JPH06272609A - ガソリン機関の失火検出装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 気筒の極性を問わず二次電圧波形の減衰特性
を正確に検出できるガソリン機関の失火検出装置の提
供。 【構成】 点火コイル１、２と、一次電流を断続させる
イグナイタＩと、電流断続のタイミングを指示するエン
ジンコントロールユニットＥＣＵと、スパークプラグ１
１、１２、２１、２２と、スパークプラグに印加される
二次電圧を分圧する分圧器５と、二次電圧波形の減衰特
性を検出する二次電圧検出回路６と、カム信号を出力す
るカムポジション・センサＣＳと、カム信号および減衰
特性によって失火を判別する失火判別回路７とを備える
ＤＬＩ式点火装置付きガソリン機関の失火検出装置で、
前記ＥＣＵは、点火する気筒がマイナス極性の場合、火
花放電用の電流断続のみを実行させ、点火する気筒がプ
ラス極性の場合、火花放電用の電流断続の後に、失火検
出用の電流断続を実行するように前記イグナイタに指示
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、点火コイルの二次回
路の両端子にそれぞれスパークプラグを接続する、いわ
ゆる両極性のデストリビュータ・レス・イグナイタ（Ｄ
ＬＩ）式点火装置に好適なガソリン機関の失火検出装置
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、エンジンの排気ガスの浄化および
燃費向上の要求から燃焼の各気筒毎に着火状態を検出
し、全気筒の失火検出のできる装置が要請されている。
この出願人は、特開平４−３３９１７６号公報および特
願平３−３２８６０３号において、点火回路の二次回路
との間に静電容量を形成するセンサと、該センサとアー
スとの間に接続されたコンデンサとのコンデンサ分圧に
よる分圧器を装着し、この分圧器の出力した二次電圧波
形を測定し、その減衰時間が失火時には正常着火時より
長くなることを利用する失火検出方法を提案している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかるに従来の方法で
は、スパークプラグの中心電極がプラスの極性である方
が、マイナスの極性の場合と比較してイオンによる電荷
の移動がスムーズであり、電圧の減衰時間が短く、失火
時と判別し易いため、点火コイルは通常と逆に接続する
などにより二次電圧をプラス極性に設定していた。しか
し、ＤＬＩ式点火装置では、点火コイルの両端子にそれ
ぞれスパークプラグを接続しているために、プラス極性
のスパークプラグが装着される気筒と、マイナス極性の
スパークプラグが装着される気筒とが必ず存在する。

【０００４】また、エンジンの高速高負荷運転時で、失
火が発生した時は、火花放電終了後の再昇圧が１０キロ
ボルト以上となり、たとえ失火時であっても火花放電に
より二次電圧が瞬時に降圧し、減衰時間が短くなってし
まうことがある。この瞬時の降圧は、スパークプラグの
極性がプラスの方がマイナス極性である場合と比べて起
こり易い。

【０００５】また、個々のエンジンの特性には微妙なば
らつきがあり、二次電圧の急激な降圧の起こりやすいエ
ンジンや、ほとんど起きないエンジンなどがある。特
に、スパークプラグの極性がマイナスの場合、電極間隙
のイオンによる電荷の移動が少ないために正常着火時で
あっても火花放電直後の二次電圧を測定しないと二次電
圧波形の減衰が測定できないエンジンがある。

【０００６】この発明が解決しようとする課題は、エン
ジンに装着される気筒がプラス極性あるいはマイナス極
性であっても、広範囲の運転条件で二次電圧波形の減衰
特性を正確に検出できるガソリン機関の失火検出装置の
提供にある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明のガソリン機関
の失火検出装置は、点火コイルと、該点火コイルに流れ
る一次電流を断続させるイグナイタと、電流断続のタイ
ミングを前記イグナイタに指示するエンジンコントロー
ルユニットと、前記点火コイルの各二次回路の両端子に
接続されたスパークプラグと、該スパークプラグに印加
される二次電圧を分圧する分圧器と、火花放電終了後に
設定した時期以降の、二次電圧波形の減衰特性を検出す
る二次電圧検出回路と、機関に装着した全気筒の１サイ
クル毎にカム信号を出力するカムポジション・センサ
と、前記カムポジション・センサからのカム信号および
前記二次電圧検出回路からの減衰特性によって失火を判
別する失火判別回路とを備えるデストリビュータ・レス
・イグナイタ式点火装置付きガソリン機関の失火検出装
置であって、前記エンジンコントロールユニットは、点
火する気筒がマイナス極性の場合、火花放電用の電流断
続のみを実行させ、点火する気筒がプラス極性の場合、
火花放電用の電流断続の後に、失火検出用の電流断続を
実行するように前記イグナイタに指示する。

