JPH062695B2 - イソカルバサイクリン類の製造法 - Google Patents

イソカルバサイクリン類の製造法

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JPH062695B2
JPH062695B2 JP61047370A JP4737086A JPH062695B2 JP H062695 B2 JPH062695 B2 JP H062695B2 JP 61047370 A JP61047370 A JP 61047370A JP 4737086 A JP4737086 A JP 4737086A JP H062695 B2 JPH062695 B2 JP H062695B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は9(O)−メタノプロスタサイクリン類の製造法
に関する。
更に詳細には、9(O)−メタノプロスタサイクリン類を
5−アリールスルホニルイソカルバサイクリン類から製
造する新規方法に関する。
〈従来の技術〉 カルバサイクリンは生体内生理活性物質であるプロスタ
グランジン(PGと略記することがある)I(PG
)の6,9一位の酸素原子がメチレン基で置換された
プロスタグランジンI類縁体であり、分子内にエノー
ルエーテルの部分構造を有する天然プロスタグランジン
に比較して化学的に安定であるために抗血栓剤等の
医薬品として有用な化合物である。近年、カルバサイク
リンの二重結合異性体の一種であるイソカルバサイクリ
ン,すなわち、9(O)−メタノ−△6(9a)−プロス
タグランジンI類がこの同族体の中でも最も強い血小
板凝集抑制作用を示すことが発見され、医薬品としての
応用が期待されるようになつた〔池上ら、テトラヘドロ
ン・レターズ(Tetrahedron Letters),33,3493および349
7(1983)ならびに特開昭59−137445および59-210044参
照〕。
従来、かかる9(O)−メタノ−△6(9α)−プロスタ
グランジンI(イソカルバサイクリン)の製法に関し
ては数例知られており、その方法の概要をまとめて例記
すると以下の通りである。
(1) 池上ら、テトラヘドロン・レターズ (Tetrahedron Letters),24,3493(1983)およびケミスト
リー・レターズ(Chemistry Letters),1984,1069: (2) 池上ら、テトラヘドロン・レターズ (Tetrahedron Letters),24,3497(1983): (3) 池上ら、ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサ
イエテイー,ケミカル・コミユニケーシヨン(J.Chem.So
c.,Chemical Communications),1984,1602: (4) 柴崎ら、テトラヘドロン・レターズ (Tetrahedron Letters),25,5087(1984): (5) 柴崎ら、テトラヘドロン・レターズ (Tetrahedron Letters),25,1067(1984): (6) 小島ら、ケミカル・アンド・フアーマシユーテイ
カル・ブレテイン(Chem.Pharm.Bull),32,2866(1984): (7) 小島ら、特開昭60-28943: (dl)−イソカルバサイクリン これら7種類の方法のうち、方法(1)と方法(5)はPGE2
出発原料とし、数工程を径て鍵中間体に導びき、さらに
数工程を経て目的物のイソカルバサイクリンを得るもの
で工業的な製法とはいいがたい。方法(2)と方法(3)は、
いずれも、対応する出発原料,および鍵中間体を得るた
めに高価なコーリーラクトンから多段階の工程を要し、
通算収率も高くなく、必ずしも工業的に有利な方法とは
いえないという難点がある。なお方法(6)および方法(7)
は最終生成物がdl体でしか得られず医薬品化を意図する
製法としては論外の方法である。
最後に、方法(4)は光学活性な(R)−4−ヒドロキシ−2
−シクロペンテノンから容易に得られるばかりでなく
(特開昭57−155116)、その出発原料から鍵中
