JP3085963B2 - 人工血液 - Google Patents

人工血液

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JP3085963B2
JP3085963B2 JP02107946A JP10794690A JP3085963B2 JP 3085963 B2 JP3085963 B2 JP 3085963B2 JP 02107946 A JP02107946 A JP 02107946A JP 10794690 A JP10794690 A JP 10794690A JP 3085963 B2 JP3085963 B2 JP 3085963B2
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    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • A61K9/1271Non-conventional liposomes, e.g. PEGylated liposomes, liposomes coated with polymers

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、医療分野において、大量出血患者の救命治
療に使用される、人工的に調整された酸素運搬能を有す
る救命用輸液、すなわち人工血液に関する。
[従来の技術] 生体の血管内における血液量の維持には、血漿コロイ
ドである血漿蛋白質が重要な役割を果たしていることが
知られている。このため、従来より、生体の血液とほぼ
等しい膠質浸透圧を有する血漿増量剤を補液することに
より、患者の出血性ショックを回復させる手法がとられ
てきた。しかしながら、循環血液量の30%以上が出血し
た場合には、抹消組織への酸素供給が不十分となるた
め、血漿増量剤の投与のみでは不十分であり、さらに酸
素運搬体を投与する必要が生ずる。
このような酸素運搬体としては、従来、天然赤血球を
含有する天然血液あるいは赤血球濃厚液が用いられてき
た。しかしながら、これらを使用する場合には、抗原抗
体反応による凝血を回避するため、供血者と受血者の血
液型を一致させなければならず、そのために各種血液型
の血液を保存する必要があり、過剰のストックを必要と
し、またその交差適性試験が繁雑であるために、緊急時
に対応することが困難である場合が生じる。しかも、こ
のような天然血液あるいは赤血球濃厚液は、その有効保
存期間が3週間(4℃)と短い。また凍結保存によって
長期保存可能とした凍結血液も使用されているが、コス
ト高であったり、また長期保存によって、使用の際に、
浸透圧ショックに対して、赤血球が脆弱になっているた
めに溶血しやすいという問題がある。さらに、これらの
天然血液や赤血球濃厚液を投与する場合には、肝炎やエ
イズ等の感染症の発生も懸念される。
このような問題を解決するため、フルオロカーボン乳
化製剤からなる人工酸素運搬体の研究が行われている
(特公昭60−33367号公報)が、この人工酸素運搬体
は、その酸素運搬能をフルオロカーボンへの酸素の物理
的溶解現象のみに依存しているため、酸素運搬能力が不
十分であり、使用は酸素の高い分圧を施すことができる
ような状況に限られている。また、フルオロカーボン
が、生体内における自然免疫系を妨害する虞れがあるこ
と、さらには、生体内においてフルオロカーボンが十分
に代謝されないため、循環血流中から消失した後も長期
に渡って生体内に残存する問題も指摘されている。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリ
コールあるいはエチレングリコール−プロピレングリコ
ール共重合体をヘモグロビンと結合させて修飾し、循環
血流中におけるヘモグロビンの滞留時間を延長させた代
用血液も開示されている(特公平2−6337号公報)。し
かしながら、この代用血液においても、ヘモグロビンの
滞留時間は十分ではなく、しかも、修飾ヘモグロビンの
濃度を上げると、その水溶液の粘性が極端に上昇し、膠
