JPH06321802A - ヘモグロビン含有リポソーム - Google Patents

ヘモグロビン含有リポソーム

Info

Publication number
JPH06321802A
JPH06321802A JP6045539A JP4553994A JPH06321802A JP H06321802 A JPH06321802 A JP H06321802A JP 6045539 A JP6045539 A JP 6045539A JP 4553994 A JP4553994 A JP 4553994A JP H06321802 A JPH06321802 A JP H06321802A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hemoglobin
solution
liposome
concentrated
sfh
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP6045539A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3696898B2 (ja
Inventor
Takeshi Okamoto
本 武 岡
Hiroshi Goto
藤 博 後
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Terumo Corp
Original Assignee
Terumo Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Terumo Corp filed Critical Terumo Corp
Priority to JP04553994A priority Critical patent/JP3696898B2/ja
Publication of JPH06321802A publication Critical patent/JPH06321802A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3696898B2 publication Critical patent/JP3696898B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
(NADH)および/または還元型ニコチンアミドアデ
ニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を生じる酵素
反応基質を添加したヘモグロビン溶液を含有するヘモグ
ロビン含有リポソーム。 【効果】ヘモグロビンの経時酸化を著しく抑制できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生体内に投与するヘモ
グロビン含有リポソームに関する。本発明は、更に詳し
くは生体内に投与したときのヘモグロビンの経時酸化を
著しく抑制したヘモグロビン含有リポソームに関する。
【0002】
【従来の技術】血液の代用と成り得る薬剤として、ゼラ
チン分解産物の溶液、デキストラン溶液、ヒドロキシエ
チルスターチ(HES)溶液等の血漿増量剤が使用され
ている。しかし、これらの代用血液は大量出血等の緊急
時に血管内の血漿量を補充し、循環動態を維持する目的
で開発された製剤で、天然赤血球の酸素運搬能を代替え
する事はできない。近年、こうした血漿増量剤とは異な
り、天然赤血球類似の酸素運搬能を保持した代用血液と
して、人工酸素運搬体の研究開発が進められている。当
初の開発段階にあっては、フッ化炭素エマルジョン(pe
rfluorochemical:PFC/ [通称:fluorocarbon])の酸素溶
解能力(水の20倍)を利用した化学合成品が検討され
たが、十分な酸素運搬量の不足や体内蓄積性などの問題
点が危惧されている。
【0003】一方、酸素運搬体として天然赤血球由来ヘ
モグロビンを利用する試みも行われているが遊離ヘモグ
ロビンの生体内半減期は極端に短く(4時間以内)、末
梢への酸素運搬能も低く、腎毒性等の問題点が指摘され
ており、実用化は難しい。最近、こうした遊離ヘモグロ
ビン溶液の持つ問題点を改善した修飾ヘモグロビン(安
定化ヘモグロビン、重合ヘモグロビンetc.)やリポソー
ム化ヘモグロビンの開発の検討が中心と成りつつある。
その例として、ヘモグロビンを含有するリポソームとし
て薄膜法により製造されたものがミラー(Miller)らに
よって報告されている(米国特許第4,133,874号)。こ
の方法によればヘモグロビン含有リポソームは、リポソ
ーム形成脂質をクロロホルム等の適当な有機溶媒に溶解
し、得られた溶液から溶媒を留去して脂質の薄膜をつく
り、この薄膜に溶血ヘモグロビン水溶液を加え、激しく
攪拌して多重層リポソームを形成し、次にこれを超音波
処理することによって得られる。この方法によれば、ヘ
モグロビンが酸素に触れる時間が少ないのでヘモグロビ
ンの変性が比較的少ない利点がある。
【0004】しかしながら、これらヘモグロビンを原料
とした人工赤血球の酸素運搬能はヘモグロビンと酸素分
子との可逆的結合により生じ、ヘム鉄(プロトヘム)の
原子価が2価の状態(Fe2+)でのみ保たれる機能であ
る。ヘモグロビンはその可逆的酸素化(oxigenation)の
過程で徐々に酸化(oxidation)され酸素結合能を持たな
い3価のメトヘモグロビン(Fe3+)に変化する。この
ため正常赤血球は、これらの酸化作用に対し、ヘモグロ
ビンが酸化されるのを抑制する機構を持っている。しか
し、こうした天然赤血球の酸化抑制機構は、人工酸素運
搬体として調製されたヘモグロビン溶液においては認め
られず、ヘモグロビン酸化物の占める割合は経時的に増
加する。このため、天然ヘモグロビンならびにその誘導
体を医薬品や試薬として使用する場合には、酸化防止剤
あるいは還元剤を用いる必要があった。亜硫酸ナトリウ
