JPH06306553A - 耐孔食性に優れたステンレス鋼 - Google Patents
耐孔食性に優れたステンレス鋼Info
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- JPH06306553A JPH06306553A JP11783493A JP11783493A JPH06306553A JP H06306553 A JPH06306553 A JP H06306553A JP 11783493 A JP11783493 A JP 11783493A JP 11783493 A JP11783493 A JP 11783493A JP H06306553 A JPH06306553 A JP H06306553A
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- pitting corrosion
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 塩素イオン存在下で使用する高Cr、高Mo
オーステナイトステンレス鋼において、Cr、Mo、N
の含有量を多くしても、熱間加工性および耐食性の劣化
をまねく好ましくない金属間化合物の生成をを少なくす
る。 【構成】 重量%でC:0.05%以下、Si:1.0
%以下、Mn:6.0%以下、Cr:15.0〜30.
0%、Ni:22.0〜35.0%、Mo:7.0〜1
2.0%、N :0.15〜0.50%、Al:0.0
1%以下、Nb:0.5%以下を含有し、残部Feおよ
び不可避的不純物よりなり、かつ式 40≦Cr+3M
o+10N≦60を満足する成分組成であるガス噴霧ま
たは水噴霧によるステンレス鋼アトマイズ粉末を加工性
の良好な材質であるカプセルに充填した充填体の固化工
程により固化形成してなる耐食性に優れたステンレス鋼
で、図1の顕微鏡写真に見られるように金属間化合物の
析出は観察されない。
オーステナイトステンレス鋼において、Cr、Mo、N
の含有量を多くしても、熱間加工性および耐食性の劣化
をまねく好ましくない金属間化合物の生成をを少なくす
る。 【構成】 重量%でC:0.05%以下、Si:1.0
%以下、Mn:6.0%以下、Cr:15.0〜30.
0%、Ni:22.0〜35.0%、Mo:7.0〜1
2.0%、N :0.15〜0.50%、Al:0.0
1%以下、Nb:0.5%以下を含有し、残部Feおよ
び不可避的不純物よりなり、かつ式 40≦Cr+3M
o+10N≦60を満足する成分組成であるガス噴霧ま
たは水噴霧によるステンレス鋼アトマイズ粉末を加工性
の良好な材質であるカプセルに充填した充填体の固化工
程により固化形成してなる耐食性に優れたステンレス鋼
で、図1の顕微鏡写真に見られるように金属間化合物の
析出は観察されない。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Nを含有した高Cr高
Moオーステナイトステンレス鋼に関するものであり、
耐孔食性に優れていることから、発電プラントの復水器
や化学プラントの熱交換器の管材としての利用が考えら
れる。
Moオーステナイトステンレス鋼に関するものであり、
耐孔食性に優れていることから、発電プラントの復水器
や化学プラントの熱交換器の管材としての利用が考えら
れる。
【0002】
【従来の技術】塩素イオンが存在する環境下でステンレ
ス鋼を使用した場合に問題とされてきた孔食は、Moや
Nを添加することにより改善させることが知られてき
た。そのため、溶製プロセスによるNを含有した高C
r、高Moオーステナイトステンレス鋼は、化学プラン
ト等、局部腐食性が要求される各種環境下で広く使用さ
れている。
ス鋼を使用した場合に問題とされてきた孔食は、Moや
Nを添加することにより改善させることが知られてき
た。そのため、溶製プロセスによるNを含有した高C
r、高Moオーステナイトステンレス鋼は、化学プラン
ト等、局部腐食性が要求される各種環境下で広く使用さ
れている。
【0003】しかし、より一層苛酷な環境下での使用を
必要としつつある現在の状況を考慮し、Cr、Mo、N
の含有量をさらに多くすると、好ましくない金属間化合
物(例えばσ相やμ相等)を生成して熱間加工性および
耐食性の劣化をまねいていた。
必要としつつある現在の状況を考慮し、Cr、Mo、N
の含有量をさらに多くすると、好ましくない金属間化合
物(例えばσ相やμ相等)を生成して熱間加工性および
耐食性の劣化をまねいていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の溶製プ
