JP3925665B2 - ヘモグロビン含有リポソーム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、生体内に投与するヘモグロビン含有リポソームに関する。本発明は、更に詳しくは生体内に投与したときのヘモグロビン経時メト化を著しく抑制したヘモグロビン含有リポソームに関する。
【0002】
【従来の技術】
血液の代用と成り得る薬剤として、ゼラチン分解産物の溶液、デキストラン溶液、ヒドロキシエチルスターチ(HES)溶液等の血漿増量剤が使用されている。しかし、これらの代用血液は大量出血等の緊急時に血管内の血漿量を補充し、循環動態を維持する目的で開発された製剤で、天然赤血球の酸素運搬能を代替えする事はできない。近年、こうした血漿増量剤とは異なり、天然赤血球類似の酸素運搬能を保持した代用血液として、人工酸素運搬体の研究開発が進められている。
【0003】
当初の開発段階にあっては、フッ化炭素エマルジョン(perfluorochemical:PFC[通称:fluorocarbon])の酸素溶解能力(水の20倍)を利用した化学合成品が検討されたが、十分な酸素運搬量の不足や体内蓄積性などの問題点が危惧されている。
【0004】
一方、酸素運搬体として天然赤血球由来ヘモグロビンを利用する試みも行われているが遊離ヘモグロビンの生体内半減期は極端に短く(4時間以内)、末梢への酸素運搬能も低く、腎毒性等の問題点が指摘されており、実用化は難しい。最近、こうした遊離ヘモグロビン溶液の持つ問題点を改善した修飾ヘモグロビン(安定化ヘモグロビン、重合ヘモグロビンetc.)やリポソーム化ヘモグロビンの開発検討が中心と成りつつある。
【0005】
その例として、ヘモグロビンを含有するリポソームとして薄膜法により製造されたものがミラー(Miller)らによって報告されている(米国特許第4,133,874号)。この方法によればヘモグロビン含有リポソームは、リポソーム形成脂質をクロロホルム等の適当な有機溶媒に溶解し、得られた溶液から溶媒を留去して脂質の薄膜をつくり、この薄膜に溶血ヘモグロビン水溶液を加え、激しく撹拌して多重層リポソームを形成し、次にこれを超音波処理することによって得られる。この方法よれば、ヘモグロビンが酸素に触れる時間が少ないのでヘモグロビンの変性が比較的少ない利点がある。
【0006】
しかしながら、これらヘモグロビンを原料とした人工赤血球の酸素運搬能はヘモグロビンと酸素分子との可逆的結合により生じ、ヘム鉄(プロトヘム)の原子価が2価の状態(Fe2+)でのみ保たれる機能である。ヘモグロビンはその可逆的酸素化(oxigenation)の過程で徐々に酸化(oxidation)され酸素結合能を持たない3価のメトヘモグロビン(Fe3+)に変化する。このため正常赤血球は、これらの酸化作用に対し、ヘモグロビンが酸化されるのを抑制する機構を持っている。しかし、こうした天然赤血球の酸化抑制機構は、人工酸素運搬体として調製されたヘモグロビン溶液においては認められず、ヘモグロビン酸化物の占める割合は経時的に増加する。このため、天然ヘモグロビンならびにその誘導体を医薬品や試薬として使用する場合には、酸化防止剤あるいは還元剤を用いる必要があった。亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等の物質が知られているが、、生体に対して有害となる。また、還元型グルタチオン、アスコルビン酸、トコフェロール類、糖類、アミノ酸類なども一般に用いられる。しかしながら、これらの添加物の抑制効果は低く、特に体内投与後の経時的な酸化抑制効果は不十分であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を鑑み、ヘモグロビンの経時酸化抑制、特に、体内に投与した時のヘモグロビンの酸化が抑制されたヘモグロビン含有リポソームを提供するものである。
【0008】
【問題を解決するための手段】
この上記課題は下記の構成からなる、本発明のヘモグロビン含有リポソームにより解決される。
【0009】
(1)脂質からなるリポソーム内にチトクロームb5還元酵素の酵素活性を有するヘモグロビン溶液を取り込んでなるヘモグロビン含有リポソームにおいて、前記ヘモグロビン溶液に、アデニン、イノシンおよびグルコースとともに、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりなる群の少なくとも1つが含まれていることを特徴とするヘモグロビン含有リポソーム。
