JP2007269646A - 表面修飾リポソームおよびその製造方法 - Google Patents

表面修飾リポソームおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】内封薬物をリポソームから漏出(リーク)および変質させることなく、表面修飾剤の仕込み量に対し高率でリポソームに担持させ、かつリポソームの外表面のみを効果的に修飾する方法および該表面修飾リポソームの提供。
【解決手段】リン脂質二重膜で形成される閉鎖小胞の内水相に薬物を含むリポソームの懸濁液を準備し、該リポソームの懸濁液を、親水性高分子を含む表面修飾剤の存在下、30℃超ないし50℃未満の温度で加熱する、表面修飾リポソームの製造方法。前記薬物がヘモグロビンである態様は好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面修飾されたリポソームおよびその製造方法に関する。
薬物を安全にかつ効率よく目的病巣部位に送達・分布させるドラッグデリバリーシステム(DDS)における薬物の運搬体(担体)としてリポソームの利用が検討されている。リポソームを用いるDDSの実用化において、生体側の異物認識機構からの回避および体内動態の制御は重要な課題である。つまり、リポソームを標的部位に高い選択性で送達させるためには、肝臓、脾臓等の細網内皮系組織(RES)での捕捉を回避し、血液中のオプソニン蛋白質や血しょう蛋白質などとの相互作用(吸着)による凝集を防止して血中安定性を高める必要がある。この課題を解決する方法として、ポリエチレングリコール(PEG)などの親水性高分子鎖による膜修飾が知られている。親水性高分子鎖で修飾されたリポソームは、高い血中滞留性が得られることにより、腫瘍組織や炎症部位などの血管透過性が亢進した組織への受動的な集積が可能となり、実用化が進められている(特許文献1〜3および非特許文献1〜3など参照)。
ヘモグロビンは、たとえば、外科手術、出血性ショック等の輸血を必要とする病態あるいは脳、心筋等の虚血性疾患のような局所への酸素供給を必要とする病態における血液代替物もしくは治療薬として期待されている。このヘモグロビンをリポソームカプセル内に封入(ヘモグロビン含有リポソーム)すれば、遊離ヘモグロビンに比べて生体内半減期が長く、かつ末梢への酸素運搬能が優れるため、ヘモグロビン含有リポソームを人工酸素運搬体として利用することが研究されてきた。
ヘモグロビン含有リポソームについても、親水性高分子鎖によるリポソーム表面の修飾は、リポソームの安定性を向上させ、リポソームの血漿中での凝集防止効果および血中滞留性を長引かせる効果をもたらすことが知られている(たとえば特許文献4など参照)。
特表平5−505173号公報 特公平7−20857号公報 特許第2667051号公報 特開平2-149512号公報 D.D. Lasic著「LIPOSOMES from Physics to Applications」,Elsevier, 1993 Martin C.Woodle, Gerrit Storm編「Long Circulating Liposomes:Old Drugs, New Therapeutics」, Springer,1997 D.D.Lasic、D.Papahadjopoulos編 「Medical Applications of LIPOSOMES」,Elsevier,1998
本発明は、内水相に薬物が封入されたリポソームとりわけヘモグロビン含有リポソームの表面修飾において、内封薬物をリポソームから漏出(リーク)および変質させることなく、表面修飾剤の仕込み量に対し高率でリポソームに担持させ、かつリポソームの外表面のみを効果的に修飾する方法およびそれにより得られる高品質の表面修飾リポソームを提供することを目的としている。
親水性高分子鎖によるリポソーム表面修飾においては、リポソームの外表面のみの修飾が有効的であり、予め膜構成成分(脂質)からリポソームを形成した後に、親水性高分子鎖を有する表面修飾剤を添加して加熱すればリポソーム外表面のみを修飾することができる。この表面修飾を効率よく行うには、リポソーム膜をある程度緩和させればよく、このためリポソーム膜を構成するリン脂質の相転移温度(通常約60℃)以上に加熱すればよい。一方、相転移温度以上の加熱は内水相に含まれる薬物のリークを招く。また特に薬物としてヘモグロビン溶液を含む場合には、表面修飾のための加熱処理時に、ヘモグロビンの熱変性およびメトヘモグロビン生成の課題が生起する。これらを考慮し、内封薬物リークすることなく、表面修飾剤を仕込み量に応じて確実にリポソーム表面に担持させる方法を検討し、従来のリン脂質の相転移温度に対し低温での加熱により上記目的を達成しうることを見出した。リポソームの表面修飾について、外表面のみを修飾する方法は上記のとおり知られ、またリン脂質の相転移温度以上に加熱すれば効率的に修飾できることも知られているが、特に薬物のリークおよび変質との関係において表面修飾を効率的に行うための検討は報告されていない。
