JPH0635972B2 - フロ−サイトメトリ−による白血球の分類方法 - Google Patents

フロ−サイトメトリ−による白血球の分類方法

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JPH0635972B2
JPH0635972B2 JP61282697A JP28269786A JPH0635972B2 JP H0635972 B2 JPH0635972 B2 JP H0635972B2 JP 61282697 A JP61282697 A JP 61282697A JP 28269786 A JP28269786 A JP 28269786A JP H0635972 B2 JPH0635972 B2 JP H0635972B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、臨床検査分野における血球の分類測定法に
関するものであり、さらに詳しくは、フローサイトメー
ターを用いて、螢光染色処理された血球を光学的に測定
し、白血球を分類する方法に関するものである。
(従来の技術) 健常人の末梢血中の白血球には、リンパ球、単球、好中
球、好酸球、好塩基球の種類がある。これらは各々その
機能が異つており、血液中の白血球を種類別に計数する
ことによつて、病気の診断に貢献することができる。た
とえば、好中球の増加は、炎症、心筋梗塞、白血病など
にみられ、好中球の減少は、ウイルス性疾患、再性不良
性貧血、無顆粒球症などに見られる。好酸球の増加は、
寄生虫症、ホジキン病、アレルギー疾患などにみられ
る。単球の増加は、感染症の快復期、単球性白血病など
にみられる。
白血球を分類・計数するために従来から最も良く実施さ
れている方法は、血液像鑑定(視算法、用手法)と呼ば
れるものである。
この方法は、血液をスライドグラス上に塗抹し、血球を
固定し、さらに染色したのち、顕微鏡で観察し、一つず
つの白血球の形態的特徴(白血球の大きさ、核の形態、
細胞質の形態、顆粒の有無等)や染色度合から測定者が
いずれの血球であるかを判定し、分類・計数するもので
ある。このとき、一般の検査室では100〜200個の
白血球を計数し、白血球全体の数の中に占める各々の血
球の百分率(%)を測定値としている。
この方法は、顕微鏡による観察の前に、血液の塗抹、固
定、染色等の繁雑な標本作成操作が必要であることと、
顕微鏡を用いた分類−計数は、血球のわずかな差を見分
けなければならないこととのために、測定者に大きな負
担をかけるものとなつている。さらに、計数する白血球
数が少い上に、塗抹試料上の血球が不均一な分布となつ
ている場合もあり、熟練した測定者でも再現性のある測
定値を出すことは難しい。
このために、白血球の分類・計数が自動的に行なえる方
法が強く求められており、現在のところ、大きく分けて
二種類の方法が実現されている。
そのうちの一つの方法は、血球像をビデオカメラ等でと
らえ、コンピユータによる画像処理によつて白血球を分
類するものである。この方法は従来の視算法に原理的に
は近い方法であるが、コンピユーターによる処理では分
類できない血球も多く、完全には視算法に取つてかわる
ものとはなつていない。また、装置が複雑で大型にな
り、価格が高くなるという問題もある。
白血球を自動的に分類・計数するもう一つの方法は、フ
ローシステムを利用した方法である。この方法は、血球
を希釈液中に浮遊させた試料を用い、血球が一個ずつ細
い検出器中を通過するようにこの試料を流し、このとき
検出器で発生する信号を分析することにより白血球を分
類するものである。このフローシステムを利用した方法
は、さらに、二つの方法に細分される。
第1の方法は、赤血球を溶解剤で破壊し、白血球のみが
浮遊した電解液を細孔中に流し、血球が細孔を通過した
ときの細孔部のインピーダンス変化を検出し、検出信号
の大きさによつて白血球を分類するものである。
第2の方法は、光源と、試料中の細胞が1個ずつ細い流
路を流れるようにしたフローセルと、細胞から発せられ
た光を検出する測光部と、検出信号を解析する解析装置
とを備えたフローサイトメーターを使用するものであ
る。この方法では、血球を染色し、染色された血球を光
で照射し、そのとき血球から発する螢光および場合によ
つては散乱光を一緒に検出し、検出信号の強度によつて
白血球を分類しようとするものである。
この第2の方法に属するものとしては、例えば特公昭5
9−853号公報およびエル・エイ・カメンツキー
(L.A.Kamentsky)「ブラツド・セルズ(Blood Cel
ls)」、第6巻、121〜140頁、1980年に記載
された方法がある。この方法は、血液に10倍量のアク
リジンオレンジ染色液を加え、1分間インキユベートし
たのち、アルゴンイオンレーザー等の光源で照射したと
き血球から発する緑色螢光と赤色蛍光を測定し、その二
次元分布から、白血球を分類・計数するものである。
第2の方法に属する他の例としては、特開昭50−20
820号公報およびエイチ・エム・シヤピロ(H.M.