【０００８】

【作用】この発明のガソリン機関の失火検出装置は、気
筒がマイナス極性の場合に、スパークプラグに火花放電
電圧を発生させるための電流断続のみを実行し、気筒が
プラス極性の場合には、前記電流断続の後に失火検出用
の電流断続を実行する。

【０００９】スパークプラグでの火花放電は、電界強度
の最も強い中心電極のエッジ近傍の気体が電離し、その
後、電極間を電離が進行し、外側電極まで到達すると放
電が開始する。この時、エッジ近傍の電離開始は、中心
電極にマイナス極性を印加した場合の方がプラス極性を
印加した場合より早く開始するが、電極間の進行は、プ
ラス極性の方が速い。また電離の開始は、イオン、電子
の存在にも大きく左右され、放電終了直後では電極間に
イオン、電子が通常より多いため、電極間の電離の進行
が速い中心電極がプラス極性の場合の方が瞬時に放電し
易くなる。

【００１０】このため、プラス極性の気筒では、火花放
電終了後の再昇圧した二次電圧レベルが高くなりすぎて
瞬時に降圧しても、火花放電後に、点火回路に再通電し
て、失火検出用二次電圧波形を発生させることにより、
確実に二次電圧の減衰特性を検出することができる。

【００１１】また、スパークプラグの電極温度は、燃焼
ガスと比較して低いため電極近傍は、イオン、電子の密
度が低くなるが、放電終了直後では火花放電により電極
温度は局部的に高い部分がある。このため、その近傍で
イオン密度を高く保つ効果を持ち、二次電流検出レベル
が高くなる。しかし、電極温度は、すぐ平均的な値まで
低下してしまうため二次電圧検出レベルがすぐ低くなっ
てしまう。これは、二次電圧検出レベルの低いマイナス
極性の場合に影響が大きい。

【００１２】さらに、マイナス極性の気筒では、火花放
電終了後の再昇圧した二次電圧の瞬時の降圧が起こり難
いため、火花放電終了後の二次電圧波形による減衰特性
から失火を確実に検出することができる。

【００１３】

【実施例】図１は、この発明の実施例である４気筒ガソ
リン機関に装着された両極性ＤＬＩ式点火装置を示し、
二次回路Ｌ２の両極が二次電圧端子となっている２つの
点火コイル１および２を有する。点火コイル１には、そ
のプラス極性およびマイナス極性の各二次電圧端子に、
エンジンの第１気筒＃１および第４気筒＃４に装着され
たスパークプラグ１１及び２２が接続されている。点火
コイル２にはプラス極性およびマイナス極性の二次電圧
端子にエンジンの第２気筒＃２および第３気筒＃３に装
着されたスパークプラグ１２および２１が接続されてい
る。このため、スパークプラグ２１および２２はプラス
極性、スパークプラグ１１および１２はマイナス極性と
なる。

【００１４】点火コイル１および２の各一次回路Ｌ１に
は、車載電源Ｖ、イグナイタＩが接続され、イグナイタ
Ｉには、クランク角検出手段が付設されたエンジンコン
トロールユニットＥＣＵが接続される。各二次回路Ｌ２
には、ダイオードＤを介してスパークプラグ１１、１
２、２１、２２が接続されている。各スパークプラグ１
１、１２、２１、２２に接続する高圧コード（二次回
路）には二次電圧波形を検出する検出部としての分圧器
５と、該分圧器５により二次電圧波形の減衰特性を検出
する二次電圧検出回路６と、該二次電圧検出回路６から
の出力信号を解析し、失火の有無を判別する失火判別回
路７と、カムポジション・センサＣＳとからなる。

【００１５】カムポジション・センサＣＳは、燃焼サイ
クルにある気筒を検出するものであって、この実施例で
はクランク角度が７２０°ＣＡのときカム信号をエンジ
ンコントロールユニットＥＣＵおよび失火判別回路７に
出力する。