ム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、エチレンジア
ミン四酢酸ナトリウム等の物質が知られているが、生体
に対して有害となる。また、還元型グルタチオン、アス
コルビン酸、トコフェロール類、糖類、アミノ酸類など
も一般に用いられる。しかしながら、これらの添加物の
抑制効果は低く、特に体内投与後の経時的な酸化抑制効
果は不十分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を鑑み以下の課題の少なくとも1つを解決しようとす
るものである。すなわち、ヘモグロビンの経時の酸化が
抑制され、特に、体内に投与した時のヘモグロビンの酸
化が抑制されたヘモグロビン含有リポソームを提供する
ものである。
【0006】
【問題を解決するための手段】この上記課題は下記の構
成からなる、本発明のヘモグロビン含有リポソームによ
り解決される。 (1)脂質からなるリポソーム内に天然赤血球由来およ
び/または酸化還元系の酵素活性を保持したヘモグロビ
ン溶液を取り込んでなるヘモグロビン含有リポソームに
おいて、前記ヘモグロビン溶液内に、還元型ニコチンア
ミドアデニンジヌクレオチド(NADH)および/また
は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
(NADPH)を生じる酵素反応基質が添加されている
ことを特徴とするヘモグロビン含有リポソーム。ここ
で、酵素反応基質の添加量が、ヘモグロビン1モルに対
し、0.1〜25モルであるヘモグロビン含有リポソー
ムが好ましい。 (2)上記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチ
ド(NADH)および/または還元型ニコチンアミドア
デニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を生じる酵
素反応基質が有機酸またはその誘導体であることを特徴
とする(1)記載のヘモグロビン含有リポソーム。
【0007】(3)上記有機酸またはその誘導体が、リ
ンゴ酸、オキサロ酢酸、クエン酸、イソクエン酸、α−
ケトグルタン酸、スクシニルCoA(補酵素Aのスクシ
ニル誘導体)、コハク酸、フマル酸、アスパラギン酸、
ピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸、アセチルCo
A(補酵素Aのアセチル誘導体)、グルタミン酸である
(1)及び(2)記載のヘモグロビン含有リポソーム。 (4)上記還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチ
ド(NADH)、または還元型ニコチンアミドアデニン
ジヌクレオチドリン酸(NADPH)を生じる酵素反応
基質が嫌気的解糖系糖代謝中間体であることを特徴とす
る(1)記載のヘモグロビン含有リポソーム。 (5)上記嫌気的解糖系糖代謝中間体が、グルコース、
グルコース−6−リン酸、グルコース−1,6−ジリン
酸、フルクトース−6−リン酸、UDP−グルコース、
L−グロネート、キシリトール、ソルビトール、α−グ
リセロール−リン酸、グリセルアルデヒド−3−リン
酸、ラクテートである(4)記載のヘモグロビン含有リ
ポソーム。 (6)上記ヘモグロビン溶液内に、さらに有機リン酸化
合物が含有されている(1)乃至(5)に記載のヘモグ
ロビン含有リポソーム。ここで有機リン酸化合物の添加
量が、ヘモグロビン1モルに対し、0.05〜4モルで
あるヘモグロビン含有リポソームが好ましい。さらに、
有機リン酸化合物が、イノシトールヘキサホスフェート
であるヘモグロビン含有リポソームが好ましい。 (7)上記脂質中にトコフェロール類またはその誘導体
が含有されている(1)乃至(6)に記載のヘモグロビ
ン含有リポソーム。ここで、トコフェロール類またはそ
の誘導体の添加量が、リポソーム膜の総脂質に対して
0.5〜4.5モル%であるヘモグロビン含有リポソー
ムが好ましい。
【0008】(8)前記ヘモグロビン溶液内(1)〜
(7)のそれぞれに、さらに還元型ニコチンアミドアデ
ニンジヌクレオチド(NADH)、酸化型ニコチンアミ
ドアデニンジヌクレオチド(NAD)、還元型ニコチン
アミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)お
よび酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン
酸(NADP)よりなる群から選ばれる少なくとも1つ
が添加されている(1)〜(7)のいずれかに記載のヘ
モグロビン含有リポソーム。 (9)洗浄赤血球を溶血後、赤血球膜成分を除去し、3
0〜60%(w/v)の濃縮ヘモグロビン溶液に、還元
型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)
および/または還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレ
オチドリン酸(NADPH)を生じる酵素反応基質を添
加して混和させ、ヘモグロビン溶液中の酵素失活が無い
緩和な条件下でリポソーム化することを特徴とする
(1)乃至(8)のいずれかに記載のヘモグロビン含有
リポソームの製法。ここで、ヘモグロビン溶液中の酵素
失活がない緩和な条件が、40℃以下で、50〜180
0kg/cm2の圧で細隙から1〜数回吐出させることである
ヘモグロビン含有リポソームの製法が好ましい。
【0009】本発明はヘモグロビン含有リポソームの酸
化変性に対する問題を解決するために、還元型ニコチン
アミドアデニンジヌクレオチド(NADH)および/ま
たは還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン
酸(NADPH)を生じる酵素反応基質を添加し、経時
的に生成するヘモグロビン酸化物を還元することによ
り、ヘモグロビンの経時酸化に伴う機能低下を防止する
ものである。