間体への誘導も工業的に何ら問題なく製造できる方法で
ある。しかし、鍵中間体から最終のイソカルバサイクリ
ン類へ到る工程において、有機水銀化合物の使用や、位
置特異性の喪失等の数々の難点のために全収率が低くな
り実用的,工業的製造法とはなりえないという大きな難
点がある。
〈発明が解決しようとする問題点〉 本発明者らは上述した諸点に着目し、9(O)−メタノプ
ロスタサイクリン類の新規製造法を見出すべく鋭意研究
した結果、5−アリールスルホニルイソカルバサイクリ
ン類に還元剤を反応せしめることによつて、目的とする
9(O)−メタノプロスタサイクリン類が工業的に有利に
製造し得ることを見出し、本発明に到達したものであ
る。
〈問題点を解決するための手段〉 本発明では下記式〔I〕 〔式中、R21,R31は同一もしくは異なり、トリ
(C〜C)炭化水素シリル基,または水酸基の酸素
原子とともにアセタール結合を形成する基を表わし、R
は水素原子,メチル基,またはビニル基を表わし、R
は酸素原子を含んでいてもよい直鎖もしくは分枝鎖C
〜Cアルキル基,アルケニル基もしくはアルキニル
基;置換もしくは非置換のフエニル基;置換もしくは非
置換のフエノキシ基;置換もしくは非置換のC〜C
10シクロアルキル基;またはC〜Cアルコキシ
基,置換されていてもよいフエニル基,置換されていて
もよいフエノキシ基もしくは置換されていてもよいC
〜C10シクロアルキル基で置換されている直鎖もしく
は分枝鎖C〜Cアルキル基を表わし、nは0または
1を表わす。Arは置換もしくは非置換のフエニル基を表
わし、Aは4−メチル−2,6,7−トリオキサビシクロ
〔2.2.2〕オクト−1−イル基 またはアルキルオキシカルボニル基(−COOR)を
表わす。ここでRはC〜Cアルキル基を表わ
す。〕 で表わされる化合物,その鏡像体あるいはそれらの任意
の割合の混合物である5−アリールスルホニルイソカル
バサイクリン類を還元剤と反応せしめ、必要により脱保
護反応及び/又は加水分解反応に付すことを特徴とする
下記式〔II〕 〔式中、A′は4−メチル−2,6,7−トリオキサビシク
ロ〔2.2.2〕オクト−1−イル基,2,2−ビス(ヒドロキ
シメチル)プロプ−1−イルオキシカルボニル基,カル
ボキシ基,アルキルオキシカルボニル基(−COO
)またはヒドロキシメチル基を表わす。R,R
は同一もしくは異なり、水素原子,トリ(C〜C
炭化水素シリル基,または水素基の酸素とともにアセタ
ール結合を形成する基を表わす。表示…は2つのうちい
ずれか一方だけが結合手であることを表わし、表示は
5,6位が2重結合である時に立体配置が,ある
いはそれが任意の割合いで共存することを表わす。
,Rn,Rは前記定義に同じである。〕 で表わされる化合物,その鏡像体あるいはそれらの任意
の割合の混合物である9(O)−メタノプロスタサイクリ
ン類の製造法が提供される。
本発明において原料として用いられる上記式〔〔I〕で
代表される5−アリールスルホニルイソカルバサイクリ
ン類は例えばチヤート1に示すごとく製造される。
チヤート1 上記式〔I〕においてR21およびR31は、同一もし
くは異なり、トリ(C〜C)炭化水素シリル基また
は水素基の酸素原子とともにアセタール結合を形成する
基を表わす。
トリ(C〜C)炭化水素シリル基としては、例え
ば、トリメチルシリル基,トリエチルシリル基,トリイ
ソプロピルシリル基,t−ブチルジメチル基のようなト
リ(C〜C)アルキルシリル基,t−ブチルジフエ
ニルシリル基のようなジフエニル(C〜C)アルキ
ルシリル基,ジメチルフエニル(C〜C)アルキル
シリル基,ジメチルフエニル基のようなジ(C
)アルキルフエニル基,またはトリベンジルシリル
基などを好ましいものとして挙げることができる。トリ
(C〜C)アルキルシリル,ジフエニル(C〜C
)アルキルシリル,フエニルジ(C〜C)アルキ
ルシリル基が好ましく、なかでもt−ブチルジメチルシ
リル基,トリメチルシリル基が特に好ましい。
水酸基の酸素原子と共にアセタール結合を形成する基と
しては、例えば、メトキシメチル基,1−エトキシエチ
ル基,2−メトキシ−2−プロピル基,2−エトキシ−