本発明では、リン脂質二重膜で形成される閉鎖小胞の内水相に薬物を含むリポソームの懸濁液を準備し、該リポソームの懸濁液を、親水性高分子を含む表面修飾剤の存在下、30℃超ないし50℃未満の温度で加熱する、表面修飾リポソームの製造方法を提供する。
上記加熱は、温度によっても異なるが、通常6〜30時間行う。
本発明では、上記表面修飾剤の使用量の90%以上を上記加熱によりリポソームに導入することができる。
上記薬物がヘモグロビンである態様は、本発明の好ましい態様である。
本発明では、上記方法により得られる、内水相に薬物を含み、外表面が親水性高分子で表面修飾されたリポソームを提供する。
上記のような本発明によれば、内封する薬物をリークすることなく、表面修飾剤の使用量に対し高い導入効率で、リポソームの外表面のみを修飾することができる。本発明では、表面修飾工程を好ましくは30時間以下で行うことができ、リポソームの表面修飾を含むリポソーム製造工程を実際的なラインにおいてほぼ1日で実施することができ、有用な方法である。
以下、本発明を具体的に説明する。
リポソームは、リン脂質二重膜からなり、脂質の疎水性基と親水性基との極性に基づいて生ずる膜により外界から隔てられた空間を形成する構造を有する閉鎖小胞(リポソームカプセル)の水性懸濁液である。膜を隔てて閉鎖小胞内外の水相は、それぞれ内水相、外水相と称される。
本発明では、まず、リン脂質を主膜材として含む脂質二重膜で形成され、内水相に薬物を含むリポソームの懸濁液を準備する。
リポソームの膜基材であるリン脂質は、生体膜の主要構成成分であり、分子内に長鎖アルキル基から構成される疎水性基とリン酸基より構成される親水性基のグループを持つ両親媒性物質である。リン脂質は、上記構造のリポソームを形成しうるものであれば、天然または合成のいずれのものでも使用可能であり、たとえば、フォスファチジルコリン(レシチンと称することもある)、フォスファチジルエタノールアミン(略称PE)、フォスファチジン酸、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルグリセロール、さらにスフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質、カルジオリピンなどの天然あるいは合成のリン脂質もしくはこれらの誘導体、糖類を結合させた誘導体(糖脂質)およびこれらの水素添加物(飽和リン脂質)などを挙げることができる。
上記のうちでも、飽和リン脂質が好ましく、その具体例として、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジン酸、フォスファチジルセリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなどの水素添加物が挙げられ、特に、これらが卵黄あるいは大豆由来であって、水素添加率が50%以上のものが好ましい。
膜基材のリン脂質として、上記の単一種を用いてもよく、複数種を用いてもよい。たとえば、飽和リン脂質とともに、荷電性のフォスファチジン酸、フォスファチジルグリセロール、ジセチルフォスフェートなどを用いてもよい。
リポソームは、封入された薬物が、保存時にあるいは血液などの生体中で容易に漏出しないようにするため、相転移点が生体内温度(35〜37℃)より高い主膜材を用いることが好適である。さらに、このようなリポソームを製造する場合には、生体温度より高い温度に晒される場合がある。すなわち、50℃〜70℃程度、例えば60℃前後の温度条件下で製造されることがあり、熱によるリポソーム形成に対する影響が大きくなるので、これらの温度より高い相転移点を持つ主膜材を用いることが特に好ましい。具体的には、主膜材の相転移点は50℃以上であることが好ましい。
また上記膜基材のリン脂質とともに、上記膜構造を保持しうるものであって、リポソームに含むことができる他の膜成分を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜に併用することができる。他の膜成分としては、リン酸基を分子内に含まない脂質、たとえばグリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロールおよびコレスタノール類などのステロール類、これらの水素添加誘導体、脂肪酸などを挙げることができる。
リン脂質と他の脂質との混合脂質をリポソームの膜成分とすることも好ましく、たとえばリン脂質、コレステロールおよび脂肪酸の混合脂質を好ましく挙げることができる。混合比は、リポソームカプセル形態を損なわない範囲で適宜に選択することができる。これらをリン脂質と混合することで、上記リン脂質の相転移温度を下げることが可能であり、60℃以下でもリポソームを形成することが可能となる。
上記のようなリン脂質を含む脂質からリポソームを作製するには、これに限定されるものではないが、たとえばフラスコ内で、リン脂質等の膜構成成分を、クロロホルム等の有機溶媒により混合し、有機溶媒を留去後に真空乾燥することによりフラスコ内壁に薄膜を形成させる。次に、当該フラスコ内に内水相溶液を加え、激しく撹拌することにより、リポソームの懸濁液を得る。