質浸透圧が著しく過剰となるために、修飾ヘモグロビン
の濃度はせいぜい6%が上限であり、この程度の濃度で
は、酸素運搬能が十分であるとはいえなかった。
これらの欠点を克服するものとして、脂質2分子膜か
らなるリポソームの内層にヘモグロビンを内包したヘモ
グロビン内包リポソームの検討が行われている(特開昭
52−151718、特開昭58−183625、特開昭61−37735号公
報)が、このようなヘモグロビン内包リポソームの懸濁
液は、膠質浸透圧が極端に低いため、これらを生体の血
管に投与しても循環血液量の維持あるいは増量効果はほ
とんど期待できなかった。
上記の欠点を克服するものとして、ヘモグロビン内包
リポソームを血漿増量剤の水溶液中に懸濁することによ
り、酸素運搬能と血漿増量効果の両方を兼ね備えた人工
血液が開示されている(米国特許4,133,874号公報)
が、この人工血液においては、ヘモグロビン内包リポソ
ームが血漿増量剤の水溶液中で凝集する傾向があるた
め、懸濁液の粘度が高くなり、静注投与がしにくいもの
であった。さらには、リポソームの凝集が顕著な場合に
は、生体内に投与した際にリポソームの凝集塊が血管内
で栓塞し、生体を死に至らしめる危険性もあった。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであっ
て、酸素運搬能と血漿増量効果の両方を兼ね備え、しか
も酸素運搬能を有するヘモグロビン内包リポソームが血
漿増量剤水溶液中において凝集せず、このため生体に静
注投与しても安全で、大量出血患者の救命に有効な人工
血液を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 上記の課題を解決するため、本発明に係る人工血液は
以下の構成を有する。
(1)一端に疎水性部を有し、かつ他端に親水性高分子
鎖部を有するポリエチレングリコール結合水素添加天然
リン脂質により、前記疎水性部が脂質膜に固定され、か
つ親水性高分子鎖部が膜表面から外方向に延出するよう
修飾されたヘモグロビン内包リポソームを、ヒドロキシ
エチルデンプンまたはデキストランを主成分とする血漿
増量剤の水溶液中に懸濁させたことを特徴とする人工血
液。
(2)前記ヒドロキシエチルデンプンまたはデキストラ
ンの平均分子量が2万〜7万である(1)に記載の人工
血液。
(3)投与すべき生体が許容する膠質浸透圧に調整され
てなる(1)または(2)に記載の人工血液。
(4)前記血漿増量剤の水溶液の電解質組成が血漿と実
質的に等しいものである(1)〜(3)のいずれかに記
載の人工血液。
(5)前記血漿増量剤の水溶液の電解質組成がリンゲル
液、乳酸リンゲル液またはクレブス−リンゲル液と実質
的に等しいものである(1)〜(4)のいずれかに記載
の人工血液。
ヘモグロビン内包リポソームおよびその製造方法は、
既に、特開昭52−151758号、同58−183625号、同61−37
735号、同62−178521号、同63−209746号、同63−21123
0号、同63−275522号、同64−61426号、同64−75418
号、特開平1−180245号公報に開示されている。
本発明の人工血液においては、血漿増量剤としては、
種々公知のものが用いられえるが、天然の血漿蛋白を使
用した場合には、エイズをはじめとする各種感染症発生
の危険性や、血漿製剤の不足、あるいは経済的な問題等
が危惧される。このため、人工的な代用血漿で対応でき
る場合には、可能な限りこれを使うことが望ましく、従
って、血漿増量剤としては人工的に製造された水溶性高
分子化合物を用いることが望ましい。このような水溶性
高分子化合物としては、アカシアゴム、修飾ゼラチン、
ポリビニルピロリドン、デキストラン、ポリエチレング
リコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエ
チルデンプンなどが挙げられる。
このような血漿増量剤の分子量は、人工血液の膠質浸
透圧を投与すべき生体が許容する浸透圧に調整する必要
があるために、十分大きくなければならない。しかしな
がら、血漿増量剤の分子量が大きすぎると、人工血液の