2−プロピル基,(2−メトキシエトキシ)メチル基,
ベンジルオキシメチル基,2−テトラヒドロピラニル
基,2−テトラヒドロフラニル基,または6,6−ジメチ
ル−3−オキサ−2−オキソビシクロ〔3.1.0〕ヘキス
−4−イル基を挙げることができる。2−テトラヒドロ
ピラニル基,2−テトラヒドロフラニル,1−エトキシ
エチル,2−エトキシ−2−プロピル,(2−メトキシ
エトキシ)メチル,6,6−ジメチル−3−オキサ−2−
オキサビシクロ〔3.1.0〕ヘキス−4−イル基が特に好
ましい。なかでも2−テトラヒドロピラニル基が特に好
ましい。
これらのシリル基およびアセテール結合を形成する基は
水酸基の保護基であると理解されるべきである。これら
の保護基は最終生成物の段階で弱酸性から中性の条件で
容易に除去されて薬剤として有用な遊離の水酸基とする
ことができる。したがつてこのような性質を有している
水酸基の保護基はシリル基やアセタール結合を形成する
基の代わりとして使用することもできる。
上記式〔I〕においてRは水素原子,メチル基,また
はビニル基を表わす。
上記式〔I〕においてRは酸素原子を含んでいてもよ
い直鎖もしくは分枝鎖C〜Cアルキル基,アルケニ
ル基もしくはアルキニル基;置換もしくは非置換のフエ
ニル基;置換もしくは非置換のフエノキシ基;置換もし
くは非置換のC〜C10シクロアルキル基;またはC
〜Cアルコキシ基,置換されていてもよいフエニル
基,置換されていてもよいフエノキシ基もしくは置換さ
れていてもよいC〜C10シクロアルキル基で置換さ
れている直鎖もしくは分枝鎖C〜Cアルキル基を表
わす。
酸素を含んでいてもよい直鎖もしくは分枝鎖C〜C
アルキル基としては2−メトキシエチル基,2−エトキ
シエチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキ
シル基,ヘプチル基,2−ヘキシル基,2−メチル−2
−ヘキシル基,2−メチルブチル基,2−メチルペンチ
ル基,2−メチルヘキシル基,2,2−ジメチルヘキシル
基などを挙げることができる。ブチル基,ペンチル基,
ヘキシル基,ヘプチル基,2−ヘキシル基,2−メチル
−2−ヘキシル基,2−メチルブチル基,2−メチルペ
ンチル基が好ましい。
酸素原子を含んでいてもよい直鎖もしくは分枝鎖C
アルキル基としては、例えば、1−ブチルビニル,
2−プロピルアリル,2−ペンテニル,4−ペンテニ
ル,2−メチル−3−ペンテニル,4−ヘキセニル,1,
4−ジメチル−3−ペンテニル,5−ペプテニル,1−
メチル−5−ヘキセニル,6−メチル−5−ヘプテニ
ル,2,6−ジメチル−5−ヘプテニルなどが好ましい。
酸素原子を含んでいてもよい直鎖もしくは分枝鎖C
アルキル基としては、例えば、2−ブチニル,2−
ペンチニル,3−ペンチニル,1−メチル−2−ペンチ
ニル,1−メチル−3−ペンチニルが好ましい。
置換フエニル基,置換フエノキシ基,もしくはC〜C
10の置換シクロアルキル基の置換基としては、例えば
ハロゲン原子,保護された水酸基(例えばシリルオキシ
基,C〜Cアルコキシ基など),C〜Cアルキ
ル基などが挙げられる。C〜C10のシクロアルキル
基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチ
ル基,シクロヘキシル基,シクロヘキセニル基,シクロ
ヘプチル基,シクロオクチル基,シクロデシル基などを
挙げることができる。シクロペンチル基,シクロヘキシ
ル基が好ましい。
〜Cアルコキシ基,置換されていてもよいフエニ
ル基,置換されていてもよいフエノキシ基,もしくは置
換されていてもよいC〜C10のシクロアルキル基で
置換されている直鎖もしくは分枝鎖C〜Cアルキル
基において、C〜Cアルコキシ基としては、例えば
メトキシ基,エトキシ基,プロピルオキシ基,イソプロ
ピルオキシ基,ブトキシ基,t−ブトキシ基,ヘキシル
オキシ基などが挙げられる。置換されていてもよいフエ
ニル基,置換されていてもよいフエノキシ基,もしくは
置換されていてもよいC〜C10シクロアルキル基の
置換基およびC〜C10シクロアルキル基としては前
述の例示と同じものを挙げることができる。直鎖もしく