リポソームの内水相のpHは、添加する内水相溶液を必要に応じpH調整剤などで所望のpHに調整できる。次いで、得られたリポソーム分散液を遠心分離し、上清をデカンテーションし精製することにより、リポソームの懸濁液を得ることができる。
またリポソームは、上記方法以外にも、上記の各構成成分を混合し、高圧吐出型乳化機により高圧吐出させることにより得ることもできる。この方法は、「ライフサイエンスにおけるリポソーム」(寺田、吉村ら;シュプリンガー・フェアラーク東京(1992))に具体的に記載されている。またリポソームを所望のサイズにサイジングするために、いくつかの技術が利用可能である(G.Gregoriadis編「Liposome Technology Liposome Preparation and Related Techniques」2nd edition,Vol.I-III、CRC Press)。これらの記載を引用して本明細書の記載されているものとする。
リポソームの大きさは特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとる場合には、平均粒子外径の直径が、通常、70nm〜140nmである。この直径は、動的光散乱法などにより測定することができる。
上記のように形成されたリポソームに薬物を担持するには、薬物に応じた方法を採択すればよく、たとえば薬物を含む水溶液でリポソームを構成する脂質膜を水和させることにより薬物をリポソームに担持させるPassive loading法、あるいはリポソーム膜の内側/外側に形成したイオン勾配に従いリポソーム膜を透過させて薬物を担持させるRemote loading法などがある。
リポソームは、投与経路次第で医薬的に許容される安定化剤、酸化防止剤、他の添加物をさらに含むことができる。安定化剤としては、特に限定されないが膜流動性を低下させる物質が挙げられ、グリセロール、シュクロースなどの糖類が挙げられる。また、膜構成成分の他の脂質として上述したコレステロール(Cholesterol)などのステロールはこの安定化剤として作用する。酸化防止剤としては、特に限定されないがアスコルビン酸、尿酸あるいはα、β、γ、δトコフェロール同族体、たとえばビタミンEなどが挙げられる。添加物として、水、生理食塩水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、PBS、生体内分解性ポリマー、無血清培地、医薬添加物として許容される界面活性剤、生体内で許容し得る生理的pHの緩衝液などが挙げられる。
上記の各成分は、適宜選択され、あるいはそれらを組合せて使用されるが、これらに限定されるものではない。
本発明では、リポソーム内には、種々の薬物を担持させることができ、たとえば、核酸、ポリヌクレオチド、遺伝子およびその類縁体、抗癌剤、抗生物質、酵素剤、抗酸化剤、脂質取り込み阻害剤、ホルモン剤、抗炎症剤、ステロイド剤、血管拡張剤、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤、平滑筋細胞の増殖・遊走阻害剤、血小板凝集阻害剤、抗凝固剤、ケミカルメデイエーターの遊離阻害剤、血管内皮細胞の増殖促進または抑制剤、アルドース還元酵素阻害剤、メサンギウム細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、免疫賦活剤、抗ウイルス剤、メイラード反応抑制剤、アミロイドーシス阻害剤、一酸化窒素合成阻害剤、AGEs(Advanced glycation endproducts)阻害剤、ラジカルスカベンチャー、タンパク質、ペプチド、グリコサミノグリカンおよびその誘導体、オリゴ糖および多糖およびそれらの誘導体等の治療薬、X線造影剤、超音波診断剤、放射性同位元素標識核医学診断薬、核磁気共鳴診断用診断薬などの体内診断薬が挙げられる。
本発明において、特に好ましい薬物はヘモグロビン(溶液)であり、ヘモグロビンを取り込んだリポソーム製剤をヘモグロビン含有リポソームと称する。
以下に、本発明の好ましい態様例であるヘモグロビン含有リポソームの製造方法について説明する。上記脂質膜からなるリポソームカプセル内に内水相として取込むヘモグロビン溶液は、ヒトまたは動物血液由来のヘモグロビンを利用して調製することができる。またこれらのヘモグロビンと同等の遺伝子組換え等のバイオテクノロジー技術により生産したヘモグロビンを利用することもできる。
ヘモグロビン原料が天然血液である場合には、赤血球膜(ストローマ)の破壊すなわち溶血後、ストローマおよび血液型物質などの赤血球細胞基質を分離除去し、ストローマフリーヘモグロビン(SFH)とした後、精製、濃縮などの処理を行って、リポソーム製剤化に適切な安全で高純度のストローマフリーヘモグロビン溶液(SFH溶液)を調製する。以下では、リポソームカプセル内に取込むストローマフリーヘモグロビン溶液を、単にヘモグロビン溶液とも称する。