ロセスにおけるNを含有した高Cr、高Moオーステナ
イトステンレス鋼の問題点を解消した本発明鋼を提供す
ることで、溶製プロセスにおける凝固時のマクロ偏析を
極めて少なくし、Cr+3Mo+10N値を、溶製プロ
セスでは添加できなかったレベルまで高くしても好まし
くない化合物、例えば熱間加工性及び冷間加工性を劣化
させるσ相や偏析に起因して耐食性を劣化させるμ相等
の金属間化合物の析出を抑制する。また、ミクロ的に偏
析しやすいMo、Cu等を容易に均一微細に固溶させて
ミクロ偏析の発生を抑え、塑性加工における疵の発生を
減少して、歩留りを向上させることができる。
ロセスにおけるNを含有した高Cr、高Moオーステナ
イトステンレス鋼の問題点を解消した本発明鋼を提供す
ることで、溶製プロセスにおける凝固時のマクロ偏析を
極めて少なくし、Cr+3Mo+10N値を、溶製プロ
セスでは添加できなかったレベルまで高くしても好まし
くない化合物、例えば熱間加工性及び冷間加工性を劣化
させるσ相や偏析に起因して耐食性を劣化させるμ相等
の金属間化合物の析出を抑制する。また、ミクロ的に偏
析しやすいMo、Cu等を容易に均一微細に固溶させて
ミクロ偏析の発生を抑え、塑性加工における疵の発生を
減少して、歩留りを向上させることができる。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めの手段は、ガス噴霧ないし水噴霧により急冷凝固され
ることにより得られたミクロ偏析の非常に少ない均一微
細な凝固組織の下記の化学成分のアトマイズ粉末を、加
工性の良好な材質のカプセル、例えば軟鋼のカプセルに
充填した充填体を熱間押出し単独、冷間静水圧プレスま
たは熱間静水圧プレスと熱間押出しの組合せ、若しくは
熱間静水圧プレスと鍛造、圧延の組合せのいずれかの固
化工程(この一連のプロセスを粉末プロセスと称す。)
によって固化成形して成るオーステナイトステンレス鋼
を製造することである。
めの手段は、ガス噴霧ないし水噴霧により急冷凝固され
ることにより得られたミクロ偏析の非常に少ない均一微
細な凝固組織の下記の化学成分のアトマイズ粉末を、加
工性の良好な材質のカプセル、例えば軟鋼のカプセルに
充填した充填体を熱間押出し単独、冷間静水圧プレスま
たは熱間静水圧プレスと熱間押出しの組合せ、若しくは
熱間静水圧プレスと鍛造、圧延の組合せのいずれかの固
化工程(この一連のプロセスを粉末プロセスと称す。)
によって固化成形して成るオーステナイトステンレス鋼
を製造することである。
【0006】上記のステンレス鋼アトマイズ粉末の化学
成分は、重量%で、C:0.05%以下、Si:1.0
%以下、Mn:6.0以下、Cr:15.0〜30.0
%、Ni:22.0〜35.0%、Mo:7.0〜1
2.0%、N:0.15〜0.50%、Al:0.01
%未満、Nb:0.5%以下を含有し、残部Fe及び不
可避的不純物よりなり、かつ下記の数式1を満足する成
分組成であることを特徴とし、または、以上のステンレ
ス鋼アトマイズ粉末の化学成分に追加してCu:3.0
%以下を含有するものである。
成分は、重量%で、C:0.05%以下、Si:1.0
%以下、Mn:6.0以下、Cr:15.0〜30.0
%、Ni:22.0〜35.0%、Mo:7.0〜1
2.0%、N:0.15〜0.50%、Al:0.01
%未満、Nb:0.5%以下を含有し、残部Fe及び不
可避的不純物よりなり、かつ下記の数式1を満足する成
分組成であることを特徴とし、または、以上のステンレ
ス鋼アトマイズ粉末の化学成分に追加してCu:3.0
%以下を含有するものである。
【0007】
【数1】40≦Cr+3Mo+10N≦60
【0008】
【作用】本発明鋼の耐孔食性に優れたステンレス鋼は、
ガス噴霧ないし水噴霧により急冷凝固されることにより
得られたミクロ偏析の非常に少ない均一微細な凝固組織
のアトマイズ粉末を用いて、粉末プロセスにより固化成
形して得たものであるので溶製プロセスによるマクロ偏
析は発生せず、またσ相やμ相などの好ましくない金属
間化合物の析出が抑えられ、Cr+3Mo+10N値を
高くすることができ、耐食性が非常に向上している。ま
た、粉末プロセスによるので、ミクロ的に偏析しやすい
Mo、Cuなども容易に均一微細に固溶させることがで
き、諸特性が向上している。
ガス噴霧ないし水噴霧により急冷凝固されることにより
得られたミクロ偏析の非常に少ない均一微細な凝固組織
のアトマイズ粉末を用いて、粉末プロセスにより固化成
形して得たものであるので溶製プロセスによるマクロ偏
析は発生せず、またσ相やμ相などの好ましくない金属
間化合物の析出が抑えられ、Cr+3Mo+10N値を
高くすることができ、耐食性が非常に向上している。ま
