JPH0636818B2 - コラ−ゲン合成血管移植組織 - Google Patents

コラ−ゲン合成血管移植組織

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JPH0636818B2
JPH0636818B2 JP60014592A JP1459285A JPH0636818B2 JP H0636818 B2 JPH0636818 B2 JP H0636818B2 JP 60014592 A JP60014592 A JP 60014592A JP 1459285 A JP1459285 A JP 1459285A JP H0636818 B2 JPH0636818 B2 JP H0636818B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、合成血管移植組織、特に、一連の可塑化さ
れた(plasticized)コラーゲン・フイブリル処理され
た合成血管移植組織であって、予め凝固(preclot)さ
せる工程がなくても、該移植組織を血を通さない性質
(blood-tight)たらしめるようにした合成血管移植組
織に関するものである。
(従来の技術の問題点) 人間の血管の分節を合成血管移植組織で置き換えること
は技術的に充分容認されている。合成血管移植組織は形
状が広範に変化し、また種々の材料で構成されている。
容認され且つ成功した血管移植は生化学的に適合性のあ
る材料から構成され、この材料は移植後に合成血管移植
組織を通って血液が流れることを許す開いた腔を維持す
るものである。移植組織は、Dacron及びTeflonのような
生化学的に適合性のある繊維から作ることができ、編み
又は織ってもよく、また単繊維糸、多繊維糸又は短繊維
糸のものでもよい。
特別な移植組織基質を選択する重要な要因は移植組織を
構成している繊維壁の気孔性である。気孔性が重要であ
るのは、それが移植中又は移植後に出血の傾向を制御
し、また移植組織の壁中への組織の生長を制御するから
である。血管移植組織基質は十分に血液密封を行ない移
植中に血液の損失を防ぎ、しかも構造が十分気孔性を有
し繊維芽球の内方生長を許し、また移植組織を宿主組織
(host tissus)に付着するために滑らかな筋肉細胞で
あることが望ましい。米国特許3,805,301及び4,047,252
に記載された型式の合成血管移植組織はDacronのような
糸で構成した長尺の可撓管状体である。前者の特許では
移植組織がたて糸で編んだ管であり、また後者の特許で
は、商標Microvelの下に市販されている二重ベロア合成
移植組織である。これらの型式の移植組織は十分に気孔
性のある構造を有して宿主組織の内方への生長を許す。
移植のための一般的処置は予凝固の段階を含み、そこで
は移植組織を患者の血液中に浸漬し、凝固を保証するた
めに充分な時間の間耐えることを許すようにする。予凝
固の後には、移植が行なわれ且つ組織の生長が妨げられ
ない時でも出血は起らない。然し乍ら、前記の予凝固と
云う工程は、外科手術の間に相当な時間をとることにな
るのであるから、この予凝固と云う工程を避けるように
することが望ましいのである。
血を通さない性質で且つ吸収可能のコラーゲンで補強さ
れた移植組織は、米国特許3,272,204号の中で、既に、
提案されている。該米国特許で開示されたタイプのコラ
ーゲンは、家畜の深い屈筋腱から得られるものである。
この屈筋腱から得られたコラーゲンは、一般的に云っ
て、高度に架橋されたものであって、該米国特許に記載
されたエンザイム温浸法(enzyme digestion procedur
e)による処置は困難である。
他の補強された血管プロテーゼは米国特許3,479,670中
に記載され、これは、融合されたポリプロピレン単繊維
の外側らせん状包装材料で包まれた、開いた網目組織の
円筒状チューブを含み、該単繊維はプロテーゼをバクテ
リア及び液体に不浸透性にするために要求されたコラー
ゲン原繊維を以て充填されている。使用されたコラーゲ
ン原繊維は米国特許3,272,204に記載されたものと同じ
である。
先行技術によって示唆された合成血管移植組織は多くの
応用に適することが要求されている。然し乍ら、実質的
には気孔性がゼロを呈するような、可撓性の血管移植組
織を得ることが望ましいのであり、それは、宿主組織の
内方生長に感受性が充分に強く、而かも従来技術の示し
ているものよりも、更に製作し易いものである。
(発明の構成) 本発明の構成は次の通りである。
記 コラーゲン含浸合成血管移植組織であって、この合成血
