JPH064111Y2 - ダストブーツの取付け構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、車両用のブレーキや液圧マスタシリンダを始
めとする各種の液圧或いは気圧シリンダ等に、シリンダ
孔の開口部を覆って設けられるダストブーツの取付け構
造に関する。

〔従来の技術〕

各種の車両に車輪制動装置として搭載されるディスクブ
レーキは、ディスクロータとその側部に配置した摩擦パ
ッドとを跨いで配設されるキャリパボディに、ディスク
ロータ側を開口したシリンダ孔が形成され、このシリン
ダ孔には、底部の液圧室に供給される液圧によってシリ
ンダ孔をディスクロータ側へ前進し、摩擦パッドをディ
スクロータに押圧するピストンが内挿される。

上記キャリパボディとピストンは、一種の液圧シリンダ
であって、シリンダ孔から突出するピストンの先端とキ
ャリパボディに形成した凹溝には、シリンダ孔の開口部
を覆って、塵埃等の侵入を防止するダストブーツが、両
端の環状シール部を嵌着して取付けられる（例えば、実
開昭５５−９７２３８号公報参照）。

また、実開昭４９−１１５５８０号公報には、シリンダ
ボディに外方へ向けて直径が増大する均配面を形成し、
この勾配面に、ダストブーツの環状シール部を嵌合して
締付けリングで固定したダストブーツの外れ止め構造が
示されている。

両従来例のダストブーツには、ピストンの往復動に追随
して伸縮する可撓性の蛇腹部が環状シール部の間に設け
られ、この蛇腹部は、ピストンがシリンダ孔をディスク
ロータ方向へアジャストして行き、これによって両凹溝
間の距離が拡がった場合にも、摩擦パッドが摩耗限界に
達するまでのピストンのストロークに足りる長さで形成
される。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、摩擦パッドが摩耗限界を越えて使用され
ると、ピストンがダストブーツの長さを越えてディスク
ロータ側へオーバストロークするため、ダストブーツに
負荷がかかって、蛇腹部が長さ以上に引伸ばされ、前者
のものでは、端部の環状シール部が凹溝から外れるなど
して、シール性を損うこととなる。

また、後者のものでは、環状シール部が固定状態となる
ため、環状シール部の自由度がなくなり、ピストンのオ
ーバストロークを見込んだ長さを蛇腹部に持たせなけれ
ばならなかった。

そこで本考案は、簡単な構造でありながら、負荷による
影響にも環状シール部の嵌着状態をよく保持できて、高
いシール性の得られるダストブーツの取付け構造を提供
することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

上述の目的を達成するため、本考案にかかるダストブー
ツの取付け構造は、ピストン等のアクチュエータを支持
体に往復動可能に嵌合し、アクチュエータと支持体とに
周設した各凹溝に、ダストブーツ両端部の環状シール部
をそれぞれ嵌着して、アクチュエータまたは支持体に形
成された嵌合用シリンダ孔の開口部を被覆するダストブ
ーツの取付け構造において、前記凹溝のいずれか一方ま
たは双方を、ダストブーツの環状シール部よりも幅広
で、且つその底面を、アクチュエータと支持体とが互い
離れる方向に向けて漸次深くなるようテーパ状に形成
し、該凹溝の最深部に前記環状シール部を嵌着せしめる
と共に、凹溝の最深部に嵌着される環状シール部の端部
外周に、該環状シール部が凹溝の最浅部に移動した際に
凹溝の最深部側を覆う長さを有する可撓性の環状リップ
部を延設したことを特徴とするもので、環状シール部
は、凹溝に締め代を以って嵌着される。

嵌合用のシリンダ孔は、上述の如く、アクチュエータま
たは支持体のいずれかに形成され、アクチュエータは、
支持体へ往復動可能に内嵌めまたは外嵌めされる。内嵌
めの形態例としては、ピストンとキャリパボディを持つ
上述のディスクブレーキや、ピストンとシリンダ体を組
合わせた一般的な液圧または気圧シリンダである。

〔作用〕

ダストブーツの環状シール部は、アクチュエータが往復
動した際に、凹溝に最深部に保持されている。そして、
アクチュエータが通常のストロークを越えて移動し、蛇
腹部が長さ以上に引伸ばされると、アクチュエータの進
出によって、環状シール部が、凹溝内を最深部から反対
側の浅い側へ移動し、最深部での通常の嵌着よりも強い
緊張力を以って嵌着されることとなり、シール性が保持
されると共に、アクチュエータのオーバストロークによ
る負荷にも外れにくくなる。また、環状シール部が凹溝
の最浅部側に移動した際でも、環状リップ部が凹溝の最
深部側を覆うので、凹溝の最深部側に異物が混入するこ
とがない。