た、粉末プロセスによるので、ミクロ的に偏析しやすい
Mo、Cuなども容易に均一微細に固溶させることがで
き、諸特性が向上している。
【0009】本発明の耐孔食性に優れたステンレス鋼の
成分組成の添加理由および限定理由を以下に述べる。
成分組成の添加理由および限定理由を以下に述べる。
【0010】Cは溶融鋼中のNの溶解度を著しく減少さ
せ、さらに耐食性の劣化の原因となる有害な炭化クロム
の析出傾向を増加させるため、極力低減する方が望まし
い。本発明においては、0.05%を超えると特にこの
傾向が顕著になる。よって、C量は0.05%以下に制
限する。
せ、さらに耐食性の劣化の原因となる有害な炭化クロム
の析出傾向を増加させるため、極力低減する方が望まし
い。本発明においては、0.05%を超えると特にこの
傾向が顕著になる。よって、C量は0.05%以下に制
限する。
【0011】Siは耐孔食性の改善に有効であるが、本
発明においては、1.0%を超えると金属間化合物が析
出する傾向を増大し、冷間加工性を阻害する。よって、
Si量は1.0%以下に制限する。
発明においては、1.0%を超えると金属間化合物が析
出する傾向を増大し、冷間加工性を阻害する。よって、
Si量は1.0%以下に制限する。
【0012】Mnは脱酸剤として使用される。さらに、
耐孔食性向上元素として添加されているNの固溶量を増
大させる。しかし、本発明においては、6.0%を超え
てMn量が高いと耐孔食性を低下させるMnSを生成す
る原因となるため、6.0%以下に制限する。
耐孔食性向上元素として添加されているNの固溶量を増
大させる。しかし、本発明においては、6.0%を超え
てMn量が高いと耐孔食性を低下させるMnSを生成す
る原因となるため、6.0%以下に制限する。
【0013】Crは耐孔食性、耐隙間腐食性および一般
耐食性の改善にかくことのできない重要な成分である。
この様な効果を維持するには、約15%のCr量が必要
であり、15%未満では所望の耐食性は得られない。一
方30%を超えると前述した好ましくない金属間化合物
が生成され、冷間加工性及び耐食性を劣化させる。よっ
て、Cr量は15.0〜30.0%に制限する。
耐食性の改善にかくことのできない重要な成分である。
この様な効果を維持するには、約15%のCr量が必要
であり、15%未満では所望の耐食性は得られない。一
方30%を超えると前述した好ましくない金属間化合物
が生成され、冷間加工性及び耐食性を劣化させる。よっ
て、Cr量は15.0〜30.0%に制限する。
【0014】Niは耐食性を向上させる元素でありま
た、オーステナイト生成元素として必要である。このた
め金属間化合物の析出をさまたげるためには、Ni量は
少なくとも、22%以上必要である。一方、Niは高価
な合金化元素であり、また35%を超えると溶融鋼中の
Nの溶解度を低下させ、固体状態で炭化物が析出する傾
向を増大する。よって、Ni量は22.0〜35.0%
に制限する。
た、オーステナイト生成元素として必要である。このた
め金属間化合物の析出をさまたげるためには、Ni量は
少なくとも、22%以上必要である。一方、Niは高価
な合金化元素であり、また35%を超えると溶融鋼中の
Nの溶解度を低下させ、固体状態で炭化物が析出する傾
向を増大する。よって、Ni量は22.0〜35.0%
に制限する。
【0015】MoはCrと同様、耐孔食性、耐隙間腐食
性の改善に欠くことのできない重要な成分であって、そ
の含有量が7.0%未満では海水のようなCl- 濃度の
高い環境下における耐食性が劣化する。一方、Mo含有
量が多くなるほど耐食性は向上するが12.0%を超え
て含有させると金属間化合物が生成し、冷間加工性およ
び耐食性を劣化させる。従って、Mo量は7.0〜1
2.0%に制限する。
性の改善に欠くことのできない重要な成分であって、そ
の含有量が7.0%未満では海水のようなCl- 濃度の
高い環境下における耐食性が劣化する。一方、Mo含有
量が多くなるほど耐食性は向上するが12.0%を超え
て含有させると金属間化合物が生成し、冷間加工性およ
び耐食性を劣化させる。従って、Mo量は7.0〜1
2.0%に制限する。
【0016】NはMo、Cr、Niとともに耐孔食、耐
隙間腐食性を向上させる効果があるが、0.15%未満
では効果は少ない。また、0.50%が鋼塊に固溶する
限度である。よって、N量は0.15〜0.50%とし
た。
隙間腐食性を向上させる効果があるが、0.15%未満
では効果は少ない。また、0.50%が鋼塊に固溶する
限度である。よって、N量は0.15〜0.50%とし
た。
【0017】Alは脱酸剤として有効である。しかし耐
孔食性の劣化の原因となることが考えられるため、0.