管移植組織は、該血管移植組織を、予め凝固させる工程
無しで、血を通さない性質たらしめる可塑剤を混合させ
た架橋コラーゲン・フイブリルのある、生化学的に適合
性のある(biocompatible)、繊維状の(filimentary)
材料のチューブ状でポーラスな組織のものから作られる
ものである。ポーラスな血管移植組織基体は、ダクロン
(Dacron)材料から作られたチューブ状の血管移植組織
であっても良く、織られ(weave)ても良く、又、編ま
れ(knit)ても良い。
該コラーゲンの原料としては、フイブリルの高度に純粋
な分散体(又は、分散液)(dispersion)が得られるよ
うに、酸温浸(acid digestion)の処理をされる牛の皮
から得られたものが好ましい。
水性の、純粋化されたコラーゲン・フイブリルのスラリ
で可塑剤を含有するようにしたものが、合成血管組織に
マッサージで処理されるのであって、これは、可撓性の
血管移植組織を良い具合に得られるように、全表面の全
域に亘り行われるようにする。コラーゲン処理と乾燥と
を少くとも3回繰り返して処理された後に、フォルムア
ルデヒド蒸気を当てることで、該コラーゲンは架橋され
るのであって、血管移植組織の気孔性(porosity)は、
コラーゲン被覆される以前のものに比べて、その有孔率
は約1%以下に迄減少しているのである。
(発明が解決しようとする問題点) 依って、本発明の目的は、改良された合成血管移植組織
を得んとするにある。
本発明の別の目的は、改良された、血を通さない性質の
合成血管移植組織を得んとするにある。
本発明の更に一つの目的は、改良されたコラーゲン含浸
の合成血管移植組織を得んとするにある。
本発明の他の目的は、改良された、牛の皮から得られた
コラーゲン・スラリのものを得んとするにある。
本発明の更に一つの目的は、コラーゲン含浸の合成血管
移植組織の改良された製造方法を得んとするにある。
本発明の別の一つの目的は、血管移植組織を血を通さな
いものたらしめるようにコラーゲンを適用する、改良さ
れた製造方法を得んとするにある。
本発明のなお他の目的及び利点は、明細書から一部分明
白になり、また一部分はっきりするものである。
(問題点を解決するための手段) 従って本発明は、特徴、特性及び要素に関係ある個条及
び種々の手段及び他の各々に対する1つ又はそれ以上の
かような手段の関係を含み、それらは以下の詳細な開示
中に例示され、また本発明の範囲は特許請求の範囲中に
示されている。
本発明によって構成され且つ配置された合成血管移植組
織10は第1図に示されている。移植組織10は管状基質部
分12を含み、この部分は生化学的に適合性のある繊維状
の合成材料、望ましくはDacronのようなポリエチレンテ
レフタレートより構成されている。基質12は気孔性Dacr
onたて糸編物であり、米国特許4,047,252中に記載され
た内部及び外部のベロア表面を有している。管状部分12
はDacronで構成されているが、組織の内方生長を許し且
つ血液の流れのために開いた腔を維持するポーラスな構
造に作ることができるならば、任意の生物適合性のある
繊維状材料を基質のために用いることができる。
管状部分12の内面は16のように示されたコラーゲン被覆
で被覆されている。コラーゲン被覆16は、水性のコラー
ゲン・フイブリルと可塑剤の分散液の、少くとも3回の
適用から成るものであって、これは、フォルムアルデヒ
ド蒸気にさらされることで架橋化されたものである。
第2図は二またになったコラーゲン含浸の移植組織20を
示す。移植組織20は主管状部分22及び二つの支部24を含
む。主管状部分22及び二またになった部分24はDacronの
編んだ基質26から構成されている。基質26の内面被覆は
コラーゲン被覆28で被覆され、これもコラーゲン原繊維
の少くとも3回の適用から構成されている。
本発明の使用に適する気孔性移植組織基質は、これらの
生成物の製造に通常用いられる編み工程又は織り工程に
よってDacron多繊維糸から作ることが望ましい。一般的
にDacron基質の気孔性は約2,000乃至3,000ml/min-cm2
(120mmHgにおける浄化水)の範囲にある。架橋結合
されたコラーゲンは、管状基質をコラーゲン及び可塑剤
のスラリーで充填し、手でマッサージして、超過量を除
き且つ沈積した分散物を乾燥することによって適用され
る。最終的適用の後に、コラーゲンは、フォルムアルデ
ヒドにさらすことにより架橋結合され、空気乾燥し、次
いで真空乾燥して過剰水分及び過剰フォルムアルデヒド