溶血処理は、ヘモグロビンを変質させない条件であれば特に限定されない。たとえば、従来一般的に実施されている浸透圧法により行うことができる。浸透圧法による溶血を含むSFH溶液の調製工程は、代表的には、1)採取した天然血液全血から血小板、白血球、血漿成分を除去して赤血球のみを分離・洗浄し、2)蒸留水または低張緩衝液(たとえばリン酸緩衝液)を多量に添加してストローマを破壊(溶血)し、3)ストローマおよび血液型物質などの赤血球細胞基質を除去することにより、高純度ヘモグロビン溶液(SFH溶液)を得た後、4)該溶液の電解質濃度を正常な生体レベルに調整する工程を順次に含む。これら工程の詳細はたとえば特開平2-178233号公報に記載されており、そこに記載された説明を引用して本明細書の記載とすることができる。
上記のような天然由来のヘモグロビン溶液をリポソーム内に封入するにあたっては、公知のろ過ないし加熱方法を適用して無菌性を保証するとともに、ウィルス除去・不活化により製剤を安全性を保証することが望まれる。ウィルスの除去または不活化方法は、ヘモグロビンたんぱく質を実質上変性させない方法であれば公知の方法を広く利用することができる。たとえば限外ろ過膜あるいはウィルス除去膜によるウイルス除去処理、加熱処理、マイクロウエーブ照射による短時間熱処理、紫外線照射処理、ジメチルメチレンブルー(DMMB)などの光増感物質を利用する光増感作用を利用した処理、ソルベント・デタージェント(Solvent Detergent:SD)法などの不活化処理がある。
本発明では、これらのうちでも、ヘモグロビン溶液の65℃以上で10時間の加熱もしくはSD法によるウイルス不活化処理、分画分子量が10〜30万程度の限外ろ過膜あるいはウィルス除去膜(旭化成BMM-15,35等)によるウイルス除去処理が好ましく行われる。SD法では、トリ-n-ブチルリン酸(TNBP)およびTritonX100の混合液などを用いることができる。
精製後のヘモグロビン溶液は、通常30〜60%の濃度でリポソームカプセル内に取り込むことが望ましく、好ましくは45%〜50%である。この濃度とするための濃縮には、分画分子量10〜30kD程度の限外ろ過フィルターを用いた限外濃縮、ダイアライザーなどを使用することができる。このヘモグロビン溶液は、通常pH6.5〜8.0である。
上記ヘモグロビン溶液には、ヘモグロビンの酸化抑制を目的とする物質を含ませることができる。この目的で添加される物質は、特に制限を受けるものではないが、天然赤血球の有する解糖系、ペントースリン酸回路等の糖代謝系中間体、ヌクレオチド代謝系中間体などが挙げられる。特に、ウィルス膜処理後にも保持されているヌクレオチド代謝経路を有効的に利用してメトヘモグロビン還元機構を構築しうる成分の添加が好ましい。このような成分として、たとえば、イノシン、イノシン酸、グリセルアルデヒド-3-リン酸、リボース-1-リン酸、グアノシンなどの解糖系酵素の基質が用いられる。これらとヌクレオチド代謝系中間体との併用も例示される。ヌクレオチド代謝系中間体は、NAD、NADH、NADPHなどの補酵素である。これらの添加量は、通常、ヘモグロビンに対する適宜の量比で用いることができる。ヘモグロビン濃度および用いられる物質などによってその使用量も異なるが、たとえば、補酵素は、45%ヘモグロビン溶液(=ヘモグロビン7mmol/L溶液)のヘモグロビン7mmolに対して、通常0.05〜1mmol、好ましくは0.1〜0.2mmolの量で、上記解糖系酵素の基質は通常2〜12mM、好ましくは4〜8mMの量で用いることができる。
また、ヘモグロビンの酸素親和性は、さまざまなリガンドにより調節されていることはよく知られており、このうちでも2,3-ジフォスフォグリセレート(2,3-DPG)は、ヒト赤血球に存在し、アロステリックエフェクターとして機能する重要なリガンドである。1分子の2,3-DPGは、脱酸素状態のヘモグロビン(デオキシHb)の中心空洞の入り口付近に形成されている正電荷のクラスターに特異的に結合し、デオキシ型四次構造を安定化させることによって酸素親和性を低下させる働きをする。上記溶血した赤血球から精製ヘモグロビン溶液を調製する過程では、この2,3-DPGも失われやすいことから、これを添加することができる。該2,3-DPG以外にも、ピリドキサールリン酸(PLP)、イノシトールヘキサリン酸(IHP)などのアロステリックエフェクターとして機能するリン酸化合物を添加してもよい。これらのリン酸化合物は、生物学的に許容できる塩の形態で添加してもよう、たとえば上記IHPのナトリウム塩(別名フィチン酸12ナトリウム:Phytic Acid Dodeca Sodium Salt,C24Na12
なお、上記1分子あたり12ナトリウムを含むIHPなどの多塩基化合物は、その水溶液のpHが10以上と高い。このため、上記リン酸化合物を多塩基化合物の形態で添加する場合には、pH依存性のある酸素解離曲線に影響を与えないように、予めpHを調整して(ほぼ中和して)添加することが好ましい。
ヘモグロビン溶液のリポソームカプセル内への取込みは、常法にしたがえばよいが、たとえば膜成分の脂質を水和させ、ヘモグロビン溶液と高速撹拌機で撹拌すればリポソームカプセルの分散した懸濁液を得ることができる。この懸濁液を遠心分離して取込まれなかったヘモグロビン溶液を上澄みとして除去した後、生理食塩水で洗浄し、ろ過による滅菌後、生理食塩水などの等張液を外水相として、通常、ヘモグロビン濃度4〜10%のヘモグロビン含有リポソーム懸濁液を得る。
