JPH06269228A - 移植樹用根巻材及び植樹移植法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 熟練技術を要せず、短期間で活着のよい移植
樹を得ることができる移植樹用根巻材及びこれを用いた
植樹移植法を提供すること。 【構成】 移植樹の根回しに用いる根巻材において、最
下層の外側被覆材と、該外側被覆材の上に重ねた生分解
性繊維材製の内側被覆材とを備え、該内側被覆材上に土
壌層を敷設すると共に、該土壌層を水溶解性を有する薄
膜で被覆したことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は移植樹用根巻材及び植樹
移植法、特に細根発生を促進する移植樹用根巻材及びこ
の移植樹用根巻材を用いる植樹移植法に関する。

【０００２】

【従来の技術】移植樹は、表土からの堀取りの際ある程
度の根部の裁断がやむをえないため、裁断根部からの給
水に比して葉などからの蒸散が過多となるために、これ
を軽減することで植樹の枯損を防ぐ必要がある。このた
めに枝葉が剪定，減量されていたが、近年増加傾向にあ
る、ビルの屋上やアトリウム等における植樹では、樹形
が特に重視されるため枝葉の剪定が制限される。よっ
て、蒸散に見合う給水を保証するため、表土から植樹を
堀取り、切断根部へ整形等の根回しを施してから再び埋
戻し、十分な細根を得るための仮植期間を設け、その後
に植替えている。

【０００３】前述の根回し作業は、従来、切断根と非切
断根との判別や力根，直根の剥皮等に高度な熟練技術が
要求さたが、現在では、植樹を適当な大きさの根鉢とと
もに堀取り、該根鉢より外の根を全て切断することで前
述の熟練技術を低減し、この根鉢を根巻材で寝巻きした
まま仮植えし、細根を十分とした後に再度堀取り、寝巻
材を剥ぎ植替えているのが状況である。根巻材として
は、ワラ，コモの他にこれらに比べ発根状態がよいも
の、例えば、特殊加工ネットを紙で挟んだもの等が用い
られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、移植後
の活着に見合う細根を得るには、約一年という長期の仮
植え期間を要し、根巻材の内側付近に発根が網目状に密
集し、これが根腐の原因となったり、あるいは細根が根
巻材を貫通し、ようやく得た細根を一部切断せざるをえ
ない場合が多かった。

【０００５】本発明は、これらの問題点及び上記従来技
術を勘案しなされたものであり、その目的は、熟練技術
を要せず、短期間で活着のよい移植樹を得ることができ
る移植樹用根巻材及びこれを用いた植樹移植法を提供す
ることにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の移植樹用根巻材
は以上の問題点を解決するものであり、その要旨は、移
植樹の根回しに用いる根巻材において、最下層の外側被
覆材と、該外側被覆材の上に重ねた生分解性繊維材製の
内側被覆材とを備え、該内側被覆材上に土壌層を敷設す
ると共に、該土壌層を水溶解性を有する薄膜で被覆した
ことを特徴とし、前記土壌層を多数の小室に区画するこ
ともできる。

【０００７】また本発明の樹木移植法は上記移植樹用根
巻材を使用し植樹を移植する方法であって、まず移植す
る植樹を表土から堀取り、根鉢を根回し前記移植樹用根
巻材で根巻きする工程と、次に根巻きされた前記植樹を
表土へ埋戻し仮植えする工程と、次いで前記植樹を、前
記移植樹用根巻材の外側被覆材を表土に残し、この外側
被覆材以外の移植樹用根巻材で根巻きしたまま再び堀取
り、植替えする工程とからなることを特徴とする。

【０００８】

【作用】本発明の移植樹用根巻材では、薄膜を通して土
壌層へ達する細根を内側被覆材上の土壌層で育成でき
る。また、外側と内側とに被覆材が重ねてあるだけなの
で、これらを容易に分離することができ、内側被覆材が
生分解性繊維材製のため、外側被覆材を剥離すれば植樹
を根巻きしたまま植替えできる。さらに、薄膜は水溶解
性を有するのでやがて土壌に同化する。なお、土壌層を
多数の小室に区画すれば、土壌層の偏りを防止できる。