を除去する。本発明によるコラーゲン移植組織は本質的
にゼロ気孔性を有する。
(実施例) 以下の例は本発明によってうし属の皮および移植組織か
ら浄化したコラーゲンを調整する方法を例解するために
述べるものである。例は説明の目的で述べられるが、限
定の意味に向けるつもりではない。
例1 新しい牛皮を若い子牛、胎児又は死産のものから機械的
にはぎ取り、回転容器中で冷たい流水で洗い、水に表面
の汚物、血液及び/又は組織が見られなくなるまで洗
う。皮下組織を機械的にきれいにし、脂肪及び血管のよ
うな汚染組織を除去する。次いで皮を縦方向に約12cmの
巾の細長い片に切断し、皮革工業で通例用いられている
ような木又はプラスチックの容器中に置く。
皮は1MCa(OH)2の流水装置溶液を用いて25時間に亘っ
て除毛する。その代りに皮は機械的手段により又は化学
的及び機械的手段の組合せによって除毛してもよい。除
毛に次いで皮を約1″×1″の小寸法片に切断し、冷水
中で洗浄する。
洗浄に続いて、120kgの牛皮を、260Lの水、2LのNaOH
(50%)及び0.4LのH2O2(35%)を有する容器中に置
く。成分は4℃で12〜15時間の間ゆっくり混合され、30
分間過剰な水道の水で洗浄し、部分的に浄化した皮が提
供される。部分的に浄化した皮を260Lの水、1.2のNa
OH(50%)及び1.4kgのCaOの溶液中で遅い混合速度によ
り5分間処理する。この処理は1日2回25日間に亘って
続けられた。この処理に次いで、溶液を静かに注いで捨
て、皮を過剰な水道水で、一定に攪拌しながら90分間洗
浄した。
皮は、強力な攪拌を受けながら、14kgのHCl(35%)及
び70Lの水で処理して酸性化された。酸は約6時間に亘
って皮に浸透することが許された。皮は酸性化に次いで
約4時間過剰な水道の水で、或はpHが5.0になるまで洗
浄された。皮のpHは、0.5%の防腐剤を含む酢酸を用い
て3.3〜3.4まで再調節された。浄化された皮はその際ひ
き肉機を通じ、またメッシュ寸法が一定に減少する一連
のフィルターふるいを通じて圧出された。最終の製品は
純粋の牛皮より派生したコラーゲンの白い同質の平滑ペ
ーストであった。
乾燥状態で移植組織に適当な柔軟性を与えるためにコラ
ーゲンのスラリーに対して適用前に可塑剤が添加され
る。適当な可塑剤とは、グリセリン、ソリビトール又は
他の生化学的に容認できる可塑剤を含むものである。約
0.5乃至5.0重量パーセントのコラーゲンを含むコラーゲ
ンのスラリーにおいて可塑剤は約4と12との間の重量パ
ーセント量で存在する。
本発明によって合成血管移植組織をコラーゲン・スラリ
ーと可塑性で処理する時に得られる最も重要な特性の中
の一つに気孔性基質の気孔性をほぼゼロに減少すること
がある。無作為に選択した20の被覆しないMicrovel Dac
ron合成血管移植組織の気孔性は、130の標準偏差を持つ
120mmHgにおける1796ml/min-cm2の浄化水に対する平均
気孔性を有する。いくつかのコラーゲン処理を適用した
後に、気孔性はゼロに減少した。次の例は移植組織基質
を処理する方法を説明するものである。
例2 50ccの注射器に、例1によって調製した2%の浄化牛皮
コラーゲンの水性スラリーが充填されている。コラーゲ
ンスラリーは8%のグリセロール、17%エタノール及び
残余の水を含み、30,000cpsの粘度を有する。注射器
は、直径が8mmで、長さが約12cmのMeadox Medical Micr
ovel Dacron移植組織の一端中に置かれている。スラリ
ーはMicrovel移植組織の腔中に注射され、全内面区域を
コラーゲンスラリーで蔽うために手でマッサージする。
過剰のコラーゲンスラリーは開いた端部の1つを通じて
除去される。移植組織は室温で約1/2時間乾燥すること
ができる。被覆及び乾燥処置はさらに3回繰返された。
第4の適用に次いで、コラーゲンは、5分間フォルムア
ルデヒド蒸気にさらすことによって架橋結合された。そ
の際架橋結合された移植組織は、水分及び過剰のフォル
ムアルデヒドを除去するために15分間乾燥し、次いで24
時間真空乾燥した。
例3 例2によって調製されたコラーゲン含浸の血管移植組織
の血を通さない性質は次のように試験した。
Microvel移植組織8mm×12cmは、容器の高さのために120
mmHgの圧力で血液容器に付着された。ヘパリン(Hepari
n)で安定された血液は移植組織を通過せしめられ、移植
組織を通じて集められた血液は測定され、測定結果はml
per min-cm2で表わされた。5runsを越える気孔性は0.