上記のようにヘモグロビンを取り込んだリポソームは、表面修飾を行う前に、脱酸素化工程を加えることが好ましい。具体的には、ヘモグロビン含有リポソームに、脱酸素剤としての亜硫酸塩類を、1〜40mg/mL-懸濁液の量で加える。なお本明細書において、「/mL-懸濁液」の表記は、ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液液1mLあたりを意味する。亜硫酸塩類とは、亜硫酸、亜硫酸水素、ピロ亜硫酸、亜ニチオン酸などの亜硫酸類の塩である。この亜硫酸塩類は、アルカリ金属塩であることが好ましく、具体的には、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜ニチオン酸ナトリウムなどが挙げられる。これら混合物であってもよい。亜硫酸塩類は、通常、水溶液で使用され、具体的には20mg/mL〜800mg/mL、好ましくは40mg/mL〜400mg/mLの濃度の水溶液に調製され、使用される。
ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液液と上記亜硫酸塩類とを接触させて脱酸素化するが、この接触は、pH6.0〜8.0、好ましくはpH6.5〜7.5の条件下で行うことが好ましい。上記亜硫酸塩類を含み、かつpH6.0〜8.0のヘモグロビン含有リポソーム懸濁液液は、脱酸素化剤に応じたpH調整剤を含む。具体的には、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、クエン酸およびリン酸などの酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸塩およびアンモニウム塩などのアルカリ類から選ばれる1または2以上のpH調整剤を含む。これらのうちでも、通常、クエン酸、塩酸、重炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたはこれらを適宜に組み合わせて用いることができる。
pH調整剤の添加時期は特に制限されないが、予め亜硫酸塩類の水溶液中に含ませ、亜硫酸塩類とともにヘモグロビン含有リポソームに添加することができる。この際、上記pHに調整した亜硫酸塩類の水溶液を添加したヘモグロビン含有リポソームは、ほぼ亜硫酸塩類の水溶液のpHに等しく、作業が簡便である。
次に、上記亜硫酸塩類を含み、pH6.0〜8.0に調整された系で、亜硫酸塩類とヘモグロビン含有リポソームとを接触させ、ヘモグロビン含有リポソームを脱酸素化、すなわちヘモグロビンをデオキシ型とする。
上記脱酸素化ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液は、1〜40mg/mL-懸濁液の亜硫酸塩類を含む。しかしながら、高濃度の亜硫酸塩類を含んだ状態で、ヘモグロビン含有リポソームを生体に投与した場合に、亜硫酸塩類が問題となる可能性がある。このため本発明では、脱酸素化処理に用いる亜硫酸塩類の濃度を極力低く調整するか、脱酸素化後のヘモグロビン含有リポソームに希薄な亜硫酸塩類の水溶液を添加し、その外水相を置換して、生体に投与するに至適である低濃度の亜硫酸塩類濃度に調整することが望ましい。具体的には、上記脱酸素化工程後のヘモグロビン含有リポソーム懸濁液に、低濃度の亜硫酸塩類の水溶液を添加し、脱酸素状態でヘモグロビン含有リポソームの外水相を置換することにより、ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液の亜硫酸塩類濃度を0.01〜1mg/mL-懸濁液に低下させる。
この外水相置換は、遠心洗浄、限外ろ過法を用いた加水ろ過等の方法を用いることができる。詳しくは、予め窒素置換等により脱酸素化した生理食塩水等の等張液など水性溶媒に低濃度の亜硫酸塩類を添加し、この生理食塩水等の等張液など水性溶媒により外水相を必要回数交換した後、この水性溶媒と同様の手法で調製した低濃度の亜硫酸塩類含有生理食塩水等の等張液で置換することにより、生体に投与するに至適な濃度の亜硫酸塩類を含みかつ脱酸素化状態であるヘモグロビン含有リポソーム(分散液)を得ることが可能となる。理論的には不活性ガスにより完全に脱酸素化した生理食塩水等の等張液を用いることで、亜硫酸塩類を全く含まないヘモグロビン含有リポソームの分散液も製造可能であるが、実際の製造工程中には若干であるが酸素の混入が避けられないため、生理食塩水等の等張液に添加する亜硫酸塩類の濃度は、好ましくは0.001〜2mg/mL、より好ましくは0.01〜1mg/mLである。
本発明において、上記のように準備されたリポソームの懸濁液を、親水性高分子を含む表面修飾剤の存在下、30℃超ないし50℃未満の温度で加熱して、リポソームの外表面を選択的に修飾する。特に、予めヘモグロビン含有リポソームを作製した後、表面修飾剤を添加することにより、リポソーム(カプセル)の脂質膜の外表面から外水相側に親水性高分子鎖を延在させることができる。なお、リポソームを形成する脂質に表面修飾剤を金剛してリポソームを作製すると、リポソーム膜の内外両方の膜に親水性高分子が配向すると認識されている。
