JP2008120760A - ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液及びその製法 - Google Patents

ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液及びその製法 Download PDF

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博 後藤
Yoshitaka Ogata
嘉貴 緒方
Tsutomu Ueda
努 上田
Junya Kojima
潤也 小島
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Abstract

【課題】ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液において、前記リポソーム内水相pHを一定範囲に制御する事により、適切な酸素運搬量を有する前記リポソーム懸濁液を提供する。
【解決手段】前記リポソーム内水相pHに影響を与える前乳化工程において、pH調整を行なった後、本乳化を行い、前記リポソーム内水相pHを一定範囲に制御し、前記リポソーム懸濁液中の(1)ヘモグロビン濃度(2)アロステリック因子濃度(3)ヘモグロビンメト化率の最適な数値限定を行いこれらのファクターと組合わせる。
【選択図】なし

Description

本発明は人工赤血球に関するものであり、特に輸血をはじめとする各種医療分野において、利用され、血液型の制限を受ける事無く、出血時治療用として酸素運搬量が適切に制御された人工赤血球懸濁液及びその製法に関する。
従来、人工酸素運搬体としてはフロロカーボン乳化液が良く知られているが、酸素運搬能が低く、実際の使用に関しては、高圧酸素のもとで使用される。これは装置的に煩雑であるばかりでなく、患者に対する酸素障害の懸念もある。
これに対してヘモグロビンを利用する方法は、酸素運搬能に関しては有利であると考えられる。しかし、ヒト血液を原料とした場合、赤血球からヘモグロビンを取り出す工程において、ヒト赤血球に元々存在するアロステリック因子の2,3-DPG( 酸素放出能を高める燐酸化合物) が失われる。その結果として、低酸素分圧のところで酸素を放出しにくく、組織に酸素を十分に供給できない問題があった。本発明者らは予めヘモグロビン溶液にアロステリック因子を溶解させ、これをリポソーム化する事によって、この問題点を解決する方法を鋭意検討してきた(特公平4-66456)。しかしながら、酸素放出能を制御するファクターはアロステリック因子のみではなく、最終製剤リポソームの内水相pHも関与している。この内水相pHに影響を与える工程操作の設定および内水相pHの数値設定については十分に検討されていなかった。
特公平4-66456号公報 特開2001-348341号公報 人工臓器 18(1), 369-372(1989)
ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソームは生理食塩水等の外水相媒体に懸濁させて、人工赤血球懸濁液として用いられる。このリポソーム懸濁液の酸素運搬量設定に関与するファクターは次の通りである。リポソーム懸濁液における(1)ヘモグロビン濃度(2)内水相ヘモグロビンのpH(3)アロステリック因子濃度(4)ヘモグロビンメト化率であり(詳細は後述0017参照)、本発明者らはこれらのファクターの最適な数値設定による酸素運搬量制御方法を鋭意検討してきた。しかしながら、リポソーム化前のヘモグロビンのpH設定検討は行なわれていたが、酸素運搬量に関与するのは、最終的なリポソーム内水相のpHであり、この観点よりの十分な検討は行なわれていなかった。本発明は、このリポソーム内水相のpHに影響を与える工程操作の設定と内水相のpH数値設定を検討し、大量出血時に適切な酸素運搬量を有するヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液及びその製造方法を提供する事にある。
上記課題を解決する為、本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。内水相のヘモグロビンのpHに影響を与えるファクターはリポソーム化前のアロステリック因子添加ヘモグロビンのpHだけではなく、リポソーム化工程における工程操作もリポソーム内水相ヘモグロビンのpHに影響を与える事に着目した。リポソーム内水相pHに影響を与える工程操作を適切に設定し、リポソーム内水相pHの数値設定により、本発明を完成させた。本発明によれば、下記の様に、ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソームの懸濁液において、(1)ヘモグロビン濃度(2)リポソーム内水相のpH値(3)アロステリック因子濃度(4)ヘモグロビンメト化率について適切な数値限定をする事により、下記のごとく、大量出血時に適切な酸素運搬量を有するヘモグロビン含有リポソームの懸濁液が安定した品質のもとに提供される。