Shapiro)他「ザ・ジヤーナル・オブ・ヒストケミスト
リー・アンド・サイトケミストリー(The Journal of H
istochemistry ayd Cytochemistry)第24巻第1号、
396〜411頁、1976年;同じく第25巻第8
号、976〜989頁、1977年に記載された方法が
ある。この方法は、血液に4倍量の染色液Iを加え、3
分間インキユベートした後、血液と等容の20%ホルム
アルデヒドを加え、5分間固定を行ない、希釈用の染色
液IIで15〜20倍に希釈し、フローサイトメーターで
測定するものである。この測定に用いられるフローサイ
トメーターは、光源として光を3分割した水銀アークラ
ンプ又は三本のレーザーを備え、染色液に含まれる3種
の螢光染料を各々励起し、その3種の螢光と前方散乱
光、側方散乱光、吸光の6つのパラメーターを測定し、
4段階の二次元分布解析により白血球を分類・計数する
装置である。
さらに、昭和61年9月10日出願の特願昭61−21
3715号においては、緩衝液、無機塩類及び螢光染料
からなる染色液に血液を加えて染色するという一段階染
色工程が開示されているが、未溶解の赤血球が測定デー
タに影響を及ぼし、測定が不明確となるおそれがあつ
た。
(発明が解決しようとする課題) フローシステムを利用して白血球を分類・計数する方法
のうち第1の方法においては、赤血球を破壊しなければ
ならないが、血液によつては赤血球の溶解が完全に行な
われ得ない場合もあり、このときには測定値の正確さが
損なわれるという問題がある。
フローシステムを利用した第2の方法のうちの特公昭5
9−853号公報等に記載された方法は、細胞による染
料の吸収が平衡に達する前に、すなわち、染色の途中で
各白血球の螢光強度の差が最大となる時間に測定するこ
とを特徴としている。しかしながら、白血球数が極端に
多いか、または少い検体については、染色強度が適正レ
ベルとなる染色時間は正常な検体とは異ることになり、
検体ごとに適切な染色時間を選定しなければならない。
また、この方法は螢光強度の差のみによつて白血球を分
類しようとしているため、リンパ球と単球との分離等各
血球の分離が必ずしも良くないという問題がある。
フローシステムを利用した第2の方法のうちの他の例す
なわち特開昭50−20820号公報等に記載された方
法は、操作手順が多く、染色時間が長くかかる上に、複
雑な試薬を使用しなければならない。また、光源が3種
必要であることに加え、6つのパラメーターを測定しな
ければならないため装置が非常に複雑で高価なものとな
る。さらに、このように多くのパラメーターを測定して
いるため解析が複雑となり、大容量の解析装置を必要と
するという問題もある。
前出の特願昭61−213715号においては次のよう
な問題があつた。すなわち測定用試料中の赤血球は非常
に弱い螢光しか発しないので、螢光強度を測定する限り
においては、赤血球が白血球と同時に検出部を通過(同
時通過)しても、白血球の測定には妨害を与えない。し
かし、散乱光を測定する場合には、赤血球は白血球と同
レベルの強度の散乱光を発するため、白血球の計数に対
して妨害を与える。このとき、螢光と散乱光を同時に測
定し、一定レベル以上の強度の螢光を発したもののみを
白血球とすることはできるが、白血球と赤血球が同時通
過したときには、白血球による散乱光に赤血球による散
乱光が重畳されるので、正しい白血球の散乱光強度を測
定することが困難である。
上記出願の発明においては、測定用試料の希釈倍率をた
とえば20倍とし、赤血球と白血球との同時通過が起る
確率を減少させたが、完全には赤血球による妨害を阻止
し得なかつた。そのため螢光強度によつて好酸球と好塩
基球を除外したのちの残つた白血球すなわちリンパ球、