親水性高分子鎖によるリポソーム膜外表面の修飾は、リポソームの安定性を向上させ、リポソームの血漿中での凝集防止効果および血中滞留性を長引かせる効果をもたらす。またリポソーム膜の外表面を選択的に修飾すれば、膜の内外両側を表面修飾する場合に比べて、少ない量の親水性高分子の効果を得ることができる。親水性高分子鎖を有する表面修飾剤は、リポソーム表面への蛋白吸着抑制剤としても知られている(特開平2-149515号参照)。この表面修飾剤のヘモグロビン含有リポソームへの添加量は、特に限定されないが、表面修飾されたヘモグロビン含有リポソームが凝集したり、血液中で凝集することなく安定化して、十分な血中滞留時間を達成される濃度以上の添加量が好ましく、通常ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液中の表面修飾剤の濃度で0.01〜10w/v%、好ましくは0.1〜5w/v%程度である。
親水性高分子としては、特に限定されないがポリエチレングリコール、フィコール、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸交互共重合体、ジビニルエーテル−無水マレイン酸交互共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアスパルトアミド、合成ポリアミノ酸などが挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレングリコール(PEG)は、血中滞留性を向上させる効果があり、好ましい。PEGの分子量は、特に限定されないが、通常、500〜10,000程度である。なお「血中滞留性」とは、薬剤担体を投与した宿主において、担体に担持された状態の薬剤が血液中に存在する性質を意味する。
親水性高分子を含む表面修飾剤は、通常親水性高分子の脂質誘導体である。脂質(疎水性部分)としては、上記リポソーム膜の形成脂質と同様なものが例示され、特に限定されないが、リン脂質、長鎖脂肪族アルコール、ステロール、ポリオキシプロピレンアルキル、またはグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。たとえば、親水性高分子がポリエチレングリコール(PEG)である場合の汎用品として入手容易な親水性高分子の脂質誘導体を例示すると、ポリエチレングリコール-フォスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、ポリエチレングリコール-コレステロール、ポリエチレングリコール-ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン(PEG-DSPE)などが挙げられる。
これら疎水性部分のアルコール性残基と、前記PEGとが、エーテル、エステル、カルバメート、ウレタン結合したPEG付加型非イオン界面活性剤、PEGとリン脂質とが共有結合したPEG結合リン脂質が特に好ましい。
本発明では、親水性高分子を含む表面修飾剤を添加したリポソーム特にヘモグロビン含有リポソームの懸濁液を、30℃超ないし50℃未満の温度、好ましくは35〜47℃、より好ましくは35〜45℃の温度で加熱する。
加熱時間、温度にもよるが、通常6〜30時間の範囲内であり、好ましくは10〜28時間、より好ましくは12〜24時間である。
上記温度、時間の加熱により、表面修飾剤を効率よく導入することができ、使用した表面修飾剤の90%以上をリポソームに導入することができ、実質的にほぼ導入とみなすことができる。
上記のようにして得られたリポソーム製剤は、たとえばヘモグロビン含有リポソームなどの場合、必要に応じて酸素を遮断して保存することにより、ヘモグロビンの酸化、また脂質などその他の成分の酸素酸化を抑制することができる。
リポソーム製剤は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの酸素透過性容器に無菌的に充填して密封することができる。通常、リポソームは透過するが、指標菌として用いられるBrevundimonas diminuta(サイズ、約0.3×0.8μm)はろ過されないフィルター(0.2μm)によるろ過滅菌が施される。酸素透過性容器の密封の際、容器内のヘッドスペースは極力小さくし、さらに該ヘッドスペースは窒素ガス等の不活性ガスで形成されていることが好ましい。
上記密封された酸素透過性容器は、さらに酸化珪素、酸化アルミ、アルミニウム等を蒸着したフィルム、アルミ箔、またポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニル共重合体、ポリビニルアルコール等の樹脂フィルムを層成分として含む酸素不透過性容器で真空密封包装した後、温浴あるいは空気浴中55℃〜80℃の範囲で、目的に応じて設定した適切な温度を選択しで加熱してヘモグロビン含有リポソーム包装体を製品として得る。この酸素不透過性容器には、水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄などの鉄化合物を有効成分とするものを利用できる。その市販品としては、エージレス(三菱ガス化学(株)製)、モジュラン(日本化薬(株)製)およびセキュール(日本曹達(株)製)などが挙げられる。酸素透過性容器とともに酸素吸収剤を含ませることが好ましい。このような二重包装とすることで、内部に残存した酸素を完全に除去し、さらに外部からの酸素の侵入を防止する。