【0010】本発明に用いるNADHおよび/またはN
ADPHを生じる酵素反応基質は特に制限されず、生体
内に存在する酵素の単数または複数の組み合わせによる
酵素反応の結果、NADHまたはNADPHを生じるも
のであればよいが、有機酸またはその誘導体が好まし
く、特に単数の酵素反応によってNADHが生じること
からリンゴ酸が好ましいが、オキサロ酢酸、クエン酸、
イソクエン酸、α−ケトグルタン酸、スクシニルCo
A、コハク酸、フマル酸、アルパラギン酸、ピルビン
酸、ホスホエノールピルビン酸、エタノールピルビン酸
リン酸、アセチルCoA、グルタミン酸等のクエン酸回
路(トリカルボン酸回路〔TCAサイクル〕、クレブス
回路ともいう)によってリンゴ酸が生じる有機酸も使用
できる。また、他にも嫌気的解糖系糖代謝中間体であ
る、グルコース、グルコース−6−リン酸、グルコース
−1,6−ジリン酸、フルクトース−6−リン酸、UD
P−グルコース、L−グロネート、キシリトール、ソル
ビトール、α−グリセロール−リン酸、グリセラルデハ
イド−3−リン酸、ラクテートなども使用でき、つまり
生体内に存在する酵素の単数または複数を組み合わせた
酵素反応の際にNADH、またはNADPHを生じるも
のであれば使用できる。また、場合によっては複数の基
質を組み合わせて使用してもよい。本発明において、N
ADHまたはNADPHを生じる酵素反応基質の量(重
量モル比)はヘモグロビンを1モルとした場合、0.1
〜25モル、好ましくは1〜20モル、より好ましくは
4〜12モルである。0.1より少ないとヘモグロビン
のメト化防止効果が少なく、また25より多いと溶液の
流動性の問題でリポソーム化効率が低下するのであまり
好ましくはない。
【0011】本発明に用いるリポソームの脂質としては
リポソームが形成できるものであれば特に制限はなく、
天然のもの及び合成のものが利用できる。その例として
は、レシチン(=ホスファチジルコリン)、ホスファチ
ジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチ
ジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチ
ジルグリセロール、スフィンゴミエリン、カルジオリビ
ン、等、およびこれらを常法に従って水素添加したもの
があげられ、これらを組み合わせて用いることもでき
る。本発明に使用するヘモグロビンは、赤血球を常法に
よって溶血し膜除去した分画分子量1万の膜を使用した
限外濾過により30%(w/v)以上に濃縮したものが
使用される。ヘモグロビンは水溶液の形態で取り込ま
れ、その濃度は30〜60%(w/v)、特には40〜
50%(w/v)が好ましい。この濃度とするのは、末
梢組織への酸素運搬量は、リポソーム内のヘモグロビン
量に依存して増大するためリポソーム化が可能な範囲内
で最も高濃度であることが好ましいからである。本発明
において、上記のヘモグロビン溶液内にさらに有機リン
酸化合物が含まれていてもよい。これは、イノシトール
ヘキサホスフェート、テトラポリリン酸、ピリドキサル
−5’−リン酸、ATPなどのリン化合物を末梢におけ
る酸素放出量を調整するため、好ましくはヘモグロビン
1モルに対し、0.5モル〜1.5モル加えても良い。
この量は使用するリン化合物により、若干、効果に差が
ある。本発明において使用する赤血球は、本発明のヘモ
グロビン含有リポソームをヒトに使用する場合、ヒト由
来のものであれば特に問題はなく、また、新鮮なもの程
良いが、採血後4℃以下で50日以上保存したものでも
充分に使用できる。本発明において、上述の酵素反応基
質のみならず、これらに加えて還元型NADH、酸化型
NAD、還元型NADPH、酸化型NADP等の酵素を
ヘモグロビン溶液に加えてもよい。その量はヘモグロビ
ン1モルに対して0.1モル〜25モルとするのが好ま
しい。
【0012】本発明において、リポソームにはその酸化
を防止するためにトコフェロール同族体すなわちビタミ
ンEを添加してもよい。トコフェロールには、α,β,
γ,δの4個の異性体が存在するが、本発明においては
いずれの異性体も使用することができる。また、酢酸ト
コフェロール・トコフェロールリン酸等の公知のトコフ
ェロール誘導体も同様の目的で使用できる。トコフェロ
ールの添加量はリポソーム膜の総脂質に対して0.5〜
4.5モル%、好ましくは1.0〜2.0モル%であ
る。本発明においては、リポソーム膜の構成成分として
所望によりステロール類や脂肪酸等の電荷付与物質を添
加して、膜構造の強化や体内消失時間の調節を図ること
ができる。
【0013】本発明のヘモグロビン含有リポソームは、
洗浄赤血球を溶血後、赤血球膜成分を除去し、30〜6
0%(w/v)の濃縮ヘモグロビン溶液に、リンゴ酸を
添加して混和させ、ヘモグロビン溶液中の酵素失活が無
い緩和な条件下で、リポソーム化することによって得る
ことができる。なお、前記酵素失活が無い緩和な条件下
とは、高圧吐出処理が好ましく、50〜1800kg/c
m2、好ましくは80〜1200kg/cm2の圧で細隙から1
回〜数回吐出させることである。また、処理温度は40
℃以下に保持する。具体的な例としては、高圧吐出型乳
化機に、マイクロフルイダイザー 110Y[Microflui
dizer 110Y] (マイクロフルイダイザー社[Microfluidi
cs Co.] )を用いる場合には480〜1450kg/cm2
パール細胞破砕器(パール社[Parr Co.])を用いる場合
には80〜200kg/cm2であり、いずれも40℃以下、
好ましくは4℃〜氷冷下で実施する。
【0014】天然赤血球中のヘモグロビンは、経時酸化
によりメトヘモグロビンとなるが、図1に示す赤血球酵
素の作用により元のヘモグロビンへ還元され、可逆的に
ヘモグロビン−メトヘモグロビンの反応が起こってい
る。しかしながら、本発明のようにリポソームに含有さ
せるために天然赤血球外に取り出されたヘモグロビンは
このようなメトヘモグロビン還元機構が働かなくなり、