1) ヘモグロビン及びアロステリック因子を含有したリポソーム懸濁液であって、前記リポソーム膜構成脂質が高級飽和脂肪酸を含み、前記リポソーム内水相pHが7.0〜8.8である事を特徴とする前記リポソーム懸濁液。
2) 前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度が5.6〜6.7w/v%であり、アロステリック因子濃度が0.066〜0.110w/v%である事を特徴とする1)に記載のリポソーム懸濁液。
3) 前記アロステリック因子がフィチン酸12ナトリウムである事を特徴とする1)に記載のリポソーム懸濁液。
4) 前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率が10%以下である事を特徴とする1)に記載のリポソーム懸濁液。
5) 前記アロステリック因子添加ヘモグロビンと前記リポソーム膜構成脂質を前乳化する時に、前記前乳化液のpHを7.0〜8.8に調整した後、本乳化を行い、前記リポソーム内水相pHを7.0〜8.8とする事を特徴とする前記リポソーム懸濁液の製法。
6) 前記前乳化液のpHを水酸化ナトリウムで調整する事を特徴とする5)に記載の前記リポソーム懸濁液の製法。
以上、詳述した様に、本発明はヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液において、(1)ヘモグロビン濃度(2)リポソーム内水相のpH値(3)アロステリック因子濃度(4)ヘモグロビンメト化率について、中でも従来十分に検討されていなかったリポソーム内水相のpHについて、これらのファクターを適切に数値限定して組合わせる事により、出血治療時に適切な酸素運搬量を有するヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソームの懸濁液が安定した品質のもとに提供される。
以下、本発明をより具体的に説明する。
<リポソーム膜構成脂質>
本発明におけるリポソーム膜形成脂質は天然又は合成の脂質が使用可能である。特にリン脂質が好適に使用され、これらを常法に従って水素添加したものがあげられる。更にリポソーム膜形成脂質には所望によりステロール等の膜強化剤や荷電物質として高級飽和脂肪酸を添加しても良い。リン脂質として水素添加大豆リン脂質、膜強化剤としてコレステロール、荷電物質としてステアリン酸等が好適に使用される。
<リポソーム内水相に含有されるヘモグロビン>
本発明のリポソーム内水相に含有されるヘモグロビンは、公知の方法によりヒト期限切れ濃厚赤血球製剤より白血球、血小板、血漿及び赤血球膜を除去した後、濃縮したヒト由来濃厚ヘモグロビンが用いられる。
<リポソーム凝集抑制剤>
リポソーム表面への蛋白吸着抑制剤又はリポソーム凝集抑制剤として、公知の方法(特公平7-20857)により一端に疎水性部を有し、かつ、他端に親水性高分子を有する化合物が用いられる。ポリエチレングリコールとリン脂質が共有結合したポリエチレングリコール結合リン脂質が好適に用いられる。
<アロステリック因子と酸素解離曲線>
本発明に用いるアロステリック因子とは、酸素解離曲線(ヘモグロビンの酸素飽和度と酸素分圧の関係を示す曲線。ヒト天然血液の酸素解離曲線は図1参照)に影響を与える因子である。本発明に用いるアロステリック因子は酸素解離曲線を右にシフトさせ、その結果として酸素運搬効率を高くするものを使用する。酸素運搬効率とは通常の肺の酸素分圧である100mmHgと静脈の酸素分圧である40mmHgとの間のヘモグロビンの酸素飽和度の差を示す。図1が示す様に、ヒト天然血液では肺(酸素分圧100mmHg)で酸素飽和度100%であり、静脈(酸素分圧40mmHg)では酸素飽和度75%なので、肺と組織末端との間で、酸素飽和量の25%を組織に供給する。アロステリック因子としては特開昭57-26621号に記載のものも使用できるが、安全性、保存安定性、価格、入手のし易さ、効果の点でフィチン酸が好ましく、フイチン酸12ナトリウムがより好ましい。
<ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液の酸素運搬量設定>
本発明に係る人工赤血球は、ヒト天然赤血球から赤血球膜を除去したヘモグロビンにアロステリック因子を添加し、これをリポソーム化する事により得られる。前記リポソームは、生体適合性を有する液体を外水相媒体とした懸濁液として生体に投与される。外水相媒体としては生理食塩水が好適に使用され、所望により亜硫酸塩等の抗酸化剤が添加される。本発明のヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液の1mLが肺(酸素分圧:100mmHg)と静脈(酸素分圧:40mmHg)の間で運搬する酸素量は(1)前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度(ヘモグロビンが酸素運搬の主役である)(2)前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率(ヘモグロビンが酸化されてメトヘモグロビンとなると酸素運搬能を失う)(3)前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率から理論的に計算できる。