〔実施例〕

以下本考案を、車両用のディスクブレーキに適用した一
実施例を第１図及び第２図に基づいて説明する。

ディスクロータ１の外周をブリッジ部２ａにて跨いで配
設されるキャリパボディ２には、ディスクロータ１に対
向配置される作用部２ｂに、シリンダ孔３がディスクロ
ータ１側を開口して設けられている。

ディスクロータ１と作用部２ｂとの間には、ライニング
４ａと裏板４ｂとからなる摩擦パッド４が配設され、シ
リンダ孔３には、この摩擦パッド４をディスクロータ１
に押圧するコップ状のピストン５が、先端部５ａを開口
部３ａから突出させて往復動可能に、またシリンダ孔３
に嵌着した角シール６にて液密に内挿されている。本実
施例では、このピストン５が本考案のアクチュエータ
に、またキャリパボディ２が支持体にそれぞれ相当す
る。

シリンダ孔３の底部とピストン５との間には、図示しな
い公知の液圧マスタシリンダと連通する液圧室７が画成
されており、運転者の制動操作によって、液圧マスタシ
リンダに発生した圧液が液圧室７に供給されると、ピス
トン５が角シール６を変形させながら、シリンダ孔３を
ディスクロータ１側へ前進して、摩擦パッド４をディス
クロータ１に押圧する。また、液圧の供給を解除する
と、ピストン５が角シール６の復元力にてシリンダ孔３
の底部側へ戻され、非作動位置に復帰する。

上述の制動作用が繰返され、摩擦パッド４のライニング
４ａが摩耗して行くと、ピストン５が、ライニング４ａ
の摩耗分をディスクロータ１側へアジャストして制動作
用が行なわれ、更に液圧作動を解除されたピストン５
を、上述の如く、角シール６の復元力分だけ後退させて
後退限を規制することにより、ライニング４ａの摩耗量
を補償して、ディスクロータ１とライニング４ａとの間
に適正な制動間隙が設定される。

シリンダ孔３の開口部３ａは、塵埃や水雨の侵入を防止
するダストブーツ８にて覆われている。このダストブー
ツ８は、可撓性の薄膜を折重ねた蛇腹部８ａと、該蛇腹
部８ａの両端に連設される厚肉の環状シール部８ｂ，８
ｃとからなっており、両環状シール部８ｂ，８ｃは、ピ
ストン５の先端部５ａ外周とシリンダ孔３の開口部３ａ
に周設した凹溝９，１０に、それぞれ締め代を以って取
付けられる。

ダストブーツ８の蛇腹部８ａは、ピストン５が、ライニ
ング４ａの摩耗に連れてディスクロータ１側へ徐々にア
ジャストして行き、このアジャストがライニング４ａの
摩耗限界まで達した場合にも、これを許容するに足りる
長さで形成される。

環状シール部８ｂの端部外周には、該環状シール部８ｂ
が凹溝９の最浅部に移動した際に凹溝９の最深部側を覆
う長さを有する可撓性で環状のリップ部８ｄが延設さ
れ、その先端８ｅは、ピストン５の外周よりもやや小径
に形成されている。このリップ部８ｄは、環状シール部
８ｂを、上述の如く凹溝９の最深部に嵌着した際に、先
端８ｅを、ピストン５の凹溝９よりも先端側の外周に嵌
合され、中間部を撓ませて取付けられる。

ピストン５の先端部５ａに形成される凹溝９は、第１図
に示す如く、その幅Ｗ₁が、これに嵌着される環状シー
ル部８ｂの幅Ｗ₂よりも広く、且つその底面９ａは、ピ
ストン５の開口端側へ向けて、漸次深くなるようテーパ
状に形成されている。

また、環状シール部８ｂの内周面８ｆも、凹溝９の底面
９ａの形状に合わせてテーパ状にカットされ、環状シー
ル部８ｂは、凹溝９の最深部即ちピストン５の開口端寄
りの小径部に嵌着される。

シリンダ孔３の凹溝１０は、これに嵌着される環状シー
ル部８ｃと略同一断面形状に形成されており、環状シー
ル部８ｃの内周には、前記角シール６と共にピストン５
との間をシールする突条８ｇが周設されている。