一度メト化したヘモグロビンは再びヘモグロビンに戻る
ことができず、酸素運搬機能を失ってしまう。これは、
リポソーム化の段階でヘモグロビンにかかる物理的エネ
ルギーあるいは熱によって、酵素が失活してしまうのが
原因と考えられる。本発明者は、リポソーム化処理条件
を検討し、ヘモグロビン溶液中の酵素活性が維持できる
50〜1600kg/cm2、好ましくは80〜1200kg/c
m2の圧で細隙から1回〜数回吐出させるなどの穏やかな
製造条件を設定してヘモグロビン含有リポソームを製造
した。しかしながら、これらのヘモグロビン含有リポソ
ームでもなお、体内投与後の不可逆的なヘモグロビン経
時酸化は進行した。なお、このような酵素失活がない緩
和な条件下でリポソーム化すると、ヘモグロビン中のN
ADH依存型メトヘモグロビン還元酵素の活性残存率
が、処理前の70%以上、好ましくは90%以上残存す
る。また、リンゴ酸脱水素酵素活性の残存率は、処理前
の50%以上、好ましくは70%以上である。
【0015】しかし本発明者らはさらに鋭意研究を行っ
た結果、上記のような穏やかな条件で製造するとき、N
ADHまたはNADPHを生じる酵素反応基質をヘモグ
ロビン溶液中に共存させることによって、体内投与後の
ヘモグロビンの経時酸化を顕著に抑制できることを発見
した。そのメカニズムは次のように考えられ、リンゴ酸
を例にして説明する。つまり、上記のような穏やかな条
件でリポソーム化を行えば、ヘモグロビン溶液中の酵素
は失活することはないが、天然赤血球から膜成分を除去
し、ヘモグロビンを取り出す過程、または精製、濃縮の
過程で分子量1万以下の酵素基質や補酵素類等の酵素反
応に必要な物質も失われてしまい、結果的にメトヘモグ
ロビン還元酵素反応が消失してしまう。そこで、リンゴ
酸を添加すると、リンゴ酸がメトヘモグロビン還元反応
に必要なNADH再生系の基質となり、つまりリンゴ酸
デヒドロゲナーゼによりオキサロ酢酸になると同時にN
ADHを再生し図2に示したような天然赤血球と同じメ
トヘモグロビン還元反応がおこり、ヘモグロビンの経時
酸化の抑制に寄与しているものと推定される。
【0016】成熟(天然)赤血球は核もミトコンドリ
ア、リボソームなどの細胞内小器官も持たず、蛋白質や
脂質合成能はない。また、ミトコンドリアを有していな
いためTCAサイクル(クエン酸サイクル)を持たず、
その形態と機能を維持するために必要なエネルギーであ
るATP(adenosine triphosphate)産生は主としてエ
ムデン−マイヤーホフ経路(EMP、嫌気的解糖系)に
依存している。生理的条件下で、グルコースはヘキソキ
ナーゼによりリン酸化を受け、グルコース−6−リン酸
となり正常状態では90%がエムデン−マイヤーホフ経
路により代謝される。残りの5〜10%がヘキソース−
1−リン酸回路(HMS or HMP)により代謝されている。し
かし、後に実施例で詳述するように、本発明者等の調製
した赤血球膜成分を除去したヘモグロビン溶液には、本
来含まれていないとされているTCAサイクルの一部の
酵素が活性を保持した状態で残存していることを確認し
た。本発明者等は、従来、赤血球膜成分を除去したヘモ
グロビン溶液中の不純物としてとらえられていた天然赤
血球由来残存酵素活性を有効に利用し、必要な基質なら
びに補酵素類を補充することにより天然赤血球類似の酵
素的メトヘモグロビン還元能を付与したリポソーム型人
工酸素運搬体である本発明のヘモグロビン含有リポソー
ムを調製した。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例に基づいて具体的に説
明する。なお、特に明示しない場合、調製の各工程は冷
蔵状態(4℃)に維持し、無菌的環境下で実施した。ま
た、試薬・器具類は減菌処理を行い、重金属イオン・無
機イオン等の残留の無い無菌超純水(15meg Ω℃・cm
at 25℃以上/〔パイロジェンフリー〕)を調製に使
用した。
【0018】(実施例1)赤血球膜除去ヘモグロビン溶液(SFH)の調製 濃厚赤血球製剤15L.(200ml×75バック)
を、連続遠心機を用いて生理食塩水で洗浄し、混在する
血小板・白血球などの血漿成分を除去した粗洗浄赤血球
を得た。さらに、孔径0.45μmのフィルターを用い
て生理食塩水洗浄を行い、この洗浄赤血球5L.に対し
て低張リン酸緩衝液(10mM,pH=7.4)を10
L.添加して溶血させた。孔径0.45μmの血漿分離
器および孔径0.1μmのフィルターを用いて赤血球膜
成分ならびに無菌濾過を行い、ヘモグロビン濃度8%
(w/v)の赤血球膜除去ヘモグロビン溶液(SFH溶
液)、約12L.を回収した。得られた溶液はホローフ
ァイバー型ダイアライザー(テルモ(株),CL−C8
N)を用いて10mM 2−〔4−(2−ヒドロキシエ
チル−1−ピペラジニル)〕エタンスルホン酸(HEP
ES)緩衝液(pH=7.4)に対して透析を行った
後、限界濾過により濃縮し、ヘモグロビン濃度50%
(w/v)の濃縮SFH溶液、約1.8L.を調製し
た。濃縮SFH溶液への試薬添加 上述の工程を経て調製した濃縮SFH溶液100ml中
のヘモグロビンモル数に対するモル比で4倍量相当のL
−リンゴ酸ナトリウム(L(-)malic acid, monosodium s
alt/シグマ社[SIGMA Chem. Co.])およびヘモグロビンに
対するモル比で0.8相当のフィチン酸ナトリウム(in
ositol hexaphosphoric acid dodecasodium salt/ シグ
マ社[SIGMA Chem. Co.])を4mlのHEPES緩衝液
(60mM,pH7.4)に溶解し、この100mlの
濃縮SFH溶液中で均一に成るように添加・混合した。
【0019】濃縮SFH溶液のリポソーム化 水素添加率90%以上の精製飽和ホスファチジルコリン
(HSPC)、コレステロール(Chol)、ミリスチ
ン酸(MA)、トコフェロール(TOC)の均一混合粉