前記酸素運搬効率は前記リポソーム懸濁液の酸素解離曲線から求める事が出来る(前述0015参照)。酸素解離曲線に直接影響を与える前記リポソーム懸濁液のファクターは、前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度に対するアロステリック因子濃度と、前記リポソーム内水相のpHである。前記リポソーム懸濁液中のアロステリック因子濃度が増加すると、酸素解離曲線は右にシフトして、酸素運搬効率は増加する。また、前記リポソーム内水相のpHが低くなっても酸素解離曲線は右にシフトし、酸素運搬効率は増加する。前記リポソーム内水相のpHはヘモグロビンのメト化進行にも関与し、前記リポソーム内水相のpHが低くなる程、ヘモグロビンのメト化は進行する。以上を考慮して、前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度:Aw/v%、前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率:B%、前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率:C%とすると、前記リポソーム懸濁液の1mLが、肺(酸素分圧:100mmHg)と静脈(酸素分圧:40mmHg)の間で運搬する酸素量DmL(37℃、1気圧)は以下の様に理論的に計算される。
リポソーム懸濁液1mL中のヘモグロビンに結合可能な酸素分子数(moL)は、ヘモグロビンに結合可能な酸素分子が4つである事から、
{A(1−B/100)×4/64500}/100 → (1)となる。
更に、酸素運搬効率がC%である事から、リポソーム懸濁液1mLが放出する酸素分子数(moL)は、
(1)×(C/100) → (2)となる。
また、気体の状態方程式PV=nRT R(atm・1/K・moL)=0.082より、
D(mL)=(2)×0.082×(37+273)×1000 → (3)となる。
従って前記リポソーム懸濁液の製造工程において、(1)前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度(2)前記リポソーム内水相pH(3)前記リポソーム懸濁液中のアロステリック因子濃度(4)前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率を適切に制御し、設定する事により、適切な酸素運搬量の設定が可能となる。
<リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度>
人工赤血球としての本発明におけるリポソーム懸濁液の酸素運搬の主役はヘモグロビンである。前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度が高過ぎると、ヘモグロビンをリポソーム化する為のリポソーム膜構成脂質濃度が必然的に高くなり、生体に投与される総脂質量が高くなって安全性の面で懸念がある。また、前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度が低過ぎると、酸素運搬の主役であるヘモグロビンの絶対量が不足して、酸素運搬量設定に不利となる。従って前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度は5.6〜6.7w/v%であり、より好ましくは5.7〜6.6w/v%である。
<リポソーム内水相pHの制御>
アロステリック因子添加後の濃厚ヘモグロビンをリポソーム化する時に、リポソーム膜構成脂質成分の一つに、荷電物質としてステアリン酸等の高級飽和脂肪酸が、好ましく使用される。この場合、高級飽和脂肪酸により、出来上がったリポソーム内水相pHが、リポソーム化前のアロステリック因子添加濃厚ヘモグロビンのpHよりも過度に低下して、ヘモグロビンの酸化を促進すると同時に、リポソーム膜構成脂質の加水分解も促進する。この問題を解決する為、リポソーム化の工程において、リポソーム膜構成脂質とアロステリック因子添加濃厚ヘモグロビンを前乳化する時に、リポソーム膜構成脂質に含まれるステアリン酸を中和する量の水酸化ナトリウムを添加して、均一に攪拌した後、更に強力な攪拌により本乳化を行い前記リポソームとする。リポソーム内水相pHの測定は以下の方法による。前記リポソーム懸濁液を遠心分離し、上清を除去した後、沈殿相に非イオン界面活性剤の純水溶液を添加し、超音波処理により、前記リポソームを破壊可溶化し、純水で希釈した後、pHを測定する。この時、非イオン界面活性剤によるリポソームの破壊可溶化操作及び純水希釈操作によるpH変動はない事を確認している。ステアリン酸を中和する事により、リポソーム内水相pHは、リポソーム化前のアロステリック因子添加濃厚ヘモグロビンのpHと同じ値とする事が出来る。
<リポソーム懸濁液中のアロステリック因子濃度及びリポソーム内水相pH>
