JPH0633141A - 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH0633141A
JPH0633141A JP4184200A JP18420092A JPH0633141A JP H0633141 A JPH0633141 A JP H0633141A JP 4184200 A JP4184200 A JP 4184200A JP 18420092 A JP18420092 A JP 18420092A JP H0633141 A JPH0633141 A JP H0633141A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は電気機器の鉄心に用いられる一方向
性電磁鋼板の磁気特性の向上を目的とする。 【構成】 Si,C,酸可溶性Al,N,Mn,Sを含
有する珪素鋼スラブを1300℃以上の温度で加熱し、
熱延を行い、次いで、通常の工程を経て、最終仕上焼鈍
を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍
後の鋼板の一次再結晶粒の平均直径、直径の変動係数、
最終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前と脱炭焼鈍後の状態
での一次再結晶粒の平均直径の比率を制御することを特
徴とし、更には、Sn,Cu,Sb,Seの内1種又は
2種以上を所定量添加することを特徴とする磁気特性の
優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トランス等の鉄心とし
て使用される磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一方向性電磁鋼板は、主にトランスその
他の電気機器の鉄心材料として使用されており、励磁特
性、鉄損特性等の磁気特性に優れていることが要求され
る。励磁特性を表す数値としては、磁場の強さ800A
/mにおける磁束密度B8 が通常使用される。また、鉄
損特性を表す数値としては、周波数50Hzで1.7テス
ラー(T)まで磁化したときの1kg当りの鉄損W17/50
を使用している。
【0003】磁束密度は、鉄損特性の最大支配因子であ
り、一般的にいって磁束密度が高いほど鉄損特性が良好
になる。なお、一般的に磁束密度を高くすると二次再結
晶粒が大きくなり、鉄損特性が不良となる場合がある。
これに対しては、磁区制御により、二次再結晶粒の粒径
に拘らず、鉄損特性を改善することができる。
【0004】この一方向性電磁鋼板は、最終仕上焼鈍工
程で二次再結晶を起こさせ、鋼板面に{110}、圧延
方向に〈001〉軸を持った、いわゆるゴス組織を発達
させることにより製造されている。良好な磁気特性を得
るためには、磁化容易軸である〈001〉を圧延方向に
高度に揃えることが必要である。
【0005】このような高磁束密度一方向性電磁鋼板の
製造技術として代表的なものに田口悟等による特公昭4
0−15644号公報及び今中拓一等による特公昭51
−13469号公報記載の方法がある。前者においては
MnS及びAlNを、後者ではMnS,MnSe,Sb
等を主なインヒビターとして用いている。従って現在の
技術においてはこれらインヒビターとして機能する析出
物の大きさ、形態及び分散状態を適正に制御することが
不可欠である。
【0006】一方向性電磁鋼板は機能材料であり、磁気
特性を向上させることに技術開発の主眼があるが、工業
的には安定的に製造する技術が備わっていることが必要
である。こういった観点から本発明者らは、中間製品で
最終製品の特性を予測し、制御する技術の開発(特願平
1−1778号等)を行ってきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、製鋼段階か
ら熱延、焼鈍、冷延等の一連の工程を過て、長期間を要
して、製品となる一方向性電磁鋼板の製造工程におい
て、中間製品から最終製品の特性が予測し難く、その制
御も容易でないという課題に対する定量的評価基準を与
えるものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは下記のとおりである。 (1)重量%でSi:2.5〜4.0%、C:0.03
〜0.10%、酸可溶性Al:0.010〜0.065
%、N:0.0010〜0.0150%、Mn:0.0
2〜0.30%、S:0.005〜0.040%、残部
がFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを13
00℃以上の温度で加熱し、熱延を施し、次いで熱延板
に、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、次いで圧下率80
%以上の最終冷延を含み、必要に応じて中間焼鈍を挟む
1回以上の冷延を行い、次いで脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍
を施して一方向性電磁鋼板を製造する方法において、脱
炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒の平均直径を6〜11μ
mとし、一次再結晶粒の直径の変動係数を0.5以下と
し、最終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前までに、一次再
結晶粒の平均直径を脱炭焼鈍後の鋼板での平均直径に対
して5〜30%大きくすることを特徴とする一方向性電
磁鋼板の製造方法。
【0009】(2)スラブに、0.4%以下のSn,C
u,Sb,Seの1種又は2種以上を含有することを特
徴とする(1)記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0010】
【作用】本発明が対象としている一方向性電磁鋼板は、
従来用いられている製鋼法で得られた溶鋼を連続鋳造法
或いは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を挟んで
スラブとし、引き続き熱間圧延して熱延板とし、次いで
この熱延板に必要に応じて焼鈍を施し、次いで圧下率8
0%以上の最終冷延を含み、必要に応じて中間焼鈍を挟
む1回以上の冷延、脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍を順次行う
ことによって製造される。
【0011】本発明者らは、一方向性電磁鋼板の製造工
程において、中間製品から最終製品の特性を予測し、制
御する方法を広範にわたって研究したところ、脱炭焼鈍
後最終仕上焼鈍前の材料の結晶組織及び、最終仕上焼鈍
中の二次再結晶開始までの間の結晶組織変化が製品の磁
気特性に大きく影響するという新知見を得た。
【0012】以下実験結果を基に詳細に説明する。図1
に、光学顕微鏡で観察した脱炭焼鈍後の鋼板(以下、脱
炭焼鈍板と称す)の結晶組織(板厚方向全域)を画像解
析することによって求めた一次再結晶板の平均直径d
(円相当直径)及び直径の変動係数σ*(一次再結晶粒
の平均直径dで規格化した分布の標準偏差)が製品の磁
束密度(B8 値)に与える影響を示す。
【0013】この場合、重量%でSi:3.2〜3.3
%、C:0.035〜0.091%、酸可溶性Al:
0.021〜0.039%、N:0.0041〜0.0
097%、Mn:0.061〜0.088%、S:0.
021〜0.035%、残部がFe及び不可避的不純物
からなる珪素鋼スラブを1300〜1400℃に1時間
加熱し、熱延して、2.3mm厚の熱延板とした。
【0014】次いで、(1)この熱延板に、1000℃
の熱延板焼鈍を施した後1.55mm厚に冷延し、次いで
1100℃の中間焼鈍を施した後、圧下率約86%で冷
延し、0.22mm厚の冷延板とする、(2)この熱延板
を、1.55mm厚に冷延し、次いで1100℃の中間焼
鈍を施した後圧下率約86%で冷延して、0.22mm厚
の冷延板とする、(3)この熱延板に、1100℃の熱
延板焼鈍を施した後、圧下率約90%で冷延して、0.
22mm厚の冷延板とする、なる3種類のプロセスで、
0.22mm厚の最終冷延板とした。
【0015】かかる冷延板を810〜1000℃の温度
域で脱炭焼鈍(25%N2 +75%H2 、露点55〜6
8℃)を施した。この脱炭焼鈍板の一次再結晶粒の平均
直径と直径の変動係数を光学顕微鏡と画像解析を用いて
測定した。
【0016】次いで、MgOを主成分とする焼鈍分離剤
を鋼板に塗布し、N2 を0〜100%(残部H2 )含む
焼鈍雰囲気中で、15℃/hrの昇温速度で1200℃ま
で昇温し、H2 焼鈍雰囲気中で、1200℃に20時間
保持する最終仕上焼鈍を施した。
【0017】図1から明らかなように、一次再結晶粒
(脱炭焼鈍板)の平均直径d=6〜11μm、一次再結
晶粒の直径の変動係数を0.5以下とした範囲内での
み、B8≧1.88Tと良好な磁気特性をもつ製品が得