単球、好中球を側方散乱光信号の強度によつて識別する
場合、第2図に示すように、これらを完全に分離するこ
とは困難であつた。
測定用試料の希釈倍率をさらに上げ、赤血球と白血球と
の同時通過が起る確率を、赤血球による妨害が完全に無
視できる程度に抑えれば、リンパ球、単球、好中球によ
る側方散乱光信号強度の度数分布は第3図のようにな
り、これら三つは完全に分離できるようになる。しかし
測定値の精密度を確保するためには白血球数で約10,
000個測定する必要があるため、希釈倍率を上げて試
料を薄くすると測定時間が長くかかりすぎ、実用的でな
くなる。
測定試料に対して、赤血球溶血処理等の赤血球除去操作
を行えば、赤血球による妨害の上記問題は解決できる
が、従来技術では染色条件に適合する赤血球溶血法等の
赤血球除去方法が存在しなかつたため行なえなかつた。
蛍光染色による白血球5分類で溶血を行なつている先行
技術例はない。又、1分以内で赤血球のみを溶血し、白
血球の側方散乱光(形態情報)を損なわない様な方法は
存在しなかつた。
一般に赤血球を除去した白血球測定用試料を調製するに
は、下記の方法が知られている。
i)赤血球溶血法 a)界面活性剤処理 b)アンモニウム塩(たとえばNHCl)処理 c)低張処理(生理的pH) ii)分離法 d)遠心分離 e)沈降分離 f)その他 上記(a)〜(e)について以下に説明する。
a)界面活性剤処理は染色を阻害する、赤血球溶血と同
時に、白血球の裸核化、膨潤、収縮等の形態学的変化を
生じ、散乱光信号による、白血球分画が、困難となる、
白血球形態が経時的に変化する等の問題がある。
b)アンモニウム塩処理 染色を阻害する、赤血球溶血能力が低く、たとえば全血
を20倍希釈した濃厚試料は調製が困難、赤血球溶血に
時間がかかる(3〜5分)等の問題がある。
c)低張処理 一般に低張溶液中では、赤血球に比べ白血球の抵抗性が
高いことを利用し、赤血球のみを溶血し、白血球のみを
残すが、生理的pHのもとでは赤血球が完全に溶血する
条件下では白血球の一部も、破壊される。
d)およびe)遠心分離と沈降分離 操作が繁雑で時間がかかる。
白血球の損失、分画比の変動がおこりやすい等の問題が
ある。
この発明は、上記従来の問題点を解決するためになされ
たもので、簡単な手順と構成で、白血球を正確に分類・
計数するための方法を提供するものである。
(問題点を解決するための手段および作用) この発明の白血球の分類方法は以下の各工程から構成さ
れる。
(a)好酸球を特異的に強く染色する染料ニユートラルレ
ツドと、好塩基球を特異的に強く染色する染料アストラ
ゾンオレンジGと、pHを酸性域を保つための緩衝剤と
からなる低張な第1液に、抗凝固処理を施した新鮮な血
液を加えて、赤血球を溶血させる工程。
b)第1液の緩衝剤中の酸を中和し、溶液pHを後述の
染色pHに保つための緩衝剤と、溶液を白血球の形態を
保持する浸透圧に調整するための浸透圧補償剤とからな
る第2液を、前記で得られた、赤血球を溶血させた第1
液に加えて、白血球を染色する工程。
c)前記染色された試料をフローサイトメーターに流
し、白血球と他の血球やゴーストとを螢光強度によつて
区別し、白血球の螢光信号と側方(90°)散乱光信号
とを測定する工程。
d)白血球より発せられた前記複数の信号により、各白
血球の種類を判別し、計数し、各白血球の比率を算出す
る工程。
上記工程で使用される染料の化学構造式は次のとおりで
ある。
さて、白血球より発せられる前記複数の信号のうち、側
方散乱光信号は細胞内情報を反映するものである。すな
わち、細胞内の細胞核が大きいほど、また、顆粒が多い
ほど細胞内での光の反射が強まり、側方散乱光強度は増
大する。したがつて、リンパ球は、その内部に顆粒が存
在しないかあるいは少いので、散乱光強度は一番小さ