本実施例は、以上のように構成されており、ピストン５
側の環状シール部８ｂは、ピストン５が、上述の如く制
動作用時やアジャストによる通常のストロークを行なう
場合に、凹溝９の最深部に締まりばめ状態に保持されて
いる。

そして、摩擦パッド４が、ライニング４ａの摩耗限界を
越えて使用され、ピストン５が通常のストロークを越え
て移動して、ダストブーツ８が蛇腹部８ａの長さ以上に
引伸ばされ、環状シール部８ｂに負荷がかかると、ピス
トン５の進出によって、環状シール部８ｂが、凹溝９内
を最深部から反対側の浅い側、即ちピストン底部寄りの
大径部へ移動して嵌着位置が変更される（第２図参
照）。

これにより、環状シール部８ｂが、最深部での通常の嵌
着よりも緊張力を以って嵌着されることとなり、凹溝９
からの抜けが強固に阻止されると共に、シール性が更に
向上される。

またリップ部８ｄは、環状シール部８ｂの移動によっ
て、中間部の撓みが延ばされるだけで、先端８ｅに位置
的な変更がなく、凹溝９は、環状シール部８ｂが移動し
た場合にも、リップ部８ｄによって常に覆われた状態に
あり、土砂や雨水の侵入が確実に防止される。

そして、ピストン５が、シリンダ孔３側へ移動して非作
動位置に復帰し、環状シール部８ｂへの負荷が解除され
ると、環状シール部８ｂは、凹溝９の底面９ａを滑っ
て、最深部に自動復帰し、元の緊張力にてシールする。

第３図は、本考案をキャリパ浮動型のディスクブレーキ
に適用した他の実施例を示し、キャリパボディ２０は、
腕部２０ａにボルト２１にて固設された摺動ピン２２
が、車体に固設されるブラケット２３の挿通孔２４に往
復動可能に挿通されており、キャリパボディ２０は、液
圧マスタシリンダから供給される液圧を作動源として、
摺動ピン２２と一体にディスク軸方向へ移動するよう支
持されている。

本実施例では、摺動ピン２２がアクチュエータ，ブラケ
ット２３が支持体，また挿通孔２４がシリンダ孔であ
り、挿通孔２４の開口部２４ａは、ダストブーツ２５に
て覆われている。

ダストブーツ２５は、蛇腹部２５ａの両端に連設した環
状シール部２５ｂ，２５ｃを、挿通孔２４の開口部２４
ａから突出する摺動ピン２２の基部２２ａと、ブラケッ
ト２３の外周に周設した凹溝２６，２７に、それぞれ締
め代を以って嵌着される。

凹溝２６，２７は、前記実施例と同様に、これらに嵌着
される環状シール部２５ｂ，２５ｃよりも幅広で、且つ
その底面２６ａ，２７ａは、摺動ピン２２とブラケット
２３とが相反する方向に向けて、漸次深くなるようテー
パ状に形成されている。

また、環状シール部２５ｂ，２５ｃも、各内周面２５
ｄ，２５ｅが、底面２６ａ，２７ａの形状に合わせてテ
ーパ状にカットされ、更に端部外周に、凹溝２６，２７
を覆うリップ部２５ｆ，２５ｇを持っており、それぞれ
凹溝２６，２７の最深部、即ち小径部側に嵌着される。

ダストブーツ２５は、摺動ピン２２のオーバストローク
による負荷を受けた場合に、環状シール部２５ｂ，２５
ｃが、凹溝２６，２７内を最深部から反対側の浅い側、
即ち大径部側へ移動して嵌着位置が変更され、通常の嵌
着よりも強い緊張力にて、凹溝２６，２７からの抜けが
強固に阻止されると共に、シール性が更に向上される。

また、摺動ピン２２が挿通孔２４内に復帰して、環状シ
ール部２５ｂ，２５ｃへの負荷が解除されると、環状シ
ール部２５ｂ，２５ｃは、それぞれ凹溝２６，２７の底
面２６ａ，２７ａを滑って、最深部に自動復帰する。

上述の両実施例では、ダストブーツにアクチュエータの
オーバアジャストによる負荷がかかった場合に、環状シ
ール部が凹溝の浅い側へ移動して、これを許容するよう
にしたから、蛇腹部が、通常のストローク長さでありな
がら、環状シール部の凹溝からの抜けを強固に阻止する
ことができる。