【0010】
(2)脂質からなるリポソーム内にチトクロームb5還元酵素の酵素活性を有するヘモグロビン溶液を取り込んでなるヘモグロビン含有リポソームにおいて、グルコースとアデニンとイノシンとATPが添加されている前記ヘモグロビン溶液に、さらに還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以後、NADHと称す)および酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以後、NADと称す)よりなる群の少なくとも1つが含まれてなることを特徴とする上記(1)に記載のヘモグロビン含有リポソーム。なお本明細書では、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸をNADPHと称し、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸をNADPと称す。
【0011】
(3)グルコースの量(重量モル比)がヘモグロビン溶液中にヘモグロビン1モルに対して1〜20モル含まれていることを特徴とする上記(1)乃至(2)に記載のヘモグロビン含有リポソーム。
【0012】
(4)アデニンの量(重量モル比)がヘモグロビン溶液中にヘモグロビン1モルに対して0.1〜1モル、およびイノシンの量(重量モル比)がヘモグロビン溶液中にヘモグロビン1に対して0.1〜1モル含まれていることを特徴とする上記(1)および(2)に記載のヘモグロビン含有リポソーム。
【0013】
本発明はヘモグロビン含有リポソームの酸化変性に対する問題を解決するために、アデニン、イノシンおよびグルコースを添加し、経時的に生成するヘモグロビン酸化物を還元することにより、ヘモグロビン経時酸化に伴う機能低下を防止するものである。
【0014】
また本発明はヘモグロビン含有リポソームの酸化変性に対する問題を解決するために、グルコース、アデニン、イノシンおよびATPを添加し、経時的に生成するヘモグロビン酸化物を還元することにより、ヘモグロビン経時酸化に伴う機能低下を防止するものである。
【0015】
本発明においてグルコースの量(重量モル比)はヘモグロビン1モルに対して、1〜20モル、好ましくは2〜15モル、より好ましくは2〜10モルである。1モルより少ないとヘモグロビンのメト化防止効果が少なく、また20モルより多いと溶液の流動性の問題でリポソーム化効率があまり良くはない。
【0016】
また本発明においてアデニンおよびイノシンの量(重量モル比)は、各々ヘモグロビン1モルに対して、0.1〜1モル、好ましくは0.1〜0.5モル、より好ましくは0.2〜0.5モルである。0.1モルより少ないとヘモグロビンのメト化防止効果が少なく、また1モルより多いと溶液の流動性の問題でリポソーム化効率があまり良くはない。
【0017】
本発明に使用するヘモグロビンは、赤血球を常法によって溶血し分画分子量1万の膜を使用した限外濾過により30%(W/W)以上に濃縮したものに所定量のリンゴ酸を添加し混和したものが使用される。ヘモグロビンは水溶液の形態で取り込まれ、その濃度は30〜60%(W/W)が好ましい。
【0018】
本発明において、ヘモグロビン溶液にイノシトールヘキサホスフェートなどの有機リン化合物を末梢における酸素放出量を調整するため、加えると良い。
【0019】
本発明において使用する赤血球は、本発明のヘモグロビン含有リポソームをヒトに使用する場合、ヒト由来のものであれば特に問題はなく、また、新鮮なもの程良いが、採血後4℃以下で50日以上保存したものでも充分に使用できる。
【0020】
また本発明において、ヘモグロビン溶液にはグルコースとアデニンとイノシン、またはグルコースとアデニンとイノシンとATPのみならず、これらに加えてNADH、NAD、NADPH、NADPのうちの少なくとも1つを加えても良い。その量(重量モル比)はヘモグロビン1モルに対して0.1〜25モルである。
【0021】