く、好中球は、その内部に顆粒が多く存在し、また、大
きな核を持つので、散乱光強度は大きくなる。好酸球の
散乱光強度は好中球のそれにほぼ匹敵する。単球による
散乱光強度はリンパ球と好中球の中間にある。このよう
な理由により、各白血球の側方散乱光の相対強度は、第
3図に示すものとなる。
一方、螢光信号は、細胞化学的特性を反映するものであ
り、染料と各白血球との相互作用により、各白血球から
異なる強度の信号が得られる。
したがつて、好酸球と好塩基球を特異的に染色し、蛍光
強度により好酸球と好塩基球を分離し、残つた白血球す
なわちリンパ球、単球、好中球を側方散乱光強度によつ
て分離することにより、白血球の5分類が可能となる。
この発明の方法は、前述のように、複雑な前処理等の操
作を必要とせず、二段階の簡単な染色のみで、フローサ
イトメーターにより血液中の白血球だけを分類・計数す
るものである。
この発明に使用されるフローサイトメーターの光学系の
一具体例を第1図に示された図面に基いて説明する。第
1図は側方散乱光と赤螢光と緑螢光とを測定する場合を
示している。このフローサイトメーターの光学系10に
使用された光源は、波長;488nm、出力;10mW
のアルゴンイオンレーザー12である。レーザー12か
ら発せられた光は、シリンドリカルレンズ16によつて
絞られ、フローセル14中を流れる測定用試料を照射す
る。
測定用試料中の染色された白血球がレーザー光によつて
照射されると、白血球からは散乱光と螢光が発せられ
る。
このうち、側方へ発せられた散乱光と螢光はコンデンサ
レンズ18によつて集められ、アパーチヤ20を通過し
たのち、ダイクロイツクミラー22に達する。
ダイクロイツクミラー22は側方散乱光24を反射し、
螢光26を透過させる。ダイクロイツクミラー22によ
つて反射された側方散乱光24は光電子増倍管28によ
つて測定される。ダイクロイツクミラー22を透過した
螢光26のうち赤螢光32はダイクロイツクミラー30
によつて反射させられ、緑螢光38のみが透過させられ
る。反射された赤螢光32はカラーフイルター34を通
過したのち、光電子増倍管36によつて測定される。透
過した緑螢光38はカラーフイルター40を通過したの
ち光電子増倍管42によつて測定される。
さて、本発明では、前述の赤血球−白血球同時通過によ
る、側方散乱光強度分布の乱れを低減させるため試料中
の赤血球を酸性低張処理することにより破壊している。
前述のように、生理的pH域で低張処理を行なつた場
合、赤血球破壊と同時に一部の白血球の破壊も生ずる。
酸性pH域特にpH2.0〜5.0で低張処理を行なつ
た場合、白血球は完全に保持され赤血球のみが破壊され
る。この場合、白血球の裸核化、膨潤、収縮等の形態学
的変化は、生じない。
赤血球選択溶血の作用機序は不明であるが、おそらく低
張処理による赤血球溶血の進行とともに酸性低pHによ
る赤血球膜の脆弱化、白血球の酸性固定が進行し、赤血
球に比べ抵抗力のある白血球のみが残ると考えられる。
酸性低張処理によつて赤血球はゴースト化され、一部フ
ラグメント化される。その結果赤血球側方散乱光信号強
度は、リンパ球側方散乱光信号強度の1/2〜1/3以下とな
り事実上赤血球−白血球の同時通過は、無視しうるもの
となる。
しかし、酸性低張処理においては、赤血球が全部フラグ
メント化されるわけではないので、散乱光信号強度によ
つて赤血球と白血球を完全に弁別することは困難であ
る。
したがつて、赤血球と白血球との弁別は、前述のように
螢光信号強度によつて行なうことが望ましい。
次に染料の作用について述べる。
抗凝固剤処理を施された血液は、まず、第1液と混合す
ることにより、赤血球がゴースト、フラグメント化さ
れ、次に、第2液の添加により白血球と血小板が染色さ
れる。
染色液中に含まれる色素は、白血球中の細胞構成成分