粘度が高くなって容易に静注投与できなかったり、ある
いはヘモグロビン内包リポソームを凝集させやすいとい
う問題がある。従って、血漿増量剤の平均分子量は20,0
00〜70,000が好ましく、より好ましくは30,000〜40,000
である。
また、このような水溶液高分子化合物の水溶液中の濃
度は、上述のような分子量においては、0.3〜4.0μmol/
ml程度が好ましい。この範囲を上まわる場合には、人工
血液の粘度が高くなって容易に静注投与できなかった
り、ヘモグロビン内包リポソームを凝集させやすいとい
う問題がある。また、この範囲を下まわると、実質的に
膠質浸透圧を生体が許容する範囲に調整することが難し
くなる。
種々の水溶性高分子化合物を比較すると、同程度の平
均分子量においては、ヒドロキシエチルデンプンが最も
ヘモグロビン内包リポソームを凝集させにくく、従って
最も生体に対する安全性が高く好ましい。
本発明の人工血液を得るには、ヘモグロビン内包リポ
ソームの水懸濁液に、血漿増量剤の水溶液を添加・混合
してもよいし、あるいはヘモグロビン内包リポソームの
水懸濁液に、血漿増量剤の原料粉末を添加・溶解しても
よい。
一般に、リポソームは天然の血漿中や人工的な血漿増
量剤中では凝集する傾向がある。この凝集反応は可逆的
なものではあるが、リポソームが凝集した懸濁液は粘度
が高く、静注投与が困難であったり、凝集したリポソー
ムを生体血管に投与すれば、リポソームの凝集塊が血管
内で栓塞し、生体を死に至らしめる虞れがある。従っ
て、大量出血患者に対して使用される酸素運搬能を有す
る人工血液を構成するヘモグロビン内包リポソームは、
血漿増量剤中において凝集しないことが要求される。こ
のような血漿増量剤水溶液中のリポソームの凝集反応
は、リポソームを構成する脂質膜の表面と血漿増量剤分
子との相互作用により、リポソーム表面に血漿増量剤分
子が吸着することによって引き起こされるものと推測さ
れる。
本発明者らは、先に、一端に疎水性部を有し、他端に
親水性高分子鎖部を有する凝集防止剤(蛋白質吸着抑制
剤)をリポソーム表面に固定することにより、生体の血
管に投与した際におけるリポソームの凝集を抑制する技
術について出願した(特開平01−63507号、特願平01−2
84912号)が、さらにこの凝集防止剤が、人工的な血漿
増量剤水溶液中におけるリポソームの凝集をも効果的に
防止できることを知見し、本発明を完成させたものであ
る。
本発明に係る人工血液には、これらに開示されている
凝集防止剤はいずれも使用することができるが、その中
でも、毒性が低い点から、ポリエチレングリコール結合
水素添加天然リン脂質(以下、PEG結合天然リン脂質と
いう)を用いることが好ましい。
PEG結合リン脂質は、水素添加リン脂質の親水部にポ
リエチレングリコール(PEG)を共有結合させた構造を
有し、1分子中に1又は複数のPEG鎖を含有する。PEG鎖
のリン脂質と結合していない側の末端は、水酸基あるい
はメチル、エチル等の短鎖のエーテル、酢酸、乳酸等の
短鎖のエステルであってもよい。
ここで、天然リン脂質としては、大豆レシチン、卵黄
レシチン、ホスファチジルエタノールアミン等を用いる
ことが好ましい。
本発明の目的のためには、PEG結合天然リン脂質分子
中のPEG鎖長は、平均重合度で5〜1000モルが望まし
く、より望ましくは40〜200モルである。この範囲を下
まわる場合には、人工血液中でのヘモグロビン内包リポ
ソームの凝集防止効果が発現され難く、この範囲を上ま
わる場合にはPEG結合天然リン脂質の水溶性が高くな
り、リポソーム膜中に固定され難くなる。
PEGとリン脂質を共有結合するには、リン脂質の極性
部に反応活性を有する官能基が必要である。この官能基
としては、ホスファチジルエタノールアミンのアミノ
基、ホスファチジルグリセロールの水酸基、ホスファチ
ジルセリンのカルボキシル基等があり、ホスファチジル
エタノールアミンのアミノ基が好ましく利用される。
リン脂質の官能基とPEGを共有結合させるには、塩化
シアヌルを用いる方法、カルボジイミドを用いる方法、
酸無水物を用いる方法、グルタルアルデヒドを用いる方