は分枝鎖C〜Cアルキル基としては、例えば、メチ
ル基,エチル基,プロピル基,イソプロピル基,ブチル
基,イソブチル基,sec−ブチル基,t−ブチル基,ペ
ンチル基などを挙げることができる。かかるRとして
はブチル,ペンチル,ヘキシル,ヘプチル,2−ヘキシ
ル,2−メチル−2−ヘキシル,2−メチルブチル,2
−メチルペンチル,シクロペンチル,シクロヘキシル,
フエニル,フエノキシ,シクロペンチルメチル,シクロ
ヘキシルメチル基などを好ましいものとして挙げること
ができる。なお、置換基はその任意の位置に結合してい
てもよい。
上記式〔I〕においてnは0または1を表わす。
Arは置換もしくは非置換のフエニル基を表わし、その置
換基の例としては前述したものが挙げられる。P−トリ
ル基が好しい。Aは4−メチル−2,6,7−トリオキサビ
シクロ〔2.2.2〕オクト−1−イル基またはアルキルオ
キシカルボニル基(−COOR)を表わす。ここでR
はC〜Cのアルキル基を表わし、メチル基,エチ
ル基,プロピル基,ブチル基などが挙げられる。メチル
基が好しい。
上記式〔I〕で表わされる化合物においてビシクロ〔3.
3.0〕オクタン環自身およびそのビシクロ〔3.3.0〕オク
タン環上に結合している置換基の結合している炭素11
位,12位あるいは15位の炭素等の不斉な環境のため
に立体異性体が存在するが本発明ではいずれの立体異性
体をも含むものであり、またこれらの任意の割合の立体
異性混合物でもさしつかえない。また、式で代表される
化合物とはこれらの立体異性体すべて、およびそれらの
異性体の任意の混合の混合物をあらわすが、式であらわ
された立体構造を有する化合物が最も好ましいものとし
てあげられる。
本発明方法においては、上述した上記式〔I〕で代表さ
れる5−アリールスルホニルイソカルバサイクリンを還
元剤と反応せしめ、必要により脱保護反応及び/又は加
水分解反応に付すことにより目的とする式〔II〕で代表
される9(O)−メトノプロスタサイクリン類に誘導され
る。この反応は3種の異なつた反応により実施可能であ
る。
第1の反応は、上記式〔I〕を水素化アルカリ金属錯体
とパラジウム化合物の存在下に反応せしめることにより
達成される。この反応は基本的にはケミストリーレター
ズ(Chem.Lett.)451,(1985)の方法に準じて実施され
る。すなわち上記製造法において用いられる水素化アル
カリ金属錯体としては水素化ホウ素リチウム,水素化ホ
ウ素ナトリウム,水素化トリエチルホウ素リチウムなど
の水素化ホウ素アルカリ金属類が好適に用いられる。そ
の使用量は式〔I〕で代表される5−アリールスルホニ
ルイソカルバサイクリン類1モルに対して、0.3〜20
モル倍、好しくは0.5〜10モル倍用いて行なわれ、反
応温度は−78℃〜50℃、好しくは−40℃〜25℃
で実施され、反応時間は反応温度により異なり、例えば
20℃では2時間程度反応せしめれば十分である。パラ
ジウム化合物としては例えば新実験化学講座12(P23
0〜P243)記載の種々のパラジウム化合物を用いること
が可能であり、本発明においてはテトラキス(トリフエ
ニルホスフイン)パラジウム(O),ジクロロビスジフエ
ニルホスフイノプロパンパラジウムが好しく用いられ
る。使用量は式〔I〕で代表される5−アリールスルホ
ニルイソカルバサイクリン類に対して0.001〜1モル
倍,好しくは0.01〜0.2モル倍である。
第2の反応は、上記式〔I〕をラジカル発生剤の存在下
に水素化有機スズ化合物と反応せしめた後に酸処理を行
うことにより達成される。この反応は基本的には上野
ら、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソ
サイエテイー(J.Am.Chem.Soc.,101)5414(1979)の方法
に準じて実施される。すなわち、上記製造法において用
いられる水素化有機スズ化合物としては入手が容易であ
る水素化トリブチルスズが好適であるがこれに限される
ものでは無い。ラジカル発生剤としてはジ−t−ブチル
パーオキシド,AIBN(α,α′−アゾビスイソブチロニ
トリル)等が用いられる。水素化有機スズ化合物の使用