本発明に用いるリポソームの脂質としてはリポソームが形成できるものであれば特に制限はなく、天然のもの及び合成のものが利用できる。その例としては、レシチン(=ホスファチジルコリン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロース、スフィンゴミエリン、カルジオリビン等、およびこれらを常法に従って水素添加したものがあげられ、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明においては、リポソーム膜の構成成分として所望によりステロール類や脂肪酸等の電荷付与物質を添加して、膜構造の強化や体内消失時間の調節を図ることができる。
【0023】
本発明において、リポソームにはその酸化を防止するためにトコフェロール同族体すなわちビタミンEを添加してもよい。トコフェロールには、α,β,γ,δの4個の異性体が存在するが、本発明においてはいずれの異性体も使用することができる。トコフェロールの添加量はリポソーム膜の総脂質に対して0.5〜4.5モル%、好ましくは1.0〜2.0モル%である。
【0024】
本発明のヘモグロビン含有リポソームは、洗浄赤血球を溶血後、赤血球膜成分を除去し、30〜60(W/W)%の濃縮ヘモグロビン溶液に、グルコースとアデニンとイノシン、またはグルコースとアデニンとイノシンとATPを添加して混和させ、ヘモグロビン溶液中の酵素失活が無い緩和な条件下で高圧吐出処理によりリポソーム化することによって製造することができる。
【0025】
なお、前記酵素失活が無い緩和な条件下とは、50〜1800kg/cm2、好ましくは80〜1200kg/cm2の圧で細隙から1回〜数回吐出させることである。また、処理温度は40℃以下に保持する。具体的な例としては、高圧吐出型乳化機に、マイクロフルイダイザー 110Y[Microfluidizer 110Y](マイクロフルイダイザー社[Microfluidics Co.])を用いる場合には480〜1450kg/cm2、パール細胞破砕器(パール社[Parr Co.]) を用いる場合には80〜200kg/cm2であり、いずれも40℃以下、好ましくは氷冷下で実施する。
【0026】
天然赤血球中のヘモグロビンは、経時酸化によりメトヘモグロビンとなるが、赤血球酵素の作用により元のヘモグロビンへ還元され、可逆的にヘモグロビン−メトヘモグロビンの反応が起こっている。つまり、ヘモグロビンがメト化される際、その酵素反応(NADH−チトクロームb5還元酵素など)と同時に天然赤血球中のNAD、NADPが還元され、NADH、NADPHを生じる。この生じたNADH、NADPHは可逆的に酸化され、それと同時にメト化ヘモグロビンはヘモグロビンに還元される。
【0027】
しかしながら、本発明のようにリポソームに含有させるために天然赤血球外に取り出されたヘモグロビンはこのようなメト化ヘモグロビン還元機構が働かなくなり、一度メト化したヘモグロビンは再びヘモグロビンに戻ることができず、酸素運搬機能を失ってしまう。
【0028】
本発明者らは、これはリポソーム化の段階でヘモグロビンにかかる物理的エネルギーあるいは熱によって、還元機構に関与する酵素が失活してしまうのが原因と考え、リポソーム化処理条件を検討し、ヘモグロビン溶液中の還元機構に関与する酵素が維持できる50〜1600kg/cm2、好ましくは80〜1200kg/cm2の圧で細隙から1回〜数回吐出させるなどの穏やかな製造条件を設定してヘモグロビン含有リポソームを製造した。しかしながら、これらのヘモグロビン含有リポソームでもなお、体内投与後のヘモグロビン経時酸化は進行した。
【0029】
しかし、本発明者らは鋭意研究を行った結果、上記のような穏やかな条件で製造するとき、グルコースとアデニンとイノシン、またはグルコースとアデニンとイノシンとATPをヘモグロビン溶液中に共存させることによって、体内投与後のヘモグロビン経時酸化を顕著に抑制できることを発見した。
【0030】