末(日本精化:プレソーム [HSPC:Chol:MA:TOC=7:7:2:
0.28(モル比)])18gに同量の無菌精製水を加えて、6
0〜70℃に加温して膨潤させた。この原料脂質に、上
記実施例1で調製した濃縮SFH溶液100mlを加
え攪拌混合(30秒間)した。この脂質−濃縮SFH混
合液をマイクロフルイダイザー (Microfluidics co.,Mi
crofluidizer 110Y)を用いて、氷冷下、12,000p
si(約844kg/cm2)の圧力条件下でリポソーム化を
行った。ヘモグロビン含有リポソームの精製 実施例1の処理後に得られた生成物は、等量の生理食
塩水ならびにデキストラン40注射液を用いて希釈・懸
濁液とした後、遠心分離(10,000rpm(13,000g)×
30min. at 4℃)を行った。効率良くヘモグロビンを
含有しているリポソームは、この遠心処理により沈澱物
として回収された。リポソーム化されずに残存する遊離
ヘモグロビンおよび原料脂質成分を含む上澄はテカンテ
ーションもしくは吸引により除去した。以上の洗浄操作
を上澄中の遊離ヘモグロビンが肉眼的に認められなくな
るまで繰り返し行った後、孔径0.45μmのテュラポ
ア(ポリビニリデンジフロライド)メンブレンフィルタ
ー(ミリポア社 [Millipore Ltd.,Minitan system]血漿
分離器)を用いて濾過し、懸濁液中に混在する粗大粒子
を除去した。最終的にホローファイバー型ダイアライザ
ー(テルモ(株)、CL−S8N)で濃縮後、ヘモグロ
ビン濃度が10%(w/v)と成るように生理食塩水で
調整した精製ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液約80
mlを回収した。
【0020】(実施例2)濃縮SFH溶液の調製 実施例1のに準じて濃縮SFH溶液の調整を行った。濃縮SFH溶液への試薬添加 上述の工程を経て調整した濃縮SFH溶液100ml中
のヘモグロビンモル数に対するモル比で2倍量相当のL
−リンゴ酸ナトリウム(L(-)malic acid, monosodium s
alt/シグマ社[SIGMA Chem. Co.])、ヘモグロビンモル数
に対するモル比で0.8相当のフィチン酸ナトリウム[i
nositol hexaphosphoric acid dodecasodium salt/SIGM
A Chem. Co.]ならびに0.2相当の酸化型β−NAD+
(BMY., Grade II/98%)を8mlのHEPES緩衝液(5
0mM.,pH7.4)に溶解し、100mlの濃縮S
FH溶液中に均一に成るように添加・混合した。濃縮SFH溶液のリポソーム化 水素添加率90%以上の精製飽和ホスファチジルコリン
(HSPC)、コレステロール(Chol)、ミリスチ
ン酸(MA)、トコフェロール(TOC)の均一混合粉
末〔日本精化:プレソーム [HSPC:Chol:MA:TOC=7:7:2:
0.28(モル比)])18gに同量の無菌精製水を加えて、6
0〜70℃に加温して膨潤させた。この原料脂質に、実
施例2で調製した濃縮SFH溶液100mlを加え、
攪拌混合(30秒間)した。この脂質−濃縮SFH混合
液をマイクロフルイダイザー (Microfluidics co.,Micr
ofluidizer 110Y)を用いて、氷冷下、12,000ps
i(約844kg/cm2)の圧力条件下でリポソーム化を行
った。
【0021】ヘモグロビン含有リポソームの精製 上記実施例2の処理後に得られた溶液は、等量の生理
食塩水ならびにデキストラン40注射液を用いて希釈・
懸濁液とした後、遠心分離(10,000rpm(13,000g)
×30min. at 4℃)を行った。効率良くヘモグロビン
を含有しているリポソームは、この遠心処理により沈澱
物として回収された。リポソーム化されずに残存する遊
離ヘモグロビンおよび原料脂質成分を含む上澄はデカン
テーションもしくは吸引により除去した。以上の洗浄操
作を上澄中の遊離ヘモグロビンが肉眼的に認められなく
なるまで繰り返し行った後、0.45μmのテュラポア
(ポリビニリデンジフロライド)メンブレンフィルター
(Millipore Ltd., Minitan system)を用いて濾過し、
懸濁液中に混在する粗大粒子を除去した。最終的にホロ
ーファイバー型ダイアライザー(テルモ(株)、CL−
S8N)で濃縮後、ヘモグロビン濃度が10%(w/
v)と成るように生理食塩水で調整した精製ヘモグロビ
ン含有リポソーム懸濁液約80mlを回収した。
【0022】(実施例3)濃縮SFH溶液の調製 実施例1のに準じてSFH溶液の調製を行った。濃縮SFH溶液への試薬添加 上述の工程を経て調製したヘモグロビン溶液100ml
に対するモル比で4倍量相当のL−リンゴ酸ナトリウム
(L(-)malic acid, monosodium salt/シグマ社[SIGMA C
hem. Co.])、ヘモグロビンモル数に対するモル比で1.
0相当のフィチン酸ナトリウム[inositol hexaphosphor
ic acid dodecasodium salt/SIGMA Chem. Co.]ならびに
1.0相当のβ−NADPH・Na4 (協和発酵工業)
および5.0相当のグルコース−6−リン酸ナトリウム
(Sigma Chem. Co.)を10mlのHEPES緩衝液(5
0mM.,pH7.4)に溶解し、100mlの濃縮S
FH溶液中で均一に成るように添加・混合した。濃縮SFH溶液のリポソーム化 水素添加率90%以上の精製飽和ホスファチジルコリン
(HSPC)、コレステロール(Chol)、ミリスチ
ン酸(MA)、トコフェロール(TOC)の均一混合粉
末〔日本精化:プレソーム [HSPC:Chol:MA:TOC=7:7:2:
0.28(モル比)])18gに同量の無菌精製水を加えて、6
0〜70℃に加温して膨潤させた。この原料脂質に、上
記実施例3で調製した濃縮SFH溶液100ml.を
加え攪拌混合(30秒間)した。この脂質−濃縮SFH
混合液をパール細胞破砕器(ParrCo.)に入れ、ヘリウム