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、特にことわりのない限り、以下に示す各工程は、冷却下(4℃)で、無菌的環境での操作とした。ヘモグロビン含有リポソーム調製のための試薬、器具類は、全て滅菌処理されたものを使用し、重金属イオン、パイロジェンフリーの超純水を使用した。
(実験例1)
(1)脱酸素化ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液の調製
<ヘモグロビン溶液の調製>
生理食塩水にて洗浄した赤血球10Lに、ヘモグロビン濃度が5w/v%になるように20mM重炭酸ナトリウム、0.2w/v%トリ-n-ブチルリン酸(TNBP)および0.3w/v%TritonX100の混合溶液を加えて蒸留水を加えて2時間撹拌混合した。これにより、ウィルス不活化処理の施された溶血液を得た。
溶血液を孔径0.45μmフィルターでろ過し、赤血球膜、TNBPおよびTritonX100を除去した。次いで分画分子量100kDの限外ろ過膜により精製した後、ウィルス除去膜(ミリポア社製バイアソルブNFP)により処理後、さらに、30kDの限外ろ過膜によりヘモグロビン濃度を45g/dL以上に濃縮した。ヘモグロビンの酸素親和性をコントロール(抑制)するためにアロステリックエフェクターとして、フィチン酸ナトリウム(イノシトールヘキサリン酸ナトリウム)水溶液を、濃縮後のヘモグロビンに対して等モル加えてヘモグロビン濃度を45g/dLに調整した後、0.2μmフィルターでろ過してヘモグロビン溶液を得た。このヘモグロビン溶液のpHは7.2〜7.6の範囲にあった。
<ヘモグロビン含有リポソームの調製>
水素添加大豆フォスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール、ステアリン酸の1:1:1(モル比)の均一混合脂質粉末に、重量等量の蒸留水を加えて80℃で30分の水和処理を行い、水和脂質を得た。水和脂質に対し4倍重量の上記で得られたヘモグロビン溶液を加え、高速撹拌機(クレアミックス:Mテクニック社製)にて撹拌処理した。
上記で得られた懸濁液を生理食塩水で10倍以上に希釈し、0.45μmのフィルターでろ過した後、さらに300kDの限外ろ過膜により濃縮し、ヘモグロビン濃度6%のヘモグロビン含有リポソーム懸濁液(以下、Hbリポソーム懸濁液と略記)を得た。
<脱酸素化処理>
上記で得られたHbリポソーム懸濁液に、クエン酸でpHを7.4に調整した20w/v%亜硫酸ナトリウム水溶液を、1mL/15mL-懸濁液の量で加えて2時間を置き、脱酸素化処理した。
次いで、300kDの限外ろ過膜を用いて、0.5mg/mL濃度で亜硫酸ナトリウムを含む生理食塩水の加水処理により、Hbリポソームの亜硫酸ナトリウム濃度を0.5mg/mLに近づけるとともに、リポソーム内に取り込まれなかったヘモグロビンを除去した。
(2)Hbリポソーム懸濁液のPEG修飾処理
以下の操作は全て窒素雰囲気下で行った。
クエン酸でpHを7.4に調整した0.5mg/mLの亜硫酸ナトリウムが溶解した生理食塩水に、ポリエチレングリコール(分子量5000)−フォスファチジルエタノールアミン(PEG5000−DSPE)(分子量6075、日本油脂社)を溶解し、ここに、上記脱酸素化されたHbリポソーム懸濁液を加え、PEG5000−DSPE濃度が0.15w/v%、ヘモグロビン濃度が6g/dLの懸濁液(以下、PEG−Hbリポソーム懸濁液)とした。
このPEG−Hbリポソーム懸濁液を、20℃、30℃、37℃、45℃、50℃、60℃の各温度で、所定時間保持した。
<PEG導入率>
上記各温度で所定時間保持後のPEG導入率を表1および図1に示す。
PEG導入率は、液体クロマトグラフィーの測定により、以下の式から求めた。
Figure 2007269646

式中、
サンプルA:上記各温度で所定時間保持したPEG−Hbリポソーム懸濁液。
サンプルB:サンプルAを正確に4.0g遠沈管中に取り、10℃で超遠心分離(50,000G×120分)した。上清を同量の生理食塩水と置換・分散し、外液にPEG5000−DSPEを含まないPEG−リポソーム懸濁液。
DSPE量:各サンプルAおよびBに、内部標準としてオクタデカノフェノン(C2440O;ALDRICH社製)を添加し、クロロホルムで抽出したリポソーム膜成分を、液体クロマトグラフィー(カラム:フェニル化シリカゲル、検出器:示差屈折計、移動相:0.2w/v%酢酸ナトリウム(pH4.5-酢酸)の70v/v%アルコール溶液)で測定した時の各サンプル中のPEG5000−DSPEピークの内部標準オクタデカノフェノンピークに対する面積比で求めた。