(特に、顆粒成分)とイオン的に結合すると考えられ
る。
アストラゾンオレンジGは、好塩基球顆粒中のヘパリ
ン、ヒスタミン等の酸性物質と強く結合すると考えら
れ、結合によりアストラゾンオレンジGの螢光波長が5
20〜540nmから560〜580nmにシフトする
(これをメタクロマジー現象と云う)。アストラゾンオ
レンジGは、同時に、他の白血球(好酸球、リンパ球、
単球、好中球)顆粒とも結合するが、好塩基球に見られ
るようなメタクロマジー現象は認め難い。また、アスト
ラゾンオレンジGは核表面や細胞表面にも弱く結合し、
520〜540nmの螢光を発する。
ニユートラルレツドも主に顆粒を染色し、620nmの
螢光を発する。特に、好酸球顆粒において強く結合し、
他の白血球に比べ強い螢光を発する。
第1液と第2液が添加された試料をフローサイトメータ
ーで測定すると第4図に示されるような二次元分布が得
られる。第4図においてRedFL、は赤螢光の相対強度
を、GreenFLは緑螢光の相対強度を表わしている。ま
た、1はリンパ球、2は単球、3は好中球、4は好酸
球、5は好塩基球、6は白血球以外のものすなち血小
板、赤血球のゴースト、フラグメントを表わしている
(以下同じ)。
第4図において、6で示される血小板、赤血球のゴース
ト、フラグメントは緑螢光の強度が低いため、白血球と
分離できる。好酸球4と好塩基球5は二次元分布上で完
全に分離される。特異的な螢光を発しない他の白血球
(リンパ球1、単球2、好中球3)は緑と赤の螢光によ
る二次元分布によつては分離されず、側方散乱光強度に
よつて第3図に示されるように分類される。
次に、第1液、第2液の組成、pH、浸透圧について詳
細に述べる。
(1)色素濃度 a.アストラゾンオレンジG濃度 アストラゾンオレンジG濃度は、染色pH9.0の場合
15ppmにおいて最も、好塩基球と好中球の分離が良
い。
15ppm以下では好塩基球の緑螢光強度の低下により分
離能は悪化する。
15ppm以上では好塩基球の緑螢光強度の低下と、好中
球の緑螢光強度の増加により分離能は悪化する。
最適分離能の得られるアストラゾンオレンジG濃度は、
pHにより異なりpHの低下により染色性は低下する。
b.ニユートラルレツド濃度 ニユートラルレツド濃度は、1〜10ppmの濃度域で
は、高濃度程好酸球と好中球の分離が良い。
低pH程好酸球の染色性は良い。
c.アストラゾンオレンジGとニユートラルレツドの相
互作用 ニユートラルレツドは好塩基球の顆粒をも染色する(螢
光強度に特異性はない)ため、アストラゾンオレンジG
による好塩基球の特異染色を阻害する。したがつて、好
酸球と好塩基球の両者に対して分離度の良いニユートラ
ルレツド濃度を決定する必要がある。
第5図はアストラゾンオレンジG濃度15ppm、pH
9.0の条件のもとでのニユートラルレツド濃度に対す
る好酸球と好中球の分離能および好塩基と好中球の分離
能の変化を図示したものである。第5図において好塩基
球/好中球緑色螢光比は好塩基球と好中球の緑螢光強度
の比を示し、好酸球/好中球赤色螢光比は好酸球と好中
球の赤螢光強度の比を示し(以下同じ)ており、図中の
上方の点ほど、好塩基球または好酸球と好中球との分離
の程度が良いことを表わしている。
第5図では、ニユートラルレツド濃度3.0ppmで好塩
基球、好酸球の分離が同程度となるが実際には、白血球
中の好塩基球の個数が通常は少ないので、好塩基球の分
離能を向上させるため、ニユートラルレツドの濃度を低
めに、たとえば、2ppmに設定することが望ましい。
なお、第1液と第2液の溶積比を後の実施例で述べるよ
うに9:1とする場合には、最終濃度をアストラゾンオ
レンジG15ppm、ニユートラルレツド2ppmとするため
に、第1液中のアストラゾンオレンジGの濃度を16.