法等がある。ホスファチジルエタノールアミンのアミノ
基とPEGとを結合させるには、塩化シアヌル(2,4,6−ト
リクロロ−s−トリアジン)を用いる方法が好ましい。
例えば、モノメトキシポリエチレングリコールと塩化シ
アヌルを公知の反応操作で結合させることにより、2−
O−メトキシポリエチレングリコール−4,6−ジクロロ
−s−トリアジン(活性化PEG1)または2,4−ビス(O
−メトキシポリエチレングリコール)−6−クロロ−s
−トリアジン(活性化PEG2)が得られる。これらとアミ
ノ基を脱塩酸縮合反応により結合させることで、ホスフ
ァチジルエタノールアミンの極性頭部にPEGを共有結合
させたリン脂質が得られる。ここで、活性化PEG1を用い
た場合には、一分子中のリン脂質に1本のPEG鎖を、活
性化PEG2を用いた場合には、2本のPEG鎖を含有するこ
とになる。また、モノメトキシPEGと無水コハク酸を反
応させてPEG末端にカルボキシル基を導入し、これとホ
スファチジルエタノールアミンをカルボジイミド存在下
で反応させることにより、アミド結合を介したPEG結合
天然リン脂質が得られる。
PEG結合天然リン脂質を脂質層に固定したリポソーム
を製造するには、PEG結合天然リン脂質をリポソーム形
成脂質と予め均一に混合して、得られた混合脂質を用い
て常法によりリポソームを形成させればよい。この場
合、リポソーム形成脂質とPEG結合天然リン脂質の混合
比は、主成分であるリン脂質に対して、モル比で0.1〜5
0モル%、好ましくは0.5〜20モル%、より好ましくは1
〜5モル%とされる。この範囲を下まわる場合には、人
工血液中でのリポソーム凝集防止効果が不十分となり、
この範囲を上まわる場合には、PEG結合天然リン脂質の
可溶化能により、ヘモグロビン内包リポソームが不安定
となる。また、得られた混合脂質を用いて内層にヘモグ
ロビンを含有するリポソームを形成するには、通常一般
的に行われているリポソーム化の方法に従って行うこと
ができる。またリポソーム形成脂質も、公知のものが用
いられ、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホ
スファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ホスファチ
ジルコリン等に代表されるリン脂質で卵黄、大豆その他
の天然材料に由来するもの、または有機化学的な合成手
段により得られるものを単独でまたは混合して主成分と
することができる。さらに膜安定化剤としてコレステロ
ール、コレスタノール等のステロール類や、荷電物質と
してホスファチジン酸、ジセチルホスフェート、高級脂
肪酸等を添加してもよい。
リポソーム膜中におけるPEG結合天然リン脂質の存在
状態は明らかではないが、PEG結合天然リン脂質の疎水
性部がリポソーム膜中の疎水性領域内にあって、親水性
のPEG鎖が親水性領域から膜外の水性媒体中にかけて存
在しているものと推定される。
このようにして得られたPEG結合天然リン脂質の人工
血液中の濃度は0.1〜1.0μmol/mlが好ましい。
本発明の人工血液においては、この晶質浸透圧が、生
体の正常な晶質浸透圧に比べて低すぎたり高すぎたりし
た場合には、生体の天然赤血球を破壊・溶血する虞れが
ある.天然の血液においても、晶質浸透圧は一定ではな
く、また固体差もあるが、本発明の人工血液において
は、その晶質浸透圧が、健常人に投与することにより、
生体に対して危害を及ぼさない程度、すなわち生体が許
容する晶質浸透圧に調整されていることが望ましく、具
体的には250〜350mOsm/、より望ましくは280〜310mOs
m/の範囲で選択される。
本発明の人工血液においては、この膠質浸透圧が、生
体の正常な膠質浸透圧に比べて低すぎる場合には、循環
血液量の維持あるいは増量効果が不十分となり、また高
すぎる場合には血管内への水分の流入が過剰となり、血
管外の細胞が脱水状態になる虞れがある。天然の血液に
おいても、膠質浸透圧は一定ではなく、また固体差もあ
るが、本発明の人工血液においては、その膠質浸透圧
が、健常人に投与することにより、生体に対して危害を