【００１６】エンジンコントロールユニットＥＣＵは、
カム信号、クランク角度信号などが入力される。前述し
たようにカムポジション・センサＣＳのクランク角度が
７２０°ＣＡごとのカム信号から気筒およびその極性を
判断し、その気筒の極性によって電流断続方法を決定す
る。つまり、プラス極性の気筒の場合は、火花放電用の
パルス波の後に失火検出電圧発生用パルスを出力させ、
マイナス極性の気筒の場合は、火花放電用のパルス波の
みを出力するようにイグナイタＩに指示する。

【００１７】分圧器５は、図２に示すように、プラス二
次電圧分圧器５Ｐとマイナス二次電圧分圧器５Ｍとから
なる。分圧器５Ｐおよび５Ｍは、いずれも点火コイル１
および２の二次回路Ｌ２（高圧コード）に近接して配さ
れ、高圧コードとの間に１ｐＦ（ピコファラッド）の静
電容量を形成するセンサ５１と、該センサ５１とアース
との間に接続した３０００ｐＦの静電容量を有するコン
デンサ５２と、該コンデンサ５２に並列接続されて時定
数を決定する放電回路を形成する抵抗５３と、スパーク
プラグの火花放電開始直後に前記コンデンサ５２の電荷
をリセットするための短絡回路を形成するトランジスタ
５４および５５とが、それぞれ並列接続されている。

【００１８】二次電圧検出回路６は、図２に示すよう
に、ピークホールド回路６１および６２を有し、前記エ
ンジンコントロールユニットＥＣＵにより火花放電開始
から一定時間以降のピークホールド値を検出するための
リセット信号を受け、火花放電終了後に昇圧する二次電
圧のピーク電圧値を検出し、このピーク電圧値から規定
のレベルまで降圧する時間を減衰時間として出力する。

【００１９】失火判別回路７では、前記二次電圧検出回
路６からの出力パルス幅が設定値以上のとき失火と判別
する。

【００２０】この発明の失火検出装置の作用を図３と共
に説明する。カムポジション・センサＣＳは、に示す
ようにクランク角度が７２０°ＣＡごとにカム信号をエ
ンジンコントロールユニットＥＣＵに出力する。このと
きエンジンコントロールユニットＥＣＵは、カム信号に
よってどの気筒であるかを判別し、かつその気筒の極性
を判断する。つまり、カムポジション・センサＣＳから
のカム信号ごとに、エンジンコントロールユニットＥＣ
Ｕでは、第１気筒＃１および第２気筒＃２のスパークプ
ラグ１１および１２はマイナス極性、第３気筒＃３およ
び第４気筒＃４のスパークプラグ２１および２２はプラ
ス極性であることを判別している。

【００２１】イグナイタＩは、に示すパルス波ａ、ｃ
により点火コイル１の一次電流を断続させる。このと
き、点火の気筒である第１気筒はマイナス極性であるこ
とがエンジンコントロールユニットＥＣＵで判別されて
いるためにイグナイタＩはパルス波ａのみを出力する。
このパルス波ａによって点火コイル１の二次回路Ｌ２に
二次電圧が生じ、スパークプラグ１１および２２で火花
放電が開始し、およびに示すように第１気筒＃１お
よび第４気筒＃４での二次電圧波形が生じる。

【００２２】このとき、に示す第１気筒＃１のスパー
クプラグ１１での点火の火花放電波形Ａは、パルス波ａ
の終了時点で高電圧が発生し、スパークプラグ１１が火
花放電して高電圧波形Ａ１となり、続いて誘導放電によ
るなだらかな波形Ａ２が持続し、火花放電が終了すると
二次電圧が再び昇圧してピーク電圧波形Ａ３が発生す
る。また、に示す第４気筒＃４のスパープラグ２２で
の捨火の火花放電波形Ｂは、点火の火花放電波形Ａより
低く、火花放電波形Ａと同様にＢ１、Ｂ２、Ｂ３の波形
が生じる。そして、点火の火花放電波形Ａと比較して、
火花放電終了後に昇圧した二次電圧（ピーク電圧）の減
衰時間が長い。これは捨火側では排気行程にあり、スパ
ークプラグ２２の火花放電間隙にイオンが存在しないこ
とによる。すなわち、捨火側では、点火側気筒のスパー
クプラグ１１において失火が発生した場合と同様に二次
電圧の減衰時間が長い。