られた。但し、この範囲内でもB8 <1.88Tとなる
場合も生じたので、この原因を詳細に検討した。この検
討結果について以下説明する。
【0018】図2に、図1に示した実験において、脱炭
焼鈍板の一次再結晶粒径の平均直径dが6〜11μm
で、かつ、一次再結晶粒の直径の変動係数σ*が0.5
以下であった材料における、脱炭焼鈍後から最終仕上焼
鈍の二次再結晶開始直前までの粒成長割合Δd/d((二
次再結晶直前と脱炭焼鈍板での一次再結晶粒の平均直径
の差)/(脱炭焼鈍板での一次再結晶粒の平均直径))
(%)と磁束密度(B8 )の関係を示す。
【0019】この場合、最終仕上焼鈍の昇温過程の85
0℃から1200℃の間の25℃おきに、試料の一部を
焼鈍炉から引き出し急冷した。この試料の結晶組織を観
察し、板厚を貫通した粒(二次再結晶粒)が発生した引
き出し温度より25℃低い温度で引き出した試料を二次
再結晶開始直前の試料と呼ぶ。
【0020】図2から明らかなように、脱炭焼鈍から最
終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前までの粒成長割合Δd
/dが5〜30%の場合にいずれも、B8 ≧1.88T
なる良好な磁気特性が得られた。
【0021】図1及び図2に示した関係が成立する理由
については、必ずしも明らかではないが、本発明者ら
は、次のように推察している。
【0022】一次再結晶粒の平均直径は、粒界面積の総
和(単位体積あたり)に逆比例する量であり、これらの
粒界エネルギーが二次再結晶粒の粒成長の駆動力とな
る。この駆動力が低いと、二次再結晶が低温から生じ、
この駆動力が高いと、二次再結晶が生じる温度が高温と
なり、極端な場合には、二次再結晶が生じなくなる。
【0023】一方、直径の変動係数は、大きい程混粒状
態にあることを示し、混粒状態にあるものは、粒成長に
伴い、その混粒状態がより顕著となる(直径の変動係数
がより大きくなる)傾向がある。
【0024】一次再結晶組織が混粒状態にある場合、
{110}〈001〉方位粒に他の方位の粗大粒が隣接
する確率が増加し、{110}〈001〉方位粒が粒成
長し、二次再結晶粒化するのを防げる可能性が増すこと
となる。従って、混粒状態(直径の変動係数が大きい状
態)は、二次再結晶粒の発生にとって不利である。
【0025】一方、本発明の如き高温スラブ加熱でAl
N,MnSを完全固溶させ、熱延、熱延板焼鈍等でAl
N,MnSを微細析出させる製造プロセスにおいては、
二次再結晶進行時のインヒビター強度を高くすること
で、粒界移動の粒界性格依存性を高め、{110}〈0
01〉方位に高度に集積した方位粒だけを二次再結晶さ
せるためには、不可避的に、脱炭焼鈍時のインヒビター
が強くなり、一次再結晶粒径の調整が短時間焼鈍である
脱炭焼鈍だけでは不十分となる。
【0026】従って、この一次再結晶粒径の調整を長時
間焼鈍である仕上焼鈍で施すことが必要となる。この一
次再結晶粒径の調整を行う場合、脱炭焼鈍板で既に混粒
組織(直径の変動係数が大きい状態)になっていると、
粒成長に伴って、混粒傾向が増し、二次再結晶が生じ難
くなり好ましくない。
【0027】そして、直径の変動係数が本発明の如く低
い値に制御された状態で、最終仕上焼鈍中の粒成長を生
ぜしめ、平均直径を二次再結晶直前で所定の範囲にする
ことにより、二次再結晶温度及び二次再結晶粒の粒成長
の駆動力を好ましい範囲に制御することが可能となる。
【0028】従って、脱炭焼鈍板の平均直径、直径の変
動係数及び脱炭焼鈍後から最終仕上焼鈍での二次再結晶
開始直前までの平均直径の変化率と二次再結晶方位の
{110}〈001〉集積度(製品の磁束密度B8 )が
強い相関があるものと推察される。
【0029】次に本発明の構成要件の限定理由について
述べる。本発明の出発素材であるスラブの成分について
は、重量%でSi:2.5〜4.0%、C:0.03〜
0.10%、酸可溶性Al:0.010〜0.065
%、N:0.0010〜0.0150%、Mn:0.0
2〜0.30%、S:0.005〜0.040%を含有
する必要がある。
【0030】Siは4.0%を超すと脆化が激しくなる
ため冷間圧延が困難となり好ましくない。一方2.5%
未満では電気抵抗が低く、良好な鉄損特性が得難い。
【0031】Cは0.03%未満では脱炭焼鈍以前での
γ量が極めて少なくなってしまい脱炭焼鈍後の金属組織
が不適切なものとなる。一方0.10%を超えると脱炭
不良となり好ましくない。
【0032】酸可溶性Al,Nは本発明において高磁束