04,0.0,0.0,0.04及び0.03であるように測定された。こ
れは0.22ml/mim-cm2の平均気孔性を示し、これは数値
が試験研究の実験上誤差の範囲内にあるのでゼロと見な
された。
この結果を未処理のMicrovel移植組織に対する血液損失
と比較するために、実験は未処理の移植組織を用いて繰
返された。平均気孔性は36ml/min-cm2であった。
例4 コラーゲン処理した編物移植組織の気孔性は、次に述べ
るように、3回の適用後に(未処理の移植組織の)約1
パーセントよりも少ないものに減少される。移植組織の
水気孔性を測るため用いられる標準の水気孔性試験は次
の通りである。120mmHgの圧力に対する水当量のコラム
は、1分の間にオリフィスを越える移植組織の試料を有
する1/2cm2のオリフィスを通って流れることが許され
る。集められた水量が測定された。2乗した面積のcm2
当り、1分間に集められた水のミリリットルが計算され
た。各々の試料に対してそれぞれの読みが取られた。気
孔性は次のように報告された。
気孔性=ml/min/cm2 Microvel移植組織編物の水気孔性は約1,900ml/min/cm
2であった。処理後の気孔性は次の通りであった。
被覆の番号 気孔性 0 1,900 1 266 2 146 3 14 4 5 5 2 6 0 各々の場合に、コラーゲン被覆は、例2に述べた組成に
従って調製された牛皮から派生した可塑スラリーであ
り、これらの結果は第3図に示される。これらの結果に
基いて、望ましいのは、原繊維(フイブリル)の少くと
も3回の適用で処理されたコラーゲン移植組織を提供す
ることであり、最も望ましいのは各適用及び架橋結合の
間に乾燥を行なって被覆を基質にコラーゲンを固着する
4又は5回のコラーゲン処理である。
減少された気孔性のほかに、本発明に従うコラーゲン処
理した移植組織は未処理の移植組織に比して血栓形成性
の減少を示す。
下記の例は、コラーゲンをしみ込ませた血管移植組織は
普通のものに比べて血栓形成性(thrombogenicity)が
少いこと示すものである。
例5 イマイ及びノセ(J.Biomed,Mater Res.6,165,1972)の
方法により、抗血栓形成性(Antithrombogenicity)の
評価を試験管試験にて行った。この試験方法では、AC
D血液の0.25mlの分量のものを、0.1m塩化カルシウムの
25mlと混合させ、前記の例2に従って調製されたコラー
ゲン含浸のMicrovel血管移植組織のチューブ内壁面に配
置した。この種の試験において比較の標準の手段(対照
標準)として、前記試料と同一分量のものを、コラーゲ
ン処理をしないMicrovel血管移植組織のチューブ内壁面
に配置した。5秒、10秒、15秒後に、血の斑点が同じ位
置に出たものが見受けられた。前記試験片に5mlの蒸留
水を加えることで、この凝血反応は停止した。この2個
の血管移植組織間には驚くべき差違が現われた、このこ
とは下記のセミ定量パラメータで確認された。
コラーゲンを充分にしみ込ませたMicrovel血管移植組織
と対照標準の血管移植組織との間における、チューブ内
壁面の血栓生成の比較を次に述べる。コラーゲンを充分
にしみ込ませた方のものは、5秒間では、血液の凝固の
とき形成される繊維状蛋白質(fabrinファブリン)の凝
固は生じなかった。コラーゲンを充分にしみ込ませた方
のものは、対照標準の方のものよりも、遥かに少量のフ
ァブリン凝固であった。
Microvel血管移植組織の表面に血液の滴下させたとき
に、これはほとんど疎水性の状態の状態を呈した。Dacr
on編みの血管移植組織の生地に血が浸漬する迄に約10秒
乃至15秒かかった。血管移植組織母材(matrix)内に浸
漬される血液付きの、コラーゲンを充分にしみ込ませた
血管移植組織の場合と対照標準の方との対比は明らかで
あって、一方はゆっくりで、他方は迅速である。
5秒間後には、コラーゲンを充分にしみ込ませたコラー
ゲン移植組織の方のものには、血栓の残滓は見受けられ
なかった。之に対し、対照標準の方の普通のものでは、
同じ5秒間の後に、薄いが明瞭な血栓が見受けられたの
である。10秒間の後、15秒間の後においての、血管移植