及ぼさない程度、すなわち生体が許容する膠質浸透圧に
調整されていることが望ましく、具体的には10〜40mmH
g、より望ましくは15〜30mmHgの範囲で選択される。
本発明の人工血液においては、その電解質組成が、生
体の血液中の正常な電解質組成と大きく異なる場合に
は、生体の正常な生理機能が阻害される虞れがあるの
で、電解質組成を生体の血漿中の正常な電解質組成と実
質的に等しく、あるいはリンゲル液、乳酸リンゲル液ま
たはクレブス−リンゲル液と実質的に等しく調整するこ
とが好ましい。
次に実施例および比較例を示して本発明をさらに具体
的に説明する。
[実施例] モノメトキシポリエチレングリコール5,000(PEG5K,
ユニオンカーバイド社製)100gを1.2−ジクロロエタン5
00mlに溶解し、さらに無水コハク酸10gとピリジン8mlを
加えて、窒素気流下にて3日間沸点還流した。濾通、エ
バポレーション後、200mlの蒸留水に溶解し、エーテル
で水相を洗浄した後、クロロホルム200mlに抽出した。
エバポレーション後、エタノール400mlに溶解し、ヘキ
サン9に再沈精製した。濾集、真空乾燥して片末端カ
ルボキシPEG5Kを85.6g得た。これを30gと、水素添加大
豆ホスファチジルエタノールアミン7g、さらにジシクロ
ヘキシルカルボジイミド1.8gを蒸留直後のクロロホルム
50mlに加熱溶解し、50℃で終夜反応させた。濾通後、エ
バポレーションしてエタノールに溶解、不溶物を濾去し
て、溶液をヘキサンに再沈した。濾集、真空乾燥して、
PEG結合水素添加大豆リン脂質(HSPE−PEG5K)34gを得
た。得られたHSPE−PEG5Kの生理食塩水溶液をマウスに
静脈投与してそのLD50を求めたところ、11g/kg体重であ
り、極めて毒性が低いことが示された。
水素添加大豆レシチン126g、コレステロール64g、ミ
リスチン酸10gをジクロロメタン400mlに溶解し、エバポ
レーションにより有機溶媒を除去した。得られた混合脂
質に50%ヘモグロビン水溶液1000mlを加え、振盪混合
後、500kg/cm2の圧力でフレンチプレス処理を10回繰り
返した。得られたフレンチプレス処理液を生理食塩水に
より10倍に希釈して遠心分離(17,000r.p.m、30分)
し、沈澱リポソームを生理食塩水により、さらに遠心洗
浄を2回繰り返した。洗浄後の沈澱リポソームをヘモグ
ロビン濃度で10%となるように生理食塩水中に懸濁させ
た(サンプル1:比較例)。得られたリポソームの平均粒
径は0.2μmであった。このリポソーム懸濁液を遠心分
離処理(17,000r.p.m、30分)し、沈澱リポソームをヘ
モグロビン濃度で10%となるように平均分子量30,000〜
40,000のヒドロキシエチルデンプンの6%生理食塩水溶
液(サリンヘス、杏林製薬(株)製)中に懸濁させた
(サンプル2:比較例)。この懸濁液を光学顕微鏡(400
倍)にて観察したところ、リポソームは完全に凝集し、
その凝集物の大きさは50μmを越えるものであった。サ
ンプル1の300mlに、5%のHSPE−PEG5Kを含む生理食塩
水12mlを加え、室温で3時間放置した後、生理食塩水に
より10倍に希釈して遠心分離(17,000r.p.m、30分)
し、沈澱リポソームをヘモグロビン濃度で10%となるよ
うに、平均分子量30,000〜40,000のヒドロキシエチルデ
ンプンの6%生理食塩水溶液(サリンヘス、杏林製薬
(株)製)中に再懸濁させた。このリポソーム懸濁液を
光学顕微鏡(400倍)により観察したところ、1μmを
越えるリポソーム凝集物は全く認められなかった(サン
プル3:実施例)。
サンプル1,2,3の晶質浸透圧および膠質浸透圧を測定
したところ表1の結果を示した。
なお、晶質浸透圧および膠質浸透圧の測定は、それぞ
れ浸透圧計Model3C2〔アドバンス社製〕、コロイド浸透
圧計4400〔米国ウェスコー社製〕を用いて行った。
<血液交換実験> さらに、サンプル1,2,3を用い、家兎の高度血液交換
実験を行った。血液交換実験は、家兎の大腿動脈より腹
大動脈に挿入したカテーテルより25ml/kg、20ml/kg脱血