上記で求められるPEG導入率は、懸濁液中のPEG5000−DSPE全量に対するリポソーム表面を修飾するPEG5000−DSPE量の割合である。したがって、PEG導入率が90%であれば、懸濁液中に、リポソーム表面に保持されていないフリーのPEG5000−DSPEが10%存在することを意味する。
<フリーヘモグロビン(フリーHb)濃度の測定>
フリーHbは、Hbリポソーム懸濁液中のリポソームカプセルに入っていないフリーのヘモグロビンをいう。
上記超遠心サンプルBの上清に、ヘキサシアノ鉄(III)カリウムおよびシアン化カリウムを加えて、ヘモグロビンをシアンメトヘモグロビンとし、分光光度計を用いて、540nmにおける吸光度(A)を測定した。同様に測定したシアンメトヘモグロビン標準液の吸光度(A)から、下記式により、懸濁液中のフリーHb濃度(mg/mL)を求めた。表1に示す。PEG5000−DSPE溶液を添加して、加温処理前のHbリポソーム懸濁液について上記と同様にして求めたフリーHb濃度の初期値は、0.28mg/mLであった。
Figure 2007269646

式中、
:サンプルの540nmにおける吸光度
:所定ヘモグロビン濃度(g/dL)におけるシアンメトHb標準液の540nmにおける吸光度
比重:サンプルの比重
量:サンプルの量(g)
<Hbのリーク率>
Hbリーク率は、Hbリポソーム懸濁液中のヘモグロビンに対する、上記フリーHbの割合をいう。
PEG修飾工程(2)によるヘモグロビンの漏れ出しを、以下の式により求めたフリーHbのリーク率%で評価した。結果を表1に示す。
Figure 2007269646

この式の分子:フリーHb量=(フリーHb濃度)×(超遠心の上清体積)で算出される。超遠心の上清体積は、超遠心後に沈降した体積の割合(LHbクリット値)から、分取量×(1−LHbクリット値)で求められる。
この式の分母:懸濁液全体のHb量=分取量×(PEG−Hbリポソーム懸濁液全体のHb濃度)で算出される。
上記調製例におけるLHbクリット値は28%であった。またHb濃度は60mg/mLの値である。この場合、Hbリーク率%は、{フリーHb濃度×分取量×(1−0.28)/60×分取量}×100、したがって実際には、{上記で測定されたフリーHb濃度×0.72/60}×100で算出することができる。
フリーHb濃度の初期値=0.28mg/mLである加温処理前のHbリポソーム懸濁液のHbリーク率(初期値)は0.32%であった。
<フリーHbの増加率>
フリーHbの増加率とは、加温処理前のフリーHb濃度(初期値)に対して、ヘモグロビン濃度が変化(増加)した割合をいう。
上記で測定された各フリーHb濃度および初期値から、以下の式により求めた、PEG修飾処理(2)によるフリーHbの増加率を表1に示す。
Figure 2007269646
Figure 2007269646
リポソーム表面のPEG修飾処理において、それ以上経時的な増加が見られなくなるPEG導入率を飽和導入率と称する。飽和導入率は、各処理温度において、リポソーム表面に導入されたPEG5000−DSPEと、外液中のフリーのPEG5000−DSPEの存在が平衡状態に達し、安定した状態と推測されるが、表1に示す温度範囲での飽和導入率は、通常、90%を目安とできる。上記に示されるとおり、30℃以下の低温では、PEGの飽和導入率に達するのに長時間を要し、20℃では48時間保持しても飽和導入率に達しないことがわかる。37℃以上では、12時間以内に飽和導入率に達することがわかる。一方、加温温度45℃までは、導入率が飽和に達するまでヘモグロビンの漏れ出しは認められなかった。50℃以上では、僅かではあるがヘモグロビンの漏れ出しが発生し、経時的に増加することがわかった。60℃では、1時間でフリーヘモグロビン濃度が初期値に対し2倍以上に増加した。
ヘモグロビン含有リポソームのPEG修飾における処理条件と導入率との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. リン脂質二重膜で形成される閉鎖小胞の内水相に薬物を含むリポソームの懸濁液を準備し、該リポソームの懸濁液を、親水性高分子を含む表面修飾剤の存在下、30℃超ないし50℃未満の温度で加熱する、表面修飾リポソームの製造方法。
  2. 前記加熱を6〜30時間行う請求項1に記載の方法。
  3. 前記表面修飾剤の使用量の90%以上が前記加熱によりリポソームに導入される請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記薬物がヘモグロビンである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られる、内水相に薬物を含み、外表面が親水性高分子で表面修飾されたリポソーム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011246464A (ja) * 2010-04-28 2011-12-08 Wakamoto Pharmaceutical Co Ltd ジクロフェナクナトリウムを封入した後眼部到達用ポリマーコーティングリポソーム

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