【０００９】また、本発明の植樹移植法では上記移植樹
用根巻材を使用するので、上述の作用を移植工程におい
て享受できる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の好ましい一実施例を添付図面
に基づいて詳述する。図１は本発明の移植樹用根巻材Ｉ
を示す斜視図であり、根巻材Ｉの基本構造は、外側被覆
材１，内側被覆材２，人工土壌層３及び薄膜としての和
紙４から成る。根巻材Ｉは円盤状の層状体であり、最下
層に通気性，排水性に富み、生地の滑らかな、例えば合
成高分子材としての、例えばポリエチレン，ポリプロピ
レンからなる人造織布の外側被覆材１を設け、この上
に、ある程度の期間後、腐食・分解する、すなわち生分
解性を有する稲ワラやココナッツ繊維等の天然繊維材製
の内側被覆材２を重ね、更にこの被覆材２上に砂，発砲
シリカ及び炭酸カルシウムを主体に吸水ポリマや化学肥
料を混入した人工土壌層３を敷設し、この土壌層３を水
溶解性を有する和紙４により上方から包囲し被覆材２上
にこれと一体的に定着させている。図２は根巻材Ｉを拡
大した部分断面図であり、人工土壌層３は和紙４’によ
り縦方向にも仕切られ、図１における破線で示すよう
に、被覆材２上の縦横で、略正方形の小室３’に区画さ
れている。なお、人工土壌層３の区画は縦横のキルティ
ングによっても形成できる。根巻材Ｉの大きさ等は移植
樹の鉢部や植え穴に合わせ適宜に設定できるが、植え穴
は直径約３ｍ，深さ約１．５ｍを越えないことが望まし
く、土壌層３の層厚は約１０ｃｍ、小室３’の辺長は約
３０ｃｍ程度が好ましい。

【００１１】次に、上記移植樹用根巻材Ｉを用いた移植
の工程を説明する。まず表土２０より植樹１０を根鉢１
１とともに掘取り（図３）、根鉢１１から突出する切断
根を揃え、根部切口付近に付着する天然土壌を払い落す
等の整形を行ない（図示しない）、次に根巻材Ｉで根鉢
１１をワラ縄１３等を用い寝巻きし（図４）、その後多
少拡張した堀取り穴２１へ埋戻す。この状態を図５の概
略断面図で示す。

【００１２】植樹１０は支線１４等により風倒の養生を
施され仮植えされる。根巻材Ｉの人工土壌層３は樹幹１
０”周辺の天然土壌２０’に比べ上述のように水分や肥
料成分に富むよう形成されており、細根１０’の発生が
大幅に促進される。これにより、仮植え期間を二乃至三
ヶ月に短縮でき、従来問題となっていた細根１０’の過
徒長による切断や密生による根腐を回避できる。外側被
覆材１には合成高分子材を用いているため、通気性，排
水性に富み、また水溶解性を有する和紙４，（４’）は
この期間中に分解・消失し、土壌と同化する。

【００１３】仮植え期間経過後、外側被覆材１の端部
１’を杭１５等で固定した後、移植樹１０をクレーン等
で引抜く（図６）。この際、外側被覆材１は合成高分子
材製で生地が円滑なため容易に外側被覆材２と離れ堀取
り穴（植え穴）２１に残り、植樹１０は外側被覆材１を
除く根巻材Ｉと一体化している。この状態の植樹１０そ
のままビル屋上等の所望地に植替えることがでる。

【００１４】

【効果】本発明の移植樹用根巻材及び植樹移植法では、
優れた樹形で活着のよい移植樹を短期間で提供すること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の移植樹用根巻材を示す斜視図である。

【図２】本発明の移植樹用根巻材の一部を拡大した部分
断面図である。

【図３】植樹を表土より堀取りした状態を示す概略図で
ある。

【図４】植樹を根巻きした状態を示す斜視図である。

【図５】植樹を仮植えした状態を示す概略断面図であ
る。

【図６】植樹を再び堀取りした状態を示す概略図であ
る。

【符号の説明】

Ｉ 移植樹用根巻材 １ 外側被覆材 ２ 内側被覆材 ３ 人工土壌層 ４，４’ 和紙 １０ 植樹 １０’ 細根

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 移植樹の根回しに用いる根巻材におい
   て、 最下層の外側被覆材と、該外側被覆材の上に重ねた生分
   解性繊維材製の内側被覆材とを備え、該内側被覆材上に
   土壌層を敷設すると共に、該土壌層を水溶解性を有する
   薄膜で被覆したことを特徴とする移植樹用根巻材。
2. 【請求項２】前記土壌層を多数の小室に区画したことを
   特徴とする請求項１に記載の移植樹用根巻材。
3. 【請求項３】 請求項１又は請求項２に記載の移植樹用
   根巻材を使用し植樹を移植する方法であって、 まず移植する植樹を表土から堀取り、根鉢を根回し前記
   移植樹用根巻材で根巻きする工程と、 次に根巻きされた前記植樹を表土へ埋戻し仮植えする工
   程と、 次いで前記植樹を、前記移植樹用根巻材の外側被覆材を
   表土に残し、この外側被覆材以外の移植樹用根巻材で根
   巻きしたまま再び堀取り、植替えする工程とからなるこ
   とを特徴とする植樹移植法。