組織のチューブ内壁面の血栓の総量は、コラーゲン移植
組織のものと、対照標準の普通のものとでは、その差は
著しかった、コラーゲン被覆のものの方が著しく少いの
である。
前述の試験管試験の状態での観察によれば、血管移植組
織内を血液が流通しない状態において、血液に迅速に浸
漬された、コラーゲンDacron編みのMicrovel血管移植組
織においては、5秒間以内では、血栓は生じないのであ
る。之に対し、対照標準の方の血管移植組織では、血栓
が見受けられたのである。10秒乃至15秒間の後では、コ
ラーゲンをしみ込ませたものの方が、普通のDacronのも
のよりも血栓の量が少なかったのである。
例6 コラーゲンを含浸したミクロベル(Microvel)血管移植
組織を次のようにして生体内(犬)で試験した。大腿の
動脈静脈(arterial venous)(AV)分流(shunt)を深
い麻酔法でグレーハウンドに取付けた。長さが5cmの補
綴材料を、プラスチック円錐チューブ材料とともに両端
に当てがい、取扱いを一層良好にした。これにより、試
験用の血管移植組織片を動脈分流に容易に挿入すること
ができた。挿入後、静脈鉗子をゆっくり取外し、次に動
脈端部をゆっくり解放した。血液を10分又は30分間移植
片を介して循環させた。次に、分留の両端を再びクラン
プし、挿入した補綴物を取出した。余分な血液を取出し
て重量を測定した。血管移植組織の表面には血栓(thro
mbi)の付着が肉眼により観察された。次に、血管移植
組織を過剰の水で(3回)洗浄し、再び重量を測定し
た。
対照として、標準の直径が6mmのダクロン(Dacron)製
ミクロベル血管移植組織を使用した。この血管移植組織
は、分流への挿入前に前もって凝固(preclot)させ
た。従って、この試験により、試験表面での血栓形成が
重量の上から、目視によりかつ客観的にも明らかになっ
た。血管移植組織を介してにじみ出る血液の重量も測定
して、試験したサンプル間の相違を記録した。
コラーゲンを含浸した血管移植組織には、出血は全く見
られなかった。
予め凝固した対照血管移植組織をAV分流に挿入したと
ころ、最初の5分で、長さが5cmの血管移植組織で平均
30mlの血液が失なわれた。次の5分間での血液の損失
は、わずかに3乃至5mlであった。30分間試験を行なっ
た対照血管移植組織の1つでは、予め凝固した血管移植
組織を介して、1ml/分/5cmの最小出血が全試験中継
続した。
10分又は30分間差し込んだコラーゲン含浸血管移植組織
は、肉眼で観察される血栓形成に対し、同じパターンの
抵抗を示した。きらめきのある蛋白質物質の滑らかな薄
層により、コラーゲン層が覆われていた。蒸留水で繰返
し洗浄したところ、ほとんどの補綴物に、蛋白質(フイ
ブリン)の連続膜がみられた。典型的な凝固は補綴物サ
ンプルには観察されなかった。
試験を行なった、予め凝固した平坦な(plain)ダクロ
ン血管移植組織片5つのうち、3つは明瞭な多数の血栓
がみられた。これらは、周囲の1/3から1/2にわたって、
血液流の方向と交差して生じていた。残りの2つの補綴
物は、内面が同様な薄い蛋白質層で覆われていた。各対
照血管移植組織には、壁からの連続した出血により大き
な血栓がみられた。
これらの観察から、コラーゲン含浸ダクロン血管移植組
織は、予め凝固した対照血管移植組織に比べて、血栓形
成が明らかに少ないことがわかった。これは、コラーゲ
ンにより血栓形成が少なくなったか、あるいは対照血管
移植組織では予備凝固が必要であったため血栓が形成さ
れたことによるものと考えられる。凝固は、過剰の細胞
と繊維置換体(fibrotic replacement)との反応におけ
る沈殿により生ずるものであるので、ダクロン血管移植
組織のマトリックス内での血栓の形成を減少せしめ、塞
栓の危険性を低くするという利点がある。
本発明に従って、可塑剤層スラリとコラーゲン原繊維を
合成の多孔質血管移植組織基財に少なくとも3回は適用
することにより、この血管移植組織を血管置換体として
人間の患者に外科的に入れると望ましい改良が得られ
る。更に、本発明によれば、予備凝固の必要性を取除く
ことができるという利点が得られるが、これに限定され