前述(0017参照)の様に、酸素解離曲線に直接影響を与える前記リポソーム懸濁液のファクターは、前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度に対するアロステリック因子濃度と前記リポソーム内水相pHである。アロステリック因子として、フィチン酸12ナトリウムが好ましく用いられる。前記リポソーム懸濁液中の好ましいヘモグロビン濃度5.6〜6.7w/v%に対するアロステリック因子濃度0.066〜0.110w/v%の範囲では、フィチン酸12ナトリウム濃度上昇による前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率上昇と、フィチン酸12ナトリウム添加によるpH上昇に伴う前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率低下の効果が相殺される為、前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率は、ほぼ一定で34〜42%となる。この時、前記リポソーム内水相pHは7.0〜8.8となる。前記リポソーム懸濁液中の好ましいヘモグロビン濃度に対するフィチン酸12ナトリウムの濃度が前記範囲より高いと、フィチン酸12ナトリウムのカルシウム捕捉作用により、生体投与時に血漿カルシウムイオンレベルに影響を与える懸念がある。また、前記リポソーム懸濁液中の好ましいヘモグロビン濃度に対するフィチン酸12ナトリウムの濃度が前記範囲より低いと、酸素運搬効率が低くなり、酸素運搬量設定に不利となる。より好ましいヘモグロビン濃度5.7〜6.6w/v%に対するフィチン酸12ナトリウム濃度は0.069〜0.106w/v%であり、その時の前記リポソームの内水相pHは7.0〜8.5となる。
<リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率>
ヘモグロビンは酸化されてメトヘモグロビンとなると酸素運搬能を失うので、人工赤血球としてのヘモグロビン含有リポソームにおいては、ヘモグロビンの酸化防止(ヘモグロビンメト化防止)は、重要な課題の一つである。製造工程を低温に保つと同時に、ヘモグロビンのpHが過度に低下するとヘモグロビンの酸化が促進するので、製造工程ではヘモグロビンのpH制御を行い、公知の方法(特開2006-104069)により、還元剤使用による脱酸素化及び脱酸素化状態のまま製剤バッグに無菌充填した後、脱酸素化状態を維持できる様に外包装を行なう。前記リポソーム懸濁液製造直後及び有効保存期間中のヘモグロビンメト化率は10%以下である。ヘモグロビンメト化率がこれより高くなると、前記リポソーム懸濁液の酸素運搬量設定に不利となる。
次に本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、前記リポソーム懸濁液の製造工程は無菌的環境下での操作とした。
水素添加大豆ホスファチジルコリン182g、コレステロール89g、ステアリン酸65gからなる均一混合脂質に水336gを加えて、85℃で30分間加熱して水和膨潤均一混合脂質を調整した。期限切れ濃厚赤血球製剤からヘモグロビンを精製、濃縮し、アロステリック因子として、フィチン酸12ナトリウムをヘモグロビンに対して等モル添加したヘモグロビン濃度42.6w/w%の濃厚ヘモグロビン濃度を調整した。前記アロステリック因子添加濃厚ヘモグロビンのpHは8.0であった。前記水和膨潤均一混合脂質672gに前記フィチン酸12ナトリウム添加濃厚ヘモグロビン溶液2,400gを添加し、水和膨潤均一混合脂質中のステアリン酸を中和する量の水酸化ナトリウムを添加しつつ、均一に攪拌し、前乳化を行なった。前記本乳化後に更に強力な攪拌により、本乳化を行なった。前記本乳化後の混合液を生理食塩水により希釈して、0.45μm膜を用いて、循環濾過により粒子径の制御を行なった。次に10mg/mL濃度の亜硫酸ナトリウム生理食塩水溶液を使用し、亜硫酸ナトリウムによる脱酸素化を行なった後、分画分子量30万の限外濾過膜を用いて、0.5mg/mL濃度の亜硫酸ナトリウム生理食塩水溶液による加水濾過濃縮で、リポソーム化されなかったヘモグロビン及びフィチン酸12ナトリウムを除去し、ヒト由来濃厚ヘモグロビン及びアロステリック因子含有リポソーム懸濁液を作成した。前記リポソーム懸濁液に、PEG結合リン脂質として、DSPE-PE5000(日本油脂製)を生理食塩水に溶解させたPEG結合リン脂質水溶液を添加した。前記リポソーム及びPEG結合リン脂質を含有した前記リポソーム懸濁液中のリポソーム膜構成脂質濃度が4.06%であり、PEG結合リン脂質が0.14w/v%である様に調整した後、37℃、24時間処理し、PEG結合リン脂質をリポソーム表面に固定化した前記リポソーム懸濁液を得た。
