水素
水と硼弗化アンモニウムを使用しているが、斯かる電解
浴では、チタン表面に実用可能な必要膜厚の酸化皮膜を
形成するのに、工業化に極めて不利な長時間を必要とす
るのである。
また、本発明者は、チタン表面への酸化皮膜の生成を工
業的に行うことを目的として、以前に特願昭61−25
8012号において、リン酸と硫酸と、過酸化水素水な
どの酸化剤とから成る3液タイプの電解浴を調整し、こ
の電解浴中において直流で電解処理することにより、厚
さが数100Åから数ミクロン以上で、しかも表面均一
で美しい皮膜を短時間で生成することができるチタン及
びチタン合金の陽極酸化処理法を提案したのであるが、
この陽極酸化処理法では、3液タイプの電解浴を使用し
ていることから、前記の理由により浴管理が非常に行い
難く、これに伴い品質が不安定になる問題があることが
判明した。
しかして本発明者は、チタンの陽極酸化処理法につい
て、さらに研究を重ねた結果、2液タイプの電解浴、即
ち2つの成分からなる電解浴を用いることにより浴管理
が非常に簡単にでき、しかもアナターゼ型とルチル型と
が混在した酸化皮膜を生成することができる陽極酸化処
理法を開発するに至ったのである。
上記のように、本発明において、生成させる酸化皮膜を
アナターゼ型とルチル型とが混在するものとしたのは、
次の理由に基づく。
即ち、酸化皮膜を形成しているアナターゼ型酸化チタン
とルチル型酸化チタンは、結晶形態が異なるためそれぞ
れの性質を異にしており、アナターゼ型は結晶格子の長
さが長く、ルチル型は短い。また、硬度はルチル型の方
が高く、アナターゼ型の方が低い。また、チタン上に生
成したアナターゼ型酸化チタン皮膜は素地チタンとの密
着性が優れている。そのため、本発明のアナターゼ型酸
化チタンとルチル型酸化チタンが混在した皮膜は優れた
密着性に加えて、硬度及び耐摩耗性に極めて優れた特性
を示し、建築材料や機械部品などの表面に施す酸化皮膜
として最適である。
なお、過酸化水素水−硫酸から成る2液タイプの電解浴
(2成分系電解浴)を用いることにより浴管理が簡単に
できる理由は、分析において、それぞれの他の成分が妨
害することなく分析が可能であり、2成分系浴の各成分
の値を正確に分析でき、従って、生産にともなって変化
するそれぞれの濃度管理が容易に行えるからである。
(問題点を解決するための手段) 上記の問題点を解決する手段として、本発明では、アナ
ターゼ型とルチル型とが混在した酸化皮膜を生成するチ
タン及びチタン合金の陽極酸化処理法であって、0.1
〜20%の過酸化水素水に1〜30%の硫酸を添加し
て、2液タイプの電解浴を調製し、150V以上の電圧
で電解処理することを特徴とするチタン及びチタン合金
の陽極酸化処理法を開発し、採用した。
而して、本発明において、使用する過酸化水素水の過酸
化水素の濃度及び硫酸の濃度を上記の範囲に設定すると
共に、印加電圧の下限値を上記の数値に設定し、且つ過
酸化水素水に硫酸を添加するのは、それぞれ次の理由に
基づく。
過酸化水素水は、電解中に溶出してくるチタンを水溶性
チタン化合物、例えば、ベルオキソチタン酸塩として生
成させ、チタンの表面全体を常に活性化して陽極酸化を
円滑且つ積極的に行なわしめるものであるが、過酸化水
素水の濃度を0.1〜20%の範囲に設定したのは、上
記の効果が、この濃度範囲内で効率よく達成できること
を実験の結果、確認できたからである。
また、過酸化水素水は上記の作用、効果を奏するが、ミ
クロン単位の酸化皮膜を形成するためには硫酸の添加を
必要とするものであり、この硫酸の濃度を1〜30%の
範囲に設定したのは、この範囲の濃度において、目的と
するミクロン単位の酸化皮膜を経済的に、反復繰返して
工業生産できることを実験の結果、確認できたからであ
る。
さらに、印加電圧の下限値を150Vとしたのは、15
0Vを下回るとアナターゼ型酸化チタンのみしか形成さ
れないが、150V以上の場合は、アナターゼ型酸化チ
タンに、さらにルチル型酸化チタンが混在した皮膜とな
って、目的の酸化皮膜が生成できるからである。
(作用) 上記のような2液タイプの電解浴を使用することによ
り、チタン及びチタン合金の陽極酸化処理を工場規模で
行う場合であっても、浴管理は簡単であり、安定した品
質のものが得られる。
また、前記電解浴の浴組成として用いる過酸化水素水
は、電解処理時に、無機酸の存在下で反応を起し、水溶
性のチタン化合物、例えばペルオキソチタン酸塩を生成
し、チタン及びチタン合金の表面全体が常に活性化され
て、チタン及びチタン合金の全表面に対する陽極酸化が
スムーズにかつ積極的に行われ、前記チタン表面への酸
化皮膜の生成に積極的に寄与する作用がある。
さらに、前記ペルオキソチタン酸塩の生成で前記過酸化
水素水によるチタン表面の溶解を継続的に行って、これ
らの反応過程を繰り返すことにより、チタン表面に実用
可能な必要膜厚の酸化皮膜を短時間で生成する作用があ
る。
(実施例) 以下、本発明に係わるチタン及びチタン合金の陽極酸化
処理法を、具体例を挙げて説明する。
なお、各具体例では、表1に示す成分組成のチタン合金
を使用した。
具体例1 (1)試料;上記表1のチタン合金Aを使用した。