ガスで100kg/cm2に加圧して30分間放置後、この圧
力を維持した状態で、氷冷下で、パール細胞破砕器の細
隙ノズルから吐出させてリポソーム化を行った。
【0023】ヘモグロビン含有リポソームの精製 実施例3の処理後に得られた溶液は、等量の生理食塩
水ならびにデキストラン40注射液を用いて希釈・懸濁
液とした後、遠心分離(10,000rpm(13,000g)×3
0min. at 4℃)を行った。効率良くヘモグロビンを含
有しているリポソームは、この遠心処理により沈澱物と
して回収された。リポソーム化されずに残存する遊離ヘ
モグロビンおよび原料脂質成分を含む上澄はデカンテー
ションもしくは吸引により除去した。以上の洗浄操作を
上澄中の遊離ヘモグロビンが肉眼的に認められなくなる
まで繰り返し行った後、0.45μmのテュラポア(ポ
リビニリデンジフロライド)メンブレンフィルター(Mi
llipore Ltd., Minitan system)を用いて濾過し、懸濁
液中に混在する粗大粒子を除去した。最終的にホローフ
ァイバー型ダイアライザー(テルモ(株)、CL−S8
N)で濃縮後、ヘモグロビン濃度が10%(w/v)と
成るように生理食塩水で調整した精製ヘモグロビン含有
リポソーム懸濁液約80mlを回収した。
【0024】(比較例1)L−リンゴ酸ナトリウム未添
加の脂質−濃縮SFH混合液をワーリングブレンダー処
理によりリポソーム化した以外は、実施例1と同様の手
法でヘモグロビン含有リポソームを調製した。以下にワ
ーリングブレンダー処理条件を記載する。ワーリングブレンダー条件 (Waring Co., Blender 7010S) SFH処理量:200ml 脂質量:36g(同量の無菌精製水を用いて膨潤) 回転数:15,000rpm 処理時間:30分間 (1) 3分間処理、(2)10分間冷却(4℃)を繰り返す
【0025】(実施例4および比較例2)メトヘモグロビン含有濃縮SFH溶液の調製 実施例1に準じて調製した濃縮SFH溶液を37℃で4
日間加温し、メトヘモグロビン含有率約35%の濃縮S
FH溶液を調製した。このSFHにメトヘモグロビン含
有率2%以下の新鮮な濃縮SFH溶液を混合し、メトヘ
モグロビン含有(メトヘモグロビン含有率17%)濃縮
SFH溶液を調製した。メトヘモグロビン含有濃縮SFH溶液への試薬添加 試料として、上述の工程を経て調製したメトヘモグロビ
ン含有濃縮SFH溶液100mlに対して、ヘモグロビ
ン(Hb)の重量モル比で4倍量相当のL−リンゴ酸ナ
トリウム[L(-)malic acid, monosodium salt/SIGMA Che
m. Co.] 、0.8(Hb重量モル比)相当のフィチン酸
ナトリウム[inositol hexaphosphoric acid dodecasodi
um salt/SIGMA Chem. Co.]および各0.2(Hb重量モ
ル比)相当の酸化型β−NAD+ 〔β-nicotinamide ad
enine dinucleotide, oxidized (grade II, 98%)/BMY]
ならびに還元型β−NADH〔β-nicotinamide adenin
edinucleotide disodium salt, reduced(grade II, 98
%)/BMY] を8mlのHEPES緩衝液(50mM,pH
7.4)に溶解し、100mlのメトヘモグロビン含有
SFH溶液中に均一になるように添加・混合した。一
方、コントロール(比較例2)としてヘモグロビンに対
する重量モル比で0.8相当のフィチン酸ナトリウムの
みを添加したメトヘモグロビン含有濃縮SFH溶液を調
製した。濃縮SFH溶液のリポソーム化 実施例1と同様の条件下でリポソーム化した。メトヘモグロビン含有リポソームの精製 実施例1に記載のヘモグロビン含有リポソームの精製方
法と同様に行った。
【0026】(試験1)リポソーム調製後のヘモグロビン酸化率 実施例4および比較例2で調製した調製直後のヘモグロ
ビンの酸化率を後述する多波長分光光度法で測定し、結
果を表1に示した。表1の結果から、リンゴ酸・NAD
+ ・NADHをリポソーム調製前に加えてメトヘモグロ
ビン還元機構を付与したヘモグロビン含有リポソーム
は、調製過程でヘモグロビン酸化物の濃度を顕著に減少
させたことがわかる。
【0027】
【表1】
【0028】(試験2)ヘモグロビン経時酸化の測定(in vivo) ヘモグロビン含量が5%(w/v)となるように調整し
て上記で得られたヘモグロビン含有リポソーム懸濁液1
mlを、ICR系雄性マウス(5週令)の尾静脈から投
与し、24時間経過後、腹大静脈から全血を回収し、下
記の方法で経時酸化率を算出した。ヘモグロビン含有リ
ポソームは、浸透圧差に対して強く、この特徴を利用し
て天然赤血球と分離した。すなわち、ヘパリン添加全血
に8〜10倍容の超純水を添加・攪拌し、マウス天然赤
血球を溶血後、18,000rpmで30分間(4℃)高速遠
心を行いヘモグロビン含有リポソームを沈澱物として回
収した。この操作を3回繰り返し、完全に血液成分を洗
浄除去した。得られた試料に10w/v(%)・Triton
X100-HEPES 緩衝液(0.5M,pH7.4)2.0m
lを加えて約1分間激しく攪拌し、さらにフロン(フレ
オンガス溶液)2mlを添加し約1分間攪拌した。この
溶液を3,000 rpmで15分間遠心処理後、上澄約1.
8mlにHEPES緩衝液(0.5M,pH7.4)を
1ml加えて調製した試薬の可視領域(460nm〜7
00nm)における吸収スペクトルを測定し、経時酸化
率を算出した。結果を表2および図3に示す。
【0029】
【表2】
【0030】オキシヘモグロビン、メトヘモグロビン、
ヘミクロームの各濃度は、ヘモグロビンの吸収曲線で事
前に得られた実測値をもとに多波長分光光度法(700
nm,630nm,577nm,560nm)により算
出した(下記に示す)。
【0031】OxyHb(μM)=29.8 ×ΔAbs(577nm)-9.8×