01%未満に制限する。
孔食性の劣化の原因となることが考えられるため、0.
01%未満に制限する。
【0018】NbはCを固定し耐食性を向上させる効果
があるが、0.5%を超えて添加すると前述した好まし
くない金属間化合物の形成を促進し、冷間加工性および
耐食性を劣化させる。よって、Nb量は0.5%以下に
制限する。
があるが、0.5%を超えて添加すると前述した好まし
くない金属間化合物の形成を促進し、冷間加工性および
耐食性を劣化させる。よって、Nb量は0.5%以下に
制限する。
【0019】Cuは高Cr高Ni高Moにおいて耐酸性
を向上させる効果がある。しかし、3.0%を超えると
冷間加工性に悪影響を与えるため、3.0%以下に制限
する。
を向上させる効果がある。しかし、3.0%を超えると
冷間加工性に悪影響を与えるため、3.0%以下に制限
する。
【0020】Cr+3Mo+10N値を40〜60%に
限定した理由は、従来使用されている溶製プロセスで製
造された合金は、Cr+3Mo+10N値が約40%以
上になると、凝固時の偏析等に起因し、前述した好まし
くない金属間化合物が生成されやすくなる。しかし、粉
末プロセスにおいては、アトマイズ時に急冷凝固するこ
とによってミクロ偏析の非常に少ない均一微細な凝固組
織を呈したステンレス鋼粉末を製造することにより、前
述した好ましくない金属間化合物の生成を抑制できるた
め、さらに高Cr、高Mo化することが可能となった。
これにより、Cr+3Mo+10N値が、従来溶製プロ
セスでは到達できなかったレベルまで添加できることが
可能となった。しかし、60%を超えると粉末プロセス
においても好ましくない金属間化合物の生成がおこりや
すくなるため60%以下に制限する。
限定した理由は、従来使用されている溶製プロセスで製
造された合金は、Cr+3Mo+10N値が約40%以
上になると、凝固時の偏析等に起因し、前述した好まし
くない金属間化合物が生成されやすくなる。しかし、粉
末プロセスにおいては、アトマイズ時に急冷凝固するこ
とによってミクロ偏析の非常に少ない均一微細な凝固組
織を呈したステンレス鋼粉末を製造することにより、前
述した好ましくない金属間化合物の生成を抑制できるた
め、さらに高Cr、高Mo化することが可能となった。
これにより、Cr+3Mo+10N値が、従来溶製プロ
セスでは到達できなかったレベルまで添加できることが
可能となった。しかし、60%を超えると粉末プロセス
においても好ましくない金属間化合物の生成がおこりや
すくなるため60%以下に制限する。
【0021】
【実施例】表1に本発明鋼、比較鋼及び従来鋼の化学成
分を示す。A1〜A8が発明鋼であり、B9〜B16が
比較鋼、C17〜C18が従来鋼である。従来鋼のC1
7はSUS317J4L、C18はAL6X相当のもの
である。
分を示す。A1〜A8が発明鋼であり、B9〜B16が
比較鋼、C17〜C18が従来鋼である。従来鋼のC1
7はSUS317J4L、C18はAL6X相当のもの
である。
【0022】試験に用いた固化形成してなる耐孔食性に
優れたステンレス鋼は以下のプロセスで製造した。即
ち、真空溶解により100kgの溶解母材を作製し、そ
の母材を再度溶解しアトマイズして第1表に示す化学成
分のステンレス鋼粉末を製造した。製造されたステンレ
ス鋼粉末を粒径500μm 以下に分級し加工性の良好な
外径149mmのカプセルに充填し、真空脱気を行い1×
10-1Torr程度とし、その後封口して粉末を充填し
た充填体を作製した。これらの充填体を一部は冷間静水
圧プレス、一部は熱間静水圧プレスし、次いで雰囲気炉
にて1100〜1250℃に均一加熱を行い、熱間押出
にて外径50mmの棒状の固化成形体を作製した。また、
熱間静水圧プレスしたものは熱間鍛造および熱間圧延し
た。その後、酸洗にてカプセルを溶解、除去し1160
℃にて固溶化処理を行い、最終的に各試験に必要とされ