そのメカニズムは次のように考えられる。つまり、上記のような穏やかな条件でリポソーム化を行えば、ヘモグロビン溶液中の酵素は失活することはないが、天然赤血球から膜成分を除去し、ヘモグロビンを取り出す過程、または精製、濃縮の過程で分子量1万以下の酵素基質や補酵素類等の酵素反応に必要な物質も失われてしまい、結果的にメトヘモグロビン還元酵素反応が消失してしまう。そこで、グルコースとATPを生成するアデニンとイノシン、またはグルコースとアデニンとイノシンとATPを添加すると、まずアデニン、イノシン、無機リン酸から生じたATPまたは添加したATPと、NADを補酵素としてグルコースの解糖系が動きだしその結果として天然の赤血球と同様にNADおよびNADPからNADHおよびNADPHへの還元反応も起こるためリポソーム内に生じたメトヘモグロビンもこのNADH−チトクロームb5還元酵素により還元され、ヘモグロビンの経時酸化の抑制にも寄与しているものと推定される。
【0031】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
【0032】
なお、特に明示しない場合、調製の各工程は冷蔵状態(4℃)に維持し、無菌的環境で実施した。また、試薬・器具類は滅菌処理を行い、重金属イオン・無機イオン等の残留の無い無菌的超純水(15megΩ℃・cm at 25℃以上(パイロジェンフリー))を調製に使用した。
【0033】
(比較例1)
<1> 赤血球膜除去ヘモグロビン溶液(SFH)の調製
濃厚赤血球製剤15L.を、連続遠心機を用いて生理食塩水で洗浄し、混在する血小板・白血球等の血漿成分を除去した洗浄赤血球を得た。この洗浄赤血球5L.に対して純水10L.を添加し溶血させた。孔径0.45μmの血漿分離器及び分画分子量30万(孔径5nm)のフィルターを用いて赤血球膜成分を除去し、ヘモグロビン濃度8%(w/v)の赤血球膜除去ヘモグロビン溶液(SFH溶液)、12L.を回収した。得られたSFH溶液は重炭酸ナトリウムを添加しpHを7.4に調整した後、ホローファイバー型ダイアライザー(テルモ社製、CL−C8N)を用いて純水に対して透析を行った後、限外濾過により濃縮し、ヘモグロビン濃度50%(w/v)の濃縮SFH溶液、1.8L.を得た。
【0034】
<2> 濃縮SFH溶液への試薬添加
上述の工程を経て調整した濃縮SFH溶液200mlに対してβ−NAD(1mM、133mg)、D−グルコース(100mM、3.6g)、ATP−Na(1mM、110mg)、塩化マグネシウム・6水和塩(1mM、40mg)、リン酸2水素カリウム(9mM、247mg)、リン酸水素2ナトリウム(11mM、310mg)、フィチン酸(3mM、396mg)を添加し均一になるように混合した。
【0035】
<3> 濃縮SFH溶液のリポソーム化
水素添加率90%以上の精製大豆由来フォスファチジルコリン(HSPC)、コレステロール(Chol)、ミリスチン酸(MA)、トコフェロール(Toc)の均一混合粉末[HSPE:Chol:MA:Toc=7:7:2:0.28]45gに45mlの純水を加え、60−70℃に加温し膨潤させた。この膨潤脂質に<2>で調製したSFHを加え撹拌混合(15秒間)した。この脂質−濃縮SFH混合液をマイクロフルイダイザー(Microfluidics co., Microfluidizer 110Y)を用いて、氷冷下、12000psi(約844kg/cm2)の圧力でリポソーム化した。
【0036】
<4> ヘモグロビン含有リポソームの精製
上記<3>の処理液に対して、等量のデキストラン加生理食塩水(3%(w/v))を加え、遠心分離(10000rpm(13000g)×30分、at4℃)を行った。効率良くヘモグロビンを含有したリポソームは、この遠心処理により沈殿物として回収された。リポソーム化されなかった遊離ヘモグロビン及び原料脂質を含む上澄はデカンテーションもしくは吸引により除去した、以上の洗浄操作を上澄中のヘモグロビンが肉眼的に認められなくなるまで繰り返した後、0.45μmのデュラポアメンブランフィルター(Millipore Ltd., Minitan system)を用いて濾過し、懸濁液中に混在する粗大粒子を除去した。濾液をホローファイバー型ダイアライザー(テルモ社製、CL−C8N)により限外濾過、濃縮しヘモグロビン濃度5%(w/v)の精製ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液600mlを得た。
【0037】
(実施例1)