量は上記式〔I〕で代表される5−アリールスルホニル
イソカルバサイクリン1モルに対して0.5〜20モル
倍,好しくは1〜10モル倍用いて行われ、ラジカル発
生剤は 当量〜0.5モル倍,好しくは0.01〜0.1モル倍用いられ
る。反応温度は10℃〜200℃,好しくは50℃〜1
20℃で実施され、反応時間は反応温度により異なり、
例えば100℃では3時間程度反応せしめれば充分であ
る。次いで酸処理を行うが、用いる酸は種々の無機酸,
有機酸を用いることが可能であり酢酸が好適に用いられ
る。使用量は出発原料に対して1モル倍〜過剰量を用い
反応温度は−20℃〜100℃,好しくは0℃〜60℃
で実施され、反応時間は反応温度により異なり、例えば
30℃で10時間程度反応せしめれば充分である。
第3の反応は、上記式〔I〕をアルカリ金属アマルガム
と反応せしめることにより達成される。この反応は基本
的には、トロスト(Trost)らテトラヘドロン・レ
ターズ(Tetrahedron Lett.),3477(1976)の方法に準じて
実施される。すなわち上記製造法において用いられるア
ルカリ金属アマルガムとしてはナトリウムアマルガムが
好適に用いられ、ナトリウム含量が1〜20%,好まし
くは2〜10%のものが好適に用いられる。その使用量
は上記式〔I〕で代表される5−アリールスルホニルイ
ソカルバサイクリン酸1モルに対してナトリウムとして
5−500モル倍好しくは50〜500モル倍用いる。
反応温度は−78℃〜50℃,好しくは−40℃〜30
℃の範囲で行なわれ反応時間は反応温度により異なり、
例えば−10℃では4時間程度反応せしめれば充分であ
る。この反応においては1〜10モル倍のリン酸2ナト
リウムを共存させて行う。
かかる第1〜第3の反応は有機媒体中で行なわれる。か
かる有機媒体としてはヘキサン,ベンゼン,トルエン,
エーテル,テトラヒドロフラン,ジメトキシエタン,ジ
オキサン,塩化メチレン,N,N−ジメチルホルムアミ
ド,メタノール,エタノールなどが用いられる。第1の
反応においてはエーテル,テトラヒドロフランなどが好
しく用いられ、第2の反応においてはベンゼン,トルエ
ンなどが好しく用いられ、第3の反応にはメタノールが
好しく用いられる。その使用量は反応が円滑に進行する
量であれば良く、通常、反応物質の収量に対して1.0
〜100容量、好しくは5.0〜50容量用いて実施され
る。
かくして得られた反応液の処理は、通常行なわれる方法
に準じて後処理すればよい。例えばヘキサン,ペンタ
ン,石油エーテル,エチルエーテル,酢酸エチルなどの
水に難溶の有機溶媒を加えて得た有機混合物を必要に応
じて食塩水などで洗浄し、無水硫酸マグネシウム,無水
硫酸ナトリウム,無水塩化カルシウムなどの乾燥剤にて
乾燥後,有機媒体を減圧除去して粗成物が得られる。粗
生成物は、所望により、カラムクロマトグラフイー,薄
層クロマトグラフイー,液体クロマトグラフイーなどの
精製手段により、精製することが出来る。
本発明方法ではさらにここで得られた生成物を、必要に
応じて脱保護反応及び/又は加水分解反応に付すことに
より最終的に下記式〔II〕 〔式中、A′は4−メチル−2,6,7−トリオキサビシク
ロ〔2.2.2〕オクト−1−イル基,2,2−ビス(ヒド
ロキシメチル)プロプ−1−イルオキシカルボニル基,
カルボキシ基,アルキルオキシカルボニル基(−COO
) またはヒドロキシメチル基を表わす。R,R
は同一もしくは異なり水素原子,トリ(C〜C
炭化水素シリル基,または水素基の酸素とともにアセタ
ール結合を形成する基を表わす。表示…は2つのうちい
ずれか一方だけが結合手であることを表わし、表示は
5,6位が2重結合である時に立体配置が,あるい
はそれが任意の割合いで共存することを表わす。R
,n,Rは前記定義に同じである。〕 で表わされる化合物,その鏡像体あるいはそれらの任意
の割合の混合物である9(O)−メタノプロスタサイクリ
ン類が製造される。
,Rが水酸基の保護基であるときの具体例として
は上記式〔I〕におけるR21,R31に例示したもの
と同一である。R,R,Rについても上記式
〔I〕において例示したものと同一である。