る試験片形状に加工し、孔食試験および冷間圧縮試験を
実施した。
優れたステンレス鋼は以下のプロセスで製造した。即
ち、真空溶解により100kgの溶解母材を作製し、そ
の母材を再度溶解しアトマイズして第1表に示す化学成
分のステンレス鋼粉末を製造した。製造されたステンレ
ス鋼粉末を粒径500μm 以下に分級し加工性の良好な
外径149mmのカプセルに充填し、真空脱気を行い1×
10-1Torr程度とし、その後封口して粉末を充填し
た充填体を作製した。これらの充填体を一部は冷間静水
圧プレス、一部は熱間静水圧プレスし、次いで雰囲気炉
にて1100〜1250℃に均一加熱を行い、熱間押出
にて外径50mmの棒状の固化成形体を作製した。また、
熱間静水圧プレスしたものは熱間鍛造および熱間圧延し
た。その後、酸洗にてカプセルを溶解、除去し1160
℃にて固溶化処理を行い、最終的に各試験に必要とされ
る試験片形状に加工し、孔食試験および冷間圧縮試験を
実施した。
【0023】孔食試験は20mm×3.5mm×30mmの寸
法に加工した試験片を用い、以下の条件にて行った。 試験液: 10%FeCl3・6H2O+N/20HCl 試験温度:80℃ 試験時間:48時間
法に加工した試験片を用い、以下の条件にて行った。 試験液: 10%FeCl3・6H2O+N/20HCl 試験温度:80℃ 試験時間:48時間
【0024】また、耐孔食性の評価は、上記試験後の肉
眼観察による孔食の有無を調査する方法により行った。
眼観察による孔食の有無を調査する方法により行った。
【0025】
【表1】
【0026】冷間圧縮試験はφ14mm×21mmの寸法に
加工した試験片を圧縮率75%まで圧縮した。そして、
そのときの割れの発生を肉眼観察で調べることにより、
冷間加工性の評価を行った。
加工した試験片を圧縮率75%まで圧縮した。そして、
そのときの割れの発生を肉眼観察で調べることにより、
冷間加工性の評価を行った。
【0027】表2に孔食試験結果、金属間化合物の有
無、冷間加工性について示す。本発明鋼は孔食を発生せ
ず、従来鋼に比べて耐孔食性に優れている。比較鋼B9
は金属間化合物を形成さらには孔食の発生が観察され、
比較鋼B13においても、孔食の発生が観察された。こ
のことは、Mo含有量が12%を超えると金属間化合物
が生成し、冷間加工性および耐孔食性を劣化させ、7%
未満では、Cl- 濃度の高い環境下において十分な耐孔
食性が得られないことを示している。
無、冷間加工性について示す。本発明鋼は孔食を発生せ
ず、従来鋼に比べて耐孔食性に優れている。比較鋼B9
は金属間化合物を形成さらには孔食の発生が観察され、
比較鋼B13においても、孔食の発生が観察された。こ
のことは、Mo含有量が12%を超えると金属間化合物
が生成し、冷間加工性および耐孔食性を劣化させ、7%
未満では、Cl- 濃度の高い環境下において十分な耐孔
食性が得られないことを示している。
【0028】
【表2】
【0029】比較鋼B11は、孔食の発生が観察され、
Cr量が約15%未満では十分な耐孔食性が得られない
ことを示している。
Cr量が約15%未満では十分な耐孔食性が得られない
ことを示している。
【0030】また、この表2より明らかのように、本発
明においてはCr+3Mo+10N値を、溶製法で従来
到達できなかったレベルまで高くしても、固化成形体に
は金属間化合物が生成しなかった。しかし、比較鋼B1
0に見るとおり、粉末プロセスにおいてもCr+3Mo
+10N値が60を超えると金属間化合物が生成し、冷
間加工性および耐孔食性を劣化させることがわかる。さ
らに、比較鋼12に見るとおり、Cr+3Mo+10N
値が40以下では十分な耐孔食性が得られないことがわ
かる。
明においてはCr+3Mo+10N値を、溶製法で従来
到達できなかったレベルまで高くしても、固化成形体に
は金属間化合物が生成しなかった。しかし、比較鋼B1