密度を得るために必須の主インヒビターAlNを得るた
めの基本成分であり、上記範囲を外れると二次再結晶が
不安定となるので酸可溶性Alは0.010〜0.06
5%、Nは0.0010〜0.0150%とする。
【0033】Mn,SはインヒビターMnSを形成する
ために必要な元素であり、上記範囲を外れると二次再結
晶が不安定となるのでMnは0.02〜0.30%、S
は0.005〜0.040%と定める。
【0034】更に、インヒビター構成元素であるSn,
Cu,Sb,Seの1種又は2種以上を各0.4%以下
含有することは、本発明の如き一次再結晶粒成長を制御
する技術においては好ましい。0.4%超では、粒成長
が顕しく抑制されるので好ましくない。
【0035】かかるスラブは1300℃以上の温度で加
熱して熱延を行う。スラブ加熱温度が1300℃未満で
は、AlN,MnSの固溶が不十分となり、二次再結晶
が不安定となり好ましくない。熱延は通常の方法で行わ
れる。
【0036】かかる熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍
を施し、次いで圧下率80%以上の最終冷延を含み、必
要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷延を行い、次い
で脱炭焼鈍、最終仕上焼鈍を順次施す工程を前提として
いる。最終冷延の圧下率が80%未満では高磁束密度が
得難く、好ましくない。
【0037】脱炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒の平均直
径を6〜11μmとし、一次再結晶粒の直径の変動係数
を0.5以下とし、最終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前
までに、一次再結晶粒の平均直径を脱炭焼鈍後の鋼板の
平均直径に対して5〜30%大きくする必要がある。こ
れは、図1,図2に示した如く、上記の範囲に制御する
ことによりB8 >1.88Tなる良好な磁気特性が安定
して得られる。
【0038】上記の如き範囲に脱炭焼鈍板の一次再結晶
粒の平均直径、変動係数及び最終仕上焼鈍中の粒成長挙
動を制御する手段については特に限定するものではな
い。
【0039】インヒビター構成元素の成分範囲、熱延板
焼鈍の熱サイクル、脱炭焼鈍の熱サイクル、雰囲気ガ
ス、焼鈍分離剤への添加物の種類量、最終仕上焼鈍の熱
サイクル、雰囲気ガス等の組合わせにより、上記の値を
必要とする範囲に制御することができる。最終仕上焼鈍
後に、張力を付与するコーティングやレーザー等を用い
た磁区制御を施すと磁気特性が一層向上する。
【0040】
【実施例】
実施例1 重量%でSi:3.25%、(A)C:0.079%,
(B)C:0.040%、酸可溶性Al:0.026
%、N:0.008%、Mn:0.078%、S:0.
024%を含有する250mm厚の2種類のスラブを13
50℃に1時間保持した後熱延し、2.3mm厚の熱延板
とした。
【0041】この熱延板に1100℃に30秒保持した
後900℃に30秒保持して急冷する熱延板焼鈍を施し
た後圧下率約88%で0.285mm厚まで冷延し、85
0℃に150秒保持する脱炭焼鈍(25%N2 +75%
2 、露点68℃の雰囲気ガス中)を施した。光学顕微
鏡と画像解析機を用い、この脱炭焼鈍板の一次再結晶粒
の平均直径dと直径の変動係数σ*を測定した。
【0042】かかる脱炭焼鈍板にMgOを主成分とする
焼鈍分離剤を塗布し、15℃/hrで1200℃まで昇温
し、1200℃で20時間保持する最終仕上焼鈍を施し
た。かかる最終仕上焼鈍の1200℃での保持中の焼鈍
雰囲気は100%H2 とし、昇温中の雰囲気ガスを
(1)100%H2 、(2)20%N2 +80%H2
(3)90%N2 +10%H2 、の3条件とし、昇温中
の900〜1100℃の温度範囲で25℃間隔で試料の
一部を焼鈍炉から引き出し急冷し、結晶組織を光学顕微
鏡と画像解析機を用いて調査し、一次再結晶粒の平均直
径を測定した。
【0043】表1に、工程条件と磁気特性の関係を示
す。表1に示した如く、脱炭焼鈍板の一次再結晶粒の平
均直径、直径の変動係数、最終仕上焼鈍中の平均直径変
化率が本発明の範囲である条件(1),(2)の場合
に、B8 ≧1.93Tなる良好な磁気特性が得られた。
【0044】
【表1】
【0045】実施例2 重量%でSi:3.20%、C:0.074%、酸可溶
性Al:0.028%、N:0.084%、Mn:0.