(2)電解浴の調製;2%過酸化水素水に、2〜20%の
硫酸を添加して調整した。
(3)電解条件;上記電解浴を使用して、浴温度25±1
℃の条件下で、前記試料を陽極とし、直流で浴電圧を5
0〜200Vまで種々変化させ、各々20分間陽極酸化
処理を行った。
なお、50V及び100Vでの処理は比較例として行な
った。
(4)結果;硫酸の添加量及び浴電圧をそれぞれ変化させ
て、上記試料に形成された酸化皮膜の厚さは、表2の通
りであり、また各皮膜表面は、灰白色乃至灰色の均一で
美しいものであった。
なお、表2において、浴電圧が100V以下では、20
00オングストローム以下の酸化皮膜しか得られない
が、150V以上とすることにより、ミクロン単位の厚
い酸化皮膜が形成できるのである。
ちなみに、ここで言うミクロン単位とは、1μm前後以
上の皮膜のことを言い、0.1μm以上の皮膜のこと
を、チタン陽極酸化皮膜に関しては、ミクロン単位の厚
い酸化皮膜と言っている。また、従来の酸化皮膜は、オ
ングストローム(1オングストロームは1×10-4μm)
単位の薄い酸化皮膜であり、これに対してミクロン単位
の厚い酸化皮膜と言っている。
また、前記具体例1で形成された酸化皮膜をX線回析に
より分析した結果、第1図に示したように、2%過酸化
水素水に2%硫酸を添加した電解浴を使用した場合、浴
電圧が50V及び100V以下では、アナターゼ型とル
チル型の両方の酸化皮膜が混在した状態で形成されてい
ることは認められないが、150V及び200Vでは、
アナターゼ型とルチル型の両方の酸化皮膜が混在した状
態で形成されていることが認められる。
さらに、第2図は、2%過酸化水素に対する硫酸の添加
量を、4〜10%に種々変化させた電解浴中で、浴電圧
を200Vとして形成した酸化皮膜のX線回析結果を示
しており、この第2図から明らかなように、硫酸の添加
量が4〜10%の場合には、アナターゼ型とルチル型の
両方の酸化皮膜が混在した状態で形成されていることが
わかる。
(発明の効果) 以上、詳述したところから明らかなように、本発明によ
れば、次の諸効果を奏する。
(1)チタン及びチタン合金の陽極酸化処理を工場規模で
行う場合であっても、浴管理を簡単に行うことができ
て、安定した品質のものが得られる。
(2)また、前記電解浴の組成として用いる過酸化水素水
は、電解処理時に、無機酸の存在下で反応を起し、水溶
性のチタン化合物、例えばペルオキソチタン酸塩を生成
し、チタン及びチタン合金の表面全体が常に活性化され
て、チタン及びチタン合金の全表面に対する陽極酸化が
スムーズにかつ積極的に行われ、前記チタン表面への酸
化皮膜の生成に積極的に寄与できる。
(3)さらに、前記ペルオキソチタン酸塩の生成で前記過
酸化水素水によるチタン表面の溶解を継続的に行って、
これらの反応過程を繰り返すことにより、チタン表面に
実用可能な必要膜厚の、アナターゼ型とルチル型が混在
した酸化皮膜を短時間で生成でき、チタン表面の陽極酸
化処理を工業的的に可能ならしめ得る。
(4)さらにまた、アナターゼ型とルチル型の両方の酸化
皮膜が混在した状態で生成されることにより、アナター
ゼ型酸化チタン皮膜の優れた密着性と、ルチル型酸化チ
タン皮膜の高い硬度の両特性を活用、兼備させ得て、密
着性、耐候性及び耐摩耗性に極めて優れた特性を示すこ
とができ、建材や機械部品などチタン製品の表面処理法
として最適である。
【図面の簡単な説明】
第1図はアナターゼ型の酸化皮膜とルチル型の酸化皮膜
の形成状態の1例を示す説明図である。 第2図はアナターゼ型の酸化皮膜とルチル型の酸化皮膜
の形成状態の他例を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 広地 通明 神奈川県横浜市神奈川区富家町1番地 東 海金属株式会社内 (72)発明者 山田 和範 神奈川県横浜市神奈川区富家町1番地 東 海金属株式会社内 (72)発明者 伊藤 征司郎 大阪府東大阪市小若江3−4−1 近畿大 学理工学部応用化学科 (72)発明者 大中 隆 大阪府大阪市淀川区三国本町3丁目9番39 号 日本アルミニウム工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−10299(JP,A) 特開 昭57−131391(JP,A)

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アナターゼ型とルチル型とが混在した酸化
    皮膜を生成するチタン及びチタン合金の陽極酸化処理法
    であって、0.1〜20%の過酸化水素水に1〜30%
    の硫酸を添加して、2液タイプの電解浴を調製し、15
    0V以上の電圧で電解処理することを特徴とするチタン
    及びチタン合金の陽極酸化処理法。
JP62132065A 1987-05-28 1987-05-28 チタン及びチタン合金の陽極酸化処理法 Expired - Lifetime JPH0641640B2 (ja)

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