水酸基の保護基の除去は、保護基が水酸基の酸素素原子
と共にアセタール結合を形成する基の場合には、例えば
酢酸,P−トルエンルホン酸のピリジウム塩または陽イ
オン交換樹脂等を触媒とし、例えば水,テトラヒドロフ
ラン,エチルエーテル,ジオキサン,アセトン,アセト
ニトリル等を反応溶媒とすることにより好適に実施され
る。反応は通常−78℃〜+30℃の温度範囲で10分
〜3日間程度行なわれる。
保護基がトリ(C〜C)炭化水素シリル基の場合に
は、例えば酢酸,テトラブチルアンモニウムフルオライ
ド,セシウムフルオライド,フツ化水素,ピリジン−フ
ツ化水素の存在下に、上記したような反応溶媒中で同様
の温度で同様の時間実施される。
なお,A′が4−メチル−2,6,7−トリオキサビシクロ
〔2.2.2〕オクト−1−イル基である式〔II〕の化合物
の場合、上記の保護された水酸基の脱保護条件下(例え
ば、酢酸,P−トルエンスルホン酸のピリジニウム塩ま
たは陽イオン交換樹脂等の触媒下の反応)で、そのA′
は2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロプ−1−イルオ
キシカルボニル基に交換される。
この2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロプ−1−イル
オキシカルボニル基は通常のエステル基の加水分解条
件,すなわち、水または水を含む溶媒中で水酸化リチウ
ム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウムと−40℃〜1
00℃、好ましく0℃〜50℃の温度範囲で10分〜2
4時間反応させることによりA′がカルボキシ基の化合
物へと変換される。
〈発明の効果〉 かくして上記式〔I〕で代表される5−アリールスルホ
ニルイソカルバサイクリン類を出発物として本発明方法
により、工業的に有利に上記式〔II〕で代表される9
(O)−メタノプロスタサイクリン類が得られる。
〈実施例〉 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本
発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 5−P−トリルスルホニルイソカルバサイクリンビス−
t−ブチルジメチルシリルエーテルメチルエステル50
mg(0.067mmol)を1mlの乾燥メタノールに溶解し、次
いでリン酸ニナトリウム97mg(0.27mmol)を加えた。
−10℃に冷却し、窒素気流下、別途調整した6%ナト
リウムアマルガムを加えて3.5時間撹拌した。飽和塩化
アンモニウム水溶液を加えて反応を終結させ、エーテル
抽出を行つた。無水硫酸マグネシウム上で乾燥後溶媒を
留去し、生成物35mg(〜88%)を得た。このものを
HPLC(カラム:ZORBAX-SIL,溶媒:0.05%エタノール−
ヘキサン)にて分析を行うとイソカルバサイクリンビス
−t−ブチルジメチルシリルエーテルメチルエステル
(以下生成物Aと略す。)(保持時間23.5分)及び5
(E)−カルバサイクリンビス−t−ブチルジメチルシリ
ルエーテルメチルエステル(以下生成物Bと略す。)お
よび5(Z)−カルバサイクリンビス−t−ブチルジメチ
ルシリルエーテルメチルエステル(以下生成物Cと略
す。)の混合体(保持時間26分)が観測された。生成
物の比はA:B+C=2:3であつた。なお生成物Aと
生成物Bは既知化合物であり、標品と一致した。
実施例2 5−P−トリスルホニルイソカルバサイクリンビス−t
−ブチルジメチルシリルエーテルメチルエステル50mg
(0.067mmol)を1mlの乾燥テトラヒドロフランにとか
し、−10℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム12.7
mg(0.335mmol)およびテトラキストリフエニルホスフ
インパラジウム4.6mg(0.004mmol)を加え、室温にして
14時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加