るものではない。従来の多孔質血管移植組織は、長期間
の開出(patency)のために必要であることが判明した
が、移植時の過剰の血液損失を防止するためには、外科
医が血管移植組織を患者の血液で予め凝固させることが
必要となる。多くの場合、予備凝固処理は、時間がかか
りしかも熟練を要する。従って、コラーゲン処理の主な
目的は、合成血管移植組織を予め凝固処理する必要性を
完全に取除くことにある。
多孔質の合成血管移植組織基材は、組織の内方生長にと
って理想的なマトリックスを提供するとともに、予備凝
固の必要性を除去することができる。更に、コラーゲン
含浸合成血管移植組織は、血栓の形成が著しく少ないの
で、塞栓の危険性を低くすることができる。本発明に従
って合成血管移植組織をコラーゲンと可塑剤スラリー
で、一連の処理をすることで、可塑性を保持した血管移
植組織を得ることができる。
従って、上述の目的、それらのうちで先行の記述から明
らかにされたものは効果的に達成されることが分る。と
いうのは本発明の精神及び範囲からはずれることなく条
項において、また示された処置において或は変更を行い
うるからであり、上述中に含まれ且つ添付図面に示され
た全ての事項は説明として解釈すべきもので、限定の意
味にするつもりではない。
また特許請求の範囲は、ここに記述した本発明の一般的
及び特定的な特徴の全て及び言語の問題としてそれらの
間に含まれると言い得る発明の範囲の全記述をカバーす
る意図を有することはいうまでもない。
とくに上記特許請求の範囲において単数形で列挙した成
分又は化合物は、意味が許すところでは、かような成分
の適合性ある混合物を含むことを意図したことは勿論で
ある。
以下、本発明の実施例を、念の為め、列挙する。
(1)チユーブ状で可撓性のポーラスな移植組織基体(gra
ft substrate)から成る、合成血管移植組織であつて、
該移植組織は、 少くともチユーブ内壁面には、少くとも三層のコラーゲ
ン・フイブリル層の架橋された被覆(cross-linked coa
ting)があり、而かも 該コラーゲン・フイブリルは、該移植組織を非漏血性且
つ可撓性とするに充分な量の可塑剤(plasticizer)を
混合したものである ことを特徴とする合成血管移植組織 (2)前記のポーラスな移植組織基体がポリエチレン・テ
レフタレートである前記第1項記載の合成血管移植組織 (3)前記のポーラスな移植組織基体がメリヤス編みされ
ているものである前記第2項記載の合成血管移植組織 (4)前記のポーラスな移植組織基体が平織りされている
ものである前記第2項記載の合成血管移植組織 (5)前記移植組織基体の内面と外面の双方の面がベロア
(velour)面である前記第1項記載の合成血管移植組織 (6)前記コラーゲン・フイブリル(fibril)はフオルム
アルデヒド蒸気にさらされることで架橋(vross-link)
架橋結合)されたものである前記第1項記載の合成血管
移植組織 (7)前記可塑剤(plasticizer)が生化学的に適合性のあ
る多価(polyhydric)のものである前記第1項記載の合
成血管移植組織 (8)前記可塑剤(plasticizer)がソルビトール(sorbit
ol)である前記第1項記載の合成血管移植組織 (9)前記可塑剤がグリセリンである前記第1項記載の合
成血管移植組織 (10)前記の被覆された複数の層が、約0.5乃至5.0%(重
量)のコラーゲン・フイブリル及び約4乃至12%(重
量)の可塑剤の、沈積された水性スラリからなるもので
ある前記第1項記載の合成血管移植組織 (11)前記コラーゲン・フイブリルが牛の皮から得られる
ものである前記第1項記載の合成血管移植組織 (12)前記血管移植組織のチユーブの内外の双方の面が被
覆されるものである前記第1項記載の合成血管移植組織 (13)非漏血性でコラーゲン被覆の合成血管移植組織の製
造方法であつて、その工程は、 ポーラスなチユーブ状で可撓性の合成血管移植組織基体
を用意し、 該移植組織基体の少くともチユーブ内壁面には、コラー
ゲン・フイブリルと可塑剤との水性スラリのあるように
し、 該移植組織基体に附し、そのポーラスな組織内に該コラ