080%、S:0.026%を含有し、更に(A)S
n:0.12%、Cu:0.07%、(B)Sb:0.
08%、(C)Se:0.03%、Sb:0.05%を
含有する250mm厚の3種類のスラブを1350℃に1
時間保持した後熱延し、2.3mmの熱延板とした。
【0046】次いで、(1)この熱延板に、980℃×
3分(均熱)なる熱延板焼鈍を施した後、1.55mm厚
に冷延し、1100℃に30秒保持し、引き続き900
℃に30秒保持した後急冷する中間焼鈍を施し、次いで
圧下率約86%で冷延し、0.22mm厚の冷延板とす
る、(2)この熱延板を1.55mm厚に冷延し、(1)
と同じ条件で中間焼鈍を施した後、圧下率約86%で冷
延し、0.22mm厚の冷延板とする、(3)1080℃
に30秒保持し、引き続き850℃に30秒保持した後
急冷する熱延板焼鈍を施した後圧下率約90%で冷延
し、0.22mm厚の冷延板とする、なる3種類のプロセ
スで、0.22mm厚の最終冷延板とした。
【0047】かかる冷延板を840℃に150秒保持す
る脱炭焼鈍(25%N2 +75%H2 、露点62℃の雰
囲気ガス中)を施した。光学顕微鏡と画像解析機を用
い、この脱炭焼鈍板の一次再結晶粒の平均直径dと直径
の変動係数のσ*を測定した。かかる脱炭焼鈍板にMg
Oを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、10℃/hrで1
200℃まで昇温し、1200℃で20時間保持する最
終仕上焼鈍を施した。かかる最終仕上焼鈍の1200℃
での保持中の焼鈍雰囲気は100%H2 とし、昇温中の
雰囲気ガスを10%N2 +90%H2 とし、昇温中の9
00〜1100℃の温度範囲で25℃間隔で、試料の一
部を焼鈍炉から引き出し急冷し、結晶組織を光学顕微鏡
と画像解析機を用いて調査し、一次再結晶粒の平均直径
を測定した。
【0048】表2に、工程条件と磁気特性の関係を示
す。表2に示した条件は、すべて本発明の条件となって
おり、いずれの場合も、B8 ≦1.92Tなる良好な磁
気特性が得られている。
【0049】
【表2】
【0050】実施例3 重量%で、Si:3.20%、C:0.078%、酸可
溶性Al:0.029%、N:0.0078%、Mn:
0.080%、S:0.026%を含有する250mm厚
のスラブ(A)と、(A)に更にSn:0.10%を含
有するスラブ(B)と、スラブ(A)に更にCu:0.
12%を含有するスラブ(C)と、スラブ(A)に更に
Sb:0.08%を含有するスラブ(D)と、スラブ
(A)に更にSe:0.03%を含有するスラブ(E)
なる5種類の250mmスラブを実施例1の工程条件でス
ラブ加熱から焼鈍分離剤塗布までの工程を処理した。
【0051】次いで、最終仕上焼鈍を実施例1の(2)
の条件で処理した。脱炭焼鈍板の結晶組織と最終仕上焼
鈍での二次再結晶直前の結晶組織を実施例1と同様に調
査した。
【0052】表3に、工程条件と磁気特性の関係を示
す。表3に示した条件は、すべて本条件となっており、
いずれの場合も、B8 ≧1.92Tなる良好な磁気特性
が得られている。そして、Sn,Cu,Sb,Seが本
発明の条件となっている。(B),(C),(D),
(E)の場合は、B8 ≧1.94Tなるとりわけ良好な
磁気特性が得られている。
【0053】
【表3】
【0054】実施例4 重量%で、Si:3.30%、C:0.074%、酸可
溶性Al:0.026%、N:0.0075%、Mn:
0.081%、S:0.025%、Sn:0.12%、
Cu:0.07%を含有する250mm厚のスラブを13
50℃に1時間30分保持した後、熱延し、2.3mm厚
の熱延板とした。
【0055】この熱延板に、1000℃に2分保持した
後急冷する熱延板焼鈍を施した後、1.2mm厚に冷延
し、1100℃に30秒保持し、引き続き900℃に3
0秒保持した後急冷する中間焼鈍を施した。
【0056】しかる後、この鋼板を圧下率約88%で冷
延して、0.145mmの冷延板とした。かかる冷延板
を、840℃に150秒保持する脱炭焼鈍(25%N2
+75%H2 、露点62℃の雰囲気ガス中)を施した。
【0057】かかる脱炭焼鈍板にMgOを主成分とする
焼鈍分離剤の塗布を行い、実施例1記載の条件(1),
(2),(3)で、最終仕上焼鈍を施した。
【0058】脱炭焼鈍板の結晶組織と最終仕上焼鈍での
二次再結晶直前の結晶組織を実施例1と同様に調査し
た。
【0059】表4に、工程条件と磁気特性の関係を示
す。表4に示した条件の内、(2)は本発明の条件とな
っており、B8 ≧1.92Tなる良好な磁気特性が得ら
れている。
【0060】
【表4】
【0061】