5ppm、ニユートラルレツドの濃度を2.2ppmとすれば
良い。
(2)pH a.最終(混合時の)pH アストラゾンオレンジG濃度15.0ppm、ニユートラ
ルレツド濃度3.0ppmの条件のもとでのpHの変化に
対する、好塩基球または好酸球の好中球に対する分離能
の変化を第6図に示す。pHの上昇に伴い好酸球の好中
球に対する分離能は低下する。好塩基球の好中球に対す
る分離能はpH9.0付近まではpHの上昇に伴つて上
り、pH9.0以上では低下する。
なお、pHの上昇に伴い、好塩基球の染色速度(螢光強
度が最大に達するまでの時間)は速くなる。しかし、最
大強度に達してから後の劣化も速くなる。好酸球の染色
速度はpHによつては余り変化しない。
結局、好酸球、好塩基球の分離能と好塩基球の螢光強度
の劣化を考慮して、最終pHは8.6〜8.7付近にす
ることが望ましい。本発明では、この最終pHの値を染
色pHと呼んでいる。
b.第1液pH 第1液pHは赤血球溶血能に影響する。赤血球の溶血は
pH5.0以下で速やかに進行し、pHの低い程溶血は
速くなる。しかしpH2.0以下では、溶血の進行とと
もに、ヘモグロビン等のタンパクの変性が始まり、変性
の進行は低pHほど速くなる。タンパクが変性した場合
には、最終の染色pHにした時点で凝集塊を生成してし
まう。上記の点を考慮し、第1液のpHは2.0〜5.
0とすることが望ましい。
(3)緩衝剤 a.第1液緩衝剤 第1緩衝剤は、溶液のpHを溶血条件に維持するために
添加するものであり、pKa3.5±1.5ならば、い
ずれの緩衝剤でも使用可能である。たとえばマレイン
酸、マロン酸、フタル酸、ジグリコール酸、サリチル
酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸などであ
る。緩衝剤の濃度は、第1液の浸透圧を低くするためな
るべく少なくすることが望ましい。本発明の目的には5
0mM以下が望ましい。さらに好適には、5〜30mM
が望ましい。
b.第2液緩衝剤 第2液緩衝剤は、第1液緩衝剤中の酸を中和し、溶液p
Hを染色pHに維持するものである。pKa8.0〜
9.5の緩衝剤であれば、いずれの緩衝剤でも使用可能
である。たとえばトリス、トライシン、ビシン、2−ア
ミノ−2メチル−1,3−プロパンジオール、タウリ
ン、ホウ酸、セリンなどである。緩衝剤の濃度は、最終
(混合時)濃度10mM以上であることが望ましい。本
発明の目的には最終濃度30〜100mMが好適であ
る。
(4)浸透圧 a.第1液浸透圧 第1液の浸透圧は低いほど赤血球の溶血が速やかに行な
われる。本発明の目的には0〜100mOsm/kgの範
囲、特に、0〜50mOsm/kgであることが望まし
い。
b.第2液浸透圧 第2液浸透圧は最終(混合時)の浸透圧を決定するもの
である。最終浸透圧は白血球の形態保持に影響し、15
0〜600mOsm/kgの範囲、特に、150〜300
mOsm/kgであることが望ましい。
(実施例) 本発明を前述した組成範囲の中で最も好適な条件のもと
で実施した例を以下に示す。
試薬組成 第1液 アストラゾンオレンジG 16.5ppm (好塩基球特異染料) ニユートラルレツド 2.2ppm (好酸球特異染料) クエン酸、水酸化ナトリウム 10mM (緩衝剤) pH3.0、浸透圧10mOsm/kg 第2液 タウリン,水酸化ナトリウム 500mM (緩衝剤) 塩化ナトリウム 300mM (浸透圧補償剤) pH9.7〜9.8、浸透圧2600mOsm/kg 染色方法 1容量部のEDTA2K抗凝固血液に18容量部の第1