比較例1−<1>で調製した濃縮SFH溶液200mlに対してβ−NAD(1mM、133mg)、D−グルコース(100mM、3.6g)、アデニン(2mM、54mg)、イノシン(5mM、268mg)、塩化マグネシウム・6水和塩(1mM、40mg)、リン酸2水素カリウム(9mM、247mg)、リン酸水素2ナトリウム(11mM、310mg)、フィチン酸(3mM、396mg)を添加し均一になるように混合し、比較例1同様の方法でリポソーム化、精製、濃縮し、ヘモグロビン濃度5%(w/v)の精製ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液600mlを得た。
【0038】
(比較例2)
比較例1に準じて調製した濃縮SFHにたいしフィチン酸(3mM、396mg)のみを添加し、同様な方法でリポソーム化、精製し、ヘモグロビン濃度5%(w/v)のコントロール精製ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液600mlを得た。
【0039】
(試験例1)
リポソーム内ATP量の測定
上記ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液10mlを37℃にてインキュベート、経時的に0.5mlサンプリングし、これに10%(w/v)・Triton X100−HEPES緩衝液(0.5M、pH7.4)2mlを加え撹拌後、さらにフレオン2mlを添加し約1分間撹拌した。この溶液を3000rpmで15分間遠心処理し、上清1.8mlを分画分子量5000の限外濾過膜にて除蛋白した。この除蛋白した溶液をODSカラム(センシュウ科学、ODS−1301−N)を用いた高速液体クロマトグラフィーによりATP量の定量を行った。結果を図1に示す。
【0040】
(試験例2)
リポソーム経時メト化の測定(in vivo)
ヘモグロビン濃度が5%(w/v)の上記ヘモグロビン含有リポソーム懸濁液1mlを、ICR系雄性マウス(5週令)の尾静脈から投与し、24時間経過後、腹大動脈から全血を回収し、下記の方法で酸化率を算出した。
【0041】
ヘモグロビン含有リポソームは、浸透圧差に対して強く、この特徴を利用して天然赤血球と分離した。すなわち、ヘパリン添加全血に8〜10倍容の純水を添加、撹拌しマウス由来赤血球を溶血後、18000rpmで30分間(4℃)高速遠心を行いヘモグロビン含有リポソームを沈殿物として回収した。この操作を3回繰り返し、完全に血液成分を洗浄除去した。得られた試料に10%(w/v)・Triton X100−HEPES緩衝液(0.5M、pH7.4)2mlを加え撹拌後、さらにフレオン2mlを添加し約1分間撹拌した。この溶液を3000rpmで15分間遠心処理し、上清1.8mlに対しHEPES緩衝液(0.5M、pH7.4)を1ml加えて調製した溶液の可視領域(700nm〜460nm)における吸収スペクトルを測定し、酸化率を算出した。結果を表1及び図2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明のヘモグロビン含有リポソームは、リポソーム内のATPの量が多いためグルコースが有効に消費され、その過程でへモグロビンがメト化する際に生じたNADHおよびNADPHがNADまたはNADPに酸化され、同時にメト化されたヘモグロビンが元のヘモグロビンに還元される。
【0044】
そのため、本発明のヘモグロビン含有リポソームは、優れたヘモグロビンのメト化抑制能を有し、人工赤血球として有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 リポソーム内のATP量の測定結果を示す。
【図2】 リポソーム内のヘモグロビンの経時メト化の測定結果を示す。
Claims (1)
- 脂質からなるリポソーム内にチトクロームb5還元酵素の酵素活性を有するヘモグロビン溶液を取り込んでなるヘモグロビン含有リポソームにおいて、前記ヘモグロビン溶液に、アデニン、イノシンおよびグルコースとともに、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドおよび酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドよりなる群の少なくとも1つが含まれていることを特徴とするヘモグロビン含有リポソーム。
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