え、エーテル抽出した。無水硫酸マグネシウム上乾燥
し、溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフイ
ー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、生成
物12mg(30%)を得た。
HPLC(カラム:YMC 012,溶媒:0.05%エタノール−ヘ
キサン)にて分析を行うと生成物の比はA(保持時間1
6分):B+C(保持時間17分)=1:2であつた。
実施例3 5−P−トリルスルホニルイソカルバサイクリンビス−
t−ブチルジメチルシリルエーテルメチルエステル50
mg(0.067mmol)を1mlの乾燥THFに溶解し、−10℃に
冷却した。水素化ホウ素リチウム5.9mg(0.27mmol)を
加え、5分後テトラキストリフエニルホスフインパラジ
ウム4.6mg(0.004mmol)を加えた。室温にし3時間撹拌
した。塩化アンモニウム水溶液を加え、エーテルにて抽
出を行つた。溶媒を留去後シリカゲルカラムクロマトグ
ラフイー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)に供し、
生成物24mg(62%)を得た。実施例2と同様のHPLC
分析を行うとA:B+C=1:2であつた。
実施例4 5−P−トリルスルホニルイソカルバサイクリンビス−
t−ブチルジメチルシリルエーテルメチルエステル50
mg(0.067mmol)に水素化トリブチルスズ200μ及
びトルエン500μを加え、AIBNを一かけ入れ100
℃で2時間撹拌し、次いで室温にして酢酸500μを
加え14時間撹拌した。
トルエンを加えて減圧下溶媒を留去したのちシリカゲル
カラムクロマトグラフイー(ヘキサン:酢酸エチル=2
0:1)に供し、生成物10mg(25%)を得た。実施
例2と同様のHPLC分析を行うとA:B+C=1:2であ
つた。
実施例5 5−P−トリルスルホニルイソカルバサイクリンビス−
t−ブチルジメチルシリルエーテルメチルエステル57
mg(0.076mmol)に窒素気流下ジクロロビスジフエニル
ホスフイノプロパンパラジウム2.2mg(0.0038mmol)の
2mlTHF溶液を加え0℃に冷却した。
次いで水素化トリエチルホウ素リチウム(IM THF溶液)
300μ(0.3mmol)を加え、4時間撹拌した。塩化
アンモニウム水溶液を加えて反応を終結させエーテル抽
出を行つた。有機層を乾燥濃縮後カラムクロマトグラフ
イー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)に供し、生成
物33mg(78%)を得た。このものは1−ノル−2−ヒ
ドロキシメチルイソカルバサイクリンの11,15−ジ−t
−ブチルジメチルシリルエーテル及びそのカルバサイク
リン型(△5型)の約5:1の混合物であつた。
NMR(δppm,CDCl3) 0.9(S,18H),0.8〜2.5(m,23H), 3.6(m,2H),3.6〜4.2(m,2H), 5.15(m,1H),5.45(m,2H)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 59/62 8827−4H 59/72 67/317 8018−4H 69/734 9279−4H C07D 493/08 B 9164−4C // C07C 317/10 7419−4H C07F 7/18 Z 8018−4H

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式〔I〕 〔式中、R21,R31は同一もしくは異なり、トリ
    (C〜C)炭化水素シリル基,または水酸基の酸素
    原子とともにアセタール結合を形成する基を表わし、R
    は水素原子,メチル基,またはビニル基を表わし、R
    は酸素原子を含んでいてもよい直鎖もしくは分枝鎖C
    〜Cアルキル基,アルケニル基もしくはアルキニル
    基;置換もしくは非置換のフエニル基;置換もしくは非
    置換のフエノキシ基;置換もしくは非置換のC〜C
    10シクロアルキル基;またはC〜Cアルコキシ