0に見るとおり、粉末プロセスにおいてもCr+3Mo
+10N値が60を超えると金属間化合物が生成し、冷
間加工性および耐孔食性を劣化させることがわかる。さ
らに、比較鋼12に見るとおり、Cr+3Mo+10N
値が40以下では十分な耐孔食性が得られないことがわ
かる。
【0031】図1に本発明鋼A5の固溶化処理状態の代
表的ミクロ組織の400倍の顕微鏡写真を示し、図2に
金属間化合物を形成した比較鋼B9の代表的ミクロ組織
の400倍の顕微鏡写真を示す。図1に見るとおり、本
発明鋼A5では金属間化合物の析出は観察されず、従来
鋼と同様に健全なオーステナイト組織を呈している。一
方、図2に見るとおり、比較鋼B9は粒内及び粒界を問
わず全面に金属間化合物を析出し、硬化して脆くなって
いる。
表的ミクロ組織の400倍の顕微鏡写真を示し、図2に
金属間化合物を形成した比較鋼B9の代表的ミクロ組織
の400倍の顕微鏡写真を示す。図1に見るとおり、本
発明鋼A5では金属間化合物の析出は観察されず、従来
鋼と同様に健全なオーステナイト組織を呈している。一
方、図2に見るとおり、比較鋼B9は粒内及び粒界を問
わず全面に金属間化合物を析出し、硬化して脆くなって
いる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明鋼である耐
孔食性に優れたステンレス鋼は好ましくない金属間化合
物の析出もなく良好なオーステナイト組織をしており、
従来の溶製プロセスにより製造したものに比べて、極め
て優れた耐食性および塑性加工性を有する。
孔食性に優れたステンレス鋼は好ましくない金属間化合
物の析出もなく良好なオーステナイト組織をしており、
従来の溶製プロセスにより製造したものに比べて、極め
て優れた耐食性および塑性加工性を有する。
【図1】本発明鋼A5の固溶化処理状態の代表的ミクロ
組織の400倍の顕微鏡写真を示す。
組織の400倍の顕微鏡写真を示す。
【図2】金属間化合物を形成した比較鋼B9の代表的ミ
クロ組織の400倍の顕微鏡写真を示す。
クロ組織の400倍の顕微鏡写真を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58
Claims (6)
- 【請求項1】 ガス噴霧または水噴霧による下記化学成
分のステンレス鋼のアトマイズ粉末を加工性の良好な材
質であるカプセルに充填した充填体を固化工程により固
化形成してなることを特徴とする耐孔食性に優れたステ
ンレス鋼。記:重量%でC:0.05%以下、Si:
1.0%以下、Mn:6.0%以下、Cr:15.0〜
30.0%、Ni:22.0〜35.0%、Mo:7.
0〜12.0%、N:0.15〜0.50%、Al:
0.01%未満、Nb:0.5%以下を含有し、残部F
eおよび不可避的不純物よりなり、かつ下記の数式1を
満足する成分組成であるオーステナイト系ステンレス
鋼。 【数1】40≦Cr+3Mo+10N≦60 - 【請求項2】 請求項1におけるステンレス鋼アトマイ
ズ粉末の化学成分はCu:3.0%以下をさらに含有す
ることを特徴とする請求項1記載の耐孔食性に優れたス
テンレス鋼。 - 【請求項3】 固化工程が熱間押出し単独であることを
特徴とする請求項1または請求項2記載の耐孔食性に優
れたステンレス鋼。 - 【請求項4】 固化工程が冷間静水圧プレスと熱間押出
しの組合せであることを特徴とする請求項1または請求
項2記載の耐孔食性に優れたステンレス鋼。 - 【請求項5】 固化工程が熱間静水圧プレスと熱間押出
しの組合わせであることを特徴とする請求項1または請
求項2記載の耐孔食性に優れたステンレス鋼。 - 【請求項6】 固化工程が熱間静水圧プレスと鍛造、圧
延の組合せであることを特徴とする請求項1または請求
項2記載の耐孔食性に優れたステンレス鋼。
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