【発明の効果】本発明に従って、脱炭焼鈍後の鋼板の一
次再結晶粒の平均直径、直径の変動係数及び最終仕上焼
鈍の二次再結晶開始直前と脱炭焼鈍後の状態での一次再
結晶粒の平均直径の比率(粒成長割合)を制御すること
により、磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板を安定して
製造することができ、更に、Sn,Cu,Sb,Seの
1種又は2種以上を添加することにより、いっそう優れ
た磁気特性を有する一方向性電磁鋼板を安定して製造で
きるので、これらの技術の工業的意義は極めて大であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱炭焼鈍板の一次再結晶粒の平均直径及び直径
の変動係数が製品の磁束密度に与える影響を示す図表で
ある。
【図2】脱炭焼鈍後から最終仕上焼鈍の二次再結晶開始
直前までの粒成長割合と製品の磁束密度の関係を示す図
表である。
【手続補正書】
【提出日】平成5年9月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】以下実験結果を基に詳細に説明する。図1
に、光学顕微鏡で観察した脱炭焼鈍後の鋼板(以下、脱
炭焼鈍板と称す)の結晶組織(板厚方向全域)を画像解
析することによって求めた一次再結晶板の平均直径AG
S(各結晶の円相当直径の平均値を表わす。以下AGS
と略す。)及び直径の変動係数σ(一次再結晶粒の平
均直径AGSで規格化した分布の標準偏差)が製品の磁
束密度(B8 値)に与える影響を示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】図1から明らかなように、一次再結晶粒
(脱炭焼鈍板)の平均直径AGS=6〜11μm、一次
再結晶粒の直径の変動係数を0.5以下とした範囲内で
のみ、B8 ≧1.88Tと良好な磁気特性をもつ製品が
得られた。但し、この範囲内でもB8 <1.88Tとな
る場合も生じたので、この原因を詳細に検討した。この
検討結果について以下説明する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】図2に、図1に示した実験において、脱炭
焼鈍板の一次再結晶粒径の平均直径AGSが6〜11μ
mで、かつ、一次再結晶粒の直径の変動係数σが0.
5以下であった材料における、脱炭焼鈍後から最終仕上
焼鈍の二次再結晶開始直前までの粒成長割合ΔAGS/
AGS((二次再結晶直前と脱炭焼鈍板での一次再結晶粒
の平均直径の差)/(脱炭焼鈍板での一次再結晶粒の平
均直径))(%)と磁束密度(B8 )の関係を示す。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】図2から明らかなように、脱炭焼鈍から最
終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前までの粒成長割合ΔA
GS/AGSが5〜30%の場合にいずれも、B8
1.88Tなる良好な磁気特性が得られた。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正内容】
【0037】脱炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒の平均直
径を6〜11μmとし、一次再結晶粒の直径の変動係数
を0.5以下とし、最終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前
までに、一次再結晶粒の平均直径を脱炭焼鈍後の鋼板の
平均直径に対して5〜30%大きくする必要がある。こ
れは、図1,図2に示した如く、上記の範囲に制御する
ことによりB8 ≧1.88Tなる良好な磁気特性が安定
して得られる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正内容】
【0039】インヒビター構成元素の成分範囲、熱延板
焼鈍の熱サイクル、脱炭焼鈍の熱サイクル、雰囲気ガ
ス、焼鈍分離剤への添加物の種類量、最終仕上焼鈍の
熱サイクル、雰囲気ガス等の組合わせにより、上記の値
を必要とする範囲に制御することができる。最終仕上焼
鈍後に、張力を付与するコーティングやレーザー等を用
いた磁区制御を施すと磁気特性が一層向上する。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正内容】
【0040】
【実施例】 実施例1 重量%でSi:3.25%、(A)C:0.079%,
(B)C:0.040%、酸可溶性Al:0.026