ーゲン・フイブリルとの緊密な結合が保証されるよう
に、マツサージ(massage)し、 該コラーゲンを乾燥し、次に、 該移植組織基体の第一の層の上に、コラーゲンと可塑剤
との第二の層があるようにしてから、これを乾燥し、更
に、 該移植組織基体上に、コラーゲンと可塑剤との第三の層
があるようにしてから、これを乾燥し、次に、 該コラーゲン被覆を、フオルムアルデヒドの蒸気に当て
ることに依り、架橋(cross-link)させるようにし、 過剰のフオルムアルデヒドを、真空乾燥によつて取り除
くようにする ものであることを特徴とする合成血管移植組織の製造方
法 (14)約0.4乃至5.0%のコラーゲン・フアブリル、4.0乃
至12.0%の生化学的に適合性のある可塑剤、及び、バラ
ンス用の水とより成る、非漏血性の合成血管移植組織を
形成するためのコラーゲン・フアブリルのスラリ (15)前記コラーゲン・フアブリルが牛の皮の酸温浸(ae
id digestion)によつて得られるものである前記第14
項記載のスラリ (16)前記可塑剤が、ソービトールとグリセリンとよりな
るグループから選ばれるものである前記第14項記載の
スラリ (17)チユーブ状で可撓性のポーラスなテレフタレート移
植組織基体から成る、合成血管移植組織であつて、 そのチユーブ内壁面は、可塑剤を混合させられた、架橋
されたコラーゲン・フイブリルの少くとも5層の被覆が
あり、且つ、前記の少くとも5つの層は、約1.5乃至4.0
重量%のコラーゲン・フイブリル、と、約6乃至10重
量%の可塑剤とを含有する水性スラリから作られる ものである合成血管移植組織
【図面の簡単な説明】
本発明をより良く理解するように、添付の図面につき、
下記の説明をする。即ち、 第1図は、本発明に従って製作されたコラーゲン含浸合
成血管移植組織の一部切欠して断面を示した正面図、 第2図は、第1図に示されたタイプの分岐枝のあるチュ
ーブ状の血管移植組織の一部切欠して断面を示した正面
図、 第3図は、本発明に従ってコラーゲン含浸処理を、行う
事に気孔率(porotity)が減少することを示したグラフ である。 (10)は合成血管移植組織 (12)は管状基質部分 (14)はベロア外面 (16)はコラーゲン被覆 (20)は移植組織 (22)は主管状部分 (24)は支部 (26)は基質 (28)はコラーゲン被覆
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 米国特許4416028(US,A) 米国特許3928653(US,A) 米国特許3479670(US,A) 米国特許3425418(US,A) 米国特許3272204(US,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】可撓性のポーラスな移植組織基体で約3000
    ml/min-cm2(120mmHgにおける浄化水)以下の気孔性を
    有するものから成る、合成血管移植組織であって、該移
    植組織基体は、 コラーゲンが該移植組織基体の一方の面にあり、他方の
    面に迄ポーラスな該組織基体を経て該コラーゲンを他方
    の面に迄浸透させる操作により、他方の面に迄該コラー
    ゲンがあるものであり、而かも乾燥処理された組織基体
    である ことを特徴とする合成血管移植組織。
  2. 【請求項2】血を通さないコラーゲン含浸合成血管移植
    組織の製造方法であって、その工程は、 ポーラスなチューブ状で可撓性の合成血管移植組織基体
    を用意し、 該移植組織基体のチューブ内壁面には、コラーゲン・フ
    イブリルの水性スラリのあるようにし、 該移植組織基体のポーラスな組織を経てその内部に該コ
    ラーゲンを浸透させてから、 該コラーゲンを乾燥処理する、 と云うものであることを特徴とする合成血管移植組織の
    製造方法。
JP60014592A 1984-01-30 1985-01-30 コラ−ゲン合成血管移植組織 Expired - Lifetime JPH0636818B2 (ja)

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