上記実施例で環状シール部に延設したリップ部は、凹溝
内への土砂や雨水の侵入を防止して、環状シール部を凹
溝の最深部へ復帰させる手段として有効である。

尚、両実施例では、支持体であるキャリパボディやブラ
ケットにシリンダ孔を形成して、アクチュエータとなる
ピストンや摺動ピンを内嵌めしたが、本考案は、シリン
ダ孔をアクチュエータに形成して、支持体にアクチュエ
ータを外嵌めする形式のものにも実施可能である。

更に、本考案のダストブーツ取付け構造は、アクチュエ
ータ側のみに限らず、支持体側若しくは必要によって双
方へ実施してもよい。

また、上述のディスクブレーキを始めとして、液圧マス
タシリンダやドラムブレーキのホイールシリンダ、更に
各種の液圧または気圧シリンダ等に、シリンダ孔の開口
部を覆って設けられるダストブーツの取付け構造として
幅広く実施可能である。

〔考案の効果〕

本考案のダストブーツの取付け構造は、アクチュエータ
と支持体に周設される凹溝のいずれか一方または双方
を、この凹溝に嵌着されるダストブーツの環状シール部
よりも幅広で、且つその底面を、アクチュエータと支持
体とが互い離れる方向に向けて漸次深くなるようテーパ
状に形成し、該凹溝の最深部に前記環状シール部を嵌着
せしめると共に、凹溝の最深部に嵌着される環状シール
部の端部外周に、該環状シール部が凹溝の最浅部側に移
動した際に凹溝の最深部側を覆う長さを有する可撓性の
環状リップ部を延設したから、ダストブーツに負荷がか
かった場合に、前記環状リップ部が凹溝の最浅部側に移
動するので、シール性能を保持または向上しつつ、凹溝
からの環状シール部の抜けを防止し、またダストブーツ
への負荷が解消された場合には、環状シール部を、凹溝
の底面形状によって、最深部に自動的に復帰させること
もできる。また、環状シール部が凹溝の最浅部に移動し
た際でも、環状リップ部が凹溝の最深部側を覆うので、
凹溝内への土砂や雨水等の異物の侵入を防止して、環状
シール部を凹溝の最深部へ復帰させる手段等として有効
である。

このように、ダストブーツとしてのシール性能を十二分
に引出して発揮させることにより、従来では交換しなけ
ればならなかったダストブーツを、延長して使用するこ
とも可能となる。

更に、構造が簡単で安価に製作することができ、しかも
蛇腹部の長さを延長したり、バンドやリング等の格別な
抜止め部材を用いることなく、高いシール性能が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案の一実施例を示し、第１図は
アクチュエータとなるピストンの非作動状態を示すディ
スクブレーキ要部の断面図、第２図はピストンのオーバ
アジャスト状態を示すディスクブレーキ要部の断面図、
第３図は他の実施例を示す要部断面図である。 １……ディスクロータ、２……キャリパボディ、２ｂ…
…作用部、３……シリンダ孔、３ａ……開口部、４……
摩擦パッド、５……ピストン、５ａ……ピストン５の先
端部、８……ダストブーツ、８ａ……蛇腹部、８ｂ，８
ｃ……環状シール部、８ｄ……リップ部、８ｅ……リッ
プ部８ｄの先端、８ｆ……内周面、８ｇ……突条、９，
１０……凹溝、９ａ……凹溝９の底面、Ｗ₁……凹溝９
の幅、Ｗ₂……環状シール部８ｂの幅

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ピストン等のアクチュエータを支持体に往
   復動可能に嵌合し、アクチュエータと支持体とに周設し
   た各凹溝に、ダストブーツ両端部の環状シール部をそれ
   ぞれ嵌着して、アクチュエータまたは支持体に形成され
   た嵌合用シリンダ孔の開口部を被覆するダストブーツの
   取付け構造において、前記凹溝のいずれか一方または双
   方を、ダストブーツの環状シール部よりも幅広で、且つ
   その底面を、アクチュエータと支持体とが互い離れる方
   向に向けて漸次深くなるようテーパ状に形成し、該凹溝
   の最深部に前記環状シール部を嵌着せしめると共に、凹
   溝の最深部に嵌着される環状シール部の端部外周に、該
   環状シール部が凹溝の最浅部に移動した際に凹溝の最深
   部側を覆う長さを有する可撓性の環状リップ部を延設し
   たことを特徴とするダストブーツの取付け構造。