前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度は6.2%w/v%であり、アロステリック因子であるフィチン酸12ナトリウム濃度は0.077w/v%であった。前記リポソーム内水相pHは以下の様に測定した。前記リポソーム懸濁液を遠心分離(43,000g, 60min)し、上清を除去した後、沈殿相リポソームとほぼ同量の非イオン界面活性剤である1-O-nオクチル-β-D-グルコピラノシド12.5%の純水溶液を加えて、20秒間超音波処理を行ない、前記リポソームを可溶化させた後、純水で20倍希釈後、pHを測定した。前記測定法による前記リポソーム内水相pHは8.0であり、リポソーム化前の前記アロステリック因子添加ヒト由来濃厚ヘモグロビンのpHと同じであった。製造直後の前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率は4.5%であった。前記リポソーム懸濁液の酸素解離曲線から求めた酸素運搬効率は37%であった。前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度:6.2w/v%、ヘモグロビンメト化率:4.5%、前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率:37%の値を前述0017に記載の(3)式に当てはめると、前記リポソーム懸濁液1mLが肺(酸素分圧:100mmHg)と静脈(酸素分圧:40mmHg)の間で運搬する酸素量(37℃、1気圧)は0.0345mLと算出された。
本件特許における前記リポソーム懸濁液と製剤の性状として最も近いと考えられる洗浄人赤血球浮遊液のヘモグロビン濃度は約12w/v%、ヘモグロビンメト化率は約0%、酸素運搬効率は約22.5%である。これらの数値を同じ様に前述0017に記載の(3)式に当てはめると、前記洗浄人赤血球浮遊液1mLが肺(酸素分圧:100mmHg)と静脈(酸素分圧:40mmHg)の間で運搬する酸素量(37℃、1気圧)は0.0426mLと算出された。本件発明における前記リポソーム懸濁液のヘモグロビン濃度が前記洗浄人赤血球浮遊液のヘモグロビン濃度の約1/2である事を考えれば、ヘモグロビン単位量当たりの酸素運搬量に関しては、本件発明における前記リポソーム懸濁液は前記洗浄人赤血球浮遊液より優れる。
フィチン酸12ナトリウムをヘモグロビンに対して0.8倍モル添加する事以外は、実験例1と同じ方法でサンプルを作成した。前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度は6.0w/v%であり、アロステリック因子であるフィチン酸12ナトリウム濃度は0.070w/v%であった。前記リポソーム内水相pHは7.5であり、リポソーム化前の前記アロステリック因子添加ヒト由来濃厚ヘモグロビンのpHと同じであった。前記リポソーム内水相pHは実施例1と同様の方法で測定した。製造直後の前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率は4.9%であった。前記リポソーム懸濁液の酸素解離曲線から求めた酸素運搬効率は35%であった。前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度:6.0w/v%、ヘモグロビンメト化率:4.9%、前記リポソーム懸濁液の酸素運搬効率:35%の各々の値を前述0017に記載の(3)式に当てはめると、前記リポソーム懸濁液1mLが肺(酸素分圧:100mmHg)と静脈(酸素分圧:40mmHg)の間で運搬する酸素量(37℃、1気圧)は0.0315mLと算出された。
(比較例)
実施例において、前記乳化時にステアリン酸を中和しない方法で、前記リポソーム懸濁液を作成した。前記リポソーム内水相pHの値は6.0であり、前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率は12.0%であった。前記リポソーム内水相pHは実施例と同じ方法により測定した。実施例と比較すると2.5〜2.7倍のヘモグロビンメト化促進が認められ、製剤としての酸素運搬量設定に不利となるばかりでなく、生体内投与時のヘモグロビンメト化も促進される為、臨床使用時の酸素運搬に不利となる。
ヒト天然血液の酸素解離曲線を示す。

Claims (6)

  1. ヘモグロビン及びアロステリック因子を含有したリポソーム懸濁液であって、前記リポソーム膜構成脂質が高級飽和脂肪酸を含み、前記リポソーム内水相pHが7.0〜8.8である事を特徴とする前記リポソーム懸濁液。
  2. 前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビン濃度が5.6〜6.7w/v%であり、アロステリック因子濃度が0.066〜0.110w/v%である事を特徴とする請求項1に記載のリポソーム懸濁液。
  3. 前記アロステリック因子がフィチン酸12ナトリウムである事を特徴とする請求項1に記載のリポソーム懸濁液。
  4. 前記リポソーム懸濁液中のヘモグロビンメト化率が10%以下である事を特徴とする請求項1に記載のリポソーム懸濁液。
  5. 前記アロステリック因子添加ヘモグロビンと前記リポソーム膜構成脂質を前乳化する時に、前記前乳化液のpHを7.0〜8.8に調整した後、本乳化を行い、前記リポソーム内水相pHを7.0〜8.8とする事を特徴とする前記リポソーム懸濁液の製法。
  6. 前記前乳化液のpHを水酸化ナトリウムで調整する事を特徴とする請求項5に記載の前記リポソーム懸濁液の製法。
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