    基,置換されていてもよいフエニル基,置換されていて
    もよいフエノキシ基もしくは置換されていてもよいC
    〜C10シクロアルキル基で置換されている直鎖もしく
    は分岐鎖C〜Cアルキル基を表わし、nは0または
    1を表わす。 Arは置換もしくは非置換のフエニル基を表わし、Aは4
    −メチル−2,6.7−トリオキサビシクロ〔2.2.2〕オクト
    −1−イル基 ,またはアルキルオキシカルボニル基(−COOR
    を表わす。ここでRはC〜Cアルキル基を表わ
    す。〕 で表わされる化合物,その鏡像体あるいはそれらの任意
    の割合の混合物である5−アリールスルホニルイソカル
    バサイクリン類を還元剤と反応せしめ、必要により脱保
    護反応及び/又は加水分解反応に付すことを特徴とする
    下記式〔II〕 〔式中、A′は4−メチル−2,6.7−トリオキサビシク
    ロ〔2.2.2〕オクト−1−イル基,2,2−ビス(ヒドロキ
    シメチル)プロプ−1−イルオキシカルボニル基,もし
    くはカルボキシ基またはアルキルオキシカルボニル基
    (−COOR) またはヒドロキシメチル基を表わ
    す。R,Rは同一もしくは異なり、水素原子,トリ
    (C〜C)炭化水素シリル基,または水素基の酸素
    原子とともにアセタール結合を形成する基を表わす。表
    示…は2つのうちいずれか一方だけが結合手であること
    を表わし、表示は5,6位が二重結合である時に立体配
    置が,あるいはそれが任意の割合いで共存するこ
    とを表わす。R,Rn,Rは前記定義に同じであ
    る。〕 で表わされる化合物,その鏡像体あるいはそれらの任意
    の割合の混合物である9(O)−メタノプロスタサイクリ
    ン類の製造法。
  2. 【請求項2】還元剤として水素化アルカリ金属錯体をパ
    ラジウム化合物の存在下に用いる特許請求の範囲第1項
    記載の9(O)−メタノブロスタサイクリン類の製造法。
  3. 【請求項3】水素化アルカリ金属錯体が水素化ホウ素ナ
    トリウム,水素化ホウ素リチウム,または水素化トリエ
    チルホウ素リチウムである特許請求の範囲第2項記載の
    9(O)−メタノプロスタサイクリン類の製造法。
  4. 【請求項4】パラジウム化合物がテトラキストリフエニ
    ルホスフインパラジウムまたはジクロロビスフエニルホ
    スフイノプロパンである特許請求の範囲第2項または第
    3項記載の9(O)−メタノプロスタサイクリン類の製造
    法。
  5. 【請求項5】還元剤として、水素化有機スズ化合物をラ
    ジカル発生剤の存在下に用いた後、酸処理を行う特許請
    求の範囲第1項記載の9(O)−メタノプロスタサイクリ
    ン類の製造法。
  6. 【請求項6】水素化有機スズ化合物が水素化トリブチル
    スズである特許請求の範囲第5項記載の9(O)−メタノ
    プロスタサイクリン類の製造法。
  7. 【請求項7】還元剤としてアルカリ金属アマルガムを用
    いる特許請求の範囲第1項記載の9(O)−メタノプロス
    タサイクリン類の製造法。
  8. 【請求項8】アルカリ金属アマルガムがナトリウムアマ
    ルガムである特許請求の範囲第7項記載の9(O)−メタ
    ノプロスタサイクリン類の製造法。
  9. 【請求項9】ArがP−トリル基である特許請求の範囲第
    1項から第8項のいずれか1項記載の9(O)−メタノプ
    ロスタサイクリン類の製造法。
  10. 【請求項10】Aがメトキシカルボニル基または4−メ
    チル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2.2.2〕オクト−1
    −イル基である特許請求の範囲第1項から第9項のいず
    れか1項記載の9(O)−メタノプロスタサイクリン類の
    製造法。
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