ΔAbs(630nm)-22.2 ×ΔAbs(560nm) metHb(μM)=7×ΔAbs(577nm)+76.8 ×ΔAbs(630nm)-1
3.8 ×Abs(560nm) hemichrome(μM)=-33.2×ΔAbs(577nm)-36 ×ΔAbs(630
nm)+58.2 ×ΔAbs(560nm) ただし、ΔAbs(577nm)=Abs(577nm)-Abs(700nm) ΔAbs(630nm)=Abs(630nm)-Abs(700nm) ΔAbs(560nm)=Abs(560nm)-Abs(700nm)
【0032】試験2の結果が示す通り、本発明の実施例
1、実施例2、実施例3で得られたヘモグロビン含有リ
ポソームは、比較例1のリポソームと比べ、ヘモグロビ
ン酸化物の濃度を顕著に減少させ、ヘモグロビンの経時
酸化を著しく抑制した。
【0033】(試験3)実施例1のSFH溶液のリポ
ソーム化において、脂質−濃縮SFH混合液をマイクロ
フルイダイザーでリポソーム化する前と後とのSFH溶
液中のNADH依存型メトヘモグロビン還元酵素活性
と、リンゴ酸脱水素酵素活性とを、以下の条件で測定し
結果を表3および4に示す。
【0034】1.NADH依存型メトヘモグロビン還元
酵素活性の測定 脂質−濃縮SFH混合溶液中のNADH依存型メトヘモ
グロビン還元酵素活性は、HEPES緩衝液(50m
M.pH7.4、37℃)で希釈した溶液を使用し、単
位ヘモグロビン当りの酵素活性値をBeutler(*)の記載し
た方法を用いて算出した。また、MF処理によって得ら
れたヘモグロビン含有リポソーム内部のNADH依存型
メトヘモグロビン還元酵素活性は、非イオン性界面活性
剤であるオクチルグルコピラノシドでリポソーム膜を可
溶化し、SFH溶液と同様に測定した。 (*) E.Beutler,NADH methemoglobin reductase(NADH-fe
rricyanide reductase)in:E.Beutler(ed.),Red Cell Me
tabolism/A Manual of Biochemical Methods,3rd. ed.,
Grune & Stratton, Inc., Orlando 1984,pp.81-83.
【0035】
【0036】2.リンゴ酸脱水素酵素活性の測定 脂質−濃縮SFH混合溶液中のリンゴ酸脱水素酵素活性
は、HEPES緩衝液(50mM.pH7.4、37
℃)で希釈した溶液を使用して単位ヘモグロビン当りの
酵素活性値をBergmeyer(*)の記載した方法を用いて算出
した。また、MF処理によって得られたヘモグロビン含
有リポソーム内のリンゴ酸脱水素酵素活性は非イオン性
界面活性剤であるオクチルグルコピラノシドでリポソー
ム膜を可溶化し、SFH溶液と同様に測定した。 (*)H.U.Bergmeyer,A.F.Smith.E.Bermth, Malate Dehydr
ogenase,in: H.U.Bergmeyer(ed.),Methods of Enzymati
c Analysis,Vol.3,3rd.English ed., Verlag Chemie, W
einheim, 1986,pp163 〜175.
【0037】
【0038】なお、比較例1と同様として、ただしWarr
ing Blender (ワーリング ブレンダー)処理を冷却を
行なわずに行なったNADH−メトヘモグロビン還元酵
素の残存率を試験3の条件で測定したところ、17.9
%であった。表3および表4で示すように、リポソーム
をMicrofluidizer(マイクロフルイダイザー)で製造し
たヘモグロビン含有リポソームのNADH−メトヘモグ
ロビン還元酵素活性は、99.6%が残存していた。ま
た、TCAサイクル構成酵素であり、ヘモグロビン含有
リポソーム中の還元型補酵素NADの再生系として使用
されるリンゴ酸脱水素酵素についても81.4%の残存
率を示し、マイクロフルイダイザーによるリポソーム化
の有用性が認められた。
【0039】
【発明の効果】上述した通り、本発明のヘモグロビン含
有リポソームはヘモグロビンの経時酸化を著しく抑制で
きる。一般的にヘモグロビン含有リポソームは、それの
製造過程、製品の保存中、特に生体内投与後の循環血流
中でメト型ヘモグロビンに酸化され、酸素運搬能が低減
ないし喪失するが、本発明のヘモグロビン含有リポソー
ムはヘモグロビンが酸化から保護されているために優れ
た酸素運搬能を有する。そのため、人工赤血球として優
れた性質を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 天然赤血球内におけるヘモグロビンの酸化・
還元サイクルを示す。
【図2】 本発明のヘモグロビン含有リポソームにおけ
るヘモグロビンの酸化・還元サイクルを示す。
【図3】 本発明と比較例のヘモグロビン含有リポソー
ムのメト型ヘモグロビン還元効果を示す。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】脂質からなるリポソーム内に酵素活性を有
    するヘモグロビン溶液を取り込んでなるヘモグロビン含
    有リポソームにおいて、前記ヘモグロビン溶液内に、還
    元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
    H)および/または還元型ニコチンアミドアデニンジヌ
    クレオチドリン酸(NADPH)を生じる酵素反応基質
    が添加されていることを特徴とするヘモグロビン含有リ
    ポソーム。
JP04553994A 1993-03-18 1994-03-16 ヘモグロビン含有リポソーム Expired - Lifetime JP3696898B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP04553994A JP3696898B2 (ja) 1993-03-18 1994-03-16 ヘモグロビン含有リポソーム