液を加え、撹拌後25℃で20秒間インキユベートした
のち、2容量部の第2液を加え、撹拌後25℃で40秒
間インキユベートする。最終染色条件はpH8.7、浸
透圧260mOsm/kgとなる。
螢光特性 上記組成の試薬で染色した場合の各白血球の波長特性を
第7図に示す。
フイルター、ダイクロイツクミラーの選定 上記螢光特性により、最適のフイルター、ダイクロイツ
クミラーは以下のように選定された。
ダイクロイツクミラー22 530nm (青反射) ダイクロイツクミラー30 600nm (赤反射) カラーフイルター34 600nm (シヤープカツトフイルター) カラーフイルター40 540nm (シヤープカツトフイルター) 分析結果 上記条件にて、フローサイトメーターで測定し、赤螢光
強度と緑螢光強度とによる二次元分布図を描くと第8図
のようになる。血小板等6は白血球と分離されている。
好酸球4と好塩基球5は他の白血球と良く分離されてい
る。残りの白血球すなわちリンパ球1、単球2、好中球
3について側方散乱光の度数分布を書くと第9図のよう
になり、三つは良く分離されている。なお、第9図にお
いて、Side Sc、は側方散乱光の相対強度を、Freq、
は度数を表わしている。
なお、以上述べた実施例は、完全に染色が終了したのち
に(すなわち染色が平衡状態に達つしたのちに)、測定
を開始するものであるから、測定中に試料が経時変化す
ることはなく、また、白血球が極端に多いか、または、
少い検体についても、常に、一定時間で適正な強度にま
で染色レベルが達している。したがつて、安定な測定が
可能となるとともに、比較的低出力の光源を使用して
も、充分な検体強度の信号が得られる。たとえば、この
実施例では10mWのアルゴンイオンレーザーをフロー
サイトメーターの光源として使用している。
しかし、この発明に使用されるフローサイトメーターの
光源は、前述の低出力のアルゴンイオンレーザーに限ら
ず、他の光源、たとえば、水銀アークランプ、クセノン
アークランプ、He−Cdレーザー、He−Ne−レー
ザー、クリプトンイオンレーザー、大出力のアルゴンイ
オンレーザー等の光源であつてもかまわない。そのとき
には、各光源に応じた染色条件、測定条件を設定すれば
良い。
(発明の効果) この発明の方法によつて血液を測定し、白血球を分類・
計数すると、以下に述べる様な効果が得られる。
(1)抗凝固処理を施した血液に第1液を加え、次に第2
液を加えるという二段階の染色のみで測定用試料が得ら
れるので、試料の前処理が簡単である。
(2)1分程度の試料調製時間で測定することが可能であ
るため、測定迄に要する時間が短くて済む。
(3)完全に染色が終了した状態で測定するため、測定中
の試料の経時的変化が無く、また、正常な検体のみなら
ず、白血球が極端に多いか、または少い検体について
も、一定時間で常に適正な強度に染色がなされている。
このため検体によつて染色時間を変えるという必要は生
じない。
(4)完全に染色が終了し、強い染色強度に達つしたのち
測定するので、光源は低出力のもので良い。さらに光源
は一個しか必要とせず、測定パラメーターも螢光2チヤ
ンネル、側方散乱光1チヤンネルを測定し、分析するだ
けで良いので、この発明の方法を実施するための装置
は、構成が簡単で低価格のものとなる。
(5)酸性低張処理により赤血球のみを溶血させてしまう
ので、赤血球と白血球の同時通過が無くなつたため、側
方散乱光信号によるリンパ球と単球と好中球との分離が
著しく良くなつた。
(6)螢光信号によつて好酸球と好塩基球をまず分離し、
残つた白血球すなわちリンパ球と単球と好中球とを側方