し、その度に等量の人工血液を投与した。最後に同様に
20ml/kg脱血し、40ml/kgの人工血液を投与して85%以上
の血液を人工血液と交換した。その後24時間にわたり家
兎の状態観察を行った後、計画屠殺し、剖検および組織
病理学的検索を行った。
ヘモグロビン内包リポソームを生理食塩水に分散した
サンプル1投与例では、膠質浸透圧の不足が原因とみら
れる脱水、貧尿症状が交換直後より発生し、状態は経時
的に悪化し、約8時間後に死亡した。また、血漿増量剤
中におけるヘモグロビン内包リポソームの凝集を回避し
ていないサンプル2では、投与後も特に状態は悪化せず
24時間生存したが、剖検の結果、肺にヘモグロビン内包
リポソームの凝集による血管栓塞が引き起こしたと思わ
れる出血が見られ、病理学的検索からは、リポソーム凝
集塊による肺、腎臓における血管内凝固(Intravascula
r−Coagulation,I.C)像が観察された。また血漿増量剤
中でも凝集を起こさないサンプル3投与例においては、
投与後24時間にわたり状態は安定し、剖検および病理学
的検索からも著変は観察されなかった。
[発明の効果] 以上、詳述したように、本発明の人工血液は、酸素運
搬能と血漿増量効果の両方を兼ね備え、しかも、酸素運
搬能を有するヘモグロビン内包リポソームが、血漿増量
剤中において凝集しないので、粘度が低く、生体内への
投与が容易であり、また凝集物が毛細血管内で栓塞する
ことがなく安全で、大量出血患者の救命に有効である。
また、凝集防止剤としてPEG結合水素添加天然リン脂
質を使用した場合には、その静注毒性が極めて低いの
で、大量投与しても安全で、しかも天然血漿中でのヘモ
グロビン内包リポソームの凝集も防止するので、投与後
もヘモグロビン内包リポソームが血管内で凝集する虞れ
がない。
さらに、本発明の人工血液では、晶質浸透圧を生体が
許容しうる範囲に調整してなるため、溶血毒性を回避す
ることができ、また膠質浸透圧を生体が許容しうる範囲
に調整してなることにより、適度の血漿増量効果を付与
することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61K 47/34 A61K 47/34 47/36 47/36 A61P 7/08 A61P 7/08 (56)参考文献 特開 昭62−178521(JP,A) 特開 昭61−37735(JP,A) 特開 昭58−49393(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 38/16 A61K 9/00 - 9/68 A61K 47/00 - 47/48 A61P 7/00

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一端に疎水性部を有し、かつ他端に親水性
    高分子鎖部を有するポリエチレングリコール結合水素添
    加天然リン脂質により、前記疎水性部が脂質膜に固定さ
    れ、かつ親水性高分子鎖部が膜表面から外方向に延出す
    るよう修飾されたヘモグロビン内包リポソームを、ヒド
    ロキシエチルデンプンまたはデキストランを主成分とす
    る血漿増量剤の水溶液中に懸濁させたことを特徴とする
    人工血液。
  2. 【請求項2】前記ヒドロキシエチルデンプンまたはデキ
    ストランの平均分子量が2万〜7万である請求項1に記
    載の人工血液。
  3. 【請求項3】投与すべき生体が許容する膠質浸透圧に調
    整されてなる請求項1または2に記載の人工血液。
  4. 【請求項4】前記血漿増量剤の水溶液の電解質組成が血
    漿と実質的に等しいものである請求項1〜3のいずれか
    1項に記載の人工血液。
  5. 【請求項5】前記血漿増量剤の水溶液の電解質組成がリ
    ンゲル液、乳酸リンゲル液またはクレブス−リンゲル液
    と実質的に等しいものである請求項1〜4のいずれか1
    項に記載の人工血液。
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