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP5906793 1993-03-18
JP5-59067 1993-03-18
JP04553994A JP3696898B2 (ja) 1993-03-18 1994-03-16 ヘモグロビン含有リポソーム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH06321802A true JPH06321802A (ja) 1994-11-22
JP3696898B2 JP3696898B2 (ja) 2005-09-21

Family

ID=26385544

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP04553994A Expired - Lifetime JP3696898B2 (ja) 1993-03-18 1994-03-16 ヘモグロビン含有リポソーム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3696898B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007271388A (ja) * 2006-03-30 2007-10-18 Hidetoshi Tsuchida 血清または血漿の分離方法および血液分離管
JP2008120760A (ja) * 2006-11-15 2008-05-29 Terumo Corp ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液及びその製法
EP2058398A1 (en) 2007-11-09 2009-05-13 Nipro Corporation Production of recombinant human hemoglobin using pichia yeast
WO2017150637A1 (ja) * 2016-03-02 2017-09-08 公立大学法人奈良県立医科大学 ヘモグロビンのメト化抑制能を有する人工赤血球

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007271388A (ja) * 2006-03-30 2007-10-18 Hidetoshi Tsuchida 血清または血漿の分離方法および血液分離管
JP2008120760A (ja) * 2006-11-15 2008-05-29 Terumo Corp ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液及びその製法
EP2058398A1 (en) 2007-11-09 2009-05-13 Nipro Corporation Production of recombinant human hemoglobin using pichia yeast
WO2017150637A1 (ja) * 2016-03-02 2017-09-08 公立大学法人奈良県立医科大学 ヘモグロビンのメト化抑制能を有する人工赤血球
JPWO2017150637A1 (ja) * 2016-03-02 2019-05-16 公立大学法人奈良県立医科大学 ヘモグロビンのメト化抑制能を有する人工赤血球

Also Published As

Publication number Publication date
JP3696898B2 (ja) 2005-09-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6914127B2 (en) Acellular red blood cell substitute
EP0271542B1 (en) An acellular red blood cell substitute
CA1197462A (en) Functional oxygen transport system
Cavarocchi et al. Superoxide generation during cardiopulmonary bypass: is there a role for vitamin E?
US5464814A (en) Acellular red blood cell substitute
Walls et al. Aging of human erythrocytes: Differential sensitivity of young and old erythrocytes to hemolysis induced by peroxide in the presence of thyroxine
US5374624A (en) Fluorocarbon blood substitute
US5688526A (en) Hemoglobin-encapsulating liposome and method for making the same
Ogata et al. Development of neo red cells (NRC) with the enyzmatic reduction system of methemoglobin
EP1297843B1 (en) Method of photoreduction of hemoglobin vesicles
Takahashi Characterization of neo red cells (NRCs), their function and safety in vivo tests
EP0687463B1 (en) Hemoglobin-encapsulated liposome
JPH06321802A (ja) ヘモグロビン含有リポソーム
JPH0459735A (ja) ヘモグロビン含有リポソーム
Ogata Characteristics and function of human hemoglobin vesicles as an oxygen carrier
JP3925665B2 (ja) ヘモグロビン含有リポソーム
JP3754463B2 (ja) ヘモグロビン含有リポソームの製法
US4612370A (en) Lipid-saccharide reaction products
JPH02178233A (ja) ヘモグロビン含有リポソームおよびその製法
JP3085963B2 (ja) 人工血液
EP0664953B1 (en) Lung graft preservative composition and a method for viable preservation of lung grafts
JP2002161047A (ja) ヘモグロビン溶液およびヘモグロビン含有リポソーム
Ogata Evaluation of human hemoglobin vesicle as an oxygen carrier: recovery from hemorrhagic shock in rabbits
JP2956998B2 (ja) 移植器官潅流保存液および移植器官潅流保存法
Sehgal et al. Control of methemoglobin formation in stroma-free hemoglobin solutions

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050329

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050530

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20050621

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20050701

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090708

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090708

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100708

Year of fee payment: 5