【００２３】同様に、イグナイタＩは、に示すパルス
波ｂ、ｃにより点火コイル２の一次電流を断続させる。
このパルス波ｂによって点火コイル２の二次回路Ｌ２に
二次電圧が生じ、スパークプラグ１２および２１で火花
放電が開始し、およびに示すように第２気筒＃２お
よび第３気筒＃３での二次電圧波形が生じる。このと
き、点火の気筒である第３気筒＃３は、プラス極性であ
ることがエンジンコントロールユニットＥＣＵで判別さ
れているためにイグナイタＩは、パルス波ｂの終了後、
１．５〜２．０ｍｓ程度遅延して幅の小さいパルス波ｃ
を発生させる。このパルス波ｃは失火検出用電圧発生用
の信号である。

【００２４】そして、に示す第３気筒＃３のスパーク
プラグ２１での点火の火花放電波形Ｃは、パルス波ｂの
終了時点でスパークプラグ２１が火花放電し、高電圧波
形Ｃ１となり、続いて誘導放電によるなだらかな波形Ｃ
２が持続し、火花放電の終了が近づくと、二次電圧が昇
圧してピーク電圧Ｃ３が発生し、火花放電が終了する。
つぎに、パルス波ｃの立ちあがりに対応して二次電圧は
再昇圧し、ピーク電圧Ｃ４が現れる。に示す第２気筒
＃２のスパープラグ２１では、捨火の火花放電波形Ｄが
生じ、火花放電波形Ｃと同様にＤ１、Ｄ２、Ｄ３、Ｄ４
の波形が生じる。

【００２５】二次電圧検出回路６は、ピークホールド回
路６１および６２が分圧器５のリセット信号と同期して
エンジンコントロールユニットＥＣＵよりリセットさ
れ、火花放電終了後昇圧した二次電圧のピーク値をホー
ルドする。そして、プラス極性、マイナス極性の二次電
圧がたとえばピーク値の１／３のレベルまで降下する時
間をそれぞれ減衰時間としておよびに示す波形を出
力する。

【００２６】失火判別回路７は、二次電圧検出回路６か
ら出力されるパルスのうち、点火気筒でのパルスの幅が
設定値以上の時、失火と判別する。

【００２７】

【発明の効果】この発明の両極性ＤＬＩ式点火装置の失
火検出装置は、スパークプラグの極性によってエンジン
コントロールユニットで制御する一次電流の断続方法を
変えているために、プラス極性およびマイナス極性のス
パークプラグごとに正確な失火検出をすることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のガソリン機関の失火検出装置を装着
したＤＬＩ式両極性点火装置の回路図である。

【図２】この発明の分圧器及び二次電圧検出回路の回路
図である。

【図３】この発明のガソリン機関の失火検出装置の作動
説明のための波形図である。

【符号の説明】

１、２ 点火コイル ５ 分圧器 ６ 二次電圧検出回路 ７ 失火判別回路 １１、１２、２１、２２ スパークプラグ Ｉ イグナイタ ＣＳ カムポジション・センサ ＥＣＵ エンジンコントロールユニット

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 点火コイルと、該点火コイルに流れる一
   次電流を断続させるイグナイタと、電流断続のタイミン
   グを前記イグナイタに指示するエンジンコントロールユ
   ニットと、前記点火コイルの各二次回路の両端子に接続
   されたスパークプラグと、該スパークプラグに印加され
   る二次電圧を分圧する分圧器と、火花放電終了後に設定
   した時期以降の、二次電圧波形の減衰特性を検出する二
   次電圧検出回路と、機関に装着した全気筒の１サイクル
   毎にカム信号を出力するカムポジション・センサと、該
   カムポジション・センサからのカム信号および前記二次
   電圧検出回路からの減衰特性によって失火を判別する失
   火判別回路とを備えるデストリビュータ・レス・イグナ
   イタ式点火装置付きガソリン機関の失火検出装置であっ
   て、 前記エンジンコントロールユニットは、点火する気筒が
   マイナス極性の場合、火花放電用の電流断続のみを実行
   させ、点火する気筒がプラス極性の場合、火花放電用の
   電流断続の後に、失火検出用の電流断続を実行するよう
   に前記イグナイタに指示することを特徴とするガソリン
   機関の失火検出装置。