%、N:0.0081%、Mn:0.078%、S:
0.024%を含有する250mm厚の2種類のスラブを
1350℃に1時間保持した後熱延し、2.3mm厚の熱
延板とした。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正内容】
【0041】この熱延板に1100℃に30秒保持した
後900℃に30秒保持して急冷する熱延板焼鈍を施し
た後圧下率約88%で0.285mm厚まで冷延し、85
0℃に150秒保持する脱炭焼鈍(25%N2 +75%
2 、露点68℃の雰囲気ガス中)を施した。光学顕微
鏡と画像解析機を用い、この脱炭焼鈍板の一次再結晶粒
の平均直径AGSと直径の変動係数σを測定した。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正内容】
【0045】実施例2 重量%でSi:3.20%、C:0.074%、酸可溶
性Al:0.028%、N:0.0084%、Mn:
0.080%、S:0.026%を含有し、更に(A)
Sn:0.12%、Cu:0.07%、(B)Sb:
0.08%、(C)Se:0.03%、Sb:0.05
%を含有する250mm厚の3種類のスラブを1350℃
に1時間保持した後熱延し、2.3mmの熱延板とした。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正内容】
【0047】かかる冷延板を840℃に150秒保持す
る脱炭焼鈍(25%N2 +75%H2 、露点62℃の雰
囲気ガス中)を施した。光学顕微鏡と画像解析機を用
い、この脱炭焼鈍板の一次再結晶粒の平均直径AGS
直径の変動係数のσを測定した。かかる脱炭焼鈍板に
MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、10℃/hr
で1200℃まで昇温し、1200℃で20時間保持す
る最終仕上焼鈍を施した。かかる最終仕上焼鈍の120
0℃での保持中の焼鈍雰囲気は100%H2 とし、昇温
中の雰囲気ガスを10%N2 +90%H2 とし、昇温中
の900〜1100℃の温度範囲で25℃間隔で、試料
の一部を焼鈍炉から引き出し急冷し、結晶組織を光学顕
微鏡と画像解析機を用いて調査し、一次再結晶粒の平均
直径を測定した。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正内容】
【0048】表2に、工程条件と磁気特性の関係を示
す。表2に示した条件は、すべて本発明の条件となって
おり、いずれの場合も、B8 ≧1.92Tなる良好な磁
気特性が得られている。
【手続補正12】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 増井 浩昭 北九州市戸畑区飛幡町1番1号 新日本製 鐵株式会社八幡製鐵所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で Si:2.5〜4.0%、 C :0.03〜0.10%、 酸可溶性Al:0.010〜0.065%、 N :0.0010〜0.0150%、 Mn:0.02〜0.30%、 S :0.005〜0.040%、 残部がFe及び不可避的不純物からなる珪素鋼スラブを
    1300℃以上の温度で加熱し、熱延を施し、次いで熱
    延板に必要に応じて熱延板焼鈍を行い、次いで圧下率8
    0%以上の最終冷延を含み、必要に応じて中間焼鈍を挟
    む1回以上の冷延を行い、次いで脱炭焼鈍、最終仕上焼
    鈍を施して一方向性電磁鋼板を製造する方法において、
    脱炭焼鈍後の鋼板の一次再結晶粒の平均直径を6〜11
    μmとし、一次再結晶粒の直径の変動係数を0.5以下
    とし、最終仕上焼鈍の二次再結晶開始直前までに、一次
    再結晶粒の平均直径を脱炭焼鈍後の鋼板での平均直径に
    対して5〜30%大きくすることを特徴とする一方向性
    電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 スラブに、0.4%以下のSn,Cu,
    Sb,Seの1種又は2種以上を含有することを特徴と
    する請求項1記載の一方向性電磁鋼板の製造方法。
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CN100455690C (zh) * 2005-11-30 2009-01-28 宝山钢铁股份有限公司 一种基于薄板坯连铸连轧的取向硅钢及其制造方法

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