散乱光により分離することにより、分離度の非常に良い
白血球の5分類が可能となつた。
(7)白血球と他の血球等との分離は螢光強度によつて行
つているので、全ての赤血球がフラグメント化されなく
ても、測定値に影響を与えることがない。
本発明の方法において、一検体につき10000個以上
の白血球を測定すると、正確度および再現性にすぐれた
測定値が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明に使用されるフローサイトメーター
の光学系の一具体例を示す概略図。第1図中の符号は次
のとおりに説明される: 10……フローサイトメーターの光学系 12……レーザー 14……フローセル 16……シリンドリカルレンズ 18……コンデンサーレンズ 20……アパーチヤー 22……ダイクロイツクミラー 24……側方散乱光 26……螢光 28……光電子増倍管 30……ダイクロイツクミラー 32……赤螢光 34……カラーフイルター 36……光電子増倍管 38……緑螢光 40……カラーフイルター 42……光電子増倍管 第2図は赤血球の同時通過の影響があるときの側方散乱
光相対強度の度数分布を示す図。 第3図は赤血球の同時通過の影響が無いときの側方散乱
光相対強度の度数分布を示す図。 第4図は赤螢光と緑螢光を使用して、白血球を分類した
ときの二次元分布図。図面中の符号1はリンパ球、2は
単球、3は好中球、4は好酸球、5は好塩基球の集合を
表わしている。 第5図はニユートラルレツドの濃度に対する好酸球と好
中球の分離能および好塩基球と好中球の分離能の変化を
示す図。 第6図はpHの変化に対する好酸球と好中球の分離能お
よび好塩基球と好中球の分離能の変化を示す図。 第7図は各白血球の螢光波長強度分布を示す図。 第8図は本発明の実施例において、赤螢光と緑螢光を使
用して、白血球を分類したときの二次元分布図。 第9図は同じく側方散乱光相対強度の度数分布を示す
図。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下(a)〜(d)の各工程からなることを特徴
    とする、フローサイトメトリーによる白血球の分類方
    法。 (a)好酸球を特異的に螢光染色する染料と、好塩基球を
    特異的に螢光染色する染料と、pHを酸性域に保つため
    の緩衝剤とからなる低張な第1液に、抗凝固処理を施し
    た新鮮な血液を加えて、赤血球を溶血させる工程。 (b)第1液の緩衝剤中の酸を中和し、溶液pHを染色p
    Hに保つための緩衝剤と、溶液を白血球の形態を保持す
    る浸透圧に調整するための浸透圧補償剤とからなる第2
    液を、前記(a)で得られた、第1液で処理された血液試
    料に加えて、白血球を染色する工程。 (c)前記染色された試料をフローサイトメーターに流
    し、白血球と他の血球やゴーストとを螢光強度によつて
    区別し、白血球の螢光信号と側方(90°)散乱光信号
    とを測定する工程。 (d)白血球より発せられた前記複数の信号により、各白
    血球の種類を判別し、計数し、各白血球の比率を算出す
    る工程。
  2. 【請求項2】好酸球を特異的に螢光染色する染料がニユ
    ートラルレツドである特許請求の範囲第(1)項記載の方
    法。
  3. 【請求項3】好塩基球を特異的に螢光染色する染料がア
    ストラゾンオレンジGである特許請求の範囲第